👠36:─2─フランス国民の3割に支持されても"極右"と呼ばれ続ける政党の名前。~No.82 

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   ・   ・   {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2026年7月11日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「朝日新聞ですら「右派」と言い換えているのに…国民の3割に支持されても"極右"と呼ばれ続ける政党の名前
 パリの国会議事堂(Mbzt/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)
 フランスで急速に支持を拡大している政党がある。2024年の欧州議会選挙では得票率31.37%を獲得し、マクロン大統領率いる与党連合(14.6%)を圧勝した。日本のメディアでは「極右」と紹介されることが多いが、本当に「極右」と呼ぶに値するのか。郵便学者の内藤陽介さんの著書『世界の右翼』(ワニブックス)から一部を紹介する――。(第1回)
 【画像をみる】“極右”の象徴的存在
 ※本稿は、内藤陽介『世界の右翼』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
■フランスで「極右」と呼ばれる政党の実態
 フランスでは近年、右派勢力が大きく躍進しており、移民問題や治安不安、マクロン政権への不満を背景に支持を拡大し、大統領選挙の有力候補にもなっている――そういう話題をニュース等で見聞きした人も多いのではないでしょうか。
 その右派勢力の中心にいるのが、メディアで「極右」と紹介されることの多い「国民連合(RN:Rassemblement National)」という政党です。
 国民連合は、2024年6月の欧州議会選挙では、得票率31.37%でエマニュエル・マクロン大統領率いる与党連合(得票率14.6%)に圧勝。欧州議会におけるフランスの定数全81議席中30議席を獲得して、フランス最大勢力となりました。
 この結果を受けて、フランスではマクロン大統領が議会下院を解散し、国民議会選挙が同年6月30日(第1回)、7月7日(第2回)に実施されましたが、そこでも国民連合は議席を54議席も増やす大躍進を果たしています。左派連合188議席、与党連合161議席に続く142議席を獲得して第三勢力となったのです。
 ところで、メディアでは「極右」扱いされることの多い国民連合ですが、その評価は妥当なのでしょうか。
 私の結論から先に言えば、彼らはせいぜい「急進的な右派」です。むしろ彼らを無批判に「極右」と呼ぶことは、実像を見誤らせる「ミスリーディングな行為」だと思っています。意外かもしれませんが、実はあの朝日新聞も最近では国民連合を「極右」と表現するのを避け、「右派」や「右翼」あるいは「極右の流れを汲む右翼」などと表記するケースが増えているのです。
■そもそも、「極右」とは何か
 では、なぜ国民連合は「極右」と呼ばれながらも、多くのフランス国民から支持されているのでしょうか。
 まずは、そもそも国民連合がどういう政党なのか、その成り立ちから確認していきましょう。
 はじめに、フランスにおいて「極右」の定義はどうなっているか、という厄介な問題について少し整理しておきましょう。
 現実の大手メディアの報道では、国民連合(RN)など彼らの気に入らない相手に対する罵倒(ばとう)語として「極右」というレッテルが使われることが大半なのですが、とりあえず、過去の経歴や個人の思想信条は別にして、純粋に政策上の理由から特定の政治勢力が「極右」と認定される最大の基準は、フランス憲法が最も重視する概念の一つである「法の下の平等(普遍主義)」を認めるか否かということがあります。
 すなわち、「不法移民の即時送還」「入国管理の厳格化」などは、主権国家の正当な権利として“正統派の保守/右派”の範疇(はんちゅう)に含まれる主張と見なされますが、住宅手当や家族手当などの社会保障、あるいは雇用において、「国籍のみを理由に」法的権利に差をつけるという主張や政策は、フランス共和制の前提である「普遍主義」を否定するものとして「極右」認定されることになります(この点では、日本でも日本国憲法の第9条は一切変更してはならない金科玉条であり、改憲論者は「極右」であると切り捨てられていた時代がありましたが、そのイメージと近いものがあるかもしれません)。
■「外国人の権利制限」は保守か人権侵害か
 ただし、国民国家の国民が同じ国籍を有する同胞を優先したいと考えるのはごく自然な感情ですから、外国人に対する権利制限の主張を「国家のアイデンティティを守る正当な行動(=正統派の保守)」と見るか、「基本的人権の侵害(=極右)」と見るかは、フランス国内、特に保守派の間でも議論が分かれる微妙な論点です。
 もっとも、こうした基準とは別に、かつての国民連合は、確かに、多くの人の「極右」イメージに合致する政党だったことも事実です。
 国民連合の歴史は1972年にジャン=マリー・ル・ペンが、イタリアで旧イタリア社会共和国(1943年7月から1945年4月まで、ムッソリーニがイタリア北部に樹立した親独傀儡(かいらい)政権)の関係者や支持者が結成した組織「イタリア社会運動」の影響を受けて、前身の組織「国民戦線(FN:Front national)」を結成したことに始まります。
 1970年代初頭、特に国民戦線が生まれた1972年のフランスは、政治的にはド・ゴールの後継者であるポンピドゥーを大統領とする保守安定政権の時代でしたが、社会全体の空気としては1968年の「五月危機(メイ・レボリューション)」の余韻が強く残っており、マルクス主義、トロツキズム、毛沢東主義、アナーキズムなどの急進的左翼思想が知識人や大学生の間で広く支持されていました。
■国民連合が誕生した背景
 特に、中国の文化大革命の影響は大きく、「禁止することを禁止する」といったスローガンに代表される、セクシュアリティ、教育、家族のあり方など、日常生活における変革を求める運動が活発で、サルトル、フーコー、ドゥルーズ、バルトなどの著名な哲学者や作家が極左的な運動への支持を公言していました。
 また、左派系野党の社会党(フランソワ・ミッテラン)と共産党が「共同綱領」に署名し、強力な左翼連合が結成されたのも1972年です(ちなみに、これが1981年のミッテラン政権誕生につながります)。
 こうした社会状況に危機感を抱いたジャン=マリーが国民戦線を結成すると、社会的に肩身の狭い思いをしていた急進右派の人々が党員として集まり始めます。こうして、国民戦線は、アルジェリア戦争でフランスの植民地維持を訴えた人々の生き残りや、親ナチス的な(多くの人がそう認める)極右活動家、王党派、カトリック伝統主義者など、政治的に行き場を失っていた右派勢力の寄せ集め集団としてスタートします。したがって、当初の彼らは得票率わずか0.5%から1%程度の泡沫政党であり、メディアからもほとんど無視されていました。
■極右の象徴ジャン=マリーの正体
 創設者のジャン=マリーは、フランス政治における極右の象徴的存在です。1928年にブルターニュ地方で生まれ、若くして軍務に就きインドシナ戦争や中東戦争、アルジェリア戦争への従軍も経験しています。その後、政治の世界に入り、1956年に国民議会議員に初当選しました。
 1972年に国民戦線を結成してからは、党首として「普遍主義」を公然と批判し(この時点で、フランスにおける「極右」の定義と合致します)移民排斥や治安強化、強いナショナリズムを掲げて精力的に活動。彼の政治スタイルは挑発的で、しばしば反ユダヤ的発言や差別的言動によって国内外から激しい批判を浴びましたが、同時にフランス社会における移民問題や文化的アイデンティティの議論を政治の中心に押し上げる役割を果たしました。
■炎上商法でのし上がった政治家
 彼の挑発的な性格を象徴するものとしては、1987年にホロコーストを「第二次世界大戦の歴史における些細(ささい)なこと」とした発言があります。当然、これは国内外から激しい非難を浴び、裁判で有罪判決まで受けたため、党のイメージを大きく損なう結果となりました。しかし、彼自身は「言論の自由」として譲らず、対立を恐れない姿勢を貫き、その後も同様の発言を繰り返しています。
 このように、彼は常に「物議を醸(かも)すことで存在感を示す」タイプの政治家でした。今日でいうところのいわゆる「炎上商法」です。
 その他にも、第二次世界大戦中のナチスによるフランス北半分の占領は「特に非人道的ではない」と主張したり、アフリカからの移民がフランスを「沈没させる」と警告したりするなど、「あえてリベラルな空気の強いフランス社会の“常識”に異議申し立てをする」スタイルでコアな支持を拡大していきました。

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 内藤 陽介(ないとう・ようすけ)
 郵便学者
 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究著作活動を続けている。主な著書に『なぜイスラムはアメリカを憎むのか』(ダイヤモンド社)、『中東の誕生』(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『世界はいつでも不安定―国際ニュースの正しい読み方』『今日も世界は迷走中―国際問題のまともな読み方』(いずれも、ワニブックス)などがある。文化放送「おはよう寺ちゃん」コメンテーターのほか、インターネット放送「チャンネルくらら」のレギュラー番組「内藤陽介の世界を読む」など配信中。また、2022年より、オンライン・サロン「内藤総研」を開設、原則毎日配信のメルマガ、動画配信など、精力的に活動中。日本文芸家協会会員。

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💠34」─1─国際法は終焉したのか?遵守しなくなった主要国。〜No.98No.99 

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 日本にとって、アメリカは同盟国であり、中国共産党政府とロシアは仮想敵国である。
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 中国共産党は、国連の場で反日反天皇工作を行っている。
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 2026年7月10日 YAHOO!JAPANニュース Wedge(ウェッジ)「国際法は終焉したのか?遵守しなくなった主要国、秩序は何によって維持されているのか
 Foreign Policy誌のコラムニストでジョージタウン大学教授のローザ・ブルックスが、6月15日付けの論説で、いまや主要国の国家指導者は国際法を遵守する「振り」さえしなくなったとして、これは「制度化された国際道徳」たる国際法の終焉を意味する、と結論づけている。主要点は次の通り。
 (国際法を無視する指導者たち)
 国家はしばしば国際法を無視したが、それを完全に否定することは避けていた。ところが近年、主要国は国際法遵守という行為そのものを放棄する傾向が強まっている。トランプ大統領は、自身の権力に対する唯一の抑制力は自身の道徳心であるとして、「私を止められるのはそれだけだ。…国際法など必要ない」と語った。
 ロシアでは、プーチンが昨年、「遠く離れた誰かが定めたルールに従う用意のある者は誰もいない」と宣言した。習近平は2019年、「台湾統一は、いかなる勢力も、いかなる人物も阻止できない」と宣言し、中国外務省は、常設仲裁裁判所による自国に不利な判決を「ただの紙切れ」と嘲笑した。
 (国際法に最も破壊的打撃を与えたのはその支持者自身)
 ただし、プーチンとトランプに責任を押し付けたくなる気持ちもわかるが、国際法に最も破壊的な打撃を与えたのはむしろ、その最大の支持者を自称していた人々だ。国際法は何十年にもわたって致命的な傷を負っており、プーチンとトランプはとどめを刺したに過ぎない。
 ホロコーストと二度の世界大戦の凄惨な惨劇の後、国際法制定事業はかつてないほどの切迫感、理想主義、そして野心を帯びるようになった。国連憲章、世界人権宣言、そしてジュネーブ条約は、いずれも主権国家が一定の自由を犠牲にしてより大きな安全保障を求め、より公正で公平な世界というビジョンを受け入れるという賭けであった。
 20世紀後半には、国家間の武力紛争が急激に減少した。冷戦による停滞期を経て、1990年代の出来事は、戦後の大胆な賭けが正しかったことを一時的に証明したかに見えた。しかし、国際法と国際機関の急速な拡大は、国際システムの内部矛盾、特に国家主権への国際法上のコミットメントと基本的人権へのコミットメントとの間の深刻な乖離を増幅させた。
 (ある程度の偽善はシステムの一部として容認された)
 ある程度の偽善は、このシステムの一部として容認されるようになった。冷戦時代の列強は、とてつもない偽善者であった。
 ソ連はハンガリーの労働者蜂起を鎮圧しながら、労働者階級を解放していると主張した。米国はベトナムを荒廃させながら、自由を守っていると主張した。
 冷戦終結後、偽善はさらに加速した。1999年、北大西洋条約機構(NATO)は、当時セルビアの半自治州であったコソボに、緊急の人道的必要性を理由に軍事介入したが、ほとんどの評論家は、他国の主権領域内への介入には法的根拠がないという点で一致していた。その後も米国指導部による偽善は続いた。
 (国際法を信じる振りさえしなくなった時、国際法は死滅する)
 道徳的に正しい法制度は、ある程度の悪徳には耐えられる。しかし、偽善が蔓延し常態化すると法は正当性を失い、行為者は偽善的な振る舞いさえしなくなる。国家が国際法を信じる振りさえしなくなった時、国際法は死滅する。
 しかし、その終焉を祝うのは間違いだろう。たとえ偏っていたとしても、国際法は、無秩序な世界において紛争を解決し、予測不可能性を低減するためのメカニズムを提供してきた。国際法は、予測不可能性を低減する焦点を提供し、国家の行動をより明確にし、危機をより制御しやすくした。
 国際法の衰退は道徳的な損失ではなく、構造的な大惨事である。そしてそれは、私たちが直面する集団行動の問題が、今失われつつある調整メカニズムを緊急に必要としているまさにその時に起こっているのだ。
 *   *   *
 力だけで秩序は維持されない
 論説の著者のブルックスによれば、今日の状況は、トランプやプーチン、習近平に代表されるように、単に国際法が遵守されなくなっただけではなく、「振り」をする形での「敬意」さえ払われなくなっており、それは国際法の背後にある「道徳規範」に対する「敬意」の喪失を意味する。これこそが今日の国際秩序に対する最も深刻な危機であるとするもので、かなり単純化されているが、その中核となる主張には全面的に賛同する。
 ただし異論もある。特に、「国際法の終焉(=道徳の終焉)」という今日の事態が、国際法の「支持者」を自認する多くの人々の長きにわたる恣意的解釈あるいはダブルスタンダードによる運用の結果、形成されてきたものであって、トランプやプーチンなどは単に「とどめを刺した」に過ぎない、という部分だ。
 確かにこれまでも国際法は、「正義」や「人権擁護」といった美名のもとに侵略行為などを正当化する道具として使われることが少なくなかったし、かつ人々はそのような「偽善」をシステムに内在するものとして結果的に受け入れてきたとも言える。しかしながら、このような行為の積み重ねの単純な延長上に、今日のトランプやプーチンなどの「とどめを刺す」行為があるのではない。国際法を遵守する「振り」をすることと、これを全く無視することとの間には、質的な隔たりがある。
 トランプやプーチン、そして習近平の発想の根本には、世界秩序を形成するのは結局のところ「力」であり、従って最終的には力の強い者が決めていくという信念がある。このこと自体は決して間違っていない。歴史は常に力の強い者によって形成され、修正され、破壊され、また新たな秩序が生み出されてきた。
 しかし国際秩序は、決して力のみによって維持されてきた訳ではない。多くの国や人々が、それを受け容れる価値観、ソフトパワーがあったからこそ持続性をもってきた。国際法遵守の「振り」だけで、秩序を維持することはできない。
 軽視されてはいけないソフトパワー
 少なくとも第二次世界大戦後の国際社会において、米欧諸国の「力」による秩序の形成は、同時にそれを受け容れることを良しとするソフトパワーを伴っていた。多くの人々は、これが欧米各国自身の利益にも叶う秩序であって、必ずしも博愛主義に基づくものではないことを承知の上で、彼らの形成する秩序を受け容れてきた。これに対し、今日のロシアや中国の「力」による秩序形成の動きは、ほぼ軍事力、経済力のみに依存し、かつ彼ら自身の利益のみによる秩序という側面が余りに強い。
 残念なのは、これまで世界秩序の最大の担い手の一つであった米国が、トランプ政権になってそのソフトパワーを失いつつあることだ。また今日のトランプ政権は、国際法遵守の「振り」さえしないという点では、プーチン、習近平以上に断固たるものがある。ただロシアや中国と異なり、米国には国民の自由な意思が反映される選挙制度があり、その違いを無視すべきではない。
 賛成できないもう一つの点は、「国際道徳規範の終焉」だ。「国際道徳規範」が完全に消滅した、あるいは終焉しつつあるとは思われない。「道徳の終焉」という事態を作り出しているのは、まだ少数の国に限られている。
 大多数の国々は、国際法の「最大の支持者を自認」し、国際法遵守の「振り」をする国々であるが、同時に、「制度化された国際道徳規範」に敬意を払う国々であり、共通の価値観とソフトパワーの存在に、国際協調による問題解決の基礎を見出そうとする意志を失っていない国々だ。これらの国々の力を結集させることの影響力を軽く見る必要はない。
 岡崎研究所
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💞9」─3─イエドバブネ事件。ナチス・ドイツ占領下、被害国ポーランドの隠された加害。1941年7月。~No.25No.26No.27No.28 

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 2025年8月12日 毎日新聞「激動の世界は今
 占領下で…被害国ポーランドの隠された「加害」 イエドバブネ事件
 宮川裕章
 有料記事
 1941年にユダヤ人虐殺が起きた現場にある碑=ポーランド北東部イエドバブネで2025年7月13日、宮川裕章撮影
 夏の強い日差しが照り付ける。ポーランド北東部イエドバブネ市。ナチス・ドイツ占領下の1941年7月10日、ここで300人以上とみられるユダヤ系住民が他のポーランド住民によって納屋に押し込められ、生きたまま焼かれた。84年後の週末、この地を訪れると、犠牲者の追悼に来た人たちが現場に建てられた碑に花を手向けていた。
 世界は第二次世界大戦をどう総括しているのか。政治や社会、歴史認識が複雑に絡み合う各国の戦争博物館の現場から報告し、戦後80年を迎える日本でも考えたい。
 一時は「祖国の英雄」も展示縮小 保守とリベラル、政治に揺らぐ語り口
 「歴史家の使命重い」 度重なる政治介入に、反ユダヤ主義復活の懸念
 国家の負の歴史語る難しさ 日本はポーランドから何を学ぶか
 住民たちは第二次世界大戦後、このいまわしい過去について沈黙を守ってきた。事態が動いたのは2000年。ポーランド出身の米プリンストン大研究者、ヤン・グロス氏が執筆した書籍「隣人」によって、ユダヤ人虐殺の事実が広く知られるようになった。
 グロス氏は広範な調査を進め、ナチスとソ連に侵略された「被害国」としてのポーランドのイメージを打ち破り、初めて本格的にポーランド人による「加害」の側面に踏み込んだ。
 保守派は「ナチス占領下のポーランド人に罪はない」などと反発し、ポーランド中で議論が巻き起こった。01年、当時のクワシニエフスキ大統領は「イエドバブネで起きた犯罪について、ポーランド人の名において謝罪する」と述べた。
 第二次大戦当時、国内では反ユダヤ主義が広がっていた。イエドバブネの住民がナチスにどこまで扇動され、どこまで主体的に関与したのか。歴史学者の間でも意見は分かれる。
 02年、ポーランド国立追悼機関(IPN)は2年間にわたる調査の結果を発表し、虐殺を実行した約40…
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 2026年7月11日 YAHOO!JAPANニュース AFP=時事「ポーランド極右、第2次大戦中の同国人によるユダヤ人虐殺を疑問視
 ポーランド北東部イエドバブネで、イエドバブネ事件に対するポーランド人の罪を疑問視する極右支持者の集会。バナーには「イエドバブネについて謝罪しない。加害者が謝罪せよ」「掘り起こし調査を完了せよ。ポーランド人に対する中傷を終わらせよ。イエドバブネのうそ」と書かれている(2026年7月10日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
 【AFP=時事】ポーランドのユダヤ人コミュニティー、政治指導者、そして一般市民らは10日、第2次世界大戦中の1941年にイエドバブネ村で起きたポーランド人によるユダヤ人虐殺(イエドバブネ事件)の犠牲者を追悼した。すぐ近くでは極右活動家らによる抗議デモが行われた。
 【写真】ホロコースト記念館、「歴史歪曲」する銘板を非難 ユダヤ人虐殺の責任をナチスに転嫁
 イエドバブネ事件では、ポーランド人農民が女性と子どもを含むユダヤ人約300人を納屋に閉じ込め、生きたまま焼き殺した。
 追悼式典会場の目と鼻の先では、極右政党が主催した抗議デモとカトリックのミサに約1000人が参加した。極右勢力は事件に対するポーランド人住民の責任を認めることを拒否している。
 2003年の公式調査で、イエドバブネ事件はナチス・ドイツ占領軍ではなく、イエドバブネ村のポーランド人住民によって実行されたことが確認された。
 これはポーランドで長年支持されてきた歴史認識と相反するもので、超国家主義者(ウルトラナショナリスト)らは今も調査結果に異議を唱え続けている。
 彼らは、ユダヤ人コミュニティーからの要請を受け、宗教上の理由から2001年に中断された被害者の遺体を掘り起こしての調査を再開すべきだと主張している。
 ポーランド国旗を手にしたエルジビエタ・リバルスカさんはAFPに対し、「真実が分からない限り、分断は続くだろう」「もし誰かが真実を恐れていないのであれば、遺体掘り起しはとっくに実施されていたはずだ」と語った。
 極右の抗議デモの主催者には、グジェゴシュ・ブラウン氏が党首を務める極右政党「ポーランド王冠同盟」が含まれている。
 ブラウン氏はかつて、ポーランド議会で行われていた行事の最中、儀式用の燭台に消火器を噴射してユダヤ教の儀式を妨害し、物議を醸した。
 イエドバブネ村では、納屋に閉じ込めて焼き殺す以外の方法でさらに約40人のユダヤ人がポーランド人住民によって殺害された。
 第2次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のポーランドでは、イエドバブネ事件以外にも複数のユダヤ人虐殺事件が起きた。
 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の中心地であるポーランドでは、特に農村部において、ユダヤ人数千人が隣人であるポーランド人によって殺害された。
 一方で、自身と家族の命を危険にさらしてユダヤ人を救ったポーランド人も大勢いる。
 イスラエルのホロコースト記念館「ヤド・バシェム」は、第2次世界大戦中にユダヤ人の救助に貢献したとして、国籍別では最多となるポーランド人7000人以上を「諸国民の中の正義の人」に認定している。【翻訳編集】 AFPBB News
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 2019年5月16日 NewSphere「「ユダヤ人への賠償反対」 ポーランド右派が大規模デモ、米に抗議
 ポーランドの首都ワルシャワで5月11日、数千人のナショナリストらがアメリカ大使館に向けてデモ行進し、ホロコースト時代に財産を奪われたユダヤ人やその家族に対して損害を賠償するよう、アメリカがポーランドに圧力をかけていると抗議した。
 抗議デモは、公共の場でユダヤ人を差別するヘイトスピーチが劇的に増加している状況下で行われ、近年の反ユダヤ主義を掲げる街頭デモの中でも最大規模だったという。そして、極右団体の人気がますます高まり、保守政権をさらに右傾化させる結果ももたらしている。
 極右団体やその支持者などデモ参加者らは、アメリカにはポーランド人の問題に干渉する権利はなく、さらに、ポーランド人の利得よりも「ユダヤ人の利得」を優先していると抗議している。
 第二次世界大戦中、ポーランドはナチス・ドイツにより甚大な犠牲を被った。ドイツからポーランドへの賠償金が十分に支払われないなか、ユダヤ人犠牲者への賠償を強いられるのは公平でないと、デモ参加者らは述べる。
 「我々は何も得ていないのに、なぜ今、賠償金を払わなければいけないのか。アメリカ人の頭にあるのはユダヤ人のことばかりで、ポーランド人の利得についてはお構いなしだ」と、カミル・ヴェンツヴェル氏(22)は話す。
 デモ参加者は、「賠償金の支払い反対!」や「ここはポーランド、ポーリンではない」と、ポーランドを意味するヘブライ語を使って声高に訴えた。
 反過激派組織「ネバー・アゲイン」の代表を務める、社会学者のラファウ・パンコフスキ氏は、このデモ行進は「ヨーロッパの街頭で近年、公然と行われた反ユダヤ主義デモのなかでも最大規模だろう」と話す。
 「祖国に敵対する奴には死を」と書かれたお揃いのTシャツを着たカップルもいれば、「私はイェドヴァブネ事件を謝罪しない」と書かれたシャツの男性もいた。この事件は、1941年、ドイツ占領下のポーランドの町イェドヴァブネで起きたユダヤ人虐殺事件である。近隣に住むポーランド人によって虐殺が行われていた。
 デモ行進を率いた極右の政治家には、ヤヌシュ・コルヴィン=ミッケ氏とグジェゴジュ・ブラウン氏がいる。今月末に開催される欧州議会選に出馬している極右派連合と結束してきた政治家だ。LGBTを擁護する「プロパガンダ(宣伝)」だとするものと戦うことに加え、ユダヤ人の賠償請求を阻止することも主な優先事項の一つだとしている。その活動は若いポーランド人男性から多くの支持を得ている。
 マテウシュ・モラヴィエツキ首相は、11日に行われたキャンペーン集会に集まった抗議デモ参加者に共感の意を示し、ポーランド人こそ賠償を受けるに値すると述べている。
 330万人のユダヤ系ポーランド人がナチス・ドイツ占領軍によって殺害されたホロコースト以前、ポーランドは多くのヨーロッパ系ユダヤ人が暮らす中心地であった。キリスト教徒のポーランド人も同様にドイツ軍の標的となり、虐殺され、強制収容所で殺害された。
 ホロコーストで苦しめられたユダヤ教徒が世界に広く認識されてきた一方で、キリスト教徒の苦しみについては十分に理解されていないと、ポーランド人の多くが今でも感じている。そしてこのことが、「犠牲者同士の対抗意識」としばしば呼ばれる状態を生み出してきた。
 ユダヤ教徒であるかどうかを問わず、多くの財産が戦争中に破壊された。はく奪されたものは、後に引き継がれた共産主義政権によって国有化された。
 ワルシャワでの抗議デモは、「損害賠償を受けていない生存者のための法(JUST法)」としても知られる、アメリカの法令447章を標的にする。2018年にトランプ大統領により署名され、成立したこの法令は、ホロコースト時代に数十ヶ国で略奪された財産の賠償状況を国会に報告するよう、アメリカ国務省に義務づけるものだ。
 デモ参加者は、賠償金の支払いによってポーランドの経済は破綻するだろうと話す。
 しかし、「世界ユダヤ人損害賠償組織(WJRO)」を筆頭とするユダヤ人組織は、損害賠償は集団虐殺の対象となった人々に対する正義に係る問題だと捉え、ホロコーストの生存者やその家族に対する償いを求めてきた。
 EU諸国の中でポーランドが唯一、略奪され国有化された財産に対する賠償を規定した法律を制定していない。WJROの代表を務めるギデオン・テイラー氏は11日、このような財産によって「ポーランドの経済は引き続き恩恵を受ける」と指摘している。
 11日の抗議デモは、首相官邸前に集結した後、アメリカ大使館に向けての行進が始まった。そこでは、少なくとも2本のアメリカ南部連合国旗が見られた。ネイティブ・アメリカンの頭飾りをつけた男性たちは、自分たちの考えるアメリカの二重基準(ダブルスタンダード)を強調したメッセージ。「アメリカよ、447条は自国で実践せよ。略奪した土地を先住民族に返還しろ」を掲げていた。
 この問題への圧力が高まる中、アメリカ国務省の反ユダヤ主義対策担当の新任特使エラン・カー氏は先週ワルシャワを訪問し、アメリカはポーランドが2009年に掲げた強制力のない公約を果たし、この問題に対応するよう促しているだけだ、と首脳陣やメディアに伝えている。カー氏はまた、ポーランドが戦争の犠牲国であることをアメリカは認識しており、ポーランド政府が賠償問題についてどのように統制するかについて、指図していないと話している。
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 ウィキペディア
 イェドヴァブネ事件(ポーランド語: Pogrom w Jedwabnem / mord w Jedwabnem)とは、第二次世界大戦中の1941年7月10日、ナチス・ドイツ占領下のポーランド北東部の町イェドヴァブネで起きたユダヤ人の虐殺事件(ポグロム)である。
 この町およびその周辺のユダヤ人住民が、隣人であったポーランド人によって暴行され、納屋に集められ生きたまま焼き殺された。犠牲者の数は少なくとも340人、町にいたユダヤ人のほぼ全員が殺されたと仮定すれば900人から1,600人との推定もある。
 イェドヴァブネ事件そのものは以前から知られていたが、長い間ドイツ軍によるものと考えられていた。ポーランド系アメリカ人の歴史学者ヤン・グロスが2000年に出版した著書の中で、ポーランド人が主体的な加害者であるとの指摘がなされ、ポーランド国家記銘院(IPN)による再調査によってその事実が確認された。この地域を占領中であったドイツ軍の関与の程度は依然として不明であるが、発端の部分には関与したとされる。
 一般のポーランド人がポグロムの加害者となったこの事件は、大きな論争に発展した。IPNの調査により、ポーランド人によるポグロムはイェドヴァブネ事件にとどまらず、広範に存在していたことが判明している。この事件は、第二次世界大戦中のポーランド人とユダヤ人の関係だけでなく、ポーランド史の、またポーランド人の集団的自己イメージの再評価といった重要な問題を提起した。
 背景
 ポーランド北部のビャウィストク地方にあるイェドヴァブネは小さな町で、1931年の人口は2,167人、第二次世界大戦直前には3,000人前後まで増加し、1,000–1,500人のユダヤ人がいた。
 1939年9月、その前の月に締結された独ソ不可侵条約および付随する秘密議定書に則って、ソビエト連邦軍がポーランドに侵攻。ビャウィストク地方もソビエト連邦支配下となった。この時期の避難民の流入によりイェドヴァブネのユダヤ人人口は約1,600人となったとされる。
 1941年6月22日、ドイツがソビエト連邦に侵攻。ドイツの進軍は速やかで、ビャウィストク地方も7月初頭までにドイツ軍の占領下となった。
 この地域でナチスは、「ユダヤ人がポーランドに対するソビエトの犯罪行為を支援している」とプロパガンダを行うとともに、地域のユダヤ人を殺害するための特務部隊を組織した。イェドヴァブネ北東の町ヴィズナではドイツ軍によって数十人のユダヤ人が銃殺されるところが目撃されている。
 ヤン・グロスの著書『隣人たち』
 2000年5月、ポーランド系アメリカ人でニューヨーク大学教授のヤン・グロスが『隣人たち(原題:Sąsiedzi: Historia zagłady żydowskiego miasteczka)』を上梓した。ポーランド人が主体となってユダヤ人を殺害したとするその内容をめぐってポーランドで大論争となり、報道、雑誌、テレビやラジオなどで多くの議論が行われた。ポーランド人がそのようなことをしていたはずがない、というのが典型的な反応であった。
 この著書の中でイェドヴァブネ事件は次のように描かれている。
・イェドヴァブネの人口は1931年の時点で約2,000人で、そのうち60%がユダヤ人であった。イェドヴァブネは1939 年にソ連占領下に入るが、この時期に避難民の流入でユダヤ人人口は約1,600人となった。
・7月10日、イェドヴァブネのポーランド人によりユダヤ人の虐殺が計画、実行された。占領者であるドイツ側の教唆はあったとしても強制されたわけではなく、率先して虐殺に参加した。
・ユダヤ人たちは町外れまで行進させられ墓穴を掘らされたのち撲殺された。あるいは納屋に閉じ込められ火をつけられて焼き殺された。女性や老人、子どもも殺害された。
 これらの記述が事実に即しているかが議論となった。グロスは、ユダヤ人らが経験した現実は言われている以上に悲劇的であったはずであるとして、生き残ったユダヤ人の証言を、反証がない限りそのまま採用するという「原史料への新しい態度」を表明していた。またグロスは、1949年にソビエト共産党政権下で行われたイェドヴァブネ事件の裁判での証言内容を採用していた。これらの点は、史料批判の軽視として歴史家から批判された。
 また、グロスの挙げる1,600人という 数字にも疑問が投げかけられた。事件当日ユダヤ人が閉じ込められ焼き殺された納屋に、それだけの人数を収容するのは到底不可能であったからである。ただしこの数字はグロスが水増しした数字ではなく、1960年代初めに建てられた記念碑の数字を踏襲したものであった。
 虐殺事件
 2002年の国家記銘院による調査結果報告によれば、事件の概要は以下のようなものである。
・1941年7月10日朝、イェドヴァブネのユダヤ人は強制的に家から追い立てられ、広場に集められた。
・ポーランド人らは、40人ほどのユダヤ人の一団に命令し、広場の敷石の間の雑草の除去を行わせた。さらに広場近傍のレーニン像を破壊させ、砕けた胸像を木製の担架で納屋まで運ばせた。このグループがどのように殺害されたのかは判然としていないが、遺体は納屋の中で掘られたばかりの墓穴に入れられ、その上に破壊されたレーニン像が投げ入れられた。
・一方、ほかのユダヤ人の一団は、広場から納屋へ連行された。納屋の戸が閉められ、火がつけられた。ソビエト軍の弾薬庫にあったケロシンを使用したと考えられた。人数は300人ほどで、女性や子どもも含まれていた。
 関与した人々、被害者数については以下のように結論付けた。
・ドイツ軍による教唆があった可能性があり、当日も数人のドイツ人が現地にいたのは確かだが、殺害行為への積極的な関与の証拠はない。
・ポーランド人が犯行に決定的な役割を果たした。
・少なくとも40人のポーランド人が実行犯として積極的に加わった。
・1,600人という被害者数は考えづらい。
・ヴィズナやコルノでの虐殺を免れ、このイェドヴァブネへ避難してきたユダヤ人らもいた。
 なお、100–150人はこの虐殺から逃げ延びることができた。
 動機
 この事件がドイツによる教唆によって計画された可能性は報告書で指摘されているが、主体的実行犯はポーランド人であり、その理由が様々に議論されてきた。
 代表的なものは「ユダヤ人の対ソ協力」というものである。ドイツの侵攻以前のポーランドはソビエトによる占領が行われていたが、この期間、ユダヤ人がその人口に比べ過剰に指導的な地位についていたこと、およびその行為がポーランド人に対する抑圧に結びついていたことが指摘されている。あるいは、ポーランド国家に固執せずソ連の支配者層に取り込まれるユダヤ人に対しポーランド人が反感を持ったという分析もある。
 いずれにしてもポーランド人による虐殺行為の理由はいまだ判然としていない。
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🔯39」─3─キリスト教会がなぜ戦うのか。十字軍を生んだカトリックの怖い理屈。~No.136 

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 日本に伝来した中世キリスト教会やイエズス会伝道所群の悍ましい暗黒史を持っていた。
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 中世キリスト教会やイエズス会伝道所群らは、日本に対して宗教侵略を行っていた。
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 2026年7月11日 MicrosoftStartニュース ダイヤモンド・オンライン「【大人の教養】「教会がなぜ戦うのか?」十字軍を生んだカトリックの怖い理屈
 伊藤敏 
 キリスト教といえば、隣人愛や平和の教えを思い浮かべる人は多いでしょう。ところが中世ヨーロッパには、修道士でありながら武器を取り、異教徒と戦った人々がいました。なぜ「祈る人」が戦場へ向かったのか。その背景には、12世紀の神学者ベルナルドゥスが広めた、信仰を守るための暴力は許されるという論理がありました。十字軍を支えた教会の答えをたどると、信仰の名のもとに戦争が正当化されていく、ぞっとする歴史が見えてきます。
 © ダイヤモンド・オンライン
 十字軍は、カトリックへの改宗運動でもあった
 十字軍は、エルサレム奪回に限らず、中世ヨーロッパにおける「異教徒との戦い」全般を意味する運動でした。その思想を支えたのが12世紀の神学者クレールヴォーのベルナルドゥスで、彼は教会の敵への武力行使を正当化し、巡礼と結びついていた十字軍を戦争へと変えていきました。
 第1回十字軍の背景には11世紀の巡礼熱があり、ローマ、サンティアゴ・デ・コンポステラ、エルサレムが三大巡礼地とされました。なかでもサンティアゴは比較的安全な巡礼地として重要性を増し、イベリア半島のレコンキスタとともに聖ヤコブ信仰も広がります。巡礼路が整備されると、宿場や小教会が各地に置かれ、人の往来が活発になりました。
 
 やがて巡礼路は交易路としても機能し、行商人が各地を移動するようになります。もともと中世ヨーロッパは荘園を基盤とする自給自足的な封建社会で、広域交通の整備は進みにくい状況でした。しかし巡礼の活発化を契機に陸上交通が整い、11世紀以降の商業発展を支えます。さらに十字軍遠征によって遠隔地を結ぶ商業ルートは強固になり、13世紀には広域商業圏が形成されていきました。
 騎士修道会――「戦う修道士」と巡礼
 さて、巡礼熱の高まりは1096年に第1回十字軍という形で発露されることとなり、この十字軍は聖地エルサレムの占領に成功します(1099)。
 この結果、シリアあるいはレヴァント(ここではいずれも地中海東岸一帯を指す歴史的地名)に、エルサレム王国、アンティオキア君侯国、トリポリ伯国、エデッサ伯国といった十字軍国家(ウトラメール)が形成されることになります。
 一方、第1回十字軍に参加した諸侯の多くは、所領の確保を目的に新天地へと向かったため、目的の土地を手にできなかった諸侯らは次々とヨーロッパに帰還します。こうなると十字軍国家を周囲のイスラーム勢力から防衛する人手が不足することとなり、これは聖地へと向かう巡礼の安全確保の上でも懸案となりました(下図参照)。
 出典:地図で学ぶ「深読み」世界史
© ダイヤモンド・オンライン
 このため、十字軍国家防衛や聖地巡礼者の守護を目的に、12世紀より騎士修道会が発足するようになります。そもそも「修道院」とは俗世間から距離を取り、キリスト教の修行に励む場です。修道院は共同生活が前提となり、6世紀のベネディクト会の発足以降、ローマ教皇より認可を得た修道組織は「修道会」と呼ばれるようになります。
 修道院・修道会の構成員である修道士は「祈り、働けOra et Labora」、すなわちキリスト教の信仰と自給自足のための労働(おもに農作業)を、その活動の支柱とします(ただし13世紀には労働によらず都市部で寄進を受け信仰実践に励む托鉢修道会も出現)。
 なぜ暴力が容認されたのか?
 騎士修道会は、この「祈り、働け」のうち「働け」=労働の代替として異教徒との戦いに従事するもので、その構成員は修道士でありながら騎士(戦闘員)であるという、二重の性格を有するものでした。ここで重要なのが「異教徒との戦い」という点で、本来キリスト教は隣人愛を旨とする教義ではあったものの、カトリック教会は「異教徒から信仰を守る」場合に限り(いわば建前として専守防衛の範囲内で)暴力を容認したのです。
 (本原稿は『地図で学ぶ「深読み」世界史』を一部抜粋したものです)
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👠37:─1─地球の温暖化。ヨーロッパを襲う記録的熱波で関連死推定2万人の報道。~No.83No.84 

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 欧米諸国は、大火災に襲われていた。
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 2026年7月8日 MicrosoftStartニュース ニューズウィーク日本版「もはや「災害」の域…殺人級の「熱波」に襲われ、ヨーロッパで死者が2000人超え
 © ニューズウィーク日本版
 イタリアの首都ローマの世界遺産、サンタンジェロ城を望むテベレ川の川辺は6月29日、酷暑を避けて夕暮れに涼を取る人たちであふれた。
 ヨーロッパは6月後半から猛烈な熱波に襲われ、フランスやスペインでは連日、最高気温が40度を超える記録的な高温に。熱波の死亡者は2000人を超えるとみられ、もはや災害の域に達している。
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 7月8日 YAHOO!JAPANニュース ABEMA TIMES「ヨーロッパの熱波は偏西風“大蛇行”が要因か
 気象庁HP
 6月下旬にヨーロッパを襲った記録的な熱波について、気象庁はアフリカから高温の空気が流れ込みやすい状態が続いたことが要因だと発表しました。
 【映像】扇子で扇ぎ、ミストを浴び…現地の人の様子
 気象庁によりますと、ヨーロッパでは6月21日から28日ごろにかけて、平均気温が平年を10度程度上回る顕著に高温な日が続きました。ドイツやデンマークなど6カ国で国内の最高気温を記録したということです。
 気象庁は記録的な熱波について、6月下旬ごろから偏西風が大きく北側に蛇行したことでヨーロッパ上空で高気圧が発達し、高温の空気が留まったことが原因だと分析しました。高気圧の中心付近では下降気流で暖かい空気が圧縮されて高温になりやすく、周辺では空気の流れが時計回りになるためヨーロッパの西側でアフリカから高温の空気が流れ込み、広い範囲で気温が上昇したとみています。
 ヨーロッパでは2003年にも記録的な熱波が発生し、過去最悪の被害を引き起こしました。今回の熱波は地表付近の気温と関係する上空1500メートルの気温が最も高かった2003年8月を上回り、過去最高を記録したということです。
 気象庁は今後、偏西風の蛇行が再び大きくなるとみられ、ヨーロッパの西部から中部にかけて気温が上昇する可能性が高いため、熱中症への対策が必要だとしています。(ANNニュース)
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 7月9日 MicrosoftStartニュース ニューズウィーク日本版「熱波は認知戦を加速する──気候変動が社会の分断を広げる二つの経路
 一田和樹
 © ニューズウィーク日本版
 <欧州を襲う記録的な熱波は、多くの命を奪うだけではない。移民や格差を通じて社会の分断を深め、異常気象をめぐる陰謀論を広げることで、外国による情報操作(認知戦)の効果を高めている>
 欧州の熱波が、毎年のように過去最悪を更新している。多くの人にとって、それは健康や防災の話題だろう。だが熱波は、もう一つの安全保障の課題ともつながっている。認知戦、つまり外国などが情報操作によって社会の見方や判断を揺さぶろうとする活動である。
 熱波をもたらす気候変動は、二つの入り口から認知戦を後押しする。一つは、移民の増加と格差の拡大によって社会の分断を深め、情報操作がつけ込む隙を広げること。もう一つは、熱波や異常気象そのものが陰謀論のきっかけになり、国家に利用されることだ。
 熱波がひどくなるほど、情報操作は効きやすくなる。以下では、まず熱波の被害の大きさを確かめ、この二つのつながりを順にたどったうえで、最後に日本について考えたい。
 熱波という現実の規模
 2026年6月、欧州は記録的な熱波に見舞われた。世界保健機関(WHO)は6月28日時点、6月21日以降の高温に関連した超過死亡が欧州全体で1,300人を超えたと発表した。超過死亡とは、平年の同時期に見込まれる死者数を上回った分を指す。
 フランスでは前月までの平均と比べて約1,000人が上積みされ、その85%が65歳以上だった。
 単発の夏だけを見れば、突出した災害には映りにくい。だが熱波は毎夏くり返される。バルセロナ世界保健研究所(ISGlobal)が医学誌ネイチャー・メディシンに発表した研究は、2022年夏(5月30日から9月4日)の欧州の熱関連死を61,672人と推計した。
 国別ではイタリア18,010人、スペイン11,324人、ドイツ8,173人が多い。同じ研究グループは、2022年から2024年までの3夏で合わせて18万1,000人を超えると見積もっている。
 この規模は、社会が多大な関心と資源を注いできた他の脅威と比べても際立つ。欧州刑事警察機構(ユーロポール)の集計では、EU域内のテロによる死者は、最も多かった2015年でも151人だった。2022年夏の熱関連死は、その約400倍にあたる。
 欧州環境機関(EEA)によれば、1980年から2023年に欧州で記録された気象・気候の極端現象による死者の95%が熱波に関連する。科学者の国際共同研究グループ、ワールド・ウェザー・アトリビューションは、化石燃料の燃焼に伴う温暖化が欧州の熱波を数十年の間に著しく悪化させたと分析している。
 熱波は例外的な異常気象ではなく、頻度と強度を増しながら反復する平年の現象になりつつある。
 気候変動が広げる分断
 情報操作は、社会にゼロから亀裂を作るわけではない。既にある亀裂を見つけ、そこを広げて使う。欧州対外活動庁(EEAS)は、外国による情報操作・干渉(FIMI)を、意図的かつ組織的に行われる操作的な行動様式と定義し、ロシアがそれを使って長く「社会に分断を蒔いてきた」と指摘する。
 数えられた事案は、2023年11月からの1年間だけで505件、90か国に及ぶ。だとすれば、社会の分断を進めるものは何であれ、情報操作に手を貸すことになる。そして気候変動が、分断を二つの方法で静かに押し広げる。
 一つは、人の移動である。世界銀行は2021年9月の報告で、気候変動により2050年までに六つの地域で最大2億1,600万人が自国内での移動を強いられる可能性があると推計した。
 地域別の内訳は、サハラ以南アフリカが8,600万人、東アジアと太平洋が4,900万人、南アジアが4,000万人などである。欧州議会の調査部門によれば、この数はドイツ、フランス、イタリアの人口を合わせた規模を上回る。
 しかも、これはあくまで国内移動の推計にとどまる。同じ調査部門は、気候を理由に国境を越える人が増えつつあり、欧州は北米と並ぶ主要な行き先になりうると指摘する。とりわけ、気候変動に弱い中東と北アフリカは、いわば「欧州の玄関口」にあたる。
 大量の越境移動は、受け入れ地域で資源や社会基盤をめぐる対立を招きやすく、専門家はこれを大きな地政学的リスクと呼ぶ。移動する人々の存在は、しばしば政治的な対立の火種になる。
 EUの対テロ調整官が2024年1月30日にまとめた文書は、気候変動が右翼過激主義の論理に組み込まれつつあると警告し、環境を掲げる過激思想(エコファシズム)が、豊かな北側の白人が南側からの移民に「置き換えられる」とする「大置換(グレート・リプレイスメント)」陰謀論と結びつく例を挙げた。気候がもたらす人の移動が、排外的な物語の燃料にされている。
 気候移民の地域別推計
 もう一つは、格差である。熱波の被害は均等には降りかからない。WHOは、都市と農村の貧困層が、質の低い住宅と冷房へのアクセスの欠如ゆえに、高温に不均等にさらされると指摘する。
 世界の熱関連死は年間およそ48万9,000人(2000年から2019年の平均)にのぼり、65歳以上の死者は2000年代初頭から2010年代末にかけて約85%増えた。
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2022年の報告も、脆弱性が低所得などと結びつく不平等によって悪化すると明記している。
 格差は都市の内部にも及ぶ。米国の5,723の都市化地域を調べた2021年の研究(医学誌プロス・ワン)は、その92%で、低所得地区が高所得地区より樹木が少なく、平均で1.5度、北東部では最大4.0度高温になると示した。暑さで働ける時間が減れば、その分の収入も減る。
 医学誌ランセットの調査によれば、こうして世界で失われる労働時間は年々増えており、とりわけ屋外で働く人を直撃している。熱波は、もともと不利な立場の層をさらに追い込み、社会の不満と亀裂を深める。
 移民をめぐる対立と、広がる格差。いずれも情報操作が最も好む土壌である。熱波が悪化するほど、この土壌は肥える。
 異常気象が生む陰謀論と、その国家利用
 気候変動は、分断の土壌を整えるだけではない。熱波や豪雨、山火事といった異常気象それ自体が、陰謀論の引き金になる。
 2024年10月29日、スペイン東部バレンシアを襲った集中豪雨(現地でDANAと呼ばれる寒冷渦による大雨)は、約238人の命を奪った。
 その直後から、洪水は人為的に起こされたとする主張が広がった。米国の研究施設HAARP(アラスカにある電離層の観測施設)による気象兵器説、ダムの取り壊しや放流をめぐる陰謀説、航空機がまく化学物質だとする「ケムトレイル」説などである。
 スペインの主要なファクトチェック機関マルディータは、この災害をめぐって流布した多数の偽情報を検証した。いずれも科学的根拠を欠くと確認されている。同じ構図は、2023年8月8日に起きたハワイ・マウイ島の山火事でも見られた。
 「指向性エネルギー兵器」による攻撃だとする説が拡散し、米国のファクトチェック機関ポリティファクトは「誤り」と判定した。証拠とされた画像は、無関係な別の事故の映像の使い回しだった。山火事をめぐっては、責任を移民に転嫁する主張も現れる。
 2023年夏にEU域内で当時最大規模の山火事に見舞われたギリシャでは、火災は移民の放火によるものだとする主張が政府高官からも出たが、検察は放火を裏づける重大な証拠はないとして、拘束した移民への容疑の取り下げを求めた。
 こうした主張は、実在する技術への無理解につけ込む。科学的検証を行うサイエンス・フィードバックによれば、HAARPの送信出力は最大でも3.6メガワットにすぎず、ハリケーンが生み出す力(150万メガワットに相当するとされる)とは桁が違う。
 気象を意のままに操る「気象兵器」は存在しない。それでも、生活に必要な機能へ徒歩や自転車で15分以内に届く街を目指す都市計画の構想「15分都市」は、政府が気候変動を口実に人々の移動を制限し生活を管理する「気候ロックダウン」の陰謀だと歪められた。
 その主張は2022年末から欧州各地に広がり、英国オックスフォードでは計画に携わる当局者に殺害予告が届いた。欧州デジタルメディア観測所(EDMO)は、気候をめぐる偽情報が恒常的に検出され、熱波などの異常気象時にピークを迎えると報告している。
 異常気象が起きるたびに、情報操作の材料が供給される。
 戦略対話研究所(ISD)が主導する団体連合の分析では、2021年の国連気候変動会議(COP26)の期間中、SNSのフェイスブック上で気候対策に懐疑的なコンテンツが、権威ある情報源の12倍の反応を集めた。誤った情報の方が、正確な情報より速く広く伝わりやすい。
 そして、この材料は国家主体に利用される。こうした陰謀論や否定論の多くは、外国が一から作り出すというより、社会の内側から自然に生じる。
 国家主体は、それを新たに作る手間をかけず、増幅し、自らの目的に沿わせて用いる。近年の気候偽情報は、気候変動そのものの否定から、気候対策や科学への攻撃へと重心を移している。
 デジタルヘイト対策センター(CCDH)が2024年1月に公表した分析によれば、動画共有サービスのユーチューブ上の気候否定主張のうち、「対策は無効だ」「科学や運動は信用できない」といった新しい型の否定が70%を占め、2018年の35%から倍増した。
 逆に、温暖化は起きていないとする古い型の否定は、2018年の65%から2023年の30%へ減った。攻撃の的が「気候の事実」から「気候政策と、それを支える信頼」へ移ったことを示している。
 CCDHは、こうした否定の主張を載せた動画が動画共有サービスにもたらす広告収入を、年間で最大1,340万ドルと見積もっている。偽情報は、放置されるだけでなく、収益を生む構造のなかで広がっている。
 気候変動をめぐる否定論は「温暖化否定」から「対策否定」へ
 この転換は、国家による情報操作の狙いと重なる。北大西洋条約機構(NATO)の情報環境評価(2022年5月から2024年5月)は、交流サイトやウェブ報道において、ロシアがエネルギー転換をめぐる敵対的な主張の「主たる推進者」だと結論づけた。
 EUのファクトチェック団体EUディスインフォラボは、ロシア発の情報操作「ドッペルゲンガー」が、対ロシア制裁がドイツに停電と産業の崩壊をもたらすとする偽情報を、独メディアを模した偽サイトで拡散したと報告している。
 米司法省が2024年に訴追した別の事案では、ロシア国営放送RTが米国の動画制作会社に秘密裏に約1,000万ドルを渡していた。この網が広めた気候偽情報は2,350万回以上視聴されたと、気候偽情報に対抗する団体連合CAADは分析している。
 気候変動そのものは否定せず、脱炭素政策と社会の結束を狙い撃つ。熱波が現実の不安を生むほど、この攻撃は人々に刺さりやすくなる。
 日本も他人事ではない
 こうして気候変動は、分断の土壌を広げ、陰謀論の材料を供給するという二つの入り口から、認知戦の効き目を高めていく。熱波はその中心にある。物理的な災害であると同時に、情報操作の増幅装置として働く。しかも、この関係は一方向ではない。
 情報操作が脱炭素政策への支持を削げば、対策は遅れ、温暖化と熱波はいっそう悪化する。熱波が認知戦を利し、認知戦が熱波への対処を妨げるという循環さえ生まれうる。
 これは欧州だけの話ではない。日本もまた記録的な暑さのなかにある。
 2024年の熱中症による死者は6月から9月で2,033人にのぼり、過去最多となった(厚生労働省の人口動態統計)。日本気象協会によれば、熱中症で救急搬送された人も5月から9月で9万7,578人と、2008年の調査開始以降で最も多く、福岡県太宰府市では最高気温35度以上の猛暑日が62日と、国内の歴代最多を更新した。
 高齢化が進む日本の社会は、欧州と同じく高温に弱い層を多く抱える。陰謀論の側も例外ではない。日本では災害のたびに「人工地震」やHAARPによる「気象兵器」を持ち出す主張が拡散する。分断の土壌と、陰謀論の材料。日本も、その両方を備えつつある。
 熱波への適応策を、防災や健康の問題としてだけ扱うのでは足りない。気温の上昇が社会の分断と不信をも押し広げる以上、認知戦への防御を固める取り組みと一体で進める必要がある。脅威の実際の姿を捉え直すことが、その出発点になる。
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 7月9日 MicrosoftStartニュース FNNプライムオンライン「熱波で2万人が死亡と推定 西ヨーロッパの平均気温が6月の観測史上最高を記録
 © FNNプライムオンライン
 今年6月の西ヨーロッパの気温が観測史上最高を記録したことが分かりました。
 EU=ヨーロッパ連合の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は9日、今年6月の西ヨーロッパの平均気温が20・74度で、6月として観測史上最高だったと発表しました。
 世界全体としての6月の平均気温は16・54度で、史上2番目の暑さでした。
 今年6月後半は、ヨーロッパ各地が前例のない熱波に見舞われ、フランス、スペイン、ドイツなどで最高気温の記録を更新。
 熱中症など暑さに関連する死者が2万人に上ると推定されています。
 コペルニクス気候変動サービスは南米ペルー沖の太平洋赤道域では「エルニーニョ現象」が発生し、今後急速に強まる見通しだと分析しています。
 また、熱波が次々と連鎖して発生する異常事態で、今後、熱波はさらに激しく、長引き、より広範囲に影響を及ぼすだろうと警鐘をならしています。
 関連記事
 【解説】44.3℃!?ヨーロッパに記録的熱波…この空気が日本にやってくる?今年の夏は 天達気象予報士「猛暑になります」
 【解説】世界各地で異例の“熱波襲来” ヨーロッパでは死者も 原因の一つは「偏西風の蛇行」 日本でも異常気象の恐れ
 「暑さが違う…」ニューヨークで気温42度記録、欧米を記録的熱波が襲う 各地で山火事発生 スペインで1000人超が死亡
 関連するビデオ: 西欧で観測史上“最も暑い6月” 各地で記録的熱波 関連死推定2万人の報道も (テレ朝NEWS)
 テレ朝NEWS
 西欧で観測史上“最も暑い6月” 各地で記録的熱波 関連死推定2万人の報道も
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💠33」─1─トランプが「共産主義者」と攻撃する民主社会主義者は中間選挙に勝てるか。〜No.96No.97 

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 2026年7月6日 MicrosoftStartニュース ニューズウィーク日本版「トランプが「共産主義者」と攻撃する民主社会主義者は中間選挙に勝てるか
 ダン・グッディング
 彼ら民主社会主義者をトランプは「共産主義者」と呼ぶ(2025年10月26日、ニューヨーク市長選の集会で。左からサンダース上院議員、当時のマムダニ候補、オカシオコルテス下院議員) REUTERS
 © ニューズウィーク日本版
 ドナルド・トランプ米大統領はここ数週間、共産主義の脅威を訴え始めた。2026年中間選挙が近づき、民主社会主義を掲げる候補への支持が広がるなか、共産主義こそが米国が直面する最大級の脅威の一つだと訴えている。
 トランプは7月3日に歴代大統領の巨大彫刻で知られるラシュモア山で演説し、「この国で共産主義という脅威が再び勢いを増している」と警告した。「共産主義者になるか、愛国者になるかのどちらかだ。両方を選ぶことはできない」と支持者に語った。
 独立記念日の7月4日にワシントンの国立公園「ナショナル・モール」で行った演説でもこの主張を繰り返し、共産主義は「始まる前に止めなければならない」脅威であり、「すぐに切除すべき癌」のようなものだと表現した。
 こうした発言は、トランプや他の共和党議員が、米国最大の民主社会主義団体「全米民主社会主義者(DSA)」と関係の深い民主党候補を共産主義と結び付けようとする戦略の延長線上にある。
 本誌が専門家に取材したところ、社会主義と共産主義には明確な違いがあるが、共和党は両者を混同する傾向があるという。
 ニューヨークのバーナード大学で政治学を教えるシェリ・バーマンは本誌に対し、「共和党は、共産主義国出身の有権者に、DSAは米国をキューバや北朝鮮のような国に変えようとしていると思わせることで、恐怖心をあおろうとしている」と語る。
 「また米国には強い社会主義政党や共産党が存在しなかったため、これらの言葉が歴史的に何を意味してきたのか、多くの米国人はよく知らない」
 民主社会主義とは何か
 民主社会主義は、民主的な制度を通じて経済格差を縮小し、医療、住宅、教育、労働者保護といった公共サービスを拡充することを目指す政治思想だ。
 支持者は一般に、経済の主要部門をより厳しく規制すべきだと考え、一部については公的所有も支持するが、同時に複数政党制による選挙、市民的自由、立憲民主主義も支持している。
 近年では、ニューヨーク州選出でDSAの支援を受けるアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員やニューヨーク市長ゾーラン・マムダニなど、DSAの支援ネットワークの拡大によって、この思想への注目が高まっている。
 この運動は、国民皆保険、労働者の権利の保護強化、公立大学の授業料無償化、社会保障制度の拡充などを主要な政策として掲げることが多い。
 バージニア大学ミラー公共問題センターで大統領研究部門の責任者を務めるマーク・セルバーストーンは本誌に対し、「民主社会主義者は政治的多元主義の下で活動し、その体制を受け入れている。一方、共産主義者は最終的には、一党独裁下の党こそが真実の裁定者であると考える。複数政党制を支持すると言っても表向きだけだ」と説明した。
 「民主社会主義者は国家の介入、とりわけ社会福祉政策での役割拡大を支持するが、それでも市場経済は受け入れている。一方、共産主義者は生産手段の全面的な国家所有と中央集権的な経済計画を信奉する」
 カール・マルクスが理論化し、その後ソ連やキューバなどで実践された共産主義は、生産手段の私有を最終的に廃止し、階級のない社会を築くことを目指す思想だった。
 共産主義国家は歴史的に、中央集権的な経済計画と一党制を採用してきた。
 共産主義シンパもいるが
 セルバーストーンは、社会主義はしばしば「完全な共産主義へ向かう途中の中継地点」と見なされており、両方の立場の人々がこの2つの言葉を同義語として使うこともあったと指摘する。
 「しかし、民主社会主義者が支持する政策──労働者保護の強化、より公平な所得分配、社会福祉への国家支援拡大──に反対する人々にとっては、社会主義の行き着く先は共産主義だという発想と結び付けられるため、政治的なレッテル貼りとして便利だ」とセルバーストーンは語った。
 バーマンは、DSAの大半のメンバーはソ連型ではなく、西欧型の社会民主主義的な福祉国家に近い社会を目指しているとした一方で、キューバやベネズエラのような「非民主的独裁政権」を称賛する人々も存在すると指摘した。
 「共産主義に共感を示す人もいる」とバーマンは語る。「DSAの綱領は、社会民主主義的な現実的経済政策、資本主義批判、その他の改革案が入り混じったものだ。その中には民主党左派に典型的なものもあれば、さらに急進的なものも含まれている」
 トランプによる最近の共産主義批判は、進歩派や民主社会主義を掲げる候補が各地で選挙に勝利している流れと重なっている。共和党は、こうした勝利を民主党全体が中間選挙を前にさらに左傾化している証拠だと訴えている。
 ラシュモア山での演説でトランプは、この問題を11月の選挙と明確に結び付け、共和党が行動しなければ議会の支配権を失う可能性があると警告した。また、共産主義思想は米国の文化や政治制度への脅威だと主張し、自らが掲げる選挙関連政策を進めるよう議会に求めた。
 今日の米国内には存在しない脅威
 大統領は独立記念日の7月4日の演説でも、中間選挙で「共産主義者」が立候補することへの懸念に言及した。
 「米国が共産主義国家になることは決してない。そんなことは起きない」とトランプはナショナル・モールの聴衆に語った。「共産主義は敗者であり、これからも敗者であり続ける。共産主義体制は米国の体制とは正反対であり、一度も成功したことがない」
 こうしたメッセージは、より長い政治的伝統にも連なっている。米国では長年、特に反共主義が米国政治を特徴づけていた冷戦期には、多くの政治家が政敵を攻撃するために社会主義や共産主義というレッテルを利用した。
 バーマンは「冷戦期には、国外に危険な共産主義政権が存在し、国内の政治組織への浸透を図っていたため、こうした主張には明確な背景があった」と語る。
 「現在でも右派による脅しの手法として使われているが、今日の米国には大きな共産主義運動は存在せず、国際社会における現実の脅威も共産主義政権から来ているわけではない」
 歴史家らは、政敵を共産主義者と呼ぶ場合、その人物が実際に共産主義を支持しているかどうかとは無関係に、政治的主流派の外側に追いやるための手法として機能してきたと指摘している。
 冷戦下の1970年代初頭に設立されたDSAは7月6日、大統領のこうした懸念について問われると、次のようにコメントした。
 「私たちの組織にはさまざまな立場を自称する人々がいるが、全員が民主社会主義と、米国の社会主義運動指導者ユージン・デブスやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアといった社会主義指導者の理念の下で団結している」とDSAの報道担当者は本誌に語った。
 中間選挙にとっての意味
 しかし、この論争をDSAや民主党全体が簡単に受け流せるとは限らず、2026年中間選挙の主要な争点の一つになる可能性がある。
 民主党は議会での勢力回復を目指し、共和党は多数派維持を狙っている。知名度の高い民主社会主義候補の台頭は、共和党に新たな攻撃材料を与えている。
 共和党の選挙戦略担当者は、こうした候補者こそ民主党の左派路線を象徴する存在だと主張する可能性が高い。
 一方、民主党は、共和党が保守層の支持を固めるために思想的な違いを意図的に誇張していると反論する可能性が高い。
 この論争は、生活費や住宅価格の高騰、医療や経済の格差といった幅広い不安も映し出している。こうした問題は、とりわけ若い有権者の間で民主社会主義政策への関心を高める要因となってきた。支持者は、こうした政策は経済状況への対応策だと主張する一方、批判派は政府の経済への介入を過度に拡大させるものだと反論している。
 中間選挙に向けた選挙戦が本格化するにつれ、民主社会主義とは何か、それが共産主義とどの程度似ているのかをめぐる論争は、今回の選挙戦を象徴する思想的対立軸の一つになりそうだ。
 7月4日のトランプの警告は、共和党がこの違いを強調することに政治的価値を見いだしていることを示している。一方、民主社会主義者とその支持者は、今後数カ月にわたり、両者は同義ではないと訴え続けることになりそうだ。
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 7月8日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「なぜ米国のZ世代は社会主義に熱狂するのか…中心にいるフォロワー300万人超"赤いインフルエンサー"の正体
 Z世代の62%が「社会主義に好意的」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Xavier Lorenzo
 アメリカではトランプ大統領の支持率が低下する一方、Z世代を中心に社会主義への支持が増えているという。在米ジャーナリストのシェリーめぐみさんは「資本主義に疲れ、政府に失望したミレニアル世代やZ世代は、左派系のインフルエンサーを熱狂的に支持している」という――。
 【画像をみる】Z世代が熱狂するフォロワー300万人超“赤いインフルエンサー”の正体
■Z世代の62%が「社会主義に好意的」
 6月23日、ニューヨークで11月の中間選挙に向けた民主党の党内予備選が行われた。通常なら、全米が注目するような選挙ではない。ところが今回は違った。
 その理由は、ニューヨークで熱烈な支持を集めるマムダニ市長が推薦した、民主社会主義・プログレッシブ系の3候補が、民主党主流派の候補者たちを破ったからだ。破れたうちの2人は現職だったという、誰も予測しなかった衝撃の結果である。
 アメリカで民主社会主義が勢いを増している背景には、若い世代の資本主義への不信がある。
 2025年の調査では、18〜29歳のZ世代の62%が「社会主義に好意的」と答えた。一方、アメリカ人全体の「資本主義」への好感度は、5年間で60%から54%まで低下している。
 若者の社会主義への傾倒は、一時的な左派ブームというより、資本主義そのものへの信頼低下の表れでもある。
■Z世代が熱狂的に支持する左派インフルエンサー
 この動きはなにもマムダニ1人から始まったものではなく、背景には2010年代から脈々と続くバーニー・サンダースら民主社会主義・プログレッシブ系政治家の粘り強い努力がある。
 そうした運動をネット空間に持ち込み、若者、とりわけ政治に幻滅した若い男性たちに届けて若い世代から熱狂的に支持されている人物がいる。ハサン・パイカーだ。
 ハサン・パイカーは、アメリカで活動する政治系配信者。34歳のトルコ系アメリカ人でイスラム教徒だ。
 ゲーム中継で知られるストリーミング・プラットフォームTwitchで、毎日7〜8時間の生ライブをロサンゼルスの自宅スタジオから放送している。
 Twitchで300万人以上、YouTubeで191万人のフォロワーと、非常に大きな影響力を持っており、特にZ世代から熱狂的な支持を集めている。英ガーディアン紙は、「アメリカ左派の最大の声の一つ」と評している。
 2025年2月、彼は全く無名だったマムダニの応援に駆けつけ、番組のゲストにも迎え、マムダニの勝利に貢献した。
 今回の予備選でも、選挙戦終盤に現地入りし、候補者の応援に回ったことで、番狂わせの要因の一つとなったと言える。
 「メガホン」を自称する彼が、過去10年以上声を限りに発信してきたメッセージが、今現実として現れていると言ってもいい。
■既存メディアより影響力を持っている
 私がハサン・パイカーの番組と出会ったのは、2020年の大統領選だった。Z世代の大学院生から「大きな影響を受けている配信者」として、名前を聞いたことがきっかけだった。
 配信を視聴してみたところ、これが実に面白い。
 例えば、「医療保険制度がおかしい」と批判するのではなく、「貧乏人に医療を与えたくないって、お前どうかしてるんじゃない?」というような煽り口調にユーモアが込められていて、思わず笑ってしまう。
 またパイカーはよくCNNやFOXニュースなどのクリップを流しながら、最新の政治情勢を解説する。時にはAOCやバーニー・サンダースら、民主社会主義者・プログレッシブの政治家をゲストに迎え、真剣な討論も行う。
 彼が大きな存在感を示したのは、2020年の大統領選テレビ討論会のストリーミング中継だった。この時、若者たちが討論会をCNNやMSNBCではなく、「Twitchでハサンと一緒に見る」という行動に出たことで、パイカーのような政治系配信者が既存メディアより影響力を持つという構図が可視化されたのだ。
■マムダニ市長の増毛剤で大喜び
 パイカーが人気を得た最大の理由は、彼が左派の政策を語るからではない。
 若者に人気のTwitchという空間で、ニュース、雑談、怒り、笑い、生活感を混ぜながら、政治の話題を日常の会話に変えたことにある。
 ロサンゼルスの自宅スタジオにはしばしば、愛犬のカヤの姿が見える。時にはお母さんがランチを届けに来たりもする。オーディエンスはそんな光景に、まるで友達の家に遊びに行ったかのような親しみを覚える。パイカーの配信は、かしこまって視聴するものではなく、「彼と一緒に過ごす時間」なのである。
 パイカーの話題は、時に政治以外の、筋トレや男の身だしなみのような話にも及ぶ。
 つい先日など、マムダニ市長が、自分が推薦した増毛剤を使っていることを知り、大喜びしている様子を配信していた。
 こういったところを見ると、ジョー・ローガンら右派インフルエンサーのポッドキャストが担っている、「マノスフィア(男の居場所)」の役割を果たしているとも言える。
 マノスフィアとは、「社会から自分の居場所が失われた」と感じる男たちが集まるネット空間だ。
 家賃、医療費、学生ローン、AIによる雇用不安。少し前からアメリカの若者の間には、普通に働いてもまともに暮らせないという怒りが広がっていた。
 その怒りをいち早く取り込んだのは右派だった。若い男性の孤独や不満は、マノスフィアの中で、反woke、反フェミニズム、反移民の物語へと変換されていった。
 トランプは2024年の大統領選で、マノスフィアへの影響力を最大限に利用して勝利する。
■トランプ→左派の政治系インフルエンサー
 しかし、第二次トランプ政権下でも、若者の生活不安は解消されていない。かつてトランプに賭けた若者の一部には、失望が広がり始めている。
 その怒りの受け皿になろうとしているのが、パイカーなど左派の政治系インフルエンサーというわけだ。
 パイカーのアプローチはトランプとは対照的だ。怒りの矛先を女性や移民ではなく、現代政治と社会構造へ向け直そうとしているからだ。
 パイカー自身は明確な左派であり、民主社会主義に近いプログレッシブの立場を隠していない。
 だが彼は若者に「左か右か」という踏み絵を突き付けはしない。
 彼が発信するのはイデオロギーを問わず万人が共感できる言葉だ。そこには「なぜ家賃が払えないのか」「なぜ医療費で破産するのか」「なぜ働いても生活が楽にならないのか」という生活の実感が並ぶ。
 だから彼のメッセージは、イデオロギーの壁を越え、経済的な不平等への怒りとして誰にでも届くのである。
■「自分は未来の億万長者」という幻想
 同時に、彼は若い男性の喪失感を弱者のせいにしない。家賃を上げているのは移民ではなく大家であり、食料品価格を押し上げているのはトランスジェンダーや不法移民ではなく、企業への権力集中と強欲なインフレだ、と語る。
 さらに彼は、「ほとんどのアメリカ人は、自分たちが労働者階級だと理解していない」と問題提起する。99%の人々は資本蓄積で富を得ているのではなく、賃金を得て暮らしている。にもかかわらず、不思議なことに彼らには労働者の自覚がないのだ。
 アメリカ人の多くには、「自分はまだ成功していないだけの未来の金持ち」という感覚がある。これはいわばアメリカンドリームを支えてきた「幻想」である。実際に金持ちになれるのはごくわずかだからだ。
 だから富裕層課税や企業規制を、労働者を救うための政策とは考えず、「いつか自分に向けられる罰」のように感じてしまうのだ。
 パイカーの言葉が刺すのは、まさにその幻想だ。
 「あなたは資本家を守っているが、資本は持っていない」
 そう言い切ることで、若者を「自分は未来の億万長者」という幻想から「自分はいま搾取されている労働者」という現実に引き戻している。
 パイカーはこうした「現実的な経済ポピュリズム」の実践によって、社会に居場所がないと感じる若者たちが、イデオロギーを超えて共感する場を作っていると言えよう。
■民主党にも裏切られたという失望
 ハサン・パイカーは1991年生まれの34歳。マムダニ市長と同い年のミレニアル世代だ。
 この世代の人はしばしば、「政治に裏切られた」いう共通の感覚を持っている。
 彼らは、9.11とイラク戦争を通じて、アメリカ政府を信用しなくなった。さらにリーマンショックでは、行き過ぎた資本主義が普通の家庭を破壊する現実を目の当たりにした。
 その不信を政治の言葉にしたのが、2011年9月にウォール街で発生したアメリカ経済界、政界に対する抗議活動の「オキュパイ運動」だった。彼らが掲げた「99%対1%」(上位1%の富裕層が所有する資産が増加し続けている)というスローガンは、富裕層と普通の人々の分断を可視化した。
 2016年の大統領選では、この怒りをバーニー・サンダースが受け止めた。「すべての人に医療を」というスローガンで大統領選に出馬し、若者の強い支持を得た。
 しかし結局民主党はヒラリー・クリントンを候補に立て、トランプに敗北する。
 サンダースを支持していたリベラルの若者には、「民主党にも裏切られた」という深い失望が残った。
■マムダニNY市長が支持される理由
 あれから9年、パンデミックを経て、ミレニアル世代の次のZ世代が成人に達している。一方、家賃、医療費、学生ローン、AI競争による雇用不安。未来への懸念は、さらに具体的な生活苦としてあらわれている。
 それを、「当たり前に暮らせる街を取り戻す」というスローガンに言い換えたのが、マムダニ・ニューヨーク市長だ。
 民主社会主義的な主張を、市政という生活に密着した舞台で、イデオロギーではなく「経済」に言い換えた彼の功績は大きい。
 就任から半年、彼の公約である乳幼児保育の全面無償化、家賃の一部凍結、市が経営するスーパーマーケットなどは着々と実現に向かっている。
 そしてついにそのパワーが、国政へ波及し始めた時、パニックに陥ったのは、「身内」であるはずの民主党主流派だった。その矛先は人気者マムダニではなく、その背後にいるインフルエンサーに向かっていった。
■民主党主流派が警戒しているワケ
 実は、民主党主流派はパイカーを警戒し恐れている。
 パイカーその人を恐れているというよりも、彼の背後で膨らみ続ける、若者の親パレスチナ世論、富裕層批判、そして民主党中道派への不信といった動きを警戒しているのだ。
 その警戒感がはっきり表に出たのが、2026年3月19日、ウォール・ストリートジャーナルのオピニオン欄に掲載された「民主党はハサン・パイカーに近づきすぎている」という記事だった。
 寄稿したのは、民主党中道派シンクタンク「Third Way」の代表ジョナサン・コーワンである。
 彼はパイカーを、反アメリカ、反女性、反ユダヤ主義的だと批判した。
 全国紙が一人のインフルエンサーを名指しで批判したこと自体が、パイカーの影響力の強さを物語っている。
 しかもこれは、単なる個人攻撃ではない。親パレスチナ世論の広がりと、親イスラエル・中道派路線との衝突、そして富裕層批判への警戒。民主党主流派が抱える不安が、パイカーという人物に集中している。
■「9.11発言」で大炎上した過去
 一方、共和党にとっても、パイカーは格好の標的である。
 「国民皆保険」さえ「極左」「共産主義」と攻撃する右派にとって、社会主義を公然と語り、イスラエル政策を激しく批判し、若者に絶大な影響力を持つ彼は、叩きやすい存在だ。
 その際に蒸し返されるのが、2019年のいわゆる「9.11発言」である。パイカーは当時、アメリカの中東政策と9.11をめぐる過激な発言で大炎上し、Twitchの一時停止処分を受け、その後謝罪している。
 さらに2025年5月には、海外からの再入国時に、シカゴのオヘア空港で約2時間にわたり拘束・尋問されたと明かした。その際、トランプについてどう考えているかを聞かれたとも語っている。
 民主党主流派からは危険視され、共和党からは攻撃対象にされる。パイカーはもはや、単なる配信者ではない。アメリカ左派の世論形成に影響を持つ存在として、政治の表舞台に引きずり出されている。
■経済ポピュリズムは全米に広がるのか?
 ニューヨークで起きた番狂わせは、一都市の出来事で終わるのか。それとも、他州へ広がる新しい政治潮流の始まりなのか。
 パイカーの視線は、すでに次の選挙へ向かっている。8月4日のミシガン州予備選だ。彼が強く支持する民主社会主義者候補、アブドゥル・エル・セイドは、当初は泡沫候補のように見られていた。しかし今では、民主党内でトップの支持率を得るまでになっている。
 パイカーはこう語る。
 「2025年2月、マムダニは誰も知らない市長候補だった。それが今では誰もが俺を押しのけてでも彼と話したがる。そのオーラが他の候補者にも波及している。たった1年で全てが変わったんだ」
 民主社会主義者による経済ポピュリズムは、11月の中間選挙に向けて、他の州にも波及していくのだろうか?
 プログレッシブのコメンテーター、ヘザー・マッギーはこう語っている。
 「有権者の多くが関心を寄せるのは、イデオロギーよりも毎日の生活です。“あらゆる人に医療を”“無償の乳幼児保育を”という一見左派的なメッセージは、今や右派の一部にも支持されています。こうした本物のポピュリズムは、保守州でも通用するはずです」
 それがトランプに代表される、排外的ポピュリズムに勝つことができるのか。
 答えはまだ出ていない。
 だが、若者の怒りを女性や移民ではなく、家賃、医療費、賃金、企業権力へと向け直す試みは、すでにニューヨークで結果を出し始めている。
 その声がどこまで届くのか。メガホンは、今日も声を上げる。

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 シェリー めぐみ(しぇりー・めぐみ)
 ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家
 NY在住33年。のべ2,000人以上のアメリカの若者を取材。彼らとの対話から得たフレッシュな情報と、長年のアメリカ生活で培った深いインサイトをもとに、変貌する米国社会を伝える。専門分野はダイバーシティ&人種問題、米国政治、若者文化。ラジオのレギュラー番組やテレビ出演、紙・ネット媒体への寄稿多数。アメリカのダイバーシティ事情を伝える講演を通じ、日本における課題についても発信している。

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 7月6日 Voice「ケント・ギルバート 本当に怖かった共産主義
 私が40年以上前に初めて日本にやってきたころ、不思議だと感じたことの一つが、日本のメディアがあまりにも共産党や社会党を持ち上げ、ソ連や中国を賛美していることでした。日本は自由主義と民主主義を採用した西側諸国の一員であるはずなのに、なぜテレビや新聞は左翼ばかりを賛美しているのか、当時の私には理由がわからなかったのです。
 意外と知らない日本人も多いですが、そもそもアメリカでは、共産党が1954年に非合法化されています。アメリカ国内では共産主義を標榜する活動をやってはいけないし、そういう政党を結成することも連邦法で禁じられているのです。
 アメリカで共産党が非合法化されたのは、1948年ごろから50年代前半にかけて行なわれた「赤狩り」を受けてのものです。当時の冷戦を背景に、ジョセフ・マッカーシー上院議員とそのスタッフが先導したことから、「マッカーシズム」とも呼ばれます。彼らの行動に対しては“やり過ぎ”という批判もありましたが、マッカーシーらが共産主義者として糾弾した者たちのなかには、実際にソ連のスパイがいたことがのちに判明しています。たとえば、ソ連に原爆製造などの機密情報を渡したとして死刑になったローゼンバーグ夫妻などです。
 ちなみに、ハリウッドで当時売れない俳優だったロナルド・レーガン大統領は、FBIのスパイとして「赤狩り」に協力していた一人です。フーバーFBI長官の意を受けて「T-10」というコードネームを与えられ、ハリウッド内の共産主義者を密告していました。
 当時のアメリカは、それだけ共産主義者の国であるソ連を恐れていたともいえます。私が小学校に入学したのは1957年でしたが、「防災訓練」が頻繁にありました。防災といっても、日本のように地震や津波を想定したものではなく、ソ連による核攻撃に備えてのものです。授業中にいきなり「ピーピーピー」という警報音がなると、生徒は急いで自宅に帰らなければいけない決まりでした。核攻撃でライフラインが途絶した場合に備え、街の至るところに備蓄倉庫が設けられていた時代でした。
 さらに毎年のように、広島の被爆を題材にした映画を見せられたことを覚えています。まだ小学生だった私にとって、共産主義とはすなわちソ連による核の脅威であり、いわば恐怖の対象として脳裏に刻まれました。いまでも放射能を示すハザードシンボルをみると、当時の怖い気持ちを思い出します。
 現在の日本に関して私が驚きを禁じえないのは、北朝鮮から発射された弾道ミサイルに日本政府が発するJアラートに対して、「うるさい」「無意味」といった有名人の発言が公然と紹介されたことでした。平和ボケもここまでくると、もはや言うべき言葉を失います。
 米ソ冷戦中には、核戦争寸前の危機にまで至ったことが現実にありました。1983年、ソ連のシステムはアメリカから飛来する数発のミサイルを察知。じつはこれは警報システムの誤作動だったのですが、もしこのときソ連が報復の核攻撃に出ていれば、当然アメリカも反撃したでしょう。そうなれば、世界は破滅していたかもしれません。実際には、システムの誤作動を見抜いたソ連のスタニスラフ・ペトロフ防空中佐の勇断によって核戦争の勃発は回避されましたが、人類にとっては好運と呼ぶほかない事態でした。日本人がよく口にする「絶対安全」というものは、もともとこの世には存在しないことがよくわかると思います。
 (本記事は『Voice』2017年12月号、ケント・ギルバート氏の「世界が改憲を待っている」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の12月号をご覧ください)
 プロフィール
 ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)
 米カリフォルニア州弁護士
 1952年、米アイダホ州生まれ、ユタ州育ち。71年に初来日。80年、国際法律事務所に就職して東京に赴任。83年、TV番組『世界まるごとHOWマッチ』に出演し、 一躍人気タレントへ。『夕刊フジ』金曜日連載「ニッポンの新常識」、まぐまぐメルマガ「ケント・ギルバートの『引用・転載・拡散禁止!』」などで論陣を張る。著書に、『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』『いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人』 『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』(いずれもPHP研究所)などがある。 『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書)は発行46万部余りの大ベストセラー。 
 関連書籍・雑誌
 やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人
 ケント・ギルバート 発売日: 2017年11月01日
 「侵略国家、日本」という自虐史観を、戦争に敗れた日本人の心に強く植えつけたGHQ(連合国軍総司令部)の洗脳工作――。 本書は、占領軍が去った後も日本を貶めつづけるプロパガンダ戦略が、反日メディアや諸団体、近隣諸国によって引き継がれた実態を明かす。
 ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人
 ケント・ギルバート 発売日: 2017年08月09日
 「日本に長く関わってきて、日本のことをもっと深く理解したいと努力を続けてきた私が、長年、いちばん書きたいと思っていたことを書きました」―― アメリカ人だからわかった、「日本」の素晴らしさの核心とは? 日本人として知っておくべき、驚きの日本人論。
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 7月7日 YAHOO!JAPANニュース AERA DIGITAL「民主主義・資本主義の模範だったアメリカはもう存在しない…米国滞在で感じた「トランプ氏による国民分断」と「経済大国の凋落」 古賀茂明
 古賀茂明氏
 私は、6月中旬から3週間ほど米国ニュージャージー州のニューポート(ハドソン川を隔ててニューヨーク市マンハッタンの対岸)の近くに滞在している。サッカーW杯開催中で、ニュージャージーにはその決勝の舞台となるスタジアムがあるが、米国では、サッカー人気は今ひとつで、街を歩いている印象では、それほどの盛り上がりは感じないというのが正直なところだ。
 【写真】世界の覇権を握る2大国のリーダーがこちら
 一方、W杯期間中に迎えた7月4日の米国独立記念日はどうか。今年は250周年という大きな節目の年だ。普通に考えると、世界一の超大国である米国の威信をかけたイベントで盛り上がるはずである。しかし、現在の米国は、トランプ派と反トランプ派に分断され、トランプ政権が行う行事に全国民が参加するということはない。むしろ、あらゆる行事が国家、国民の分裂を示すものになってしまった感すらある。
 私が米国に滞在している間、米国の裁判所では、トランプ大統領を喜ばせる判決と逆にその権威を貶め憲法違反の暴挙を差し止める判決が頻繁に出され、国家の分裂を強く印象付けられた。
 この原稿を書く直前の6月29日と30日の2日間だけを例に挙げても、29日には、独立政府機関(連邦取引委員会など)の幹部の自由解任を認めた最高裁の判決が出たのに続き、30日には政党による選挙資金の制限を違憲として撤廃する最高裁判決が出た。いずれもトランプ大統領を喜ばせる内容だ。
 一方、29日には最高裁が、トランプ大統領による連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事の解任を無効とする判断を示し、さらに30日には、トランプ大統領が2期目就任初日に署名した「不法移民などの子どもへの米国籍付与停止の大統領令」を最高裁が6対3で「違憲・無効」としてはねつけ、トランプ大統領の「看板政策」に対して最大級の拒絶を示した。
 米国の民主主義や経済政策の根幹に関わる政策が頻繁に最高裁まで争われる状況は、いかに米国の国家統治制度が不安定になっているかを示している。
 米国では、AIブームで株式市場は絶好調。最高値を繰り返し更新する状況だが、AI一本足打法とも言われ、一般庶民の間では、実質賃金が下がり生活苦に陥る労働者が増えている。国民生活の間でも分断は拡大する一方だ。
 建国250周年が盛り上がりに欠けるもう一つの背景には、米国の相対的な力の凋落傾向が隠せない事実として認識され始めたことがあるように感じる。
 経済面で見ると、GDPではまだ世界一だが、そのシェアは25%程度まで落ちている。かつてのライバルだった旧ソ連や日本には経済戦争で勝利したが、その後のライバルとなった中国は世界シェア16%程度まで急拡大し、購買力平価ベースのGDPでは米国を追い越している。
 ドルの影響力も低下しつつあり、中国、ロシア、BRICSなどが脱ドル化を進める動きが無視できないレベルに拡大している。
■米国の民主主義は減退
 政治面でも、前述したとおり、共和党と民主党、トランプ派と反トランプ派の間で社会・経済・倫理面の価値観が鋭く対立し、国家としてのアイデンティティーさえ問われる状況になった。
 外交面でも、世界の警察官や自由貿易のリーダーという地位を完全に放棄し、アメリカ・ファーストへのシフトを進めることで、世界からリスペクトされる強国から、ただの強国に成り下がった。グローバル・サウスの台頭やそれらの諸国の間で影響力を強める中国の存在など、外交面における米国の主導権は確実に低下している。
 さらにウクライナ、パレスチナ、イランなどへの紛争介入で、米国の軍事リソースの限界が露呈し、特に、イランにさえ勝利できない米国は、軍事大国・中国に勝利することは不可能だということを世界に見せてしまった。
 また、AIやドローン、ヒューマノイド、衛星、サイバーなど最先端軍事技術における中国のレベルは、一部分野では米国をも凌ぐほどになってきたことも将来の米国の軍事的優位性に不安を投げかける。
 そして、何よりも大きな変化は、米国の民主主義モデルの魅力の減退が暗い影を落としていることだ。自由民主主義と資本主義の模範とされた米国は、今や議会主義の大混乱、トランプ大統領による度重なる違憲行為、「トリリオネア(triliionaire、兆万長者)」の出現に象徴される格差拡大と差別主義の復活、国際法規の無視や戦争犯罪などで、世界の人々の「憧れ」の対象から、世界の平和と安定を破壊する国になってしまった。
 文化面でも、中国発のTikTokが席巻し、K-POPオリジンのアニメ「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」が楽曲を含めて主要な賞を数々受賞し、その主題歌「ゴールデン」がビルボードのヒットチャートで通算8週1位を獲得するなど社会現象となった。SNSの普及や配信プラットフォームの多様化により、文化の流行が「米国発の一方通行」ではなくなった。
■2035年まで台湾統一はない?
 米国の相対的凋落についていくつかの要素を書いてみたが、実は、これが今後の世界平和に大きな影響を与える可能性があるということについて考えてみたい。
 5月の米中首脳会談を思い出していただきたい。そこで合意を見た「建設的な戦略的安定関係」について世界中の関心が集まった。
 さまざまな解釈がなされているが、当面は戦争という最悪の事態を避け、特に台湾の独立を容認しないことを両首脳が確認し、台湾問題を制御下に置き、両国関係の大局に影響させないことで合意したということについては、専門家の間でほぼ一致している。
 例えば、台湾有事が起きても、戦争はしたくないというトランプ大統領の意図は、本人の発言からも非常にはっきりと読み取れる。
 首脳会談直後のエアフォースワンの中では、「今私たちが最も必要としていないのは戦争だ。(米国から)9500マイルも離れた場所での戦争は、私たちが最も望まないことだ」と述べたことは広く報じられた。
 帰国後のFOXニュースのインタビューではより詳しく語っている。
 「(台湾が)独立するのは危険なことだ。彼ら(台湾)は戦争を起こしたいから独立しようとしているし、米国が後ろ盾になってくれると考えている」
 「誰か(台湾)が独立して、9500マイルも離れた場所まで私は戦争に行くなんて、そんなことは望んでいない」
 また、台湾への武器売却については、次のように答えている。
 「中国次第だ。率直に言って、それは我々にとって非常に良い交渉材料だ。120億ドルという膨大な量の武器だ。しかし、中国は非常に強力な大国だ。あそこ(台湾)は非常に小さな島。59マイルしか離れていない。我々は9500マイル離れている」
 ここから先は、日本に長く滞在している中国人の著名な学者、朱建栄・東洋学園大学客員教授に教えていただいた情報をもとに私見も交えて論を進めてみたい。
 朱氏によれば、トランプ大統領の一連の発言を中国の学者は4つの「NO」と総括しているそうだ。すなわち、
(1) 米国は「台湾独立(台独)」を支持しない
(2) 「台独」のために戦うつもりはない
(3) 「台独」の後ろ盾となるつもりはない
(4) 台湾への武器売却に安易に同意することはない
 さらに、中国は2035年までに「先進国の仲間入り(中等先進国水準に到達)」をするという目標を優先し、その間、台湾統一を無理に進めることはせず、それ以降は、台湾との平和統一を本格的に推進するというタイムテーブルを見据えている。
■台湾は日本の支援を求めているのか…
 台湾に武力行使をすれば、世界から厳しい制裁を受けて中国経済は深刻なダメージを被り、本格的戦闘になれば占領するまでのコストが大きい。その後の経済・社会の復興にも多大なコストがかかるなどデメリットばかりで、しかも台湾住民の恨みを買うためその後の統治も困難になる。これらを考慮すれば、武力統一は最悪の選択だ。
 そこで、平和統一を狙うとすれば、先進国の仲間入りをして、中国自体の魅力を高めることが最も効果的だ。そうなれば、台湾住民の中国統一への忌避感は大幅に減退する。
 もちろん、平和統一を果たすためには、台湾側との対話が不可欠で、台湾の民意を取り入れなければならない。その結果、「一国二制度」または「連邦制」に近い形を取る可能性も出てくる。
 台湾の最近の世論調査(「聯合報」6月1日配信、同紙は3大新聞の一つで保守系と目されている)では、「両岸の永遠の現状維持」に賛成が8ポイント増の63%、独立賛成は4ポイント減の21%で、米国は両岸の軍事衝突(台湾有事)に派兵しないと見る人は42.9%である。
 さらに、5月末には驚くようなことが起きた。台湾の独立派の急進的な政治団体に「喜樂島聯盟」という組織がある。この団体は、現政権の一つ前の蔡英文政権時代に、蔡氏の「現状維持」路線に不満を持つ「独立派」の勢力を結集し、「独立のための住民投票、台湾の名での国際連合加盟」を掲げて支持を広げた。
 しかし、今年5月に公式サイトで公開書簡を発表し、「特定の条件」のもとで「台湾独立」の立場を調整し、「中華人民共和国の一部となること」も考慮する可能性に言及したのだ。大きな方針転換だと台湾では話題になった。
 創立メンバーはこの書簡の内容を否定しているが、公式サイトにこのような異例の書簡を公表したことは、独立運動の求心力が低下し、組織としての影響力が弱まっていることを示している。
 以上のように、台湾有事をめぐっては、米国だけでなく、台湾においても独立を目指す動きそのものが必ずしも勢いを維持しているとは言えない状況だということを頭に入れておかなければならない。
 とりわけ、日本では、高市早苗政権はもちろん、マスコミまでが、台湾住民が独立を強く望んでいて、そのために米国と日本の支援を求めているというような見方を広めている。そのため、日本は米国とともに台湾の武装蜂起を支援するべきだという声さえ広がっている。
 現実を正しく理解すれば、そのような見方を前提に台湾や中国との関係を考えるのは完全に誤ったことだということがわかる。
■日本・台湾連合と中国との「戦争」も
 米中が当面は戦争をしないことで一応の合意を見たので、ある程度は安心できると考えることが可能だが、中国国内では、なおリスクがあるとの見方も残っている。朱氏は、そのリスクについて、警戒すべき二つの台湾有事シナリオを紹介してくれた。
 一つ目は米国が内政で失敗した時、あえて台湾独立の雰囲気を作り、反中世論を煽って世論の矛先を外に向けるというシナリオだ。トランプ大統領は、第1次政権の時、当初は非常に中国に融和的な態度をとったのに、コロナ対応に失敗し多数の死者が出ると、いきなり「中国がコロナウイルスを作って世界に拡散した」という噂を流して反中に転換した例がある。中国はそのことを決して忘れることはない。
 二つ目のリスクは、もう少しロングスパンの話だ。これが、冒頭で縷々説明した米国の長期的な凋落傾向の話と密接に関連してくる。
 現在の米国は、AIをはじめ技術面でも、軍事力でも、経済力でも、金融などの世界の経済インフラの支配力でも、まだ中国に比べればかなり優位に立っていて、当分は追いつかれることはないという自信を持っているが、米国の相対的な凋落傾向が続けば、予想以上に早く、中国に追いつかれるのではないかという危機感が高まる可能性がある。その場合、あえて台湾に独立を唆(そそのか)し、台湾有事を実際に起こさせる戦略をとる可能性がある。
 米国は参戦せず、日本に対応を求め、日本・台湾連合と中国との間の戦争に発展させるのだ。中国との戦争になれば、大規模かつ長期の戦闘になるため、日台がともに敗戦または長期的な戦闘による荒廃という事態に陥ることになる。一方、中国も日台との戦争で疲弊し、米国に追いつくことが不可能になる。米国が重要な同盟国である日本と台湾を捨て駒にするという非情なシナリオだ。
 台湾のTSMCに無理やり米国に最先端工場をつくらせているのも、そうした事態で生じる台湾からの最先端半導体供給途絶への備えだと見ることもできる。
 荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、米国に余裕がなくなればそうした「日本と台湾に対する裏切り行為」をしてでも自らの地位を守ることは、とりわけ、「アメリカ・ファースト」の観点から見れば、非常に合理的ということもできる。
 これらの二つのリスクについて考えてみると、いずれの場合にも、日本が米国の思惑に乗るかどうかが鍵となる。
 高市政権のような右翼政権だと、このリスクシナリオで、日本が戦争を止める役割を果たすのではなく、むしろ戦争の推進役になる恐れが十分にあると見なければならない。
 そんなことにならないように、米中首脳で合意した戦争回避のシナリオが堅持されるように、日本も対中外交と対米外交を根本から改める必要がある。
 しかし、高市政権では、そのような転換は望めない。もちろん、高市政権を交代させても、自民党右派による政権であれば同じことだ。
 一日も早く、日本の平和主義を再構築することを目指す政権への交代を成し遂げなければならない。
 古賀茂明
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👠36:─1─世界に蔓延する極右第四波と極右政党の世界的台頭。~No.81 

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 2026年7月6日 YAHOO!JAPANニュース 集英社オンライン「自国民ファースト、権威主義、反エリート…「極右」に共通する3つの要素…フランスから見た極右政党の世界的台頭と日本への波及
 2002年4月、フランス・マルセイユにて ジャン=マリー・ルペンが大統領選挙の決選投票に進出したことに対する抗議運動 写真:ロイター/アフロ
 昨今、日本では排外主義や自国第一主義を掲げる政党が選挙で議席を伸ばしている。ヨーロッパをはじめとする世界各地での極右政党躍進の流れが、いよいよ到来したとの見方もある。では、極右の「先進地」とも呼べるヨーロッパでは、極右はどのように勢力を拡大してきたのだろうか? フランスの大学院で哲学を学ぶ森野咲氏が、現地での最新の研究や報道の成果をもとに、極右の成長、定着の背景やメカニズムを明らかにする。
 【写真】W杯に出場中の仏代表ムバッペもフランス国内における極右政党の躍進を危惧
 極右という幽霊
 「ヨーロッパに幽霊が出る ― 極右という幽霊が」。これはもちろん、マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』の冒頭の一文をもじったものである。19世紀のヨーロッパを覆っていたのが「共産主義の幽霊」だったとすれば、21世紀の今日を覆っているのは「極右の幽霊」ではないか。こんな議論はいま欧州を中心に盛んになされている。極右政党の台頭という現象は、フランスやドイツをはじめとする欧州諸国から、アメリカ、インド、ブラジルといった民主主義の大国に至るまで、世界各地を席巻している。
 この幽霊が、いま日本でも徘徊しているのではないか。2025年夏の参院選において参政党が大躍進したことが国内外で「極右政党の台頭」と報じられ、大きな注目を集めたのは記憶に新しい。
 物議を醸した「日本人ファースト」というスローガン、「みんなでゼロから作る政党」という、人民を主体としたポピュリズム的な看板、神谷宗幣というカリスマ的指導者、財務省などの官僚や既存政党に象徴されるエリートへの反発、「新日本憲法(構想案)」に見られる天皇主権や国家主義的要素―――欧米の極右政党の躍進という現象に多少通じている人からすれば、この参政党の台頭の背景にある思想やその戦術は、どこか既視感があるものではなかっただろうか。
 その「既視感」の答え合わせであるかのように、参政党の神谷代表が記者会見で「親和性を感じる政党」として挙げたのは、アメリカ共和党のトランプ派、ドイツの『ドイツのための選択肢』(AfD)、フランスの国民連合(RN)、英国のリフォームUKと、いずれも欧米で「極右」と分類される政党であった(*1)。
 *1 神谷代表は2025年8月にAfD共同代表であるクルパラ氏と会談を行った(会談を伝える神谷氏のX(旧Twitter)の投稿)。
 フランスから極右を考える
 私は2020年からフランスに暮らしており、参政党が模倣しているとされる欧州の極右の台頭を肌で感じてきた。極右との最初の出会いは、ドイツ国境に近いアルザス地方でのことだった。フランス滞在の初年度を、葡萄畑に囲まれた小さな美しい村で過ごしていた当時の私は、政治の喧騒から束の間離れたかのように思っていた。しかしそんなある日、村で知り合った青年が「実は前回2017年の大統領選はルペンに投票したよ」と、さらりと打ち明けてきたのである。
 アルザスは宗教的・保守的な土壌が強く、極右が早くから比較的高い得票率を示してきた地方の一つでもある。その青年は、一見普通、むしろ大人しそうな若者で、私の思い描いていた「極右」像とはギャップがあった。外国人の私に親切に接してくれる彼を、誰が人種差別主義者、排外主義者だと言うだろう。しかし次第にその会話の端々には、「治安を乱す」「不良の」「アラブ人」への苛立ちや憎悪が滲んでいることも分かった。この「一見穏やかな極右支持青年」との出会いは私の中の極右=暴力的な少数者という思い込みを覆した。
 その後、私は学業のためパリ郊外のサン=ドニへと移った。アルザスの穏やかで小さな村とは対照的な、移民の比率と貧困率がフランス国内で最も高い県だ。世間では治安の悪さばかりが強調され、「そんな場所に行かない方がいい」と何度も忠告されたことがある。まるでラジ・リ監督の“バンリュー映画”(*2)で見た風景のただ中に、私は身を置くことになった。しかし暮らしてみると、そこにはネットの「切り抜き」の外にある日常が広がっていた。
 極右が政権を取るか否かは自分や隣人の生活に直接影響を及ぼしてくることもいや応なく理解するようになり、集会やデモにも参加するようになった。極右勢力が台頭する国に外国人学生という不安定な立場でいることは、積み重ねた生活が突然途切れてしまうかもしれないという、慢性的な不安と常に隣り合わせだ。こうした実存的な感覚が、「なぜこれほど多くの人が極右に惹きつけられるのか」という問いへと私を向かわせることとなる。
 この世界中で起きている極右躍進という現象を分析する上でフランスを参照軸とすることは、単なる一国の事例研究ではなく、極右理論そのものの再検討にも資するだろう。そもそもフランスには革命以来の「右翼」「左翼」という政治的区分の起点があり、当時の反革命の思想が極右の基本的枠組みを形づくっている。19世紀末から20世紀にかけては、国民的統一を掲げるポピュリズムや排外的傾向が組み込まれ、現代の極右にもつながる典型が形成された。さらにこうした極右のモデルは国境を越えて広がり、他地域にも影響を与えてきた。
 現代においては、かつてタブー視された極右の「メインストリーム化」が顕著である。2002年、ジャン=マリー・ルペンが大統領選挙の決選投票に進出した際には全国規模の抗議が巻き起こったが、2017年にマリーヌ・ルペンが同じく決選投票に進んだとき、社会の反応は明らかに鈍化していた。
 この対照は、極右の「例外性」が失われ、むしろ「常態化」しつつあることを示している。先述したような、私が渡仏当初に出会った「一見穏やかな極右」はこの常態化の一端であろう。2022年の大統領選挙においては、決選投票でマリーヌ・ルペンは過去最高の41%を獲得しており、極右候補が決戦進出すること自体、もはや「当たり前の光景」になっている。
 フランスの民主主義には常に極右の影が付き纏ってきた。それゆえその思想や戦術についての蓄積の大きさは見落とせない。本連載の目的は、この極右という“幽霊”の正体をフランスから明らかにし、その台頭を読み解くための道具箱を提供することである。
 *2 1990年代以降のフランスにおける郊外(banlieu)を舞台に、移民ルーツの社会的周縁化や暴力・差別を描く映画群のこと。代表作:マシュー・カソヴィッツ『憎しみ』ラジ・リ『レ・ミゼラブル』など。
 極右=侮蔑のためのレッテル?
 極右とは何か。まず確かなことは、「極右」とは、その文字の強さゆえ、論争を呼ぶ概念だということであろう。それゆえ「極右」と呼ばれる当事者側はしばしばこのレッテルを忌み嫌う。参政党の神谷代表も例に漏れず、ドイツの政党AfDを例に挙げ、「極右政党とか言われていますけど、中身は極右でもなくて純粋なナショナリズムですよね」と語っている。
 「国民を第一に考える政治をして何が悪い」、「全体が左傾化しているから当たり前のことを言うだけで極右になる」、「支持しているのは普通の人々」――こんな声に押されてか、日本国内の大手報道においては参政党をどう位置づけるかについても表記が統一されていない。そこには「極右」と名指しすることに慎重な姿勢が見受けられる。
 現在の日本の「極右」定義の混乱に先行して、この言葉の定義は欧州の政治学でも長らく議論を呼んできた。「極右」か「右翼」か、「右派ポピュリズム」か「急進右派」か、それとも「ファシズム」か、「ネオファシズム」か。フランスでも、この「極右」レッテルは長らく論争の火種だった。その典型的な例が、マリーヌ・ルペン率いる「国民連合」を極右と呼ぶか否か、という問題である。
 国民戦線を率いた父ジャン=マリー・ルペンの過激なイメージから距離を置こうとしたマリーヌ・ルペンは、「極右」という呼称を「侮辱的だ」として一貫して拒否してきた。2010年代以降は、自身の党を「極右」と呼ぶものに対し、名誉毀損だとして法的措置をも辞さない態度を示してきたほどである。
 実際彼女は極右のイメージを脱するため、父・ジャン=マリー・ルペンを「反ユダヤ主義的発言」を理由に党から追放したり、党の名前を「国民戦線」から「国民連合」に変更したり、また露骨な差別発言を公にすることを避けたりして、党の刷新を図ってきた。「このように穏健化した政党は、もはや極右とは呼べないのではないか?」、「マリーヌ・ルペンは極右ではなく単なるポピュリストの愛国者ではないか? 」こうして一部のメディアや論者は「極右」について語ることを避けるようになった。マリーヌ・ルペンの「脱悪魔化」(*3)戦略は功を奏したのである。
 しかし、こうした問題をめぐる議論を経て、近年のフランスでは「極右」という語の用法について一定の整理が進んできたと言えるだろう。2024年3月には、フランスの最高裁に相当する国務院(Conseil d’État)が「極右」ラベルを不当な差別的扱いだと訴えた国民連合に対し、同党を「極右」と分類することは妥当であるとの判決を下している。
 「極右」と聞いて、あなたはどんな姿を想像するだろうか。ヨーロッパのネオナチに典型的な、スキンヘッドに黒装束、編み上げブーツといった出立ちだろうか。それとも日本の街頭宣伝右翼のように、隊服を着て、旭日旗を振る活動家だろうか。あるいは、特定の人種や民族に対して露骨に人種差別的なヘイトスピーチをしたり、時に暴力に訴えるような集団だろうか。
 しかし極右を厳密に定義するにあたって、このような外見的特徴や直感――すなわち「歩き方や鳴き声」で判断するようなやり方――では、政策の中核にある思想を見落とす危険がある。現実には「羊の皮をかぶった狼」(見落とされがちな極右)もいれば、「狼の皮をかぶった羊」(過激に見えても実際には極右でない政党)も存在するからだ。
 まずはこの「極右」という用語の定義を明確にすることが重要である。この言葉は必ずしも「侮蔑的なレッテル」として用いるためのものではなく、議論の前提を共有し、データの蓄積を参照することで、時代・地域を超えた比較を可能にするものだ。
 なお、以下で紹介する欧州で広く受容されている極右の定義は、西ヨーロッパに偏ったサンプルに基づいている点には留意されたい。また「右」や「急進」といった概念は、国ごとの政治文化や制度によって相対的に見える場合があることにも注意しなければいけない。ここではノルベルト・ボッビオ(*4)に従い、「平等に対する態度」を左右の判定基準とする。すなわち、左派はより大きな平等を志向し、右派は一定の不平等を受容または擁護する。この基準は、国ごとの相対性をある程度回避し、私たちに共通の議論の出発点を与えてくれる。
 *3 フランス極右の脱悪魔化(dédiabolisation)とは、国民戦線時代の「悪魔的」イメージを払拭し、体制内政党として受容されることを狙ったマリーヌ・ルペン以降の正常化戦略を指す。この戦略については後の連載回で詳しく扱う。
 *4 ノルベルト・ボッビオ(1909-2004)はイタリアの法哲学者・政治哲学者。『右と左: 政治的区別の理由と意味』などの著作で知られる。
 極右の定義とは何か
 ここからは、いよいよ本題の「極右」の定義を参照していこう。
 はじめに、「極右(far right)」というのは包括的概念である。極右という大きなグループの中には、「過激右派」と「急進右派」と言う2つの類型がある。「過激右派(extreme right)」とは、民主主義そのものに敵対する勢力で、いわゆるネオナチやネオファシストのような集団を指す。これに対して「急進右派(radical right)」とは、民主主義の制度自体は認めながらも、自由や平等といったリベラルな解釈を拒否する政治勢力のことである。
 つまり「極右」とは、反民主主義と非リベラル民主主義のあいだに広がる集合的アクター(政党、運動、団体) を含む包括的なカテゴリーなのだ。しかし極右に属する「過激右派」と「急進右派」は一概に区別できるものではない。選挙においては形式的には民主主義のルールに従っている「急進右派」が、背後で反民主的な「過激右派」と結びつくことも少なくないからだ。
 イタリアの急進右派「同盟(Lega)」と極右組織カーサ・パウンドの協力関係、ハンガリーのヨッビクが国内極右団体と共闘してきた事例、あるいはドイツAfD内部に存在する極右派閥などがその例である。
 フランス国民連合も、公には過激派と距離を取っているように見せながらも、実際には極右学生組織GUDやネオファシスト団体Tenesoun出身者が同党に入り込み、人脈や資金面で関与していることが繰り返し指摘されてきた。このように、急進右派と過激右派の境界はしばしば曖昧になるからこそ、より抽象的で包括的な呼称として「極右」という用語が有効なのである。
 では、極右政党か否かを見極めるにはどうすれば良いのだろうか。先に述べたように、街宣車や旭日旗、露骨なヘイトスピーチといったステレオタイプに重ねるのは必ずしも適切ではない。また上の定義に照らせば、「彼らは民主主義的手続きを経ている政党である以上、極右とは呼べない」といった類の反論も当たらない。そこで注目すべきは、彼らの政策のコアにあるイデオロギーである。
 政党の政治イデオロギーは、「コア」と「周辺」から構成されるが、極右を理解するうえでは、その「コアイデオロギー」を特定することが決定的に重要だ。なぜなら、実際の政治キャンペーンにおいては、極右のレトリックが戦略的に他政党に利用されることが少なくないからである。
 「制御不能な大量移民」といった極右のレトリックが右派や政権を担う与党に取り込まれるのはその一例だ。さらに、政党自身による自己規定はしばしば政治的な戦略を帯びており、必ずしも信頼できる指標とはならない。したがって、政党が公に発表する公式文献に絞ってその質的分析を行い、思想的特徴を分類することが重要なのだ。
 「極右」の3つの柱
 以下では、極右の中でも民主主義的な手続きを踏まえる「急進右派」に焦点を定める。政治学者のカス・ミュデによれば、この急進右派のイデオロギー的コアを構成する要素は三つある。それが、「ネイティヴィズム」「権威主義」「ポピュリズム」である。
 (1)ネイティヴィズム(排外主義)
 ネイティヴィズムとは、国家は「ネイティブ集団(=国民)」の構成員のみによって占められるべきであり、非ネイティブな要素(人や思想)は均質な国民国家にとって、根本的に脅威であるとするイデオロギーである。これはリベラルも含みうる広義のナショナリズムとは区別される。「ネイティブ性」を規定する基準は、民族・人種・宗教など多様であり得るが、必ず文化的要素を含む。例えばアメリカではWASPが先住民に対して「真のネイティブ」を主張していたり、イスラエルではユダヤ人がパレスチナ人に対し「先住民族」を自称することがあるように、どの基準を「ネイティブ」として採用するかは主観的で、ベネディクト・アンダーソン的に言えば「想像されたもの」に過ぎない(*5)。
 (2)権威主義
 権威主義は、社会秩序の維持や強い国家、厳罰主義を重視し、権威に従わない者は処罰されるべきであるとする価値観である。これはドイツ・フランクフルト学派の哲学者アドルノがかつて『権威主義的パーソナリティ』において指摘したように、内集団においては権威的人物を賞賛し従属する一方で、外集団に対しては「道徳的権威」の名の下に制裁を加える態度に結びつく。
 (3)ポピュリズム
 ここでのポピュリズムは、政治的手法ではなく「イデオロギー」として理解されるべきものである。イデオロギーとしてのポピュリズムとは、社会は究極的には「純粋な人民」と「腐敗したエリート」という二つの均質で敵対的な集団に分けられると考え、政治は人民の一般意志(volonté générale)の表現であるべきだとする思想である。「人民の一般意志」こそが最も重要であると考えられるため、人権や憲法上の保障すらそれに劣後することがあるのが特徴だ。
 この「急進右派=ネイティヴィズム+権威主義+ポピュリズム」という定義に基づけば、他の党派との差異もより明確に浮かび上がる。たとえば保守主義は伝統や宗教を重視するが、必ずしもネイティヴィズムやポピュリズムを伴わない。民族地域主義は地域自治や分離を志向するが、排外主義は不可欠ではない。そして単なるポピュリズムは反エリート的であっても、排外主義や権威主義を必ずしも備えない。
 *5 ベネディクト・アンダーソン(1936-2015)は著作『想像の共同体』(1983)において、国民とは想像によって構築された共同体であると論じた。
 マリーヌ・ルペンは愛国者か、それとも極右か?
 極右の定義を踏まえたところで、現在の「穏健化」した国民連合はなお極右に分類されるのか? という問いに戻りたい。かつてジャン=マリー・ルペンが率いた国民戦線は、他国と比べても早い段階で大衆政党モデルをある程度成功させた、典型的な極右政党であった。福祉排外主義や移民の強制送還を訴えるほか、露骨な人種差別発言――党首による「ホロコーストは歴史の細部」といった反ユダヤ主義的発言など――も目立っていた。
 では、こうした露骨な人種差別や反ユダヤ主義が鳴りを潜めた、娘マリーヌが率いる国民連合は、依然として「極右」と呼べるのだろうか。注目すべきは表面的な言動ではなく、その政策が先述した(1)ネイティヴィズム(2)権威主義(3)ポピュリズムの三要件を満たすのか否かだ。
 結論から言えば、今日の国民連合は「穏健化しても中身は極右」である。
 まず、国民連合の政策は「国民優先(priorité nationale)」を打ち出すネイティヴィズムに根ざしている。
 具体的には、雇用や公営住宅、社会給付においてフランス国民を優先する原則を憲法改正(国民投票)によって導入しようとしている。また、難民申請の域外審査の導入、家族呼び寄せの制限、外国人犯罪者の追放の容易化など、移民の受け入れと権利を大幅に制限する方針を掲げている。
 さらに、その政策には強い権威主義的傾向がある。国民連合は治安を重視し、街頭の安全や学校での規律回復、犯罪への厳罰化を訴えている。さらに治安の問題を「移民による犯罪」と結びつけることで、外国人がフランス社会の秩序を脅かしているというイメージを形成する。つまり、社会秩序問題は厳格な権威の回復と移民の排除によって解決されるべきだとする考え方がそこにはある。
 最後に、「人民」を主体としたポピュリズムも認められる。憲法改正を国民投票によって実現し、国民優先や移民規制を導入しようとするが、これは既存の立憲秩序を迂回するものであり、憲法学者からは「憲法クーデター」と批判されるほど危険な手法である。
 このように、国民連合の中核には依然として極右(急進右派)を特徴付ける3つのイデオロギーがある。その政策もせいぜい前身である国民戦線の「化粧直し」にすぎず、多少外見や髪型が変わってもその中身は変わらないのだ。
 極右第四波の到来
 第二次世界大戦後のヨーロッパに極右が台頭したのは、現在が初めてではない。戦後の極右の台頭はしばしば「三つの波」として整理されてきた。順番にその流れを見ていこう。
 第一波: 第二次大戦直後に現れたネオ・ファシズム。元ナチス幹部やヴィシー政権のような旧体制の残党が体制復活を試みたものの、社会の強い拒絶に遭い、広がりを持つことはなかった。
 第二波: 1950年代以降、フランスのプジャディスト運動(*6)を典型とするような、国家や税制に対する反発を基盤にした極右ポピュリズムが台頭。いずれも短命に終わった。
 第三波: 1980年代に始まり、フランスの国民戦線の躍進が象徴するように、移民受け入れを拒否する新党が各国で登場した。しかし、当時の他政党はこれらの勢力を「異物」として遠ざけ続け、西欧諸国で政権に加わったのは1990年代のイタリア北部同盟など、ごく限られたものだった。
 さらに2000年代以降、極右は「第四の波」へと移行したとミュデは指摘している。その背景にはグローバル化、2008年の金融危機、2015年の難民危機、テロへの不安といった出来事がある。今日ではEU加盟国の大半に極右政党が存在し、さらに従来の中道右派が極右的テーマを取り込む傾向も強まっている。
 この伝統的右派と極右の「ハイブリッド化」はフランスに限らない。イスラエルのリクード党、アメリカの共和党、オーストリアの人民党もその一例である。右派と極右の接近は連立参加や政策議題の右傾化として現れ、結果として「極右の主張」が政策の中心に滑り込む経路が拡大した。移民はかつてのように経済成長を支える存在としてではなく、安全保障やアイデンティティへの脅威として語られるようになった。
 そして第四波における極右は、移民だけでなく、安全保障、腐敗、外交政策を重要争点として掲げ、具体的には以下のような傾向に収束する。
 (1)移民: 極右は「大量移民は国家の存続への脅威」と主張する。極右の中でも過激な勢力は「白人絶滅(white genocide)」という陰謀論を語る。特にフランスのルノー・カミュによる「大置換(Great Replacement)」 (*7)論が広まり、移民は進歩派エリートが意図的に推進しているとされ、またしばしばジョージ・ソロスが「黒幕」だともされる。現代の主要な「敵」は「イスラーム教徒」であり、国内外の陰謀論と結びつけられる。
 (2)治安: 極右は治安を広く解釈し、文化的・経済的脅威も「不安」と捉える。犯罪は「移民の犯罪」として語られ、それに対応する政治家の「弱腰」が非難される。また、テロリズムもイスラーム移民と結びつけられる。これらの点から、治安問題の究極の解決策は「移民の停止」であるとされる。
 (3)腐敗: 腐敗は主に「エリート」の問題とされ、進歩派・知識人・ジャーナリストなどが「国を堕落させる」と批判される。しばしば「文化マルクス主義」などの用語が使われ、リベラルで進歩的な運動を陰謀視すると同時に、その起源をユダヤ系知識人に結びつけることで反ユダヤ主義的含意を帯びる。さらに、選挙不正も語られる。
 (4)外交政策: 国際関係はゼロサムとされ、「自国第一」が基本である。超国家組織(EUや国連)は敵視される。東欧では領土回復要求(ハンガリーのトリアノン条約、イスラエルの「大イスラエル」構想など)が重要なテーマである。
 (5)宗教: 宗教の位置づけは地域ごとに異なる。西ヨーロッパでは急進右派はむしろ世俗的だが、東欧・米国・インド・イスラエルなどでは宗教が強調される。イスラームは「他者」とされる一方、キリスト教やヒンドゥー教、ユダヤ教は「民族アイデンティティ」の守り手として利用される。
 *6 プジャディスト運動とは1950年代にピエール・プジャドが率いた小商人・職人中心の反増税運動。この運動出身で、若干27歳にして当時最年少の国民議会議員に初当選したのが、後に国民戦線党首となるジャン=マリー・ルペンである。
 *7 ヨーロッパの「先住の白人系住民」が、大規模な移民(特にムスリムやアフリカ系移民)によって「置き換えられる」と主張する陰謀論。
 ファシズムは最も無害に見える形で戻ってくる
 上記の争点は、今日台頭する日本の参政党の主張を見ていてもどこか既視感があるものではないだろうか。この判断は読者に委ねるが、とにかく重要なのは、極右は「民主主義の外部から暴力的に迫る脅威」ではもはやないということだ。極右は多様な争点を取り込みながら、民主主義の内部に入り込んで、その影響力を拡大してくる。
 「ファシズムは最も無害に見える形で戻ってくるかもしれない。」とイタリアの思想家・ウンベルト・エーコは警告した。私たちの義務は、世界のあらゆる場所で、日々、ファシズムの萌芽を暴き出し、その新しい形をひとつひとつ指さして示すことだ。かつての極右は「悪魔化」によって社会の周縁に追いやることができたが、もはやその手法は十分に機能していない。
 しかしその一方で、フランスでは2024年の国民議会選挙に見られたように、対極右のブロック構築「共和国戦線」や、極右第1党を予測した世論調査を覆し、左派の新人民戦線が首位に立つといった、数々の試みがなされ、成果を残していることも確かだ。そしてこうした戦略を可能にしているのが、これまで蓄積されてきた極右分析の知的資本に他ならない。
 なぜ極右の躍進は止まらないのか。彼らの戦略とは何か。そして私たちは、いかにしてこの潮流に抗うことができるのか。――こうした問いへの答えを、今後もフランスから探っていきたい。
 参考文献
 Cas Mudde, The Far Right Today, Polity Press, 2019.
 Cas Mudde, Populist Radical Right Parties in Europe, Cambridge University Press, 2007.
 Jean-Yves Camus, Nicolas Lebourg, Les Droites extrêmes en Europe, Éditions du Seuil, 2015 (『ヨーロッパの極右』みすず書房、2023)
 Cécile Alduy, Stéphane Wahnich, Marine Le Pen prise aux mots: Décryptage du nouveau discours frontiste, Seuil, 2015.
 Pirro, A. L. P. “Far right: The significance of an umbrella concept.” Nations and Nationalism, 29(1), 101–112, 2023.
 水島治郎『ポピュリズムとは何か』中公新書、2016年。
 Le Monde, “Une hybridation de la droite traditionnelle et de l’extrême droite est en cours dans de nombreux pays,” 2023年2月1日.

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 森野咲(もりの さき)
 1996年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、大杉栄や石川三四郎に憧れて渡仏。パリ郊外サン=ドニにあるパリ第8大学哲学科の修士課程2年に在籍中。専門はフランス現代哲学。現在、『ふぇみん』に「極右とフェミニズムの不幸な結婚」を連載中のほか、自身のnoteで「極右の傾向と対策」と題したマガジンを発表している。

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