🔔35」─1─フランス移民暴動は移民政策失敗は将来の移民大国日本。2023年7月。〜No.101No.102 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   

 2023年7月2日 産経新聞「仏暴動、拘束3000人超 収束のめど立たず
 仏パリのシャンゼリゼ通りで、若者を押さえつける警察官=2日(ロイター)
 フランス・パリ郊外で警察官が少年(17)を射殺したことへの抗議は5夜目となる1日夜から2日未明にかけて続いた。警察官ら45000人が警戒に当たったが、一部は暴徒化。内務省によると、2日未明にかけて719人が拘束され、警察官ら45人が負傷した。規模は前夜までに比べ縮小傾向だが、暴動は依然収束のめどが立たず、マクロン大統領には大きな打撃となっている。
 事件が起きた6月27日から拘束された人数は3000人超に上る。
 1日、パリのシャンゼリゼ通りで警官隊に追われ、逃げる人たち(ロイター)
 政府は6月30日夜に略奪や破壊行為など激しい暴動が起きた南部マルセイユやリヨンに警察官らを増派したが、マルセイユでは7月1日夜も中心部で警察官と暴徒の激しい衝突が起きたもようだ。南部ニースや東部ストラスブールでも散発的な衝突があったが、規模は前夜より縮小した。
 パリでもシャンゼリゼ通りに集結の呼びかけがあったとして警備が強化されたが、大きな混乱はなかった。(共同)
 2日、フランス北部で炎上する車両の消火に当たる消防士(ロイター=共同)
 仏パリで燃えるバイクの消火にあたる消防士=2日(ロイター)
 2日、仏パリで若者を取り押さえる警察官(ロイター=共同)
 2日、仏パリでひっくり返った車両(ロイター=共同)
 2日、仏パリで警察官に拘束されたデモ参加者(ロイター=共同)
 仏パリのシャンゼリゼ通りで警戒にあたる警察官=1日(ロイター)
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 日本は、(老人が多く若者が少ない)人口激減回復対策として(若者が多く老人が少ない)外国人移民(主に中国人移民)1,000万人計画を決定し推進しようとしている。
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 現代日本人(リベラル左派・エセ保守派)は、民族的な歴史力・伝統力・文化力・宗教史がなく、日本の歴史はもちろん世界史も人類史も理解できない。
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 現代日本の高学歴の政治的エリートと進歩的インテリ達は、移民政策1,000万人計画に失敗する。
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 7月14日7:18 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「フランス移民暴動が招く「右傾化」と「分断」…もしも「マクロン大統領退陣」ならその先にどんな未来が待っているか
 被害総額は10億ユーロ超
 6月27日の朝、パリ郊外のナンテールという町で、交通取締のトラブルで移民の少年(17歳)が警官に射殺されたこと(これについては後述)がきっかけとなって暴動が発生した。
 【写真】フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜アメリカは大激怒している…!
 それがあっという間にフランス全土に広がり、数日間にわたって内乱のような事態を引き起こした。その激しさはかつてないほどの規模で、毎夜、4.5万人の警官が出動した。
 7月2日の深夜1時30分には、パリ南部の自治体の市長の家に重量車が突っ込み、火炎瓶が投げ込まれた。市長は緊急事態に対処するため役所にいたが、事前に「生きたまま火だるまにしてやる」という意味の脅迫状を受け取っていたという。
 凶行のあったとき、妻と2人の子供は自宅の寝室で休んでいたが、庭に逃げた際に夫人と子供1人が負傷している。なお、この件は、殺人未遂で捜査が始まっているという。
 しかし、このような出来事があったにもかかわらず、政府は夜が明けると、暴動はほぼ収束したと発表した。前夜の逮捕者が100名ほどで、それまでに比べて少なかったからだ。
 翌3日、おおよその被害状況が発表されたが、それによれば、この5日間で負傷した警官や消防隊員が700名、拘束された暴徒は3400名(多くは未成年であるため速やかに釈放)、放火された車輌が5000台(公共のバスなども含む)、放火、および破壊された建物(学校や図書館などを含む)が1000件、襲撃された警察署が250ヵ所。
 さらに、フランスの自治体でゴミの収集に使われている容量1100リットルの大きなプラスティックのコンテナ1万個が、火に包まれた。
 建物の破壊や放火と同時に行われたのは略奪で、完全に破壊された店舗は200、襲撃された銀行が300。正確な被害総額は出ていないが、合計10億ユーロを超えることは間違いないと言われる。
 しかもこの試算には観光業のダメージは含まれていない。すでに現在、ホテルなどはキャンセルが相次いでおり、これからのせっかくの観光シーズンも、客の減少は避けられないと思われる。
 移民政策の完全なる失敗
 いずれにせよ、この事件は甚大な物的被害をもたらし、国民の心に深いショックを与え、しかも、フランスのイメージを大きく損なった。
 そして、真の原因は、暴動の主役が移民の2世、3世で、多くが未成年だったこともあり、長年放置されてきた移民問題であるとされた。つまり、フランス政府の移民政策の完全なる失敗が露呈したということだ。
 フランスで移民が暴動を起こして治安を脅かしたのは、しかし、これが初めてではない。
 大規模なものはというと、2005年秋。やはり移民の少年2人の死傷がきっかけでパリ近郊で始まった暴動が、いくつかの都市に飛び火しながら1ヵ月近くも続いた。放火された自動車は9000台に上ったという。なお、当時も移民政策の改善が叫ばれたが、暴動が収束した後は、結局、何も変わらなかった。
 また、昨年12月には、サッカーW杯の準決勝戦のフランス対モロッコ戦のあと、フランスのモンペリエ、ニース、リヨンなどで、怒ったモロッコ北アフリカのサポーターが暴れ出し、これも暴動紛いの不穏な事態となった。
 実際に試合が行われたカタールのスタジアム前では、両チームのサポーターと地元カタールの人たちが混じり合って平和理に盛り上がっていたのとは対照的だ。
 暴動が起こっているのはフランスだけではない。昨年の4月半ばには、スウェーデンの各地でやはり移民の暴動が起こり、警官が襲われたり、自動車に火がかけられたり、学校が燃えたりした。
 スウェーデンが半世紀ものあいだ、熱心な移民受け入れ国であったことは知られているが、ここ10年以上は、凄まじい治安の崩壊と犯罪の増加が無視できなくなっていた。今ではすでに政権は右派に変わり、これまでの寛容な移民政策の修正が急速に進んでいる。
 北欧はヨーロッパの中ではいつも一歩進んでいるから、これからは西欧の他の国々も後に続く可能性がある。いずれにせよ、今やヨーロッパのあちこちで、日本人の想像を絶するような暴力が、しばしば大手を振るっているのである。
不審な点もいくつかある
 フランスに話を戻すと、この国は過去にアフリカに多くの植民地を持っていたため、元々アフリカ系移民が多い。今回射殺された17歳の少年も、国籍はフランスだがアルジェリア系の移民だった。そして、それら元植民地の国民と、元宗主国であるフランスの国民との関係は必ずしも良好とはいえず、特にアルジェリアは、1950年代から60年代にかけて続いた泥沼のような独立戦争のせいもあり、今も確執が続く。
 ちなみに、アルジェリア、モロッコチュニジアなど北アフリカ系の移民(難民ではない)や不法滞在者はドイツにもかなりいるが、いずれも犯罪率が高いのが特徴だ。フランスでもドイツでも、移民の一部は完全に社会から脱落してしまっており、社会福祉にぶら下がっている。当然、子供たちは学校から落ちこぼれ、将来の希望もなく、就職の目処もなく、往々にして犯罪に流れる。
 フランスの郊外には、元々、彼ら移民のために作られた巨大な団地もあり、その一帯が荒廃し、無法地帯のようになっているケースも多い。社会問題を扱ったフランス映画などによく出てくる風景だ。
 つまり、これらは確かに移民政策の失敗であり、移民だけのせいとは言えない部分もある。だからこそ、移民差別反対の抗議集会などには、いつも左翼系のフランス人学生などが多く参加していた。
 ただ、今回のフランスでの暴動事件では、不審な点もいくつかある。ネットで拡散されている数多くの映像を見ていると、投石したり、店舗を略奪したり、車やバスに放火している暴徒の中に、黒装束で黒マスクをしている人たちが目立つ。とりわけ凶暴に見えるこの人たちは、いったい何者なのだろう。
 また、今回の暴動のきっかけとなった17歳の少年(ナエルという名前)が射殺されたのは27日だが、29日の日中には、警察の暴挙に抗議するとして大々的なデモ行進が行われた。
 その映像を夜のニュースで見たが、大勢の人々に囲まれながら、デモ行進の真ん中をノロノロと進む車両の屋根には、殺されたナエル少年の母親が座り、ニコニコしながら周りの人々に投げキスを送っていた。息子を亡くしたばかりの母親の姿というよりは、まさに凱旋であり、私は強烈な違和感を感じた。
 しかも、母親も、その周りを練り歩いている人たちも、胸のところに「Justice pour NAHEL 27/06/23」と書いたお揃いの白いTシャツを着ていた。いったい誰がこれほど素早くこのTシャツを作り、配ったのか? 
 なお、ナエル少年に関しては、ネット上では「無免許」「複数の前科」「停車命令に従わなかった」「このまま逃走させては人身事故を起こす危険が大だった」等々、いろいろな情報が出ていたが、主要メディアはそれらには一切触れず、撃った警官が殺人容疑で逮捕されたことと、マクロン大統領が「許し難い」と追悼の意を表したなどという報道に終始した。
 スイッチを押したのは誰か
 一方、今回の暴動騒ぎで一番追い詰められているのは、間違いなくマクロン大統領だ。
 そうでなくても、すでに今年の1月から3ヵ月間、全国各地で氏の打ち出した年金改革法案に反対する激しい国民デモが続き、こちらも一部が器物の破壊や放火などに発展した。結局、同法案は4月15日、マクロン大統領の署名で成立したが、その後も国民の不満が収まったとは言い難い。よりによって、さらにそこに今回の移民騒動が加わったわけだ。
 しかも、その余波でマクロン大統領は、7月2日から計画されていた訪独も延期せざるを得なくなった。実はこれは、23年ぶりのフランス大統領のドイツ公式訪問であり、大いに名誉な行事となるはずだったから、マクロン大統領にとっては大きな痛手だ。
 つまり、当然ここで思いつくのは、今回の暴動のエスカレートは、本当に移民政策の失敗のせいだけだったのかということ。暴動があっという間に全国に広がり、しかも、暴力シーンが迅速、かつ大量にネットに出回った様子を見ると、かなり組織的な背景も感じる。
 少々穿った見方をするならば、17歳の移民少年の死を利用して、誰かがエスカレートのスイッチを押したのではないか。だとすれば、誰が? 
 注目すべきは、4月7日に訪中したマクロン大統領が中国側の熱烈歓迎を受け、その後のインタビューで台湾問題について、EUは米国にも中国にも与するべきではないという趣旨の主張をしたことだ。
 現実主義者のマクロン大統領は、元々、ウクライナ軍事支援一色の米国とは一線を画しており、当初はロシアとウクライナの和解の調停役になろうと努力していたほどだ。
 その氏が現在一番危惧しているのは、ロシア制裁ですでに衰弱しているEUが、今後、米国に追随して中国制裁を加速し、さらに自分で自分の首を絞めることだろう。中国と敵対することだけは絶対に避けなければならないというのが、マクロン大統領の断固とした考えだ。
 しかし、氏はまさにこの考えのため、中国に懐柔されたとか、EUの団結を乱すという批判に晒された。とりわけ、これが米国の機嫌を損ねたであろうことは想像に難くない。
 邪魔者は排除するのが米国のこれまでの外交の基本方針であったとするなら、マクロン氏の“EU独立の動き”と今回のフランスの暴動のエスカレートとは、ひょっとすると相関性があるのかもしれない。
 ただ、マクロン大統領が退くと、次の政権は右派が握る可能性が高い。今、ドイツにもEUを纏める力はなく、そうなると、ヨーロッパ自体が米国と同様、二分されかねない。そのカオスから第3次世界大戦までの道のりはそれほど遠くないだろう。
 しかも、もし、そのどさくさに紛れて中国が台湾を平和裡に併合したなら、次に狙われるのは日本だ。弱肉強食の掟を持ち出すまでもなく、日本こそ最も簡単に、最も平和裡に併合されてしまうような気がするが、読者の皆様はどう思われますか? 
 川口 マーン 惠美(作家)
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 7月5日 # フランス # 格差・貧困「フランスの暴動は「日本の近未来」だ…わが国に広がる「陰湿な階級社会」というリスク
 加谷 珪一 プロフィール
 3000人以上の市民が逮捕され、マクロン大統領のドイツ訪問が中止になるなど、フランス国内の暴動が収まらない。今回、発生した暴動の中心は、移民出身の若者とされるが、今年の5月には年金制度改革に反対する労働者のデモが発生し、警官隊と激しく衝突している。
 デモの暴徒化は移民だけの話ではなく、背景には経済的・社会的な格差による国民の分断がある。数字的にはさらに状況が悪い日本にとって他人事ではない。
 パリをはじめ、仏の各地で暴動が起こっている/photo by gettyimages
 エリートがバランスを取る国
 フランスは西側諸国の中では、もっとも社会主義的傾向が強く、所得の再分配など全体のバランスを取るという点では、それなりにうまくやってきた国といえる。同国はミッテラン政権時代、企業の国有化を積極的に進め、多くの大手企業が政府の支配下に入った。
 シラク政権以後、再度、民営化が実施された企業も多いが、フランス政府は実質的に企業の経営権を掌握できる特殊な種類株を保有するなど、国家が企業経営に強く介入する政策を続けている。
 人事も同様で、大企業経営者の多くはENA(旧国立行政学院) に代表されるグランゼコール(官僚養成機関)の卒業者で占められており、企業経営は基本的に国家主導で行われる。
 日本とはそもそも学制が異なるため単純比較はできないが、旧帝大や有名私立大学の成績上位者が、官僚や企業経営幹部など社会のあらゆるところでリーダーの地位を独占する図式と捉えて良いだろう。
 フランスでは、エリート教育を受けた人以外には、社会の支配層になる道がほぼ閉ざされているのが現実だが、フランスのエリート層は、自らの支配権を維持するため、社会における富の再分配にはかなり力を入れてきた。
 エリートの特権は手放さないものの、そうではない国民には、不満が蓄積しないようバランスを取るというのが同国のやり方である。
 日本よりも圧倒的に豊か?
 フランスでは過去にも暴動が発生しているが、鎮圧に憲兵隊を投入するなど独裁国家を彷彿とさせるような強権措置を発動する一方で、富の分配を積極的に行うという、まさにアメとムチの政策をうまく使い分けてきた。
 こうした国の国民が幸せなのかという問題はとりあえず横に置いておき、フランスにおける一般的な労働者の生活は(少なくとも数字上は)日本よりも圧倒的に豊かである。フランスの労働者の平均年収は約5万3400ドルと、日本と比べて約1万2000ドルも高く、年間の労働時間は逆に約241時間も少ない(2019年)。
 1日8時間労働とすると日本人より30日も休みが多く、しかも1.3倍の年収を稼いでいる計算になる(フランスでは5週間の有給休暇が法律で保証されている)。
 家計に余裕があることに加え、年金制度が手厚いためフランス人の平均的な退職年齢(男性)は60歳と日本よりかなり若い(日本では年金だけでは暮らせない人が大半なので、退職平均年齢は68歳である)。
 フランスの公的年金は賦課方式となっており日本の制度に近く、所得代替率(現役世代の年収に対して、どのくらいの水準の年金が給付されるのかを示す指標)は70%もある(日本は現時点で約60%)。
 フランスでは労働者の保護が徹底されており、一度、雇用した社員を解雇するのは容易ではない。このためフランス企業はなかなか新卒を採用したがらず、若年層の失業率が高いという社会的問題を抱えている。
 こうした不満に対して、政府は経済的な支援を充実させることで対処してきた。
 政府は、国民の不満が高まらないよう、失業保険など手厚い社会保障制度を用意しているほか、最近では出生率を向上させるため、教育の完全無償化や多額の給付金など、日本で言うところの子育て支援策を強化している。減税分も加えた実質的な累積給付額は、子どもが3人いる世帯では2000万円近くになるケースさえあるという。
 社会的な格差不満が爆発している
 最近では仕事の多様化が進み、あまり推奨されなくなってきたが、すべての国民がバカンスを楽しめるよう、政府主導で半ば強制的に夏休みを取らせたり、コロナ禍で緩和されたものの、社内のデスクで昼食を取ることを法律で禁止するなど、労働者の権利が保護されるよう社会のあらゆる所に政府が介入してくる。
 良くも悪くも、国家が育成したエリートが中心となって社会全体のバランスを取ってきたのがフランスという国と考えて良いだろう。
 ところがそのフランスで、年金の減額に反対する労働者や、現状に不満を持つ移民、あるいは若年層がたびたび激しい抗議活動を行っている。十分な所得の再配分がある国で、激しいデモや暴動が発生する背景として考えられるのは、社会的な格差ということになるだろう。
 所得が高く、仕事にはゆとりがあり、年金もそこそこもらえるという点で、フランスの労働者はかなり優遇されている。希望の仕事に就くことができなかった場合でも、各種手当が用意されているので、生活に困窮するケースは少ない。
 コロナ禍の際には多額の給付金があっという間に支払われ、日本との違いをまざまざと見せつけた。フランスの相対的貧困率は8.4%とかなり低く、貧困大国である米国や日本の半分以下である。
 だが人間というのは、経済的に余裕があればすべて満足なのかというとそうはいかない。自身のキャリアが社会によって固定化されており、機会が十分に開かれていないと感じる場合、経済的に十分な手当てがあったとしても、満足感を得られないこともある。
 フランスでは、バカロレア(高校を修了したことを認定する試験)を受ければ、事実上、無試験で大学に入学できる。教育の無償化が徹底されているので、本人に意思さえあれば、どのような環境の国民であっても大学教育までは確実に受けられる。
 だが、一般大学の卒業生はグランゼコール出身者と比較すると就職には圧倒的に不利であり、ましてや移民出身者となるとさらに厳しい。
 陰湿な階級社会が広がる日本
 フランスのエリート主義に対しては国民から反発の声が上がっており、マクロン大統領はENA(国立行政学院)を廃止し、新しい機関を設立した。もっともマクロン大統領自身もENA出身であり、他のグランゼコールはそのままなので、今回の廃止は単なるパフォーマンスとの見方も多い。
 だが、戦後フランス社会で特権的な立場を欲しいままにしてきたグランゼコールのひとつが国民から批判され、廃止に追い込まれたのは大きな変化と言ってよいだろう。
 フランスでは今回の暴動をきっかけに、右派政党を中心に「暴徒を徹底的に鎮圧せよ」という声が高まっている。だが、今回のデモがたまたま移民中心だったに過ぎず、年金デモが激化したことからも分かるように、社会の中核を占める労働者の不満も相当程度、高まっている。移民を排除すれば状況が改善するという単純な図式でないことは明白だ。
 もっと年金が欲しいと主張するフランスの労働者や、差別を訴える同国の移民出身者、あるいは自身の処遇に不満を持つ非エリート層の反発が、どの程度、正当性を持つのかともかく、経済的な手当てのみで問題を解決するのが難しいことだけは明らかである。
 日本は明治維新をきっかけに身分制度を完全に廃止しており、階級がほとんどないという点で米国社会に近い。一方、日本は米国ほどの競争社会ではないため、学歴や勤務する企業の規模、あるいは就業形態(正規・非正規)による、新しく陰湿な階級社会が形成されつつある。
 単純に数字だけから比較すると、日本の状況はフランスよりはるかに悪く、(権威や権力に対して異様なまでに従順な日本人の国民性を無視すれば)いつ大規模なデモが発生してもおかしくない。フランスで発生した各種暴動は、今後の日本社会にとって参考になる部分が多いにありそうだ。
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 7月5日 「パリ五輪」への不安も…!この先台頭するであろう「移民排斥ムード」は自由と博愛の国フランスをどう変えるのか
 舛添 要一 プロフィール
 来年のパリオリンピックパラリンピックは無事に開催・運営できるのだろうか……。前編【フランス暴動拡大で「内戦」状態に…!17歳少年射殺事件への「若者たちの反発」は想像を絶する展開へ】に続き、フランス全土に広がった暴動(抗議活動)の顛末と、マクロン政権の今後の対応について考えていく。
 フランス全土に広がった抗議活動と暴動
 抗議のデモは、ナンテールのみならず、パリ、マルセイユ、リヨンなどの大都市を中心にフランス全土に広まった。
 一部の者は暴徒化し、建物や車を破壊したり、放火したりして、大きな被害が出た。4万5千人の警察官が動員されたが、暴動は、6日間にわたって収まらず、逮捕者も3千人を超えた。
 そのため、パリ及びその近郊(イル・ド・フランス)では、夜9時以降のバスやトラムの運行が停止された。また、6月30日、7月1日にサンドニで開催が決まっていたミレーヌ・ファルメールの公演が中止になるなど、イベントも次々と中止や延期を迫られている。
 ファルメールのコンサートのために遥々メキシコから来たというファンが嘆いていたが、フランスの一大産業である観光にも大打撃となっている。
 暴動の対応に当たる警察官にも多くの負傷者が出ている。そして、サンドニでは、車火災の鎮火に当たっていた24歳の消防士が殉職している。
 マクロン大統領は、7月2日から予定されていたドイツ訪問を延期した。政府は、国民に冷静な行動を呼びかけている。また、SNSで暴動を扇動するような投稿に対して、削除するように要請することも検討している。
 長が標的になる極めて深刻な状況
 全体的に見れば事態は鎮静化しつつあるが、一部の暴徒はさらに凶悪な犯行に走っている。
 7月2日未明には、パリ郊外のレイレローズ(l’Hay-les-Roses)の市長の自宅が暴徒に車で突入され、放火された。夫人と子供二人は、裏口から辛うじて脱出したが、負傷した。市長は、市庁舎で暴動の対応に当たっていた。
 このような蛮行は許されるべきではない。市長は、政府がもっと早く非常事態宣言を出すべきだったと批判した。
 ボルヌ首相は、「容認できない行為」と批判したが、ロワール地域にあるラリッシュ(la Riche)でも、市長の車が放火未遂にあっている。このような市長への攻撃は他の都市にも広がっている。
 また、ニームでは暴徒に警察官が撃たれたが、幸い防弾チョッキのおかげで命に別状はなかった。マルセイユでは、刃物で警察官を襲う者も出てきた。警察官を武器で襲うというのは、極論すれば「内戦」である。事態は極めて深刻な状況になっている。長が標的になる極めて深刻な状況
 全体的に見れば事態は鎮静化しつつあるが、一部の暴徒はさらに凶悪な犯行に走っている。
 7月2日未明には、パリ郊外のレイレローズ(l’Hay-les-Roses)の市長の自宅が暴徒に車で突入され、放火された。夫人と子供二人は、裏口から辛うじて脱出したが、負傷した。市長は、市庁舎で暴動の対応に当たっていた。
 このような蛮行は許されるべきではない。市長は、政府がもっと早く非常事態宣言を出すべきだったと批判した。
 ボルヌ首相は、「容認できない行為」と批判したが、ロワール地域にあるラリッシュ(la Riche)でも、市長の車が放火未遂にあっている。このような市長への攻撃は他の都市にも広がっている。
 また、ニームでは暴徒に警察官が撃たれたが、幸い防弾チョッキのおかげで命に別状はなかった。マルセイユでは、刃物で警察官を襲う者も出てきた。警察官を武器で襲うというのは、極論すれば「内戦」である。事態は極めて深刻な状況になっている。
 移民と格差、若者の不満
 ナンテールと言えば、1968年に若者の反乱、「5月革命」が起こった場所だ。私はパリ大学のソルボンヌで学んだが、ナンテールには分校(パリ第10大学)があり、このキャンパスでの学生の異議申し立てが全国、そして全世界に波紋を呼んだ「5月革命」の発端になったのである。
 ナンテールには移民、とくにアルジェリア系の人々が多く住んでいる。ナエルもそうである。パリなどの大都市とその郊外を比べると、富裕層は都心部に、貧しい者や移民は郊外に多い。移民、そしてその子孫は、様々な差別を受けているという不満を抱いている。
 そして、移民が多く住む地域は、治安も悪く、それが移民への反感となり、人種差別的な動きも出てくる。そのような地域を管轄する警察は、犯罪の取締に重点を置き、移民に対する偏見も生じてくる。
 さらには、ウクライナ戦争以降、フランスでは諸物価が高騰し、生活が苦しくなっている。貧富の格差は拡大し、それに不満を募らせている人々が少年射殺事件をきっかけに街頭に出たのである。
 暴動に参加する者は、圧倒的に有色人種が多く、しかも若者が多い。失業に対する不満も背景にある。
 移民排斥運動へとつながる可能性
 しかしながら放火、破壊、略奪などの暴力行為に対しては、フランス人の間でも批判が強まっている。警察の組合も、これでは治安は維持できないと不満を表明している。また、警察官の指示に従わなかったナエルを批判する声も多い。
 そのような不満は、移民排斥運動へとつながる可能性は大きく、マリーヌ・ル・ペンに率いられる「国民連合」のような極右勢力が、さらに伸長する可能性を高めている。
 マクロンは、3日に上下両院の議長と、4日には220の市町村の首長と会談して、今後の対応を検討しているが、今後の展開は不透明である。暴動は鎮静化しても、フランスもまたアメリカのような分断社会になっていく可能性もある。
 世界に開かれた「自由、平等、博愛」の大国フランスも、移民の受け入れが治安の悪化、「文明の衝突」を招き、社会の不安定化をもたらしている。
 来年にはパリでオリンピック・パラリンピック大会が開かれる。無事に開催・運営できるのか、治安という観点から不安が広まっている。
 マクロン政権にとって、今回の暴動は、先の「黄色いベスト」運動、年金改革に続く大きな試練である。
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