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2023年1月13日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「ドイツの大晦日に起こった「ロケット花火暴動」が示す“移民受け入れ模範国”の残念な末路
川口 マーン 惠美 の意見
新年を祝うロケット花火が武器に
大晦日にドイツで起こった暴動紛いの事件が、ドイツでは深刻な社会問題として尾を引いているが、日本で一切ニュースにならなかったのが不思議だ。
ドイツでは、日本のお正月に相当するのはクリスマスで、新年には新しい年の始まりという以外に大して意味はない。だから、家族で集まるクリスマスとは違って、ニューイヤーズイブである大晦日の夜はパーティーの時間。たいていは仲間うちでワイワイ騒ぐ。
カウントダウンが近づくと、特に男性陣が張り切り、庭や道路に空瓶を並べて、ロケット花火の打ち上げ準備に興じる。その後、厚いコートを着込んだ残りのメンバーが、シャンペンのグラス片手にぞろぞろと出てきて待機。零時の時報と共にヒューッ、パンパン!が始まり、夜空が赤や緑に染まり、気がついた頃には辺り一帯が火薬臭くなってくる。
© 現代ビジネス
その喧騒の中、少々酩酊しながらご近所さんのところにも足を伸ばし、ハッピーニューイヤーと言いながらハグやら乾杯をするのが、ドイツ国民の正しい新年の祝い方だ。
打ち上げ花火の販売は、1年のうち12月29日から31日のたった3日間しか認められていない。しかし、普段、倹約家のドイツ人が、こと花火にかけてはやけに気前が良く、この3日間の売り上げだけで100万ユーロ近いと言われる。
ただ、このとき発売されるロケット花火の多くは本格的なもので、非常に高温になり、扱い方によってはかなり危険だ。だから、大晦日には救急隊が増強され、零時を10分も過ぎると、火傷やボヤで、救急車や消防車のサイレンが聞こえ始める。
21年と22年の新年は、コロナのせいでこのお祭り騒ぎができず、ようやく元に戻った今回、皆の喜びはひときわ大きかった。
私は、今年の新年はヘッセン州で迎えたが、近所の人たちの花火をめぐる大団円も逐一見ることができた。しかし、散々、打ち上げを堪能した後、人々は花火のカスを全て片付けたらしく、翌朝、辺りはスッキリ整然とした街並みに戻っていた。新年早々、ドイツ社会の良い面を見たようで、清々しい気分になった。
ところが、この夜、ドイツの一部の地域では、そのロケット花火が武器に変わっていた。危険なロケット花火は、警官や救急隊を目掛けて発射され、暗闇の中では、火をかけられた車やバスや、道の真ん中に引き摺り出された大型のゴミのコンテナがメラメラと燃え盛っていた。
私はドイツに40年住んでいるが、大晦日のパーティーがここまで脱線したのは初めてだった。
「移民系の若者」たちによる暴挙
多く残されているスマホなどの映像では、若者たちがパトカーや救急車に石や瓶を投げては、勝ち誇ったようなポーズで喝采していた。それは大晦日のパーティーとは一切無関係の、暴動というにふさわしい忌まわしい光景だった。
フランスだったら少なくとも放水車が出動していたに違いないが、ドイツでは警官が立ちすくみ、救助隊員が逃げ惑っていた。この夜、ベルリンでの逮捕者は145人(国籍は18ヵ国)だったが、まもなく全員が釈放された。負傷した警官の数は41人に上った。
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特に被害が大きかったのは旧西ベルリンのノイケルン、住人の半分以上がアラブ系で、普段から無法地帯として有名な地域だ。ドイツの移民政策の失敗を目撃したければ、ノイケルンに行けば良いと言われる。治安の悪化のため、元いたドイツ人は離れ、すでに学校ではドイツ語がまともに通じないどころか、3分の1の子供たちは義務教育を終えずに学校を離れていくという。
ドイツは資格社会なので、義務教育を終えた証明がないと将来がほぼ閉ざされ、たとえ後で心を入れ替えても、まともな就職もできない。結果として、そういう子供が犯罪の道に進むのはほぼ自然な流れで、親も犯罪を家業としているなら、なおのことだ。
大晦日の暴徒は、最初の報道では「若者」とだけ伝えられたが、それはまもなく、おそらく国民の抗議もあったのだろう、「移民系の若者」に修正された。すると、今度はすぐに何人かの政治家たちが、「移民を十把一絡げに加害者と決めつけてはいけない」と声を挙げ、あるいは、「若者がこのような行動に出たのは、差別する社会があるからだ」などと、加害者と被害者の入れ替えを試みた。
しかし、実際には、誰も移民を十把一絡げになどしてはいない。こういうことが起こるたびに、一番迷惑しているのは、ドイツで真面目に市民生活を送っている移民たちであることを、国民はちゃんと知っている。ちなみに私も移民の一人だ。
ただ、一方には真面目な市民生活から脱落してしまった移民がいて、都会にはドイツ社会と交わらない「並行社会」が形成された。そこではドイツの法律は蔑ろにされ、強固な血縁関係を基盤にした彼らの掟が大手を振っていた。そして、何より警察が、彼らの最大の敵だった。
そして、政治家はそれを知りながら、40年ものあいだ放置し続けたのだ。そうするうちに首都ベルリンでは、去年1年間で、警官に対する攻撃事件が8000件にも上った。しかし、それが厳しく追及されることはなく、警官は証拠を残すためのボディカメラの装着も許されていなかった。
つまり、「移民を十把一絡げに加害者にしてはいけない」などというのは、これまでの自分たちの失政を煙に巻こうとする、特に左派の政治家たちの言い逃れではなかったか。
行き詰まる「移民受け入れ模範国」
今のドイツ社会は移民なしでは3日と保たない。そういう意味では、移民はドイツ社会にとってかけがえのない人材でもある。
移民や難民は今も刻々と入ってくるが、貴重な人材と共に、犯罪のエネルギーを秘めた招かざる人たちもやってくる。あるいは、貴重な人材になるはずだった人たちが、政治の不備もあって招かざる人に変質してしまうケースもあるかもしれない。
ドイツではこれまで、外国人に対して極めて寛容な政策が採られてきた。外国人犯罪者を厳罰に処することもなければ、難民資格のない不法入国者を母国に送還することもほとんどなかった。イスラム寺院での過激な反西洋的、反ドイツ的な説教も黙認し、それどころか、たいていのイスラム寺院は自治体からの資金援助を受けていた。
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移民・難民に対しての厚遇は、現在の社民党政権では前にもまして顕著だ。現政権にいる緑の党は、難民はたとえ不法入国者であっても全員受け入れる方針だし、移民のドイツ国籍取得に関する条件も大幅に緩和されつつある。しかも、元の国籍を返さなくても良いので、今後は二重、あるいは三重国籍が増加することになる。
二重国籍には忠誠心の問題が付随すると私は思っているが、緑の党や社民党はそれを一切問題視しない。実際問題として、ドイツ国籍を得た彼らがしっかりドイツ社会に根付く人になるか、あるいは、やがて暴動を起こす人たちになるかは、ひとえに政治のやり方に掛かっている。しかし、そこら辺の具体策は、まだ何も定まっていない。
一方、現在、移民問題が極めて深刻になっているのがスウェーデンだ。去年4月には移民の激しい暴動が続いたし、大晦日もそれが繰り返されたという。
スウェーデンは外国人受け入れの模範国で、難民にも直ちに滞在許可を与えて移民としてきた。そのため、人口あたりの移民の数はEUで最高だが、今になって治安が悪化し、行き詰まっている。
去年、9月までに銃撃で亡くなった人が48人で、治安の悪さはすでにEU随一。スウェーデンの人口は1040万だから、日本に換算すれば、9ヵ月間で553人が銃弾に倒れたことになる。犯罪組織の内輪揉めだけでなく、被害は市民に深く及んでいる。「あのスウェーデンが……」と、信じられない思いだ。
また、ノルウェーやデンマークなど移民を歓迎していた国々も、すでに完全に方向転換しており、フランス、イタリアも然り。方向転換していないのはドイツだけだ。
日本も手遅れになる前に
なお、今回の大晦日の暴動に話を戻せば、解決策の一つとして一部の政治家から上がっているのがロケット花火の禁止。
しかし、ロケット花火を武器にして警官を狙い撃ちにしたのは、ほんの一握りの人間だ。そのために花火を禁止するというのは、暴走族がいるから車の走行は全面禁止と言っているに等しい。私としては大いに違和感を感じる。
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思えば緑の党は以前より、花火禁止を主張していた。理由は、花火の塵埃による大気汚染。ただ、大気汚染と警官襲撃は関係がない。それにしても昨今の緑の党の政策は、制限と禁止のオンパレードだ。
一方、私は今でも、花火のカスがきれいに片づけられていた元旦の光景が目に浮かぶ。と同時に、花火の禁止は国民感情を無視した愚策だと感じる。問題は花火ではなく、花火を武器として警官を襲撃した人間だ。その人間の中に多くの移民がいたのなら、花火の是非ではなく、移民・難民政策を見直し、改善しなければならない。
日本にも外国人移民は極めて多い。このまま行くとどうなるかは、EUにこれだけ多くの前例があるのだから、容易に予測はつく。治安悪化が起こった後では、すでに手遅れだ。日本政府はEUでここ50年間に起こったことを真摯に研究し、今のうちに慎重な移民・難民政策を構築していくべきだと思う。
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