🐒7」ー3・Bー欧州で相次ぐ中国スパイ事件。厳格に管理された中国諜報活動の実態。~No.21 

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 2024年4月25日 YAHOO!JAPANニュース FNNプライムオンライン「【解説】欧州で相次ぐ中国スパイ事件 厳格に管理された中国諜報活動の実態と日本に求められる施策とは
 ドイツで深刻な実態が明るみに
 ドイツ当局は22日、中国の情報機関のためにスパイ活動をした容疑で、ドイツ人の男女3人を逮捕したと発表した。主犯のドイツ人は、中国国家安全省の指示を受け活動するエージェントで、ドイツ人夫婦が経営する企業を通じてドイツの大学と協定を結び、その一環として、軍艦等に使用される船舶用エンジンに関する機械部品に関する情報を収集していたという。
 【画像】欧州で相次いで明るみになる中国諜報事件 日本に求められる施策とは
 また、容疑者3人は、EUのデュアルユース規制(※軍民両用の物品に関する輸出規制)の対象であるにもかかわらず、中国国家安全省から支払いを受けてドイツから特殊レーザーを購入し、無許可で中国に輸出した疑いもある。
 容疑者らの諜報活動は2022年6月以前から始まったとみられ、ドイツ当局は容疑者らを外国貿易決済法(FTPA)に違反した疑いで告発、地元メディアによれば、最長5年から10年の懲役または罰金に処される可能性があるとのことである。
 この逮捕は、オラフ・ショルツ首相が 中国を訪問したわずか1週間後に行われ、ドイツ当局は検挙のタイミングを見計らっていたとみられる。
 本事件は、中国国家安全省の工作員が運営したエージェントである主犯のドイツ人と、共犯のドイツ人男女による諜報活動と見られる。ドイツで中国工作員が諜報活動を行うには、当然、外見的障壁があるため、現地のエージェントを活用した基本的な構図の諜報活動であったと推察される。
 また、23日には、ドイツ当局は、中国に情報を渡していたとして、右派政党の「AfD・ドイツのための選択肢」の欧州議会議員・マクシミリアン・クラー氏のスタッフであるジャン・G氏(43)を逮捕したと発表。前述の事件との関係は示されていない。
 ドイツ当局によれば、拘束された男はドイツ国籍で、ドイツと中国の二重国籍を有しているとの情報もあるが、長年にわたりスパイとして欧州議会の情報を中国国家安全省に提供していたほか、ドイツにいる中国の反体制派の動向を探っていた疑いがあるという。
 この容疑者が補佐を務めたクラー議員は親中派であり、ウイグル人権問題について反中プロパガンダなどと発言したり、台湾やチベットが中国のものであると主張していたとの報道もあり、中国による政治工作の影響が及んでいた可能性もある。
 この事件では、反体制派の情報を中国国家安全省に提供していたとのことだ。しかし反体制派の連れ戻しに関して日本国内でも問題になっている「海外秘密警察」とは、関係はないだろう。
 なぜなら、海外秘密警察は中国地方政府単位の公安局の活動の一環であり、今回の事件の情報提供先である中国国家安全省とは別の組織系統だからだ。
 欧州で相次いで明るみになる中国諜報事件
 今回、ドイツで次々と明るみになった中国諜報事件であるが、欧州では近年深刻な問題となっている。
 イギリスでは、2023年、議会調査担当者ら2人の男が逮捕されており、偶然にもドイツ人3名が逮捕された同日に起訴されている。
 容疑者のうちの一人は、中国問題を調査し、対中政策に関与する与党・保守党議員への情報提供や提言を行う安全保障相が設立した政策グループ「China Research Group」のディレクターで、カーンズ下院外交委員長に研究員として雇われ、対中強硬派のトゥゲンハート安全保障担当閣外相といった機密情報を扱う政治家との関係があった。
 更に、2022年には中国系弁護士の女性が英国国会議員に不当な影響を与えようとしているとして、イギリス国内の治安維持を担う情報機関・MI5が、国会議員に対し異例の「中国による干渉」の警告を発していた。
 2023年、ベルギーでは、中国国家安全省の工作員が元議員に報酬を支払い、欧州政治に影響を与えるよう指示していた疑いがあるとして捜査が開始されたと報じられている。
 中国国家安全省の工作員ダニエル・ウーは、極右政党ヴラームス・ベラン党党員のクレイエルマン元議員に働きかけ、クレイエルマン氏を通じて香港における中国の弾圧や新疆ウイグル自治区におけるウイグル族の迫害などに関して欧州内で影響を与えようと試みていたという。
 更に、ウーはクレイエルマン氏へのメッセージで「我々の目標は米国とEUの関係を分断することだ」と述べたと地元メディアでは報じられている。
 極右政党を狙う中国
 極右政党は欧州で支持を拡大しており、ドイツAfDもその一つだ。
中国国家安全部にとっては、その影響力を行使する上では有効なツールの一つである。
 AfDは2023年、中国バッシングの方針を転換。その転機となったのは2023年6月に、AfD幹部らが中国訪問してからだと指摘する声もある。中国政府は欧州極右政党に対して資金提供を続けてきたとことでその影響力を行使しているとの見方がある。
 中国の狙いは、外交政策上有利な情報を収集するのは勿論、欧州と米の離間、人権問題等に関し都合の良い情報を欧州内で発言させる等の意図が考えられるが、基本的に中国のスタンスは「利用できるもの」を積極的に利用するのだ。
 中国の諜報活動は極めて厳格に管理
 中国の諜報活動は、世間で認識されている以上に厳格に管理されている。
 基本的に中国は、民間人を利用した諜報活動を行う場合、実際に諜報活動を指揮・実行しているのは少数のコアな工作員であり、その活動計画や報告も極めて厳格に管理されている。
 そして、前述したように、中国の諜報活動は、使える人間は積極的に取り込み、利用することをその戦略としている、彼らは政治信条を含むイデオロギーで同じ方向を向いている者や無知な者(=役に立つばか)に容赦なく接近し、金銭的に依存させるなどして彼らをツールとしていく。
 それは、政治工作の部分で特に顕著に見られる。
 日本に求められる施策とは
 今回の一連の事件では、各国で立件の手段とした法律は以下の通りである。
<ドイツ>
・軍事技術情報に関し3名が逮捕された事件:外国貿易決済法(FTPA)
・AfD議員補佐が逮捕された事件:ドイツ刑法(第99条、諜報機関の⼯作員活動罪等)
<英国>
・議会調査担当者が逮捕された事件:公務機密法
<ベルギー>
・クレイエルマン元議員に関する事件:捜査中
 中国の諜報活動に対し、日本ではどのような対応が求められるだろうか。ここで指摘されるのがスパイ防止法だろう。
 日本にはスパイ防止法がなく、上記ドイツ刑法第99条のように、諜報活動をその対象犯罪とした法がないのが実情である。但し、各国が一概にスパイ防止法をもって効果的に検挙を進めているというわけでもない。上記ドイツFTPAや公務機密法はスパイ防止法の類とはやや異なる。また、日本では外為法不正競争防止法特定秘密保護法などのスパイ防止法の穴を埋めるような法整備がなされてきたと言えよう。
 筆者は、抑止の観点から重罰を規定するスパイ防止法の必要性に異論はないが、捜査実務の観点で言えば、捜査手法の制約こそが改善すべき点ではないかと考える。
 というのも、法が整備されても、その法を適用し立件するための捜査手法が拡充されなければ、これまでと変わらず、立件に辿りつかない可能性が高いままである。
 今回のドイツ等の事件に関し、各国は諜報活動の捜査手法は明かさないため、その捜査手法は不明だ。(当然ではあるが、手の内を明かすような愚かな真似はしない)
 しかし、諸外国は通信傍受に関する法が整備されており、その権限も弱くない。
 筆者は、日本においても、例えば犯罪発生前における行政通信傍受や、囮捜査の拡充が求められると考える。
 欧州で起きている事象を踏まえ、今一度、日本におけるカウンター・インテリジェンス(防諜)について、見直し、広く深く議論する必要がある。
 【執筆:稲村悠・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事
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