🔯24」─1─昔は金より銀が高価だった。~No.74No.75No.76 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 江戸時代、徳川幕府は権威を発動して金融信用で金貨・銀貨・銅貨の3種類を巧みに使い分けていた。
 諸藩は、領内だけで通用する地域金融として藩札を発行していた。
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 2023年7月27日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「じつは昔は「金より高価」だった「銀」の意外な性質 元素118の新知識
 桜井 弘
 現在までに118種類が知られている、世界を形作る構成要素、「元素」。私たち人類の身体もまた、さまざまな元素からできている。元素のちょっとしたバランスの乱れが健康状態までをも大きく左右する。そんな元素と人間の深遠な関係について、『元素118の新知識〈第2版〉 引いて重宝、読んでおもしろい』を著した桜井弘氏に聞いた。
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 銀/Silver
 銀は紀元前3000年ごろには人間生活の舞台に登場した金属である。銀の元素記号Agの語源は、ギリシャ語でargyros(ラテン語argentumは銀を指す)であり、「輝く」とか「明るい」という意味である。
 ただし、そのころは、銀は金より高価なものとされていた。エジプトなどでは、金と銀の価値の比は1対2・5であったという。金に銀メッキをすることさえあったようである。なお、当時の銀は、その中にかなり金を含んでいたらしい。
 その後、中世ヨーロッパの時代にいたるまで、銀はずっと金より高価なものであった。その後、銀の価格が下落したのは、新大陸から大量の銀が流入したことによる。
 中国では、唐や宋の時代にすでに銀塊や銀食器をあつかう店があり、これを金行に対して銀行とよんでいた。貨幣の面で、しだいに銀貨が金貨に取って代わるようになると、ついにはこれが金融機関の名称となっている。
 日本では、江戸時代に流通した小判は純金のように思われることがあるが、実は金と銀の合金である。この金と銀の割合は時代によって異なっている。その割合については、大強度陽子加速器(J-PARC)で発生させる負ミューオンによって非破壊的に調べられた。
 銀は主としてその硫化物である輝銀鉱(Ag2S)として産出するほか、銅や鉛、亜鉛などの精錬の副産物として産出する。2018年には、地球上に存在する銀の総量は140万tと推定された。金の総量が23万t程度であることを考えると、銀は比較的多く地球上に存在している金属である。2020年の統計によれば、銀の最も多い産出国はメキシコで5541t、中国が3378t、ペルーは2772tであった。この3ヵ国で世界の約50%を占めている。
 銀は古くから宝飾品や食器として用いられている。銀でつくられている宝飾品や食器などを放置すると黒ずむのは、銀が空気中の硫黄成分と反応するからである。特に指輪が黒ずみやすいのは、皮膚にはシステインという硫黄を含むアミノ酸を構成成分とするタンパク質があるためである。硫化水素を含む温泉に入ると、銀でできた装飾品は、硫化銀を生成するため黒ずむので、温泉に入る前にはずしておくとよい。
 銀は、室温における電気伝導率があらゆる金属の中でいちばん大きいと同時に、光の反射率も非常によい。したがって、導電性を活かして最先端のエレクトロニクス産業で重用される一方で、魔法びんの二重壁の内面を銀メッキして断熱性をよくするといった用途にも使われる。
 また、銀は展性と延性が金の次に大きく、0・0015mmと極薄の箔をつくれる。さらに、1gあれば1800mの長さに延ばせる。
 銀は2010年代の中盤以降、ディーゼルエンジンの排ガス浄化において、白金に代わる触媒として注目されている。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べて二酸化炭素(CO2)排出量が少ないが、窒素化合物(NOx)を多く発生させてしまう。NOxを除去するために銀触媒が発見された。これによって、ディーゼルエンジンの排ガス触媒の低コスト化が実現することが期待されている。開発したのは三井金属鉱業であるが、開発成功の第一報は2008年4月であり、実用化のめどが立つまでに8年を要した。
 銀化合物の利用として最もよく知られているものは臭化銀(AgBr)であろう。臭化銀は光に当たると銀を遊離する性質をもっているので、写真用感光性材料として広く用いられている。これを利用して撮る写真は、近年では「銀塩写真」といわれる。化学反応を利用する「銀塩写真」は、撮影方法(潜像の作り方)や現像(化学反応で銀を析出させる)の過程に人の手が入るチャンスがあり、格別の味わいを求める多くのファンがいる。
 ハロゲン化銀の一つに塩化銀(AgCl)がある。塩化銀を銀電極上にコーティングした電極は安定した電位を示すため、電位差を測定するときの基準電極として用いられる。pHメーターにはガラス電極が用いられるが、このときの電位の基準として銀/塩化銀電極を用いる。しかし近年では、FET(電界効果トランジスタ)をセンサーとするpH電極が登場し、取り扱いやすさや、化学反応プロセスへのpH測定器としての組み込みやすさから、需要が高まっている。
 塩化銀は400~2200nmの光を透過させるため、赤外線写真(700~900nm)撮影用の透過フィルターとして用いられている。
 酸化銀(Ag2O)は加熱により容易に酸素を放出して銀になる。これを利用して、溶かした有機溶媒中に酸化銀を分散してから樹脂に塗布し、700℃で加熱すると、有機溶媒のみが飛び去り、銀の塗布膜がつくれる。酸化銀はまた、酸化銀電池として小型の電子機器の電力供給源として利用されている。
 硫化銀(Ag2S)はガラスの黒色目盛りに、クロム酸銀(Ag2CrO4)は橙色顔料として用いられている。このほかテトラヨウ化水銀酸銀は高温(40~50℃)で赤血色に変化し、冷えると黄色になるため、ベアリングの過熱防止用温度センサーとして用いられる。
 銀は血液中に0・003mg・L-1が検出される。日常の食事からは0・0014~0・08mgの銀が摂取されている。中毒症状を起こす量は60 mgであり、致死量は1・3~6・2gである。
 銀の化合物である硝酸銀(AgNO3)は、古代エジプトで殺菌剤として用いられていた。硝酸銀の1~2%水溶液は新生児の淋菌感染による眼炎予防のための点眼用に、0・01~0・5%水溶液は殺菌消毒薬として用いられる。0・025%水溶液はチフス菌を2時間以内に殺す能力をもつが、その強い殺菌作用は、銀がバクテリア酵素などと強く結びつき、酵素を失活させるためであると考えられている。
 硝酸銀または酸化銀(Ag2O)とペプトン、アルブミンあるいはアルブモーゼなどのタンパク質を反応させると、プロテイン銀ができる。プロテイン銀は銀塩の殺菌力を保持したまま、刺激性を抑制したものであり、鼻炎、扁桃腺炎の塗布剤として0・5~5%水溶液が、尿道や膀胱の洗浄用として0・1~0・2%水溶液が、カタル性結膜炎に2~10%水溶液が用いられる。
 殺菌消毒剤として、サルファダイアジン銀という銀化合物が用いられている。この薬は銀がバクテリアのDNAと結合する作用によって殺菌する効果を示すと考えられている。
 近年、種々の生物から酵素・タンパク質を抽出して精製し、その性質を調べることが盛んに行われている。得られたタンパク質の純度を調べる方法の一つに電気泳動法がある。得られたタンパク質標本が均一の純粋なものであれば電気泳動のパターンは単一のバンドを示す。
 タンパク質標本が微量の場合、より高い感度を求めて銀染色が行われている。タンパク質を電気泳動ゲルに固定した後、硝酸銀で処理をすると、銀はタンパク質と結合する。結合した銀を還元すると、黒くなるバンドがタンパク質の存在を示す。この方法によると、従来の染色法よりも10~20倍感度が高くタンパク質を検出することができる。この性質を利用して、宇宙におけるタンパク質結晶化実験に必要となる高純度タンパク質の調製が行われた。
 さらに連載記事<ゴム手袋を装着して触ってもアウト…殺人事件にも使われた「タリウム」の「致死量」と「特徴」>では、タリウムについて詳しく解説する。
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