✞43」─1─イギリス王国のEU離脱派の勝利は、移民・難民拒否とEUエリート官僚批判。2016年。〜No.210 @       

ここのなかの何処かへ: 移住・難民・境界的出来事

ここのなかの何処かへ: 移住・難民・境界的出来事

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 2016年3月号 WiLL 「日本は難民にあまりに無防備 D・アトキンソン
 日本は海外から、『もっと移民、難民を受け入れろ』と責められています。同時に、国内でも労働者不足問題を解決するために、その必要性を訴える経済界の方もいます。
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 かつてのイギリスもそうでしたが、戦後、特に帝国主義時代の終焉に伴って移民や難民を大量に受け入れ、これまでの制度を改革することになりました。 
 しかし、日本は似た価値観を持つ国民が大多数で、既存の制度は性善説を前提にしています。もし移民を受け入れるならば、いまの制度を根本から直す必要があると思います。
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 難民に厳しいイギリス
 保険料を払っていなかったにもかかわらず、簡単に保険制度を利用できたのはよかったと思う。一方で、私は厚遇ぶりを80年代のイギリスと重ね合わしていました。
 80年代のイギリスでは、観光ビザで入国した観光客も、イギリスの健康保険制度が使えたのです。つまり、医療費はタダ。無料で治療を受けようと観光客が大挙してやって来たため、『社会保障観光』という言葉さえできたほどでした。同時に、社会保険制度目的の移民もあとを絶たなかった。
 移民認定された人はすぐに親類も呼び、無料で治療を受けさせる。移民は当然、保険料や社会保障費など払っていませんから、イギリスの財政を圧迫していきました。
 まず、移民と難民の違いを確認する必要があります。イギリスでは、難民は移民の一種と見做(みな)しています。『難民』のいちばん分かりやすい基準は、自国に帰った場合の危険性を証明できる人です。もっと簡単に言えば、移民は経済的な理由などで自分の都合で移住した人を、難民は自分の都合だけではない人を指します。
 現在、イギリスでは難民は約12万6,000人しかいません。申請してきた難民の7割弱は認定されませんし、認定されるまでは就労が禁止され、1日手当も1,000円程度。最長1年、仕事ができないこともありますし、認定されなかった時の意義申し立ては1回だけ。
 事ほど左様に審査が厳しく、難民が入って来ないのです。社会保障制度も現在は改正され、健康保険は難民の場合、緊急の場合以外は使えるようになるまで数ヶ月、待たなくてはなりませんし、それ以外の社会保障制度もかなり制限され、ほとんど使えなくなっています。
 杜撰な日本の難民認定制度
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 危険な財界の主張
 上流階級の移民は、教育水準も高くグローバルな人たちですから、自国民とも衝突しません。社会保障制度などもあまり使わないし、社会問題に発展しないのです。
 日本の場合はどうか。少子高齢化で労働不足解消のための移民受け入れということは、おそらく『下層階級の移民を受け入れるべきだ』ということでしょう。
 これが財界の主張だとすれば、歴史的に見てかなり危険な考えです。
 かってのドイツのように、日本は経済合理性だけしか頭にない。外国人に働きながら技術を学んでもらう『外国人技能実習制度』を設けていますが、企業が低賃金で酷使したり、残業代を払わなかったりするため、失踪する実習生があとを絶たず、これまでに2万5,000人が失踪したという。
 いまの日本の一人当たりの購買力平価GDPは3万7,519USドルで、世界28位。先進国で日本より低いのは3万5,132USドルのイタリア(32位)、3万3,835USドルのスペインですが、イタリアは失業率が11.5%、スペインは21.6%です。あおれだけ高い失業率でも、一人当たりのGDPが日本とそんなに変わりがない。
 裏を返せば、いかに日本の経営者が雇用している社員に生産性の高い仕事をさせていないか、工夫していないかということです。人を増やす前に生産性を上げる努力をするのが先です。
 たしかに、移民を受け入れることによるメリットがないわけではありません。GDPと人口は密接な関係がありますが、人口が増えればそれだくでGDPも高くなる。カナダの1990年代の経済成長のおよそ9割が移民によるものだった、という分析もあるほどです。
 『単純労働者の受け入れが危険ならば、カナダやオーストラリアのように上流階級の移民を受け入れればいいではないか』という人もいるかもしれないが、これも日本では簡単にはいきません。
 まず言語が日本語ですから、日本語習得のために金銭的、時間的コストがかかる。もう一つは、外国人に対する日本人の拒否反応です。
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 移民による地方支配」
 先述したように、イギリスは帝国が崩壊した1950年代から移民を受け入れました。イギリス帝国の崩壊によって、それまでの本国による買い上げなどがなくなり、かつて植民地だった国々で困窮する人が続出、イギリスに流れてきた。
 イギリスと元植民地は親と子のような関係で、イギリスとしても流れてくる移民を断れなかった。
 入ってきた移民の多くはイギリス社会に溶け込もうとはせず、地域で固まって生活し、コミュニティを形成します。コミュニティはどんどん大きくなり、地元に住んでいたイギリス人たちよりも自治体で大きな力を持つようになりました。 
 たとえば、イギリスの田舎にインド人が多く住む町がありますが、その地域の学校では、保護者がほとんどインド人。彼らは英語ではなくヒンディー語で授業をさせたいとか、ヒンドゥー教に基づいた教育制度へ変えたいとか、主張するようになりました。
 当然、地元のイギリス人たちはそんなことは受け入れられませんから、衝突するようになる。
 厄介なのは、民主主義国家である以上、小さな田舎のことであっても民主的に多数決で決まったことは国はなかなか口を挟むことができないということです。『郷に入っては郷に従え』と地域でマイノリティのイギリス人の意見を通してしまえば、それこそ民主主義に反するからです。
 日本文化を守るために
 日本は新しきなかにも古きよき文化が残り、あまり国際化されていない稀有な国です。下層階級の移民、難民が大勢入ってくれば、必ずイギリスのようにコミュニティが形成され、地元民と摩擦が起こるでしょう。
 そういったリスクがあるにもかかわらず、財界の方針によって安易に難民、移民を受け入れていいものでしょうか。
 繰り返しますが、日本はあまりに無防備です。難民認定法や社会保障制度を見直し、しっかりと移民、難民の受け入れ戦略を立てないと、近い将来、大変なことになる。財界の方にも、移民を受け入れる前にやるべきことがあることをしっかり認識してもらいたいと思います」
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 2016年7月8日号 週刊朝日「英国EU離脱 
 アベノミクスは崩壊危機
 1ドル=80円の衝撃
 株価は暴落、離脱ドミノも、参院選への影響必至
 『EU離脱』を選んだ英国の国民投票。格差の亀裂から噴き出したマグマは燎原の火となり、連合王国、欧州の連帯をも焼き尽くす可能性が出てきた。対岸の火事と思うなかれ。逃げ惑う投資家の日本買いがアベノミクスの息の根もとめるかもしれない。待ち構えている超円高時代か。
 『EU離脱』の道を選んだ英国の国民投票。当初は残留ムードも漂ったものの、離脱派と残留派が拮抗した世論調査どおりの展開となり、結局は離脱派が逃げ切った。
 英国加盟から43年での〝熟年離婚〟とは切ない話だが、欧州のお家騒動であっても、ニッポンも無縁では済まされない。飛んできたのは非常に強いハリケーン級の円高だ。いまや日本円は世界の投機マネーが避難する際の『駆け込み寺』と化しており、先行きが見えない今回も円買いが殺到した。開票日の24日、為替は一時、2年7ヶ月ぶりの1ドル=99円となり、日経平均株価も1,200円超の下落で今年最安値と大荒れだった。
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 英国進出1,000社戦略の見直しも
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 なぜ離脱派がこうも支持を広げたのか。そもそもこれまで英国は、EUの中で特別待遇を受けた身だ。例えば、加盟国が負担する拠出金について、農業の共通政策では自国のメリットがないとして、負担額を減額させた過去がある。通貨だってポンドのままだ。今回の投票結果が『EU残留』であっても、移民に対する社会保障の見直しなど、さらなる優遇をEUから取り付けていた。
 それでも労働者階級を中心に有権者が出した答えはEU離脱。有権者に向けて離脱派がキャンペーンを張ったのは、移民問題だ。
 英国はEU域内の出入国審査を不要とする『シェンゲン協定』は未締結だが、基本的にはEUのパスポートを持っていれば、英国内で労働も居住も可能だ。
 英国には国民保険サービス(NHS)があり、医療費が無料になるなど社会保障も手厚い。そこも移民を引き寄せる点で、昨年は計33万人が流入した。80年代から英国に在住する音楽ライターの高野裕子氏は言う。
 『住み始めたころは地下鉄でも英語しか聞こえず、仏語、独語はたまに耳にした程度。それが今ではペルシャ語ポーランド語、ルーマニア語、中国語まで聞こえてきます。今回の投票は移民と経済が最大の論点。離脱派は、低所得のとくに白人労働者級の政治不満に火をつけた。現在の英国政治への不満をEUの責任にして離脱すれば、古き良き英国が戻ってくると思い込んでいる地方の票が、今回の結果に大きく影響したように思えます』
 一方の論点の英国経済に関しては、興味深いデータがある。欧州経済に詳しいニッセイ基礎研究所上席研究員の伊藤さゆり氏によると、リーマン・ショック後の英国の実質国内総生産(GDP)の水準は、先進7ヵ国でカナダ、米国に次ぐ改善ぶり。欧州の〝勝ち組〟のドイツをもしのぐ水準だ。失業率にしても、リーマン・ショック前の水準まで低下した。ほぼ完全雇用状態にある。つまり、EU加盟国のままであっても、決してパフォーマンスは悪くないのだ。
 離脱派は声高に移民問題を訴え、結果的に支持を広げた。
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 日本も無関係ではない欧州の移民・難民問題。青山学院大学教授 羽場久美子
 英国のEU離脱の背景には、グローバリゼーションの進展と、先進国の経済成長が頭打ちになっている状況があります。英国にはかつての大英帝国としてのプライドもあり、これが超国家EUへの反感と結びつきました。そんな中、EUや米国でも移民や難民を排斥する動きが出ています。
 ここにポピュリズム政治の問題であります。英国では『国民を差し置いて、移民が賃金などの待遇がよい職についたり、英国の高度な社会保障を享受したりするのは我慢ならない』という大衆迎合的な政治プロパガンダがありました。社会の課題や不満の理由を、移民・難民問題やEU問題に結びつけていく。ここに離脱派のうまさがありました。
 今回の結果を受けて、EUで右派・離脱派が勢いづくかもしれません。しかし、離脱は政治的にも経済的にもメリットはありません。失業や移民に対する政策は、一国の財政では賄いきれないでしょうし、EUの巨大市場から抜ければ、貿易など経済活動も縮小してしまうからです。
 また、移民の問題は日本も無関係ではありません。安倍政権は、少子高齢化による労働力不足の対策として、毎年20万人の移民を受け入れることを検討しています。他方で、年間平均賃金が、ピークの1997年と比べて、約50万円低下しました。生活環境の悪化は、ナショナリズムの高まりや外国人排斥につながる原因となります。将来、高齢化社会の日本でも緊張や摩擦を生み出さず移民や難民を受け入れていくためにも、今回の件を真剣に考えることが必要です」
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 2016年7月29日 産経ニュース「英仏海峡トンネルに不法移民殺到、豊かさ求めて英国へ
 29日、フランス北部カレーで、ユーロトンネルの近くを歩く移民ら(AP)
 【ジュネーブ=内藤泰朗】フランスから英国に渡ろうとする中東やアフリカからの不法移民が、英仏間のドーバー海峡を通る鉄道用トンネルに連日のように殺到している。英政府は29日に緊急対策会議を開いたが、深刻化する移民問題に出口は見えない状況だ。
 英BBC放送などによると、フランス側の港町カレーでは29日未明から早朝、約1500人の不法移民が列車に積まれて英国に向かうトラックの荷台に乗り込もうとするなどし、警備に当たる警察との間でにらみ合いとなった。
 この騒動で、スーダン人の若い男性がトラックにひかれて死亡した。7月だけで、計9人が渡英しようとして死亡した。
 28日未明から早朝にも、過去最多の約2千人の不法移民が殺到。トンネルは一時麻痺状態に陥った。
 移民たちの多くは、エチオピアエリトリアスーダンアフガニスタンなどから戦乱を逃れてきた人たちで、豊かさを求めて英国を目指す。人身売買を行う英国の犯罪集団が手引きしている場合があるという。
 トンネルに集まる背景には、ドーバー海峡を横断するフェリーへの乗り込みが警備強化で困難になったこともあると指摘される。
 英政府は仏当局に700万ポンド(約14億5千万円)を支払い、フェンス強化を図ることで合意したが、取り締まりに英軍派遣を求める声も出ている。」
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 8月29日 産経ニュース「【移民ショック】イギリスの純総数32万7000人、いぜん高水準 メイ政権に難題
 【ロンドン=岡部伸】今年3月までの1年間に英国に入国した移民の数は、出国者数を差し引くと32万7000人で、過去最高を記録した前年同期比では9000人減少したものの、なお高水準にあることが英政府統計局(ONS)の発表で明らかになった。国民投票欧州連合(EU)離脱を選択する大きな要因となった移民問題をめぐり、メイ英政権は2020年までに年間10万人以下に減らす目標を前政権から引き継いでおり、難しい対応を迫られそうだ。
 ロイター通信によると、今年度のEU加盟国からの移民の純流入数は18万人で前年度比で4000人減った。しかし14年に英国での就労規制が撤廃されたルーマニアブルガリアの出身者は約1万人増の6万1000人と過去最多になった。
 就労目的の入国者は30万3000人で、明確な働き先を決めてきた人は58%(17万6000人)だった。
 難民申請件数は、今年6月末までの1年間で4万4323件に上り、6年連続で増加。イランやパキスタンイラクなどからの申請が上位を占める。
 メイ首相は移民制限に関して具体策を明示していないが、グッドウイル出入国管理相は「離脱選択の国民投票は、EUからの移民労働者を管理する機会を与えてくれた」として、低技能の労働者を制限する意向を示した。デーリー・テレグラフ紙はEU離脱後、政府はEU域内出身の低技能労働者に対し、就労許可の申請を義務付ける方針に転じるだろうと報じている。」
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周縁から照射するEU社会―移民・マイノリティとシティズンシップの人類学

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