🦎7」─1─グリーンランドを独立させて親中国家に。中国の氷上シルクロード構想。~No.29No.30No.31 

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 OME 特集 気候変動とカネ グリーンランド、凍らぬ海の下に眠る宝 進む資源開発、迫る中国の影
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 2018年 5月1日 産経WEST「【世界を読む】世界最大の島グリーンランドに中国が接近…一帯一路は北極へ
 グリーンランド自治政府がある西海岸の「首都」ヌーク。空港整備プロジェクトや資源開発、孔子学院など様々な面で中国との関係が深まっている(ロイター)
 北欧デンマーク自治グリーンランドに中国が接近している。空港整備プロジェクトや地下資源開発のほか、文化普及機関の孔子学院の設置計画も動く。温暖化による氷の融解で、北極圏は航路や資源獲得の展望が大きく開けた。専門家は「独立を志向し経済的に自立したい自治政府と、北極圏に拠点が欲しい中国は互恵関係にある」と指摘。グリーンランド選出のデンマーク国会議員は産経新聞の取材に対し「成長が必要だ」として中国との関係強化に積極的な姿勢を示した。   (坂本英彰)
 ロイター通信は3月末、カナダやオランダなどの5企業とともに中国の交通インフラ大手「中国交通建設」が、島内3空港整備プロジェクトの参加企業に選ばれたと報じた。自治政府がある西部ヌークと観光拠点の西部イルリサットなどで大型旅客機も発着できるようにし、欧州や北米への直行便開設も目指す。
 小さな政府の大事業
 総事業費は約6億ドルとGDP約20億ドルのグリーンランドでは巨大。近く着工予定だが、40%の資金はまだ確保できていないという。
 昨年秋、自治政府キールセン首相が北京を訪れ、漁業や鉱業、観光分野の協力強化を図ったほか、政府系金融機関の中国輸出入銀行も訪れた。キールセン氏は「資金確保の旅とみられているだろう」と、中国行きの目的を暗に認めた。
 多額の負債を抱えることになるのではとの懸念も、現地では出ている。また労働力不足も不安材料だ。
 日本の約6倍の面積を有するグリーンランドだが、人口は約5万7千人。自治政府は労働者不足を見越して近年、一定規模以上のプロジェクトで外国人労働者を雇用できるよう法を整備した。主なターゲットは中国人労働者とされる。
「一帯一路」に北極
 ロシアやカナダ、米国など大国が多くを占める北極海沿岸で、グリーンランドは面積的に関与の度合いが大きいが、小国デンマークのさらに自治領という政治的には独特の立場だ。
 人口の約9割は先住民系で独立志向が強く、住民投票を経て2009年に外交や安全保障を除く広範な自治権を獲得した。最大の課題は経済で、自治政府予算の半分をデンマーク政府の補助金に頼っている。
 しかし、地球温暖化による環境の変化は北極圏にない中国も強く引きつけている。中国は今年1月、北極政策をまとめた初の白書を発表し、中国からアジアや欧州をつなぐ現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」政策に北極圏も組み込んだ。域外国の立場に甘んじることなく積極的に関与し、利益を確保していく狙いだ。
 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの高橋美野梨助教は「北極圏に足場を置いて影響力を確保したい中国にとって、31人の議員しかいないグリーンランドはロビー活動も容易だ。一方、経済的な脆弱性を克服したいグリーンランドにとっても、資金を提供してくれるなら基本的にはウエルカムだ」と解説した。
 最北の米空軍基地
 こうした中、デンマーク政府の立場は微妙だ。中国の影響が過度に大きくなれば、長年同盟関係にある米国の懸念を誘いかねない。ロシアと北米の間に位置するグリーンランドは冷戦時代から軍事的な要衝で、いまも米空軍が最北の基地を置く。配備のレーダーはミサイル防衛(MD)システムの一角をなす。
 ロイターに、デンマーク政府の高官は「深く憂慮している。デンマークは最重要の米国とうまくやっていく重大な責任がある」と話した。空港というインフラへの中国の関与は重く受け止められているようだ。2016年に中国企業が元の米海兵隊施設の買収を試みた際は、デンマーク政府が米国の要請を受けて差し止めたという。
 高橋氏は「デンマークグリーンランドを基地に提供することで、北大西洋条約機構NATO)に居場所を確保している。独立というような事態になれば、安全保障に与える影響は重大だ」と話した。
 独立は時間の問題
 文化や観光でも今後、中国の影響は増しそうだ。空港整備プロジェクトに含まれる南部カコトックにある学校に今年、孔子学院のクラスを開設する計画がある。2016年に地元自治体と上海市教育委員会が交わした合意書では、中国から2人の中国語教師が派遣され中国語や中国文化を教えることになっている。
 また近隣のアイスランドでは最近の10年で10倍近くも中国人観光客が増えており、空港が整備されればグリーンランドでも伸びが大いに期待される。
 さらに米外交専門誌ディプロマットによると、オーストラリアの資源開発会社と中国企業によるレアアースやウランの採掘プロジェクトが進み、香港を拠点とする企業が鉄鉱石の採掘権を持つなど、地下資源をめぐる中国の動きも活発だ。
 デンマーク、オールボー大学の政治学者は米ブルームバーグに「グリーンランドでは誰もが独立を望んでいる。問題はいつ、どんなふうにかだ」と話す。独立を目指す世界最大の島の小さな政府に、中国が与える刺激は大きい。
 グリーンランド選出のデンマーク国会議員、アーヤ・ケムニッツ・ラーセン氏は産経新聞の取材に電子メールで「中国との協力に関心がある。中国の投資に懸念があることは承知しているがグリーンランドは成長とビジネス開発が必要だ」と述べた。」
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 中国共産党系中国資本が他国の国土を購入する、その飽くなき欲望とは「貪欲」である。
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 日本国内には、日本の領土を中国に売る事に賛成し中国人移民を主とする外国人移民を推進する日本人がいる。
 中国共産党系中国軍系中国資本は、日本の国土や企業など多くのモノを買い漁っている。
 日本国内に、外国人移民(主に中国人移民)が増えている。
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 超エリート層と言われる超難関校出高学歴の政治的エリートと進歩的インテリ達の中の媚中派は、中国共産党が進める一帯一路構想に参加する事を求めている。
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 バブル崩壊後の日本人は、それ以前の日本人とは別人のような日本人である。
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 2021年4月6日 産経新聞レアアース採掘争点 グリーンランド総選挙 中国企業関与に欧米警戒 
 レアアース採掘争点 グリーンランド総選挙 中国企業関与に欧米警戒 
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 【ロンドン=板東和正】北極圏に位置する世界最大の島、デンマーク自治グリーンランドで6日、総選挙が行われた。未開発鉱床としては世界最大とも指摘される同島のレアアース(希土類)採掘計画の是非が最大の争点。計画には世界のレアアースの約6割を生産する中国の企業も関わっており、米欧で警戒が強まっている。
 採掘計画では、中国のレアース加工会社「盛和資源控股」が株主であるオーストラリアの鉱物探査企業が事業主体となっている。自治議会(定数31)の選挙は、与党「進歩党」が採掘計画を支持する一方、最大野党「イヌイット友愛党」が計画に反対する構図。7日朝(日本時間7日午後)にも大勢が判明する見通し。
 グリーンランドデンマークから広範な自治権を付与されている一方、主な産業は漁業や観光などで、自治政府予算の約半分をデンマーク政府の補助金に頼っているのが実情だ。
 進歩党はデンマークからの独立を目指しており、採掘計画の実現で経済的に自立したい考え。計画が軌道に乗れば、自治政府の予算を2億ドル(約220億円)以上増やせる可能性があるとし、ヤンセン党首は「採掘計画は(同島の)独立や経済にとって非常に重要」と訴える。
 一方、イヌイット友愛党は採掘地周辺の環境の悪化を懸念する。レアアースの採掘の副産物として出てくるウランやトリウムなどの放射性物質により、周辺の水質や農作物に悪影響が出る恐れがあるためだ。
 選挙の行方は欧米も注視している。グリーンランドは「世界最大のレアアースの未開発鉱床」(米地質調査所)ともいわれており、英紙テレグラフは「欧米の外交官が中国政府が島のレアアース鉱床を独占するのではないかと懸念している」と伝えた。
 レアアースはハイテク製品の生産に欠かせず、バイデン米政権が2月、中国との対抗のため、レアアースなどのサプライチェーン(供給網)強化に乗り出す方針を決めるなど、その確保は欧米の課題だ。トランプ前米大統領グリーンランドを購入する意向を示すなど地下資源の重要性に関心を示したこともある。
 グリーンランドは気候変動で北極圏の氷が解けて北極海が新たな航路として注目される中、その地政学的な重要性も増している。近年は中国がインフラ整備などを通じてグリーンランドに浸透してきていた。
 エネルギー問題を研究する英シンクタンク「極地研究政策イニシアチブ(PRPI)」は3月、英米豪など英語圏5カ国の機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」が、レアアース確保のため、グリーンランドと関係を構築して共同対処する必要性を唱えている。
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 グリーンランド ロシアと北米の間に位置する世界最大の島。面積は216万6086平方キロメートルと日本の約6倍。人口は約5万7千人。その約9割は先住民系で独立志向が強く、住民投票を経て2009年に外交や安全保障を除く広範な自治権を獲得した。冷戦時代から軍事的な要衝で、いまも米空軍が最北の基地を置き、弾道ミサイルの早期警戒や人工衛星の追跡に活用している。
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 2022年6月13日 東洋経済ONLINE「中国不動産大手「ドル建て社債」償還延期を要請
 緑地控股集団、コロナ禍で資産売却計画に狂い
 中国の不動産会社は景気減速にコロナ禍が重なり、資金繰りの悪化に拍車がかかっている(写真は緑地控股集団のウェブサイトより)
中国の不動産大手の緑地控股集団(グリーンランド)が、満期まで1カ月を切った元本5億ドル(約635億円)の外貨建て社債の償還を1年間繰り延べするよう、投資家に対して要請していることがわかった。
 問題の社債は、2022年6月25日に償還期限を迎える表面利率6.75%のドル建て債券だ。緑地控股集団のオフショア子会社の緑地環球投資が5月27日に香港証券取引所を通じて開示した通知書によれば、同社は(債券発行時に定めた)一部の条項の修正および免除の同意を得るため、6月20日に上記社債保有者向けの会議を招集する計画だ。
 その具体的な内容は、償還期限を2023年6月25日まで繰り延べすることや、繰り延べ期間中に緑地控股集団が当該債券を買い戻す権利を積み増すこと、本来の満期日に元本の10%の返済と利息の全額の支払いを行うことなどだ。
 なお、償還期限の延長を求めざるを得なくなった理由について、緑地控股集団は「3月中旬から新型コロナウイルスの感染が拡大し、会社の資産のやりくりや物件の販売が滞ったため」としている。
 資金繰り悪化は一時的と言うが…
 同じく5月27日、この社債の(発行時の)主幹事を務めた中銀国際(訳注:国有銀行大手の中国銀行投資銀行部門)が債権者向けの電話会議を開催。そこに出席した緑地控股集団の財務部門幹部の呉正奎氏は、同社が本社を置く上海市でロックダウン(都市封鎖)が実施されたため「業務の正常な運営や返済資金の準備が深刻な影響を受けた」と釈明した。
 「わが社は繰り返し検討した結果、6月25日満期のドル建て社債の償還繰り延べを要請せざるを得ないと判断した。現時点では、わが社の手元には社債の元利を全額返済できるだけの現金がない」(呉氏)
 本記事は「財新」の提供記事です
 ただし緑地控股集団は、目下の資金不足は新型コロナ流行の影響による一時的な問題であるとの立場を崩していない。
 「ロックダウンの解除後は(本来の)計画通りに資産売却を進めることができる。今年8月から11月までの間に期限を迎える社債に関しては、わが社は期日通りに償還する能力がある」。呉氏はそう強調した。

 (財新記者:彭駸駸、陳博)
 ※原文の配信は5月28日
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 2023年7月19日 REUTERS「中国政府系不動産会社に債務問題、緑地控股はドル建て債デフォルト
 [香港/上海 19日 ロイター] - 中国の政府系不動産開発会社、緑地控股集団(グリーンランド・ホールディングス)はドル建て債(2024年6月満期、4億3200万ドル)の分割償還が滞り、デフォルト(債務不履行)に陥った。事情に詳しい複数の関係筋が19日に明らかにした。
 政府系デベロッパーの問題は、中国不動産業界の債務危機に落ち着く様子がほとんど見られない中、下半期に民間デベロッパーのデフォルトが増えることを示唆している可能性がある。
 上海を拠点とする緑地控股は昨年、ドル建て債支払いを延期した初の政府系デベロッパーとなった。
 デフォルトを最初に報じたデットワイアによると、24年6月満期債の受託会社であるHSBCは今月14日、緑地控股が2250万ドルに相当する5%の分割償還を期日に行わなかったとして、債務不履行イベントを保有者に通知した。
 緑地控股は、さまざまな関係先と連絡を取っているとのみコメントした。
 また、関係筋2人が19日に明らかにしたところによると、別の政府系デベロッパーである遠洋集団(シノ・オーシャン・グループ)は8月2日に償還を迎える20億元(2億7729万ドル)のオンショア債について、元本償還を1年延期するよう債権者に提案した。
 北京を拠点とする遠洋集団は、オンショア債支払いを延期する政府系デベロッパーとしては2番目となる。同社は詳細を今後公表するとし、当該債券の取引を18日から停止した。
 市場は同社が月内に期限を迎えるオフショアクーポンを支払えるかどうかに注目している。
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 2023年8月11日 YAHOO!JAPANニュース PRESIDENT Online「グリーンランドを独立させて親中国家に…中国が密かに進める「氷上シルクロード」構想の恐ろしさ
現地の自治政府は中国からの投資を歓迎
 2017年、中国の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領に「氷上シルクロード」構想を提示している。海上自衛隊幹部学校教官の石原敬浩2等海佐は「中国の海洋進出の野望は北極海にまで及んでいる」という――。
※本稿は、石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)の一部を編集したものです。
 液化ガスタンカー写真=iStock.com/lyash01※写真はイメージです
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 「一帯一路」を北極圏まで繋げ
 「氷上シルクロード」構想が明らかになったのは、2017年の習近平主席のロシア訪問の旅でした。プーチン大統領との会談の中で習首席はこの氷上シルクロード構想を提示し、両国は北極海航路開発における協力推進に合意しました。
 同年11月には北京を訪問したロシアのメドヴェージェフ首相と習主席が会談。習主席は「ロシアと共同で北極海航路の開発・利用協力を推進し、氷上シルクロードをつくり上げなければならない」と、二国間協力の推進を確認します。
 2018年1月、中国は初めてとなる北極政策文書『中国の北極政策』を公表しました。同白書は「北極の情勢と変化」「中国と北極の関係」「中国の北極政策の目標と基本原則」「中国の北極事務への関与における主要政策主張」の4つの部分からなっており、その概要は以下のとおりです。
・中国の資金、技術、市場が北極航路の開拓や沿岸国の発展に重要な役割。
・中国は関係国と「氷上シルクロード」を建設し、北極地域の持続可能な発展を促進。
・北極の環境、気象、生態などの科学調査を強化。北極の環境を保護し気候変動に対応。
・北極航路の開発利用、石油や天然ガスの開発、漁業資源の保護利用に関与。
・自然を生かした観光開発を促進。
国連憲章国連海洋法条約を堅持しながら、北極統治メカニズムの整備を提唱。
 この発表は世界に波紋を拡げました。海洋派遣の野望が北極海にまで及んでいることを中国が隠さなくなった、といった形で、中国の北極進出に警鐘を鳴らす論調が数多く見られたのです。
 アジア・インド洋諸国のインフラ整備での「前例」
 中国は一帯一路政策の下、強引とも言える手法でアジアやインド洋諸国における、海外インフラ整備でトラブルを起こしてきました。パキスタンのグワダル港においては、当初は民間用に整備としていたものを海軍艦艇も使用するようになりました。スリランカのハンバントタ港では、中国に対する債務が膨大な額となり、債務軽減と引き換えに、港湾の運営権を99年間のリース物件として中国に譲渡する事態となり、多くのスリランカ国民から主権侵害と受け止められる事態となりました。
 このような事例からの類推として、北極海航路や氷上アイスシルクロードも一帯一路構想に入る、ということはアイスランドグリーンランドへの投資、インフラ整備でも同様の手法が狙いとしてあるのではないかとの疑念に繋がったのでした。
 「99年間の借地権」で観測基地を建設
 実際に各地で、中国の北極進出が加速していきます。海洋観測とともに、地上での観測、地上から行う宇宙の観測、それらに伴う基地や施設の設置が北欧諸国で深まっていきました。科学調査という名目を前面に立てて行われるこれらの活動は、中国の「科学外交」と総括されます。個別具体的なお話で、その経緯を確認したいと思います。
 アイスランド北部の荒涼とした高原に2018年10月、「中国アイスランド北極科学研究ステーション」が完成しました。オーロラなどの自然現象を、両国の研究機関が共同で観測するという名目です。
 建設費の約600万ドルは中国側が全額負担し、約160haの敷地は中国が99年間使用できる契約を結んで建設されました。開所式に参列した中国の金智健・駐アイスランド大使は、「中国は北極圏の主要な利害関係者として、一帯一路の枠組みを通じて協力を推進し続ける」と語ったとされています。(「【改革開放40年】第4部・一帯一路(01) 科学外交、北欧に接近」、読売新聞2018年11月21日付朝刊)。
 中国資本による「リゾート」開発計画
 中国とアイスランドの関係は、紆余曲折うよきょくせつありながら深化、と言えるのでしょうか、いろいろな話がありました。
 2011年には、中国の不動産企業が約300平方kmの土地を買収して、リゾートを建設する計画がありました。兵庫県・淡路島の半分ほどに相当する広大な土地をリゾートにするというものでした。所有者は売却を承諾したものの、政治的/軍事的な意図があるのではとの懸念が示され、アイスランド政府が許諾を審査する事態となりました。国の独立性を守るためにも土地売買の制限が必要と判断され、前例のない大規模売却は不認可となりました(「中国資本の旺盛な土地買収は極北にまで…観光ブームに沸くアイスランドで高まる懸念」、産経新聞2017年11月19日)。
 苦境に陥ったアイスランドに中国が手を差し伸べた
 アイスランドを中国へと近づけたのは、2008年の金融危機でした。為替レートの急落や失業率の急上昇によって、アイスランドは、国際通貨基金IMF)と欧州連合EU)に救援を求めざるを得なくなったものの十分な支援が得られず、新たな経済協力パートナーを探し始めたのです。
 石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書
 中国はこれに意欲を示し、2010年にはアイスランド通貨スワップ協定、2013年には自由貿易協定(FTA)を締結します。ちなみに、これは中国と欧州国家との初のFTAとなりました。
 中国の報道では「13億7000万の人口を抱えて急速に発展するアジアの大国と人口33万の北極の島国とは現在、関係を急速に発展させている」「アイスランド北部の湾に深海港を建造し、アイスランドを北海航路(ママ)の主要な海運センターとするなど、野心に富んだ計画を交渉している」等々、中国の北極海進出の大きな足掛かりとしようとする姿が見えます(「中国、アイスランドにオーロラ観測所を建造」中国網日本語版2016年11月27日)。
 注目すべきもう一つの場所、グリーンランド
 中国の北極進出においてもう一つ注目すべき場所が、デンマークグリーンランドです。日本の約6倍の面積を有するグリーンランドですが、人口は約5万7000人。その9割は先住民系で独立志向が強く、住民投票を経て、2009年には外交と安全保障を除く広範な自治権を獲得することができました。
 しかしながら、独立への最大の課題は経済問題です。主要な産業はデンマーク政府の補助金に頼るという、経済的な脆弱ぜいじゃく性があります。主要な産業は水産業で、2010年の輸出品の87%が魚介類(うち55%がエビ)および水産加工品となっています(デンマーク大使館ホームページより)。
 グリーンランドの漁師写真=iStock.com/oversnap※写真はイメージです
 このような状況から、自治政府は経済的な中国資本の進出を非常に歓迎してきました。たとえば2011年、天津で開催された「中国国際鉱業大会」にもグリーンランド自治政府の鉱物・石油資源局担当者が出席し、投資説明会を開き中国人投資家に働きかける、といった活動がありました。
 空港拡張計画への支援を中国に求める
 そういったなか、空港開発問題が発生します。グリーンランドの主要な民間空港は、自治政府首都のヌーク(Nuuk)、ツーリズムの中心イルリサット(Ilulissat)、南部のカコトック(Qaqortoq)があるのですが、いずれも滑走路が短く、海外から直接ツアー客等が飛来するには、拡張工事が不可欠なのです。
 その空港拡張工事に中国系企業が参入しようとし、デンマーク本国や米国が警戒する事態となったのです。
 空港拡張計画が決定したのは2015年。総事業費の36億クローネ(約570億円)は島の域内生産(GDP)の約2割に当たり、当初デンマーク政府は負担に消極的でした。そこで、自治政府が頼ったのが中国だったのです。2017年、自治政府のキム・キールセン(Kim Kielsen)首相が訪中し、中国輸出入銀行などを回って協力を求めました。
 この事態に危機感を抱いたのが米国・米軍でした。2018年5月にはジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官がデンマークの国防相に「中国に北極圏での軍事力を広げさせてはいけない」と直接警告したといわれています。その結果、デンマーク政府は空港拡張工事への慎重姿勢を一変させ、積極関与に転じました。
 中国の投資に期待する独立派
 同様の事態は過去にもあり、2016年に中国企業グリーンランドにある旧米海軍基地施設を買収する案を持ちかけた際、デンマーク政府が米政府の希望を受けてこれを阻止した、とも報じられています(Erik Matzen, “Denmark spurned Chinese offer for Greenland base over security: sources,” Reuters, Apr. 7, 2017)。
 こういった動きはグリーンランドの独立派を刺激することとなり、グリーンランド議会のヴィヴィアン・モッツフェルト(Vivian Motzfeldt)議長は「米国とデンマークは傲慢ごうまんだ。中国が私たちに投資したいなら、今後も排除しない」と、中国に対する期待を示す事態となりました(「(米中争覇)極地 北米に「親中国家」、危機感 米、グリーンランド買収構想」朝日新聞2019年8月26日)。このような情勢は自治政府内での内紛をもたらし、2018年9月には連立政府が崩壊するに至りました。
 2018年には日本のテレビ局のインタビューに答えるかたちで、グリーンランド自治政府エネルギー相が、グリーンランドに投資して雇用を創出してくれるなら中国資本を歓迎すると述べていました。
 2021年4月、レアアース/ウラン鉱山開発反対運動や、デンマークからの独立推進等の問題をめぐり選挙が実施され、政権交代が実現しました。環境を保護しつつも独立推進への動きが加速するという期待もあります(Martin Breum, “Greenland's new leadership will be challenged by a push for faster independence,” Arctic Today, Apr. 9, 2021)。
 2023年4月には、独立への準備として、憲法草案が作成され、公表されました。いま、グリーンランドでは連立政権の下、様々な動きが進行中で目が離せません(Martin Breum, “Greenland drafts constitution for its ultimate independence,” Arctic Today, May 17, 2023)。
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 2023年8月12日 MicrosoftStartニュース JBpress「地球温暖化で氷が溶ける北極海、ロシアと中国の進出で変わる地政学的条件
 関 瑶子
 北極海の現状。温暖化によって地政学的な価値が高まっている(写真:ロイター/アフロ)
 © JBpress 提供
 2023年8月現在、ロシア・ウクライナ戦争の報道を目にしない日はない。また、中国が虎視眈々と台湾侵攻を目論んでいるというニュースも頻繁に見聞きする。
 そのロシアと中国が、北極海に対するプレゼンスを高めようと躍起になっている。もちろん、欧米諸国も同様だ。このような北極海にかかわる動きは、日本ではあまり話題にはならない。
 しかし、ロシアと中国の北極海でのプレゼンス強化は、今後日本にも影響を及ぼす。そう指摘するのは、石原敬浩氏(海上自衛隊幹部学校教官・二等海佐/慶應義塾大学非常勤講師)である。
 ロシアと中国は北極で何をしようとしているのか、欧米諸国はそれらの動きにどのような対応をしているのか、地球温暖化北極海をどう変化させるのか──。『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)を上梓した石原氏に話を聞いた。
 (聞き手:関瑶子、ライター・ビデオクリエイター)
──なぜ今、北極海に注目が集まっているのか、改めてご説明をお願い致します。
 石原敬浩氏(以下、石原):
 北極海が着目される理由としては、昨今のロシアの戦略的な挑戦と地球温暖化の2点が挙げられます。
 2022年8月、北大西洋条約機構NATO)のストルテンベルグ事務総長は「ロシアと中国が連携して北極におけるプレゼンスを高めようとしている。これは、NATOに対する戦略的な挑戦である」と発言し、強い警戒感をあらわにしました。
 また、地球温暖化により北極海の氷は減少の一途をたどっています。それにより、これまで氷で閉ざされていた北極海を船が航行できるようになる。新しい航路が開発されるのです。
 ドイツのハンブルクから横浜への航路を例にすると、現在のインド洋を経由する航路では、およそ2万1000キロ。北極海航路が開発されると、それが1万3000キロになる。約6割に短縮されるのです。
 地球温暖化で氷が溶ける北極海、ロシアと中国の進出で変わる地政学的条件
 © JBpress 提供
──そのほかに、地球温暖化により我々が北極海から享受できるメリットはあるのでしょうか。
 石原:世界中の未発見の天然ガスの30%、石油の13%が北極圏に眠っていると言われています。
 現在の北極海は氷で覆われているために、掘削作業を行うことが困難です。でも、氷が融けると普通の海になります。そうなると、既にある掘削技術を利用して、海底から資源を掘り出すことが可能になる。
──2008年、北極海の沿岸5カ国(ロシア、ノルウェーグリーンランド自治領として保有するデンマーク、カナダ、米国)により、イルリサット宣言が発表されました。この宣言の目的はどのようなものなのでしょうか。
 グリーンランドアイスランド地政学的な意味
 石原:南極には南極条約が適用され、平和利用、資源開発の禁止、領有権凍結などが定められています。
 南極は大陸ですが、北極の場合は海です。海ならば、国連の国連海洋法条約にのっとって管理するのが適切である。これが、イルリサット宣言の言わんとすることです。
 地球温暖化で氷が溶ける北極海、ロシアと中国の進出で変わる地政学的条件
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 国連海洋法条約では、海岸を有する国は、海岸から200海里(約370キロ)の海底及び海底下をその国の排他的経済水域及び大陸棚とし、天然資源の探査・開発の権利などを認めています。北極海にこのルールを適用させることで、北極海沿岸5カ国は、北極海のさまざまな権益を支配することができるのです。
──第二次世界大戦から冷戦終結に至るまで、グリーンランドアイスランドには米軍基地が設置されていました。グリーンランドアイスランドの基地は、軍事的にどのような意味を持つのでしょうか。
 石原:まず、第二次世界大戦における大西洋の戦いについて説明しましょう。
 北米から、イギリスに物資を輸送する際には北大西洋を航行しなければなりません。当時、ドイツはデンマーク海峡(グリーンランドアイスランドの間)経由で世界最強の不沈戦艦と呼ばれたビスマルクを出撃させたり、北大西洋海域全体にU-ボート(潜水艦)を哨戒させ、ヨーロッパと北米の海上交通の遮断作戦を行います。
 グリーンランドは現在に至るまでデンマーク領ですが、第二次世界大戦中はアイスランドデンマークの一部でした。
 1940年4月、ナチス・ドイツデンマーク本土を占領します。これを受け、デンマーク駐米大使の独断により、グリーンランドは米国の保護下に置かれることになりました。これにより、米国はグリーンランドに基地を設営することができました。
 グリーンランドに加え、アイスランドに基地を構えることができれば、ドイツに対して優位に立つことができます。もちろん、ドイツも同じように、北米やイギリスに対して優勢に立つため、アイスランドを攻略しようと目論みます。
 結果的には、ドイツより早くイギリスがアイスランドを占領。その後、イギリス軍の守備部隊に代わり米海兵隊が駐在することが決定します。
 こうして1945年までの間、ドイツによる海上交破壊作戦と、海洋交通保護のための連合国軍の作戦が続けられることになりました。
 地球温暖化で氷が溶ける北極海、ロシアと中国の進出で変わる地政学的条件
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 冷戦期に入ると、ワルシャワ条約機構に加盟しているソ連および東欧諸国と西欧諸国のにらみ合いが始まります。このときは、東西ドイツの境界、フルダギャップからワルシャワ条約機構軍が西ドイツに攻め込み、西欧諸国へ進軍、ヨーロッパで地上戦が起こることが危惧されていました。
 ヨーロッパで戦争が勃発した場合、北米から支援物資や弾薬、兵員を輸送する必要が生じる。海上交通破壊のため、ソ連北大西洋に潜水艦を展開させるのではないか。第二次世界大戦中の大西洋の戦いが再現されるのではないか、とまことしやかに囁かれていたのです。
 そのため、冷戦期には、グリーンランドアイスランド、イギリスを結ぶライン(G-I-UKギャップ)で、ソ連海上交通破壊を阻止しよう、という考え方が生まれました。
 冷戦後、米軍はいったんアイスランドから撤退しますが、2018年基地の再活性化を図ります。グリーンランドの米軍基地はミサイル防衛の最前線として能力を向上させ活動を継続しています。
 北極圏で軍事増強を進めるロシアの思惑
──昨今のロシアの北極圏での軍備増強状況や政策などについて教えてください。
 石原:この10年間で、ロシアは北極圏で既存の軍事基地および飛行場の拡大や近代化を進めてきました。さらに、北極圏で少なくとも3つの基地を新設しています。
 また、2021年1月1日から、ロシアの北方艦隊が軍管区に格上げされました。
 北方艦隊は、ロシア連邦海軍の艦隊の1つで、北極海の防衛を主業務とします。軍管区とは、軍隊の管轄区域です。
 それまでロシアには、西部、南部、中央、東部の4つの軍管区しかありませんでした。北方艦隊の軍管区への格上げにより、5つ目の軍管区が誕生した。北極圏でのプレゼンスを強化するために、北極海専用ともみられる海軍中心の北方軍管区をわざわざ新設したのです。
 地球温暖化で氷が溶ける北極海、ロシアと中国の進出で変わる地政学的条件
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 2022年8月には、ロシアの海洋戦略に関する文書「ロシア連邦海洋ドクトリン」が改定されました。これは55ページからなる文書なのですが、そのうちの22ページで北極について言及されていました。2022年8月と言えば、「すぐに終わる」とされていたウクライナ侵攻が終わらず、先行きが見えない状況になっていた時期です。
 そのタイミングにもかかわらず、ロシアは北極を重視するような海軍戦略を掲げ、北極に対して意欲的な姿勢を世界に見せつけたのです。
──次に、中国の北極政策についてお話を伺えればと思います。中国は、北極海には接していません。にもかかわらず、北極海に積極的に関与しようとしている。中国は、どのような手段で北極にプレゼンスを確立していこうとしているのでしょうか。
 中国が北極海進出のために得ている軍事情報
 石原:中国は2000年代後半から、着実に大国としての道を歩み始めました。積極的に海外に出ていき、プレゼンスを示していこう、という機運が高まったのもその頃です。
 当時から、中国は既に北極海も視野に入れていたと思われます。
 例えば、2012年に中国は北極海の第五次観測を実施しました。このとき、中国の砕氷船「雪龍」は、復路でまっすぐに北極を横断する最短ルートでの航海に挑戦。無事、本国に帰還しました。これは、北極海沿岸5カ国以外では初めての快挙でした。中国は、世界各国に対し、この成果を大々的に宣伝したのです。
 2014年にロシアはクリミア半島を併合。米国および西側諸国は、ロシアに対し経済制裁措置をとります。すると、ロシアと中国が急接近します。ロシアの依頼で中国企業海洋調査船を派遣し、地震探査や自律型水中ロボットによる観測を実施したのです。
 中国としては「ロシアからの依頼で北極海の科学調査をサポートしています」という言い分でしょう。しかし、ロシアの石油会社の依頼で中国企業が2016年に実施した地震データの収集においては、軍事利用もできるデータが収集された可能性も指摘されています。
 詳細は省きますが、地震データの収集により、水中や海底の地形の情報を得ることができます。このような情報は、有事には敵国および自国の潜水艦の存在場所を特定するために用いられます。つまり、軍事機密情報なのです。
 このようにして、中国は北極海進出のための軍事情報を得ていると推測できます。
 また、中国は、2018年1月に「北極政策文書」を発表しました。これは、中国の一帯一路構想に北極の氷上シルクロードも正式に含む、とするものです。
 これまで中国は、一帯一路構想の一環として、インド洋諸国や東南アジア諸国に様々なかたちで資金援助を行ってきました。北極政策文書により、グリーンランドアイスランドへの投資、インフラ整備についても、東南アジア諸国への援助と同様、公的に実施可能になる。他国はそんな疑念を抱きました。
 それまでも、中国の北極圏進出と、そこでの権益確保について、欧米諸国は警戒を強めていました。北極政策文書は、欧米諸国の警戒感をあおるのには十分すぎるほどのインパクトを持っていました。
 ロシアと中国のプレゼンス拡大で日本が受ける影響
──最後に、今後、ロシアおよび中国が北極圏におけるプレゼンスを拡大していった場合、世界はどのような影響を受けるのか、また、日本はどのような影響を受け、どのような対処をすべきなのか、この点についてはいかがでしょうか。
 石原:ロシアの海域でロシアが資源開発をすることは何ら問題ありません。そこから採掘される資源を日本が輸入する可能性もあります。
 しかし、中国海軍艦艇が北極海に出入りするようになると、日本にも影響が及びます。中国から北極海にワープすることはできません。中国の艦艇は、日本周辺海域を通過し、日本列島、北方領土沿いに北上していかなければなりません。海上自衛隊が中国艦艇の動きをしっかりと監視する必要が生じます。
 北極海の経済的な権利は、イルリサット宣言により沿岸5カ国が有しています。その一方で、地球温暖化などに関する科学調査は世界各国が協力してできる仕組みが既に構築されています。
 北極圏の科学調査には、日本も積極的にかかわっています。国立研究開発法人 海洋研究機構(JAMSTEC)では、2021年から北極域研究船の建造がスタートしました。2026年に就航予定、現在名称募集中です(応募締め切り、2023年10月20日)。
 2023年5月には、G7の科学技術相会合で、北極海の観測を強化する共同声明が発表されました。
 日本には、権益確保や資源獲得ではなくサイエンスという観点で、どんどん北極海に進出していってほしいと思っています。それこそ、海洋国家日本のあるべき姿なのではないでしょうか。
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