🔯14」─3・A─善悪二元論は必ず間違える、「絶対正義」は存在しない、一神教より多神教。~No.46 

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 絶対真理を信仰する世界宗教において、日本神道など未開人の民族宗教邪教として滅ぼすべき敵であり、アフリカ人や日本人など異教徒の蛮族は奴隷・家畜・獣として扱う事は、全て「神の御名」によって許されていた。 
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 2023年12月9日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「戦争、暗殺の時代だからこそ寛容を語りたい~善悪二元論は必ず間違える、「絶対正義」は存在しない、一神教より多神教
 カエサルの名言
 写真提供: 現代ビジネス
 古代ローマの、ガイウス・ユリウス・カエサルは、
 「人は喜んで自己の望むものを信じるものだ」
 【写真】世界が「宗教紛争」に覆われる原因は何か~中東で紛争勃発の今こそ考える
 との名言を残している。
 例えば、一つの考えに囚われてしまうと、その考えを裏打ちするデータをひたすら集め、躍起になって自分の考えを「証明」しようとする人物がよくみられる。「都合の悪いデータ」を無視して、「都合の良いデータ」だけを集めているのだから、実はその行為は何も「証明」していなくて、ただ「信じている」だけだと言える。
 また同時に、
 「自分は自身の考えに忠実に生きたいと思う。他人も同様だろう。したがって、(私は)他人の生き方も認める。もしそのことによって、敵が私に再び刃を向けることになったとしても仕方がない。そのように生きることが私の願いだから」
 との言葉も残している。
 要するに、「自分の信念は確固たるものだから、簡単には曲げない。だから、他人がそうであることも認める」ということだ。
 古代ローマが発展したのは、特に帝国成立の初期に(戦争に勝った)「異民族」に寛容であり、同盟者として取り込んでいったことが大きな理由の一つであるとされる。
 特にローマの最強の敵であったともいえるカルタゴの名将ハンニバル・バルカに勝利できたのは、「異民族」がローマを支持したことが大きい。彼らが、強敵であるハンニバルの側についていれば、ローマはもしかしたらその時に滅亡していたかもしれない。
 カエサルは、歴戦を戦い抜いた猛将であるとともに、ローマの歴史を受け継ぐクレメンティア(寛容)の精神でも有名であったのだ。
 彼は、「ブルータスよ! お前もか!」という言葉で有名な暗殺事件でその生涯の幕を閉じた。この計画には、ブルータスだけではなく、おそらく元老院議員など80人以上が関わったと言われる。
 そして、カエサルの後を継いだアウグストゥスにより、ローマは(実質的に)共和制から帝政へと移行した。
 元老院議員たちは、カエサルが「皇帝」になって「元老院議員の特権」を脅かすことを恐れていたと言われるが、その後により「不寛容な皇帝」が続いたことは皮肉である。
 ちなみに、アウグストゥスの後は、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロである。特にカリグラとネロは、暴君として読者もよくご存じであろう。
 日本でも、11月15日「安倍晋三亡き後の岸田政権の『政党政治腐敗』は戦前のデジャブか?」で述べたように、安倍晋三氏が2022年8月7日に凶弾に倒れた(参照:「大原浩の逆説チャンネル<第2回・特別版>安倍元首相暗殺事件と迫りくるインフレ、年金・保険破綻」)。
 安倍氏に対しては、2020年5月22日公開「安倍首相を叩く『アベノセイダーズ』が、民主主義を捨て全体主義に走る理由」の「アベノセイダーズ」が、元老院と同じように既得権益を守るためなのか、執拗な攻撃を行っていた。このような行為は戦前のデジャヴであるだけでなく、ローマの共和制を崩壊させ帝政への流れをつくった「カエサル暗殺事件」をも彷彿とさせる。
 結局、「他人の考えが存在すること」を認めずに「暗殺」という手段で相手を「問答無用」で「黙らせる」のは「独裁・独善」である。
 他者(他神)を否定する一神教
 単なる偶然かもしれないが、帝政期のローマで「迫害されたキリスト教」(世界史の窓)が一転して、紀元(後)313年の「ミラノ勅令によって(キリスト教が)公認」されたことは興味深い。
 古代ローマの建国は紀元前753年とされる(伝承)が、それ以来、313年まで多神教が支配する国であったのだ。
 313年にキリスト教は「公認」されたが、他の宗教も依然「公認」された状態であり、最終的に392年にテオドシウス帝によってローマ帝国の「国教」とされた。
 そして、注目すべきは476年に「西ローマ帝国の滅亡 」(世界史の窓 )を迎えたことである。ちなみに、キリスト教が「国教」となった直後の5世紀初頭から、ゲルマン人などの侵攻に晒された西ローマ帝国は、すでに統治能力を失いつつあった。
 古代ローマの長大な歴史を考えれば、これらの時期は「最末期(滅亡期)」である。その「最末期」に、多様な神々を信仰する多神教ではなく、「他の神々を否定する一神教」がローマ帝国において強大な力を持つようになったのは果たして偶然だろうか。
 一神教をも包含するのが多神教である
 現在、世界最大の宗教勢力はキリスト教である。世界総人口のうちキリスト教徒が3割以上でトップ、次いでイスラム教徒が約25%で2位と見積もられる。この二つの一神教だけで過半数を越える。3位は約15%の多神教であるヒンズー教徒だが、上位2宗教に圧倒されている。また、我々になじみ深い仏教徒は7%程度と推計される。
 カトリック教会の異端審問・宗教裁判、さらには十字軍(イスラムから見れば強盗・殺人集団)に象徴されるように、キリスト教(カトリック教会)は他の宗教(さらには異端)を認めない姿勢を長年貫いてきた。欧米諸国の文化の根底にもこの「不寛容」な精神が流れていると考えるべきであろう。
 イスラム教においては「ジズヤ/人頭税」(世界史の窓)のように、「余分な税金を払えば『他の信仰』も認める」という寛容な政策を取ってきた。ただし、認められる『他の信仰』の対象は、基本的に「啓典の民」(世界史の窓)と呼ばれるユダヤ教徒イスラム教徒であったことには注意が必要だ。
 「ギャラリー:もう見られないバーミヤン大仏、破壊前の貴重な写真9点」で述べられている、2001年3月の(多神教である)仏教の貴重な遺産をタリバンが破壊した事件を覚えている方も多いだろう。
 それに対して、多神教は「他の宗教の神々を内包する寛容さ」を持っている。
 特に、「大原浩の逆説チャンネル<第12回 >苦しい時の神頼みが最高戦略、神は存在しないが宗教は重要だ」や、2020年6月10日公開「コロナ、暴動に満ちた今こそ『苦しい時の神頼み』の効用を見直そう」で述べた、「神社で七五三をし、教会で結婚式を挙げ、寺で葬儀を執り行い墓をつくる」というような「神仏(キリスト)習合」は素晴らしい。
 神道と仏教(さらにキリスト教など)を見事に融合した。「オンディマンド」という宗教観は、日本人の英知といえる。
 「あなたの神の言うことも、私の神の言うことも(少なくとも一部は)正しい」という姿勢は、果たして「不信心」なのであろうか? 長所を寄せ集めて、「より良いもの」を生み出すのは、優れた手法だと思う。
 「わかりやすい」ことは正しいとは限らない
 民主主義社会では、全体主義思想、独裁思想も完全否定はされない(拷問されたり、火あぶりにされたりしない)。だからこそ、民主主義なのだ。多神教も同じである。一神教を完全否定はしない。
 だが、そのことが民主主義や多神教をわかりにくくしている。
 例えば、勧善懲悪物語で「正義のヒーロー」が「悪人」をなぎ倒していくのは痛快だ。しかもわかりやすい。だから人々の人気を得ることができる。
 だが、「本当の世の中」は「夢の世界」とは異なる。現実の世界では「絶対真理」や「絶対正義」は存在しないと考えるべきだ。「生き物」である世の中は常に揺れ動くから、「相対的な最適解」しか見つけることができない。そして、その最適解は、基本的に中庸(コトバンク)にある。
 中庸は実は難しい。「中庸」(バランス)を維持するためには、微細なコントロールが要求される。
 それに対して、一神教は「神のみ心」=「神が定めた絶対真理」ですべてが解決されるからわかりやすい。世界的に一神教が広がったのは、そのわかりやすさ故だと思える。
 それに対して、私が執行パートナーを務める、人間経済科学研究所フェロー・沼田功の「一つの宗派だけではすべての人々を救うことはできない=神仏習合の意味。そして出会い」は非常に興味深い内容だ。
 屁理屈で論破することに意味は無い
 大事なのは、我々の生きる「現実の世界」である。「夢の国」のひと時は素晴らしいが、それだけでは(普通の)人間は生きていくことができない。
 ネット上で色々な議論が交わされるが、「現実に必要な『中庸』」を欠いた、「机上のクウロニスト」(机上の空論を述べる人)に価値は無い。重要なのは「真実」である。
 極論は確かにわかりやすいが、「真実」には近づけない。世の中は、線描で描かれているのではない。グラデーションによって、連続的に変化しているのだ。
 その濃淡をどのようにとらえるのかには様々な意見があり、「絶対真理」は無い。例えば虹の色を光の波長で考えればよくわかる。
 光の色に境目は無い
 人間環境大学「【心理学科コラム】虹の色は7色?」で述べられているように、日本人が7色と表現する虹の色は、米国では一般的に6色、ドイツでは5色とされる。さらには、3色、2色とする文化圏もあるようだ。
 実は、虹の色を構成する(人間に見える)「光の色」は、「東邦大学可視光線』」の図にあるように、ラジオ波から赤外線、紫外線、ガンマ線に至る極めて広い幅の波長の電磁波の中のごく一部に過ぎない。
 可視光線も電磁波の一種であるから、電磁波に色がついているのではなく「人間の脳が色として認識」しているだけなのだ。人間の脳は、文化圏の影響を大きく受けるし、個々人の差異も大きい。
 よく言われるように、だれかが「赤」として見ている色が、実は他の人にとっては「青」という可能性もあるのだ。つまり、「赤」と言っている色が、実は人によって脳の中では「青」「緑」「黄色」に見えるということがあり得る。しかしながら、それを確かめる手段が無い。
 このように、人間は「多種多様」であるし、だからこそ文明を発展させることができたのだと思う。金太郎飴を切ったような画一的な人間ばかりであれば、人類の発展は無かっただろう。
 だから「他人が自分と違って当たり前」である。カエサルの冒頭の二つの言葉が意味するものは極めて大きい。
 大原 浩(国際投資アナリスト)
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🎄57」─3─戦争に使われた毒ガスから抗がん剤が開発され現代で治療薬として処方されている。~No.196 

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 毒は使い方によって薬になる。
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 軍事研究が歴史を動かし人類に幸福をもたらすが、現代日本の理想的平和至上主義者は如何なる軍事研究も否定している。
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 YAHOO! 2023年12月6日 JAPANニュース ダイヤモンド・オンライン「第二次世界大戦で大惨事…もっとも多くの人命を奪った「毒ガス」から生まれた“衝撃の新薬”
 人はなぜ病気になるのか?、ヒポクラテスとがん、奇跡の薬は化学兵器から生まれた、医療ドラマでは描かれない手術のリアル、医学は弱くて儚い人体を支える…。外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、X(twitter)で約10万人のフォロワーを持つ著者(@keiyou30)が、医学の歴史、人が病気になるしくみ、人体の驚異のメカニズム、薬やワクチンの発見をめぐるエピソード、人類を脅かす病との戦い、古代から凄まじい進歩を遂げた手術の歴史などを紹介する『すばらしい医学』が発刊された。池谷裕二氏(東京大学薬学部教授、脳研究者)「気づけば読みふけってしまった。“よく知っていたはずの自分の体について実は何も知らなかった”という番狂わせに快感神経が刺激されまくるから」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。
● すべての薬は…
 創薬の歴史を振り返ると、実は毒から生まれた薬の例は枚挙にいとまがない。
 むしろ、すべての薬は毒でもある。人間に都合が良い時は薬、都合が悪い時は毒と勝手に呼び分けているだけだ。
 中でも印象的なのは、人間が殺戮を目的につくった猛毒から薬が生まれた例だ。それが、抗がん剤である。
● 連合国軍の大失態
 第二次世界大戦中の一九四三年十二月、イタリアのバーリにある連合国軍の重要な港に、ドイツ軍が大規模な空襲を行った。
 この攻撃は「バーリ空襲」と呼ばれ、連合国軍にとっては恐るべき大失態となった。その理由が、マスタードガスの流出だ。
 被害を受けたアメリカの輸送船の一つ、ジョン・ハーヴェイ号は、二〇〇〇発ものマスタードガス爆弾を極秘裏に積んでいた。ドイツ軍が化学兵器を使用した際の報復が目的であったが、これが大惨事を招いた。
 ドイツ軍の爆撃によって、この七〇トンにも及ぶ猛毒が海水に流出。一部は蒸発して毒ガスとなり、港町に拡散したのである。
 マスタードガスは、これまでもっとも多くの人命を奪ってきた毒ガスの一つだ。マスタードやニンニクに似た独特の臭いが名前の由来である。
 事故当時、大勢の負傷者が医療機関に搬送されたが、マスタードガスの存在は秘匿されていたため、誰もが中毒に気づけなかった。結果としてマスタードガスの被害を受けた八〇人以上の兵士が死亡し、数ヵ月のうちに民間人も含め一〇〇〇人以上が亡くなった(1)。
 マスタードガスは「びらん剤」に分類され、皮膚のびらん(ただれ)を引き起こす化学兵器だ。
 だが、この大規模な被害によって明らかになったのは、皮膚症状にとどまらないマスタードガスの真の恐ろしさだった。
 マスタードガスの被害を受けた患者の血液には、奇妙な変化が起きていた。白血球の数が激減していたのだ。
 恐ろしいことに、この猛毒は骨髄を狙い撃ちし、人体の造血機能を破壊する作用があった。
 白血球や赤血球、血小板などの血球は骨髄でつくられる。この機能が失われれば、血液中に新たな血球を供給できない。
 特に白血球の寿命は、種類によって異なるもののおおむね数時間から数日と短い(赤血球の寿命は約百二十日、血小板は約十日)。
 血球の工場が攻撃されれば、あっという間に血液中の白血球は消失し、免疫機能は壊滅、重篤感染症で死の危機に瀕することになる。
● イェール大学の研究者の発見
 だが、イェール大学の薬理学者アルフレッド・ギルマンとルイス・サンフォード・グッドマンは、この特徴に関心を持った。応用すれば、がん治療に使えるのではないかと考えたからだ。
 白血病やリンパ腫などの血液のがんは、血球ががん化して無秩序に増殖する病気だ。血球のみを選択的に攻撃することができるなら、がん化した血球を破壊できるかもしれない。
 マスタードガスからつくられた化合物、ナイトロジェンマスタードは、一九四〇年代以後、リンパ腫の治療に用いられ、予想通り劇的な効果を発揮した。
 「抗がん剤」そのものが存在すらしなかった当時、これはまさに奇跡というほかなかった。
 のちに、ナイトロジェンマスタードを改良したエンドキサン(シクロフォスファミド)やアルケラン(メルファラン)などさまざまな薬が抗がん剤として開発され、現在に至っている。
 皮肉にも、戦時中に使用された毒ガスが抗がん剤の歴史の第一歩だったのだ。
 【参考文献】
(1)『がん 4000年の歴史(上・下)』(シッダールタ・ムカジー著、ハヤカワ文庫、二〇一六)
 (本原稿は、山本健人著『すばらしい医学』を抜粋、編集したものです)
 山本健人(やまもと・たけひと) 2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は1000万超のページビューを記録。時事メディカル、ダイヤモンド・オンラインなどのウェブメディアで連載。Twitter(外科医けいゆう)アカウント、フォロワー約10万人。著書に18万部のベストセラー『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)、『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎)、『もったいない患者対応』(じほう)、新刊に『すばらしい医学』(ダイヤモンド社)ほか多数。
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 ナイトロジェンマスタード(Nitrogen mustard、窒素マスタードとも呼ぶ) は化学兵器のびらん剤の一つ。化合物としてはアミン類であり、第一次世界大戦で使われたマスタードガスの硫黄原子を窒素に置き換えた分子構造である。
 また、細胞毒性に着目して使用された最初の抗がん剤であり、白血病悪性リンパ腫の治療薬として使われていた。クロロエチル基がDNAをアルキル化することによって核酸の合成を妨げ抗腫瘍効果を現す。
 歴史
 マスタードガスは、
 硫黄由来の臭気を持つ。
 水に溶けにくく、油に溶けやすい
 毒性が強い
 以上の3点から、化学兵器としては取り扱いにくい物であった。そのため、第一次世界大戦後、各国でマスタードガスの改良が試みられ、アメリカとドイツでほぼ同時に完成。これがHN-2である(後記)。合成法に関しては1935年、チェコスロバキアの科学者ウラジミール・プレローグとヘンドリック・ステフェンにより報告された。
 HN-2は常温で液体で、水に溶けないが、塩酸と反応して水溶性の塩(沸点109~111℃)となる。マスタードガスほどではないが毒性は強く、ラットへの静脈注射によるLD50は1.1mg/kg。暴露経路は、皮膚や呼吸器、眼球などからの吸入であるが、遅効性であり、暴露後数時間を経てから皮膚のただれや水疱の発生等の症状が生じる。第二次世界大戦中には実戦使用されていないが、ドイツ軍はHN-3を2,000トン製造していたとされる。
 1943年12月2日、イタリアの連合国側の重要補給基地であるバーリ港にドイツ軍は爆撃を仕掛け、輸送船・タンカーを始めとする艦船16隻が沈没した。その中のアメリカ海軍リバティー型輸送船「ジョン・E・ハーヴェイ号」には大量のマスタードガスが積まれており、漏れたマスタードガスがタンカーから出た油に混じったため、救助された連合軍兵士たちは大量に被曝。
 翌朝、兵士たちは目や皮膚を侵され、重篤な患者は血圧の低下、末梢血管の血流の急激な減少などを経て白血球値が大幅に減少。結果、被害を受けた617人中83名が死亡したが、一日あたりの死者の数を見ると、被害後2日目、3日目に最初のピークを迎え(イペリットによる直接の死者)、8日、9日後に再度ピーク(白血球の大幅な減少による感染症)を迎えた。
 アメリカ陸軍はこの事件および化学兵器研究チームの報告から、マスタードガスおよびナイトロジェンマスタードX線同様に突然変異を引き起こす可能性が高いと考え、当時はX線照射療法しかなかった悪性リンパ腫の治療が試みられた。マウスで成果が確かめられた後、1946年の8月には末期癌患者に対して新たに開発されたHN-3の塩酸塩が使用された。10日間の注射で、腫瘍は二日目から縮小し始めて二週間で消滅。副作用で障害を受けた骨髄も数週間後には回復したが、結局再発死亡した。
 1949年、東京帝国大学医学部薬学科教授・石館守三と東北帝国大学医学部病理学教授・吉田富三は、ナイトロジェンマスタードの毒性を弱めるためにナイトロジェンマスタードの塩酸塩を炭酸水素ナトリウム水溶液に溶かし、過酸化水素で酸化することによりナイトロジェンマスタードN-オキシド(商品名:ナイトロミン)を合成したが、その毒性はナイトロジェンマスタードの半分以下であった。ナイトロミンの塩酸塩は、日本では吉富製薬(当時。現在の田辺三菱製薬)により抗悪性腫瘍剤として販売された。(2014年現在ナイトロミンは日本では販売されていない。)
 その後、ドイツで同じくナイトロジェンマスタード誘導体のシクロホスファミドが開発され、ナイトロミンは市場を奪われることになった。さらに、ナイトロジェンマスタード誘導体としてクロラムブシル、メルファラン、ウラシルマスタードなどが開発されて現在に至る。
このように、ナイトロジェンマスタードはアルキル化剤の第一号として抗がん剤の歴史の一ページを開いたのである。
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🔯17」─3・C─日本人が知っている「世界古代四大文明」は欧米では通じない!。~No.55 

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 2023年12月7日7:02 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本人が知っている「世界四大文明」は欧米では通じない!…「日本特有の教科書用語」が生まれた「驚きの理由」
 インカのマチュピチュ遺跡(撮影:青山和夫)
 日本の教科書に書かれた「世界四大文明」という言葉。じつは「学説」ではないことはあまり知られていない。
 【画像】コロンブスが引き起こした「人類史上稀に見る悲劇」
 「四大文明」という言葉が長年一人歩きし、「世界に最初に生まれた4つの文明」というイメージが広く定着している。だが、じつはほかにも文明は生まれていた。
 日本に流布している「世界四大文明」史観を脱構築していこう。
 【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
 「四大文明」と言ったのは、口調がいいから
 図メソアメリカ文明アンデス文明
 日本の読者にとっては、「世界四大文明」(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)は耳慣れている言葉であろうが、じつは学説ではない。考古学者の江上波夫が普及させた教科書用語である。
 それは、江上が関わった山川出版社の高校教科書『再訂世界史』に1952年に登場した特異な文明観であり、欧米には存在しない。なお「四大文明」という呼称は、20世紀初頭には日本と中国に存在していた。
 ユーラシア史家の杉山正明によれば、江上はマヤやアンデスなど世界には他に文明が栄えたことを認めていた。一方で「四大文明」と言ったのは、「口調がいいからで、本当はいろいろあるさ」と杉山に大笑いしたという。
 ところが「四大文明」は一人歩きして長年にわたってマスメディアや教科書に取り上げられ、旧大陸(ユーラシア大陸とアフリカ大陸)中心的な世界史観を形成してきた。
 本書で取り扱う古代アメリカ文明は、メソアメリカ文明アンデス文明からなり、先スペイン期(16世紀以前)に盛衰したさまざまな社会の総称である(図)。
 古代アメリカ文明はAncient American Civilizationsの訳であり、ここでいう「古代」は日本列島の縄文時代から室町時代に相当する。日本史の古代とは異なるので、気をつけていただきたい。
 メソアメリカとアンデスは、旧大陸社会と交流することなく、アメリカ大陸でそれぞれ独自に興隆した一次文明であった。一次文明とは、メソポタミア文明中国文明と同様に、もともといかなる文明もないところから独自に生まれたオリジナルな文明を指す。
 じつは一次文明は世界に4つしか誕生しなかった。つまり、メソアメリカ文明アンデス文明は世界で4つだけの「世界四大一次文明」の二つを構成した。
 メソアメリカとアンデスという一次文明の研究は、旧大陸や西洋文明と接触後の社会の研究だけからは得られない新たな文明史観や視点を提供して、西洋中心史観や旧大陸のいわゆる「四大文明」中心的な世界史の脱構築につながる。
 アメリカ大陸の二大一次文明に関する研究は、日本でもかなりの蓄積がある。しかし残念ながら、今なお学術研究と一般社会のもつ知識の隔たりは大きい。
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 ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか? 
 人類史の常識に再考を迫る最新知見がおもしろい! 
 「多くの人が生贄になった!?」「大河の流域でないと文明は生まれない!?」「 無文字社会リテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
 ――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える。青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です! 
 青山 和夫(茨城大学教授)
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 現代日本歴史教育は世界では通用しない。
 中世キリスト教会・イエズス会修道士会群と白人キリスト教商人は、アフリカ人と日本人を奴隷として売って大金を稼いでいた。
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 12月7日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「コロンブスじゃなかった!…アメリカ大陸の「真の発見者」と日本人の「意外な関係」
 青山 和夫茨城大学教授
 「アメリカ大陸を発見したのはコロンブス」と一般的に考えられていますが、じつは違います。ヨーロッパ中心の歴史観がそう解釈してきたにすぎません。
 アメリカ大陸の「真の発見者」は、今から1万5000年ほど前の氷河期にアジア大陸からやってきた新人ホモ・サピエンスでした。
 【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
 アジア系狩猟採集民の末裔が築いた「二大文明」
 コロンブスは、1492年にアメリカ大陸を発見しなかった。アメリカ大陸を発見したのは、それよりも500年ほど前にカナダ北東部に到着したバイキングのレイフ・エリクソン一行でもない。どちらもヨーロッパ中心的な偏った歴史観である。
アメリカ大陸の真の発見者は、人類進化のうえでは最も新しいタイプである新人ホモ・サピエンスのうちアジア系の狩猟採集民であった。彼らは、今から1万5000年ほど前の氷河期に、アジア大陸から無人アメリカ大陸にやってきた。それは、700万年の長い人類史において「ごく最近の出来事」であった。
 アフリカ大陸に起源を持つ猿人、原人、旧人アメリカ大陸に到達することはなかった。アメリカ大陸は、世界五大陸のうち新人が最後に発見した大陸である。つまり、ヨーロッパ人が「発見」したから「新大陸」なのではない。「新大陸」という呼称は、先住民となる新人が最後に発見した大陸という人類史的な意味において適切といえよう。
 コロンブス以前のアメリカ大陸には、多様な先住民が暮らし、1800以上の言語が話されていた。しかしながら芸術や科学において高度な水準を達成した社会、すなわち文明が出現したのは、マヤやアステカが栄えたメキシコと中央アメリカ北部のメソアメリカとナスカやインカで知られる南米のアンデスという二地域だけであった。
 私たち日本人と同じアジア系の狩猟採集民の末裔である先住民が、メソアメリカとアンデスという、古代アメリカの二大文明を築いた。
 なおメソアメリカの「メソ」は「中間、中央」を意味し、メソアメリカはアメリカ大陸の中央部を指す。現在のメキシコと中央アメリカのグアテマラホンジュラスベリーズエルサルバドルが含まれる。
 世界の大部分の文明社会は、一次文明との交流のなかでその刺激を受けて成立した二次文明やその周辺で興った文明である。例えば、メソポタミア文明との交流によって二次文明のエジプト文明インダス文明ギリシア文明やローマ帝国が成立した。一方で、中国文明との交流のなかで二次文明である古代日本の社会が発展した。
 旧大陸の諸文明では地域間で物品や情報の交流があり、相互に影響しながら展開した。人類史における古代アメリカの二大一次文明の特異性は明らかといえよう。
 メソアメリカ文明アンデス文明は、長い年月をかけて個別に発展を遂げたという点において人類の文明の起源と形成を知るうえでたいへん重要な位置を占めるのである。
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 ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
 人類史の常識に再考を迫る最新知見がおもしろい!
 「多くの人が生贄になった!? 」「大河の流域でないと文明は生まれない!? 」「 無文字社会リテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です!
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 12月7日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「先住民虐殺」、「感染症の持ち込み」…コロンブスアメリカ大陸で引き起こした「人類史上稀にみる悲劇」の「本当の中身」
 青山 和夫茨城大学教授
 コロンブスアメリカ大陸への上陸は、侵略と先住民虐殺・虐待の先駆となり、さまざまな悲劇の始まりとなりました。
 「コロンブスの交換」と言われるきわめて不均衡かつ不平等な交流はいったいどんなものだったのか。そして、世界史をどのように変えていったのか。
 【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
 世界の生態系までも大きく変えた
 さて、コロンブスのカッコつきの「発見」は、世界史のきわめて大きな転換点であった。
 コロンブスは、アメリカ大陸侵略と先住民虐殺・虐待の先駆となった。その後ヨーロッパ列強は、アメリカ大陸だけでなく、アフリカ、アジアやオセアニアの侵略・植民地化を推し進め、経済的搾取、政治的支配や深刻な文化変容をもたらした。
 ヨーロッパ人の大航海と植民地支配によって、旧大陸アメリカ大陸の間で人間(植民者や奴隷など)、食物、動植物、物質文化や思想だけでなく、病原体のウイルスや細菌などがグローバルに行き交うようになった。
 それはヨーロッパ人の都合を優先した、きわめて不均衡かつ不平等な交流であった。教科書には「コロンブスの交換」と紹介されるが、決して平等な「交換」ではなかった。その結果、世界の社会、文化、農業、生態系が大きく変わった。
 コロンブスのいわゆる「発見」は、先住民には人類史上稀にみる悲劇の始まりを意味した。先住民の都市や町は、スペイン人によって破壊され、富や土地が略奪された。
 スペイン人が家畜を連れて植民すると、新たな感染症天然痘、はしか、水疱瘡チフスジフテリア、ペスト、おたふく風邪、百日咳、マラリア、新種のインフルエンザなど)が持ち込まれた。
 感染症は免疫力のない先住民の間で大流行した。数多くの先住民が戦死ではなく、「目に見えない敵」によって病死した。
 コロンブス(GettyImages)
 さらにスペイン人による大量虐殺、過酷な強制労働や虐待などによって先住民人口は激減し、17世紀には10分の1以下になった。
 その後、人口は回復していったが、先住民は植民地社会の最底辺に置かれ、服従と搾取を強いられつづけた。
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 ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
 人類史の常識に再考を迫る最新知見がおもしろい!
 「多くの人が生贄になった!? 」「大河の流域でないと文明は生まれない!? 」「 無文字社会リテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です!
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 12月7日7:02 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「数千年をかけて「100種類以上の野生植物を栽培化」…「古代アメリカ文明」がもたらした「食文化革命」
 青山 和夫茨城大学教授
 古代アメリカの栽培植物は、コロンブスアメリカ大陸を「発見」したことで、世界の食文化に革命を起こしました。
 現代に生きる私たちの食生活も、古代アメリカ文明の大きな恩恵を受けています。
 【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明  マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
 数千年にわたり100種類以上の野生植物を栽培化
 古代アメリカ文明は、栽培植物という生活基盤から世界の歴史を変えたという点で、今日の私たちの社会や世界観にまで多大な影響を与えている。
 私たちは、古代アメリカ文明の大きな恩恵を受けて生活してきた。コロンブスによるアメリカ大陸のカッコつきの「発見」が、世界の食文化革命を引き起こしたからである。
アメリカ大陸の先住民は、前8000年頃から100種類以上の野生植物を栽培化・改良した。これは数千年にわたる先住民の努力の賜物であり、世界各地の社会の発展に大きく貢献した。アメリカ大陸原産の栽培植物は、世界の栽培種のじつに6割を占める。
 ヨーロッパ人が略奪し尽くした先住民の「贈り物」が、結果的に旧大陸に住む大勢の人の命を救った。トウモロコシは、メソアメリカの人びとの主食でありつづけている。トウモロコシやアンデス高地原産のジャガイモは、旧大陸原産の小麦やイネを栽培できない、痩せた土地でも高い収穫量をもたらした。南米で栽培化されたキャッサバ(マニオク)は熱帯アフリカの主要産物になっており、何度かブームになったタピオカの原料でもある。
 ジャガイモは寒冷な気候にも耐え、土中に育つので鳥の害もなく、小麦より何倍も収穫量が多い。ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB6やナイアシンといったビタミンやカリウムなどのミネラル類に富み、栄養価も高い。飢饉と戦争が頻発していたヨーロッパの人びとを救い、人口増加をもたらしたのがジャガイモであり、明治時代の北海道開拓にも大きく貢献した。ジャガイモは、トウモロコシ、小麦、米に次いで栽培面積が世界第四位を占める。
 イタリア料理の必需品トマトやズッキーニ、インド、タイ、韓国や四川料理に欠かせないトウガラシ、さらにカボチャ、サツマイモやバニラも先住民が栽培化した。果物類ではパイナップル、パパイア、カカオやアボカド、豆類ではインゲンマメや落花生もそうである。
 アメリカ大陸原産の栽培植物なくして、私たちの豊かな食生活は成り立たない。
 アメリカ大陸原産のタバコやゴムは、世界的な商品作物になった。秋の代名詞コスモス、クリスマスに人気のポインセチア、ダリア、サルビアマリーゴールドなど、アメリカ大陸原産の花や観葉植物も多い。
 このように古代アメリカ文明は、現代の私たちの日々の暮らしと深く関わっているのである。
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 ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
 人類史の常識に再考を迫る最新知見がおもしろい!
 「多くの人が生贄になった!? 」「大河の流域でないと文明は生まれない!? 」「 無文字社会リテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
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🦟5」─2─中国共産党最高指導者の裏の顔は世界的な麻薬王であった。~No.12No.13 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 毛沢東中国共産党は、日本軍・関東軍汪兆銘の南京国民政権との間で阿片密約を交わして巨額の戦費を稼ぎ武器弾薬を購入していた。
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 2023年12月6日 MicrosoftStartニュース アサ芸プラス「習近平「裏の顔は麻薬王」だった!「効き目はヘロインの50倍」でアメリカに仕掛けた「新アヘン戦争
 習近平「裏の顔は麻薬王」だった!「効き目はヘロインの50倍」でアメリカに仕掛けた「新アヘン戦争
 © アサ芸プラス
 アメリカで今、「フェンタニル」なる合成麻薬の蔓延が深刻化している。
 フェンタニルオピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種で、効き目はヘロインの50倍、モルヒネの100倍とされている。また、安価で中毒性が高く、わずか2ミリグラムで致死量に達してしまう点も、フェンタニルが持つ著しい特徴だ。
 CDC(アメリ疾病対策センター)の調べによれば、フェンタニルは近年、アメリカの若者を中心に乱用が拡大し、過剰摂取による2020年の死亡者数(14歳~18歳)は2015年の約17倍へと急増。翌2021年には全米、全世代での死亡者数が7万人を超えたという。
そんな中、米ホワイトハウス内では、中国共産党指導部に君臨する習近平国家主席への批判の声が、猛然と噴出し始めている。いったいどういうことなのか。世界の麻薬取引に詳しい国際諜報アナリストが指摘する。
 「フェンタニルアメリカ国内のスラング(俗語)で『チャイナガール』と呼ばれている。中国国内にある化学メーカーが、フェンタニルの原料を製造しているからです。フェンタニルアメリカ内への主な流入ルートは2つあり、ひとつはメキシコの麻薬カルテルが中国から輸入した原料を錠剤に加工して、アメリカに密輸するルート。もうひとつは中国からアメリカに輸入された原料が錠剤に加工されて密売される、ダイレクトルートです」
 そこで思い出されるのが、1840年清朝(当時の中国王朝)とイギリスの間で勃発した「アヘン戦争」だ。当時、清朝はイギリスの商社を通じて流入するアヘンの中毒蔓延によって、弱体化の道を余儀なくされた。国際諜報アナリストが続ける。
 「中国の化学メーカー発とされる今回のフェンタニル汚染は、いわば中国がアメリカに仕掛けた『新アヘン戦争』です。すでにアメリカの議会筋からは『アメリカは中国とのアヘン戦争に敗北しつつある』との悲痛な声が上がっている。化学メーカーによる原料の輸出を黙認している習近平が、新アヘン戦争の首謀者であることは言うまでもありません」
 アメリカのバイデン大統領は二度にわたって、習近平国家主席を「独裁者」と公言、非難してきた。その大統領の脳裏に、フェンタニル汚染でアメリカ社会を弱体化しようとする、習近平の「麻薬王」としてのウラの顔がチラついていたことは、想像に難くない。
 (石森巌)
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☭71」─1─ロシアは「広島原爆の視覚的資料」をアメリカ批判に政治利用しようとしている。~No.258No.259 

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 日本には、ユネスコ「世界の記憶遺産」候補に〝ソ連による約60万人のシベリア抑留〟と〝ロシア人共産主義者による数十万人の日本人避難民(主に女性や子供)虐殺〟を申請する権利がある。
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 2023年12月5日 YAHOO!JAPANニュース 集英社オンライン「ロシアが“アメリカの残虐性”アピールとして政治利用の懸念も。「広島原爆の視覚的資料」がユネスコ「世界の記憶」候補に…各国の思惑は
 岸田総理は「登録するにふさわしい資料」だと評価
 広島の原爆を記録した写真と映像について、政府がユネスコの「世界の記憶」への推薦を決めた。推薦されるのは、1945年末までに広島への原爆投下について記録した写真1532点と映像2点。岸田総理は「登録するにふさわしい資料」だと評価したが、これらがアメリカの“交戦国”からプロパガンダに利用される懸念もある。
 【画像】ユネスコの「世界の記憶」への推薦された、1945年末までに広島への原爆投下について記録した写真1532点と映像2点
 政治闘争の場としてのユネスコ
 文科省ユネスコに対し、「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」とともに、「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」を「世界の記憶」として正式に推薦すると決定したのは11月28日のこと。
 このニュースに日本国内では歓迎ムードが広がる。ただ、「世界の記憶」は国際政治のダイナミズムに直結する素材ともなる。場合によってはユネスコが政治闘争の場となることもありうるだけに、一般の報道とは異なる観点からの解説を加えておきたい。
 ユネスコは後世に残すべき価値を承継する事業として、3本の柱を持っている。日本人に馴染みが深いのは世界遺産の制度だろう。これは文化遺産と自然遺産、そしてまれに両方の性質を持った複合遺産からなりたっており、基本的に「不動産(場所や構造物)」が登録の対象となる。
 2本目の柱として無形文化遺産の制度があり、これはまさに物体性のない、芸能や生活習慣、生産知識などが含まれ、日本からは能楽や和食をはじめ、2023年11月現在、22件が登録されている。
 そして、最後の柱が今回のテーマである「世界の記憶」であり、この3つを合わせてしばしば「ユネスコの3大遺産事業」と呼ばれる。
 さて、ユネスコが文化を扱うからといって、関係各国が仲よく足並みをそろえているとはかぎらない。本部がパリにあることからもわかるように、ヨーロッパのプレゼンス維持のための外交手段としてユネスコが機能してきたという側面は否定できない。
 20世紀後半は米ソ冷戦の中で、そして近年は米中対立に埋没しないよう、フランスを始めとするヨーロッパ諸国は戦略的に文化政策を活用してきた。それゆえ、第二次世界大戦で傷ついたヨーロッパだが、大国間の対立の中でも文化面での存在感はいまだに大きなものがある。
 過去には「南京虐殺」に関する資料が申請、登録も
 世界文化遺産の推薦・登録にあたっては近年、わが国はいくつかの摩擦を経験している。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の登録では軍艦島をはじめとする鉱業施設で、「朝鮮人の“強制労働”があったことへの言及がない」とのクレームが韓国政府からついた。
 現在進行中の佐渡金山の世界遺産登録にしても、やはり韓国から同種の主張がなされ、名目上は書類不備を理由に登録手続きはストップしたままだ。
 「世界の記憶」では中国から「南京虐殺」に関する資料が申請、登録されてしまったことで、日本国内から激しい反発が生まれた。逆に日本が申請した「舞鶴への生還 1945-1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録」は、ロシアから日本側の一方的な非難であるとの批判が起き、当時の安倍政権が対応に苦慮するということもあった。
 わが国以外にもこうした国際的な対立はあまたあり、現在では当事国の合意がなければ、基本的に登録されない仕組みになっている。
 アメリカ批判の材料となる?
 今回の「広島原爆の視覚的資料」の推薦にあたっても、国際政治的な観点から懸念がないわけではない。
 広島の原爆資料館(正式名称は「広島平和記念資料館」)に行ってみればわかるが、展示は「核兵器による惨禍」という抽象的な理解にとどまらず、写真をはじめとするリアルな記録も数多い。そうしたリアルな記録には「アメリカのやった酷いこと」という性質が強く現れている。今回の推薦、そして先にある登録の対象はまさに、「アメリカによる市民の無差別大量殺戮」の記録といえるのだ。
 そのため登録にあたっては当然、アメリカの退役軍人らの反発も予想されるわけで、選挙を控えるバイデン政権としては政治的に難しいハンドリングが必要となる。
 ただ、外務省がアメリカとの事前の調整なしに推薦を行うことはまず考えられないため、この点についてはおそらく、両国間で話がついていることが予想される。
 岸田総理も広島出身であり、今年のサミットでも平和を強調していたことから今回の推薦には思うところがあっただろうし、長く外務大臣を努めた経験からも登録に当たっての外交交渉の難しさについては織り込みずみだったはずだ。
 では、アメリカの理解を得て無事に登録されてしまえばそれで一件落着かといえば、そうではない。もうひとつ、別の懸念が生まれてくる。
 それは、直接・間接を含め、アメリカとの“交戦国”が今回の「広島原爆の視覚的資料」を政治的アピールとして援用するという懸念である。そのときに日本としてどのような態度をとればよいのか、かなり難しい問題といえる。
 たとえば、イスラエルウクライナの背後に見えるアメリカの影に対して、「相手にはこんなひどいことをする国がバックについている」という主張の根拠に使われたらどうだろう? 
 同盟国である日本の原爆資料がアメリカを国際的に難しい立場に追い込みかねないのだ。とくにウクライナと対立するロシアが「ゼレンスキーは無差別大量殺戮を行った国の支援を受けている」というプロパガンダに今回の資料を利用するようなことになれば、平和を願う広島市民の本来の登録意図とはかけ離れた効果を生みかねない。
 実際、広島市ウクライナ危機以降、8月6日の平和記念式典にロシアを招待していないにもかかわらず、ロシア大使は広島を訪れてアメリカの残虐性や非道性をアピールするスピーチを行っている。
 原爆の被害にまつわる資料がユネスコによってオーソライズされる状況になれば、ロシアはアメリカを批判するための道具として「ヒロシマ」をいちだんと利用しやすくなってしまう。
 「記憶物」が登録される意義
 こうしたことは十分に想定できるため、広島市や各種の平和団体はかかる事態に際してどういったコメントを出すのか、いまから準備しておく責任があるだろう。
 ただ、それでもなお、「広島原爆の視覚的資料」の「世界の記憶」への推薦は大きな意味を持っている。
 これまで広島における原爆という悲劇の記憶は原爆ドームというひとつの「構造物」を中心に承継されてきた。しかし、今回の推薦で実際の被爆者の写真が多く含まれた「記憶物」が登録に向かう可能性が生まれている。登録によって国際社会が摩擦に向かうのでなく、人類の悲劇の記憶として「ヒロシマ」を覚えておこうという方向に進むことを期待したい。
 文/井出明 写真/shutterstock
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 12月5日 YAHOO!JAPANニュース 長崎国際テレビ「「加害歴史は維持を」長崎原爆資料館展示更新 市の基本計画素案に市民団体申し入れ《長崎》
 長崎原爆資料館の展示更新について、5日、長崎市が示した基本計画の素案に対し、市民団体が申し入れを行いました。
 日本の加害の歴史を縮小・改変しようとしていると指摘し、改善を求めました。
  川野 浩一 共同代表
 「歴史をきちんと見つめた展示を 避けるために意図的にあいまいにしているのではないかとの強い疑念や不安を生じさせる」
 申し入れを行ったのは市民団体「世界に伝わる原爆展示を求める長崎市民の会」です。
 原爆資料館は、2025年に展示更新を予定していて、長崎市は、先月30日、基本計画の素案を提示。
 素案では「歴史をきちんと見つめることが 未来につながるという姿勢に基づいて検討する」としていますが、申し入れでは、「意図的にあいまいにしている」「検討で済ませようとしている」などと指摘しました。
 また、「南京大虐殺」を含めた日本の戦争加害の歴史を伝える「日中戦争と太平洋戦争」のコーナーの名称を「原爆投下に至る歴史」と変更することについても問題視し、現在の名称を維持するよう求めました。
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🔯11」─4─DNAが語る数万年前に生きたヨーロッパ最初の移民たち。~No.38No.39 

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 ヨーロッパ最初の移民と日本土人縄文人)は似ている。
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 2023年12月4日 MicrosoftStartニュース StarsInsider「DNAが語るヨーロッパ最初の移民たち
 DNAが語るヨーロッパ最初の移民たち
 混血
 DNA シークエンシング
 DNA検査
 遺伝子情報
 DNAが語るヨーロッパ最初の移民たち
 ©Shutterstock
 私たちの古代の祖先について知る能力は、かつてないほど向上している。技術の進歩のおかげで、考古学者と科学者たちは、これまで以上に正確に遺骨の年代を特定できるようになった。「古遺伝学」では、数万年前に生きた人々の全ゲノムの塩基配列を研究することが可能になった。その結果、爆発的に新しい情報が得られるようになり、新たな発見が発掘されることで、過去についての理解が大きく変わることが期待されている。 
 例えば、ヨーロッパ人は、アフリカ、中東(トルコ)、ステップ(ロシア南部/ウクライナ東部)の3つの異なる地域から移住してきた人々の子孫であることをご存知だろうか?
 興味がありますか?ヨーロッパの最初の移民たちの起源についてもっと知りたい方は、こちらをご覧ください。
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🔯45」─1─なぜ宗教を信じる人たちは「攻撃」を始めるのか。無神論者が危険視されるわけ。~No.160 

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 日本がイスラム教、ユダヤ教キリスト教など多くの世界宗教から危険視・敵視され攻撃・宗教テロを受けるのには、正当な理由がある。
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 2023年12月2日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「なぜ宗教を信じる人たちは「攻撃」を始めるのか…人類が「神」というやっかいな概念を持ち出す科学的な理由
 なぜヒトは「神」を信じるのか。進化生物学者長谷川眞理子さんは「ヒトが持つ脳の働きが宗教を生み出した。宗教的信条を同じくする人々の結束は、人類が文明を発展させる上で重要な要素だった」という。ロビン・ダンバー『宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』(白揚社)より、巻末に収録された長谷川さんの解説「ヒトの進化と宗教の起源」を紹介する――。(第2回/全2回)
 【写真】進化生物学者リチャード・ドーキンス氏。著書に『利己的な遺伝子』『神は妄想である』などがある
■日本人の不思議な宗教観
 あなたは何かの宗教を信じていますか? この質問は、日本人にとっては、結構やっかいなものだろう。仏教だと言う人は多いだろうが、では、仏教を信じているとはどういう意味か、とさらに聞かれると、あまり明確には答えられない。日本中にあまた仏教の寺はあるものの、人々の毎日の生活に深く根ざしているわけでもないらしく、葬式仏教などと半ば軽蔑して呼ばれることさえある。
 日本という文化は、強烈に一つの宗教でまとまっているわけではなく、宗教的信念が政治的信念と結び付いて、社会の分断を引き起こしている、ということもないようだ。この状況は、日本以外の世界ではかなり異なる。米国は顕著にそうだが、欧州も、アラブ世界も、アフリカも、アジアも、だいたいはそうなのだ。だから、宗教とは何か、なぜこんなものが出てくるのか、についての考察が必要なのである。
■ヒトが「友人関係」を築ける上限は150人
 著者のロビン・ダンバーは、もともとサルの仲間の社会行動を研究する霊長類学者であったのだが、その後、ヒトという生物(つまり私たち自身)が持っているヒトに固有の性質、すなわちヒトの本性は何であり、なぜこのように進化したのかを研究する、進化心理学者に脱皮した。「脱皮した」という言い方をしたのは、サルの仲間の研究をしている霊長類学者のすべてが、ヒトに対するこのような問題意識を持つに至るわけではないし、ましてや、その解明に大きな貢献をできるような問題設定を思いつくこともないからだ。ダンバーはそれを果たせたと思う。
 ダンバーは、霊長類が、哺乳類の中でも特別に社会性を発達させた動物だという認識から出発し、では、ヒトという生物において、この社会性はどのように進化してきたのかを研究してきた。その成果の一つが、ヒトが真に親密性を感じて暮らすことができる集団のサイズには上限があり、それはおよそ150人である、という結果である。これは、世の中で「ダンバー数」という名前で知られるようになった。
■人類史における「150人」という数字の意味
 ダンバーは、もともと、脳の新皮質の大きさから、その動物が処理出来る社会情報の限界を計算し、ヒトの場合は150人だという数字を導き出した。それは、仮説に基づく予測であったが、現実にさまざまな人間集団の営みを調べると、確かに150人という数字には意味があるようなのだ。人類の進化史の90%以上において、人類は狩猟採集生活をしていた。この暮らし方では、15人くらいまでの小さなバンドで日常的に生活し、バンドが寄り集まって部族を形成してきた。その最大サイズは、およそ150人なのである。
 もちろん、現代の私たちは、150人を優に超える人数の人々を知り、それらの人々と交流し、自治体や国家の規模も何百万を超えるものさえある。それでも、私たちが、相手の顔を思い浮かべ、その人と自分との関係やその人と一緒にした経験を思い浮かべ、その人の性格やら友達関係やらを思い浮かべるということを、さほどの認知的負荷を感じずにできるのは、150人ぐらいが限度ではないだろうか? あとは、単に知っているだけ、名刺交換しただけか。
■ヒトが持つ脳の働きが宗教を生み出した
 さて、そこで宗教である。150人というダンバー数の考察と宗教の進化心理学は、どんな関係があるのか? 人類は、およそ1万年前に農耕・牧畜を始め、定住生活を始めた。そこから都市が形成され、文明が生まれた。つまり、150人以上の数の人々が集まって暮らすようになったのだ。
 脳の自然な認識の限界を超えた数である。それを可能にしたものの一つが、宗教的信条を同じくする人々の結束であったのではないか。身近にすぐ思い浮かべて、経験を共有したことがあるような人々のサークルを超えて、「同じ私たち」という感覚を想起させ、一緒に共同作業にいそしむようにさせる、それを可能にした重要な要素が宗教だったのではないか。
 では、なぜ宗教というものが出てきたのか、なぜそれは広まるのか? それは、こんな大きな文明世界が出現する前から、ヒトが持っていた脳の働きに起因する。ヒトという生物は、自己と他者を認識し、自分の心が自分の状態を作り出していることを認識するとともに、他者も他者自身の心を持っており、それによって行動を決めることを知っている。そして、自分と他者とを脳の中でシミュレーションすることによって、自分に起こったことではなく、他者に起こったことを、まるで自分に起こったことであるかのように、他者に共感することができる。
■最新研究が明らかにした「トランス状態」の役割
 また、ヒトは、このような想像とシミュレーションを働かせることにより、あまり原因がよくわからないことが起こった場合に、何か、自分たちとは異なる能力を持った存在がいて、それらの存在がそんなことを起こしているのではないか、と想像することができる。そして、それを他者に伝え、他者もそれに同意することができる。ヒトは、確かに、こんな高度な認知機能を有している。それが脳の中のどんな場所にあって、具体的に何をしているのか、現在では、そんなことも徐々に解明されているのだ。
 宗教の根源には、「現象を因果関係によって説明する」ということと、「何か、自分たち人間とは異なる能力のある何かが存在する」という考えとが結び付いている。現象を因果関係によって説明するのは、脳の前頭葉の働きだろうが、自分たちとは異なる能力のある何かが存在する、という感覚はどこから来るのだろう?
 それには、トランス状態というものが大きな役割を果たしている。踊り続ける、歌い続ける、ということをすると、脳内のエンドルフィンなどの伝達物質の分泌が変化し、「奇妙な精神状態」になるのだ。このメカニズムも、最近では、かなり明確に明らかにされている。みんなで歌って、みんなで同じ動作で踊ると、何か心に変化が起こるのは、みんなわかるでしょう? それを極限まで続けると、また次に段階になるのだ。
■なぜ人類の大部分が宗教を信仰しているのか
 ところで、私自身は、このような「みんなで同じ動作をする、同じ歌を歌う」などといった、同調的な行動が大嫌いな性格である。そんなことは絶対にしたくない。だから、中学でも高校でも、体育の時間にマスゲームのようなものをやらされるのが、心底嫌いだった。そして、私自身は、未知の現象に対する宗教的な説明は受け付けないし、占いも信じない。
 その意味では、有名な進化生物学者であるリチャード・ドーキンスが、「宗教というものはただの妄想であり、人類に対して、何らよいことなどもたらしていない」というキャンペーンを張っていることに対して共感を感じるし、おおいに応援したいと思うのである。
 では、ダンバーはどうか? 彼自身は、自分の宗教に対する態度を明確には表明しない。ドーキンスの言うように、宗教は悪いことばかりもたらしてきたのは事実かもしれないと認めてもいる。しかし、それにもかかわらず、人類の大部分が宗教を信仰しているのは事実であり、なぜこんなにも多くの人々が宗教を信じるのか、それを冷静に進化的に分析しよう、というのが彼の態度だ。それは私にも理解できるし、重要な分析だと思うので、本書は大変に興味深く拝読した。
■カルト集団の発生とダンバー数「150人」
 ヒトには、宗教を生じさせる脳内の基盤がある。しかし、それは、宗教を生み出すことが主眼で進化してきたのではない。物事の因果関係を推論すること、物事の原因として他者の心を想定すること、そのような解釈を、他者と共有すること、などが人類の進化史上、重要だったから進化した脳の基盤だ。それが集まると、宗教というものがおのずと創発してしまうのだろう。
 そして、一度そういうものが出現すると、今度は、それが新たな意味を持ち始める。それは大きな集団をまとめる力にもなり、思いを同じくしない「他者」を攻撃する理由にもなる。宗教的集団は、大きくなると「組織」になり、政治・経済と結び付いて、さらに話がややこしくなる。
 最後に、宗教的集団はなぜ内部に多数のカルト集団を発生させ、分裂と抗争を繰り返すことになるのか、に関する問題も考察されている。そこにも、150人というダンバー数が影を落としている。カリスマ的な教祖はなぜ発生するのか、そうしてできた新しいカルトのうち、長続きするものと消えていくものがあるのはなぜか、そのあたりの考察も秀逸である。まだまだ、研究する課題は多いと感じさせる。
無神論者の筆者が無性に祈りたくなった理由
 個人的な経験の話を一つ。2000年代の初め、私は、カンボジアを訪ねてポル・ポト政権時代に大量虐殺が行われた跡を見学したことがある。何百と積み上げられた犠牲者の頭蓋骨、捕虜たちが閉じこめられていた収容所とそのベッド、踏みしめる土の間に、今でも垣間見られる犠牲者の衣服の切れっ端。一日中、そんな光景を見たあと、私は、無性にどこかのお寺でお祈りしたくなった。
 日本の仏教とは違う、カンボジアのお寺である。それでも何でもいい。ともかくも、聖なる場所で、裸足でぺたんとすわって、どうしようもない現実の中で命を奪われた多くの人々の霊のために祈りたかった。この無神論者の権化のような私が、である。それは、頭で認識できる事態の悲惨さに対し、それを認識している私が何もできないという無力さの実感がなさせたものだった。こんな理不尽なことが起こったという事実の認識に対し、私自身の心の平安を得るには、何か、超自然の力に祈るしかすべがなかったのだ。
 おそらく、古代より、人々はこんな感情を抱いていたに違いないと、そのときに思った。世界の現状はあまりに理不尽で、なぜそうなったかが理解できたとしても、自分ではどうすることもできない。共感の感情を得てしまったヒトは、それでは心の平安を得られないのである。認識と納得、理解することと心の平安を保つこととの違いを実感した瞬間であった。
 宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、真に大きな考察を展開しようと試みる大作である。

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 ロビン・ダンバー(ろびん・だんばー)
 オックスフォード大学 名誉教授
 人類学者、進化心理学者。霊長類行動の世界的権威。イギリス霊長類学会会長、オックスフォード大学認知・進化人類学研究所所長を歴任後、現在、英国学士院、王立人類学協会特別会員。世界最高峰の科学者だけが選ばれるフィンランド科学・文学アカデミー外国人会員でもある。1994年にオスマンヒル勲章を受賞、2015年には人類学における最高の栄誉で「人類学のノーベル賞」と称されるトマス・ハクスリー記念賞を受賞。人間にとって安定的な集団サイズの上限である「ダンバー数」を導き出したことで世界的に評価される。著書に『ことばの起源』『なぜ私たちは友だちをつくるのか』(以上、青土社)、『友達の数は何人?』『人類進化の謎を解き明かす』(以上、インターシフト)などがある。

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 長谷川 眞理子(はせがわ・まりこ)
 進化生物学者総合研究大学院大学名誉教授
 総合研究大学院大学学長を退任後、現在、日本芸術文化振興会理事長。日本動物行動学会会長、日本進化学会会長、日本人間行動進化学会会長を歴任。著書に『進化とは何だろうか』『私が進化生物学者になった理由』(以上、岩波書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社)、『クジャクの雄はなぜ美しい? 増補改訂版』(紀伊國屋書店)、『人間の由来(上・下)』(訳、講談社)、『進化的人間考』『ヒトの原点を考える』(以上、東京大学出版会)などがある。

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 9月28日 YAHOO!JAPANニュース PRESIDENT Online「なぜ欧米人は「日本人の多くは無神論者」に驚くのか…無神論者が世界中のどの宗教より危険視される理由
 「ためらいなく殺人や虐待を行う危険人物」というイメージ
 日本には特定の宗教への信仰を持たない「無神論者」が多い。だが、欧米ではこの言葉は極度に否定的なイメージでとらえられている。北海道大学大学院の岡本亮輔教授は「信仰を重視する欧米では、無神論者は反社会的でためらいなく殺人や虐待を行う危険人物とみなされる。日本とは言葉の意味がまったく異なってしまう」という――。
 「神は実在するか?」というアンケート写真=iStock.com/yurii_zym※写真はイメージです
 日本は世界トップクラスの無神論国家
 「あなたは神や仏の実在を信じていますか?」
 家の宗派や好みの寺社を尋ねているのではない。「この宇宙のどこかに神や仏と名指される実体が存在する」と信じているかを訊いているのだ。このとき、あなた自身はどのように答えるだろうか。
 実は、この質問は日本の宗教の特徴を考える上で重要な意味を持つ。ここでは無神論者に対するイメージを手がかりに考えてみよう。
 国際的には、日本は世界トップクラスの無神論国家とされる。さまざまな調査があるが、だいたい1位は中国で、日本はチェコスウェーデンと2位争いをしている。ラグビーでいえばティア1から外れることはない。2017年の調査では、日本の無神論者の割合は87%で世界2位だ。1位の中国(91%)とは僅差であり、3位のスウェーデン(78%)、4位のチェコ(76%)に10%前後の差をつけている。
 あなたの実感としてはいかがだろうか。中国では国策として宗教が規制されるし、チェコは旧共産圏だ。スウェーデンが含まれる北欧は、キリスト教会の衰退が世界一激しい地域である。日本はこうした国々と同じような宗教状況にあるのだろうか。
「信仰・実践・所属」の3要素から現代宗教をとらえる
 実際のところ、初詣となれば、全国で数千万人が正月に寺社を訪れる。葬儀といえば、相変わらず仏式が圧倒的な人気だ。2010年代以降は、パワースポットめぐりとして寺社参拝がより身近になった。お彼岸に墓参りをする人も多いだろう。結婚式の挙式の形態では人前式が神道式を上回るが、最も多いのは教会式(キリスト教式)で全体の6〜7割を占める。ちなみに、日本のキリスト教徒の割合は1%程度で超少数派である。無神論的というより、宗教混淆的といったほうが正確ではないだろうか。
 筆者は、現代宗教をとらえるには宗教を信仰・実践・所属の3要素に分解する視点が有効だと考えている。宗教は世界中に無数にある。天理教カトリックゾロアスター教も宗教と呼ばれるが、内実は大きく異なる。カーリングラグビーも同じスポーツに分類されるが、両者が根本的に異なるのと同じだ。スポーツというカテゴリーには、フィジカル重視、芸術性重視、技巧重視などさまざまな競技が含まれる。それと同じように、宗教というカテゴリーにも、信仰重視、実践重視、所属重視のものがある(『宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで』参照)。
 日本の宗教文化では圧倒的に信仰よりも実践重視
 この枠組みからいえば、日本の仏教や神道は圧倒的に実践重視だ。初詣や受験前の参拝客で、祭神に関わる由緒や教学に通じる人はほとんどいない。自分の家が代々曹洞宗寺院の檀家だんかだとして、『正法眼蔵』やそのエッセンスをまとめた『修証義』に日常的に親しんでいる人がどれほどいるだろうか。恐らく『修証義』の名前も知らない人が多いはずだ。
 これが日本の宗教文化の大きな特徴である。教義や教典のような信仰要素は、一般の信者にとってそれほど重要ではない。信じていなくても初詣や葬儀を実践する。あるいは、信仰と実践がリンクしていないといってもよい。だから結婚式だけは教会でも矛盾を感じない。信仰よりも実践が重視される傾向が強いのだ。つまり、信者(believer)という言葉が、そもそも日本の宗教文化に当てはまりにくいのである。
 だからこそ、日本は無神論者率ランキングで最上位グループに入る。こうした調査では「信仰を持っているかどうか」、つまり神仏のような超越的存在の実在を信じ、それをめぐる信念を持っているかどうかを尋ねる。信仰の有無を訊かれれば、多くの日本人は否定するしかない。しかし地獄や浄土の存在を確信していなくても先祖供養は続けるし、幽霊の実在を信じていなくても事故物件は避けるし、なんなら動物の供養もするのである。
 上野動物園の動物慰霊碑筆者撮影上野動物園の動物慰霊碑。最初は1931年に建立され、当初は実際に動物たちを碑の周りに埋葬していた。
 キリスト教の神は遺伝子まで操作する
 したがって、無神論者という言葉は、信仰重視の宗教にふさわしい概念である。神がこの世界に実体を持って存在するか否かを焦点とする言葉だ。キリスト教の言葉といえる。キリスト教には絶対の教典がある。言うまでもなく、聖書だ。キリスト教にもさまざまな宗派があり、相対的に実践重視のグループもある。しかし、聖書なしのキリスト教というのは考えにくい。聖書は神の言葉を記した書物であり、信者が内面化すべき信仰の源泉となる。
 キリスト教の神は世界に介入する全能神である。例えば次の2つの文章はアメリカの牧師リック・ウォレンの著書『人生を導く5つの目的 自分らしく生きるための42章』(パーパスドリブンジャパン/2015年)からの引用だ。世界で3000万部以上売り上げたというベストセラーである。
 神は、目的をもってあなたを造られました。ですから、あなたがいつ生まれ、どのくらい生きるのかについても決めておられるのです。神は、誕生と臨終の正確な日時を含めて、あなたの人生の日々を前もって計画されました。
 あなたの両親は、神の意図された「あなた」を組み立てるのにふさわしい遺伝的特質、すなわち神の意図されたDNAを持っていたということなのです。
 神の実在を否定する無神論者は危険人物とみなされる
 すさまじい全能ぶりであり、介入ぶりだ。あなたが事故や不治の病で死ぬのも神の意志である。あなたがどのような性格や外見や運動能力を持っているのかも神が決定する。日本の「お天道様に顔向けできない」「ご先祖様が見守ってくれる」といった漠然とした感覚とは大きく異なる。キリスト教の神は遺伝子まで操作するのだ。当然、実在していなくてはならない。
 だからこそ、無神論者という言葉が持つニュアンスも異なる。神仏の実在にこだわらない日本では、無神論者だとカミングアウトしてもほとんど波紋を起こさない。問い詰められればだいたいの人がそうであるし、それをわざわざ言うのは何か特別な事情でもあるのかと勘繰られる程度だ。
 しかし、キリスト教の文脈では異なる。無神論者は神の実在を否定する。つまり、この世界の全ては偶然であり、誰かが生まれて死ぬことに意味はなく、倫理道徳は幻想であり、善も悪も相対的なものでしかないと信じているのだと思われる。したがって、無神論者は反社会的であり、ためらいなく殺人や虐待を行う危険人物とみなされるのだ。
無神論者当人すら無神論者に負のイメージを抱いている
 もちろん、そんなわけはない。しかし、無神論者に対するまなざしは大変冷たい。アメリカでは、さまざまな宗教の信者と無神論者に対する感情温度が調査されている。感情温度とは、対象への親近感を最も冷たい0度から最も温かい100度までの温度で示したものだ。要するに、温かい気持ちを抱いているか、冷たい気持ちを抱いているかである。
 ユダヤ教徒カトリック教徒、主流派プロテスタント教徒といったマジョリティの宗教信者に対する気持ちは平均して温かく、60度を超える。仏教徒(57度)やヒンドゥー教徒(55度)がそれに続く。一方、無神論者はイスラム教徒と同じ49度で最下位だ。
 知人友人にその宗教の信者がいれば、親近感は多少増す。イスラム教徒の場合、知り合いにいれば53度に上昇するが、無神論者の場合、知り合いにいても51度だ。さらに、知り合いがいないと38度まで低下し、単独最下位なのである。
 要するに、「無神論者は不道徳で何をしでかすかわからない」という偏見があるのだ。連続殺人や動物虐待といった凶悪犯罪の犯人は直感的に無神論者だと思われてしまう。13カ国を対象とした調査があるが、宗教の影響力が強い国(UAEやインド)、宗教が規制される国(中国など)、宗教離れが進む国(オランダなど)の大半に、こうした偏見があることが分かっている(Gervais, W., Xygalatas, D., McKay, R. et al. “Global Evidence of Extreme Intuitive Moral Prejudice against Atheists”, Nature Human Behavior, 1, 2017.)。
 さらにすごいことに、この調査によれば、自分自身が無神論者である回答者でさえ、無神論者に同様の偏見を抱いているという。神を否定し、聖書のような倫理道徳の指針を持たない無神論者は何をしでかすかわからない――そうした負のイメージは根強く広がっているのである。
 「宗教信者よりもはるかにまともで賢い」新無神論者の反撃
 信仰を重視しない日本の宗教文化では「無神論者」はそこまで強い意味を持たないし、実際、日常的に使う言葉ではない。一方、キリスト教の文脈でも滅多に使われる言葉ではないが、それはあまりに否定的なイメージが強いからだ。無神論者は善悪の観念や共感能力を持たないサイコパスのように想像される。
 しかし、こうした状況を変えようとする動きもある。「無神論者にも倫理道徳はあるし、なんなら宗教信者よりもはるかにまともだ。無神論者こそが賢く、世界を正しく認識している」。そう主張し始めたのが、新無神論者と呼ばれる人々だ。そのリーダーがリチャード・ドーキンス(1941年〜)である。オックスフォード大学で長年教鞭をとった進化生物学者だ。彼の著書『神は妄想である 宗教との決別』(早川書房/2007年)は世界的ベストセラーになった。
 「神はサンタクロースやユニコーンと同じ」
 内容はタイトル通りである。神など古代人の妄想であり、現代人は宗教を捨てるべきだとドーキンスは主張する。
 岡本亮輔『創造論者vs.無神論者 宗教と科学の百年戦争』(講談社選書メチエ)岡本亮輔『創造論者vs.無神論者 宗教と科学の百年戦争』(講談社選書メチエ
彼に言わせれば、キリスト教の神も、サンタクロースやユニコーンや妖精と同じく、とても実在するようには思われない。全能の神がこの世界の全てを司る。そんな途方もない主張をしたいなら、途方もないエビデンスを出せ。証明する責任は信じる者にある。証拠がないなら、神が実在するかのように話すのはやめるべきだし、神の言葉を記した聖書も人間が作った古文書だと認めるべきだというのである。
 ドーキンスにすれば、そもそも「無神論者」という言葉が気に食わない。まともな大人であれば、サンタクロースもユニコーンも妖精も実在するとは思わない。だが、そうした人々をいちいち無サンタクロース論者、無ユニコーン論者、無妖精論者とは言わない。なぜ神についてだけ、無神論者という言葉があるのか。この言葉が、そもそも神の実在を前提にしているというのである。
 「宗教は尊い」というイメージを守ってきたのは誰か
さらにドーキンスたちが批判するのが、本当は神を信じていないのに信じているかのように振る舞う人々だ。自分自身は神の存在を感じられない。だが、信仰を持つのは良いことであると信じ、神の実在を確信する人を尊敬する人々のことを、新無神論者のひとりである科学哲学者ダニエル・デネットは「信仰の信仰者」と呼ぶ(『解明される宗教 進化論的アプローチ』青土社/2010年)。彼らこそが実は宗教信者のマジョリティであり、彼らが「宗教は尊く、無神論者は危ない」というイメージを守ってきたというのである。
 日本では、そもそも神の実在をめぐる論争が成立しにくい。「スサノオ阿弥陀が実在するエビデンスを出せ」と言っても、あまり反響はないだろう。「般若心経は非科学的だから読むのをやめるべきだ」と言っても「非科学的なのは当然だ」と受け流される(むしろ「般若心経と量子力学は同じ真理を語っていた」と言ったほうがインパクトがあるはずだ)。信仰を中心とした宗教文化とそうでない文化では、無神論者が持つ意味も大きく異なるのである。
 岡本 亮輔(おかもと・りょうすけ)
 北海道大学大学院 教授
 1979年、東京生まれ。筑波大学大学院修了。博士(文学)。著書に『聖地と祈りの宗教社会学』(春風社)、『聖地巡礼世界遺産からアニメの舞台まで』(中公新書)、『江戸東京の聖地を歩く』(ちくま新書)など。近刊に『宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで』(中公新書)、『創造論者vs.無神論者 宗教と科学の百年戦争』(講談社選書メチエ)ほか。
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