🔔45」─2・B─ドイツの右傾化が止まらない。〜No.125 

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 世界は、貧富と人種・民族で分断が進んでいる。
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 2024年4月10日 YAHOO!JAPANニュース デイリー新潮「ドイツの右傾化が止まらない…移民受け入れ・グローバル経済を推し進めてきた「リベラル政治家」が真に向き合うべき相手とは
 不動産危機は「あと2年続く」との予想
 ドイツ首相のオラフ・ショルツ氏
 欧州最大のドイツ経済の雲行きがあやしくなっている。
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 ウクライナ戦争に起因するインフレを抑止するため、欧州中央銀行(ECB)が大幅な利上げを余儀なくされ、そのせいでドイツの不動産市場が大打撃を被っている。
 ドイツの商業用不動産市場は米国以上に深刻のようだ。ドイツファンドブリーフ銀行協会によれば、商業用不動産価格は昨年第4四半期、前年同期に比べて13%下落し、過去最大の下げを記録した。
 商業用不動産市場の危機は金融機関にも悪影響をもたらし始めている。欧州銀行監督機構(EBA)によれば、ドイツの銀行が保有する商業用不動産ローンの不良債権額は昨年第4四半期に39億ユーロ(約6300億円)も増加した。
 ECBのマイナス金利が続くなか、ドイツの銀行は収益を上げるために商業用不動産融資に力を注いできた。しかし、今となってはそのことが仇になった形だ。
 住宅用不動産市場も低迷している。ドイツ連邦統計庁の発表によれば、昨年の住宅用不動産価格は前年に比べて8.4%下落した。2000年の統計開始以来最大の落ち込みであり、住宅用不動産市場も最悪の危機に見舞われている。
 ドイツの不動産危機について、業界関係者から「あと2年は続く」との予測が出ている(3月14日付ロイター)。しかし、バブル崩壊後の日本の例にかんがみれば、危機は10年以上続くのではないかとの不安も頭をよぎる。
 経済成長率は2年連続でマイナス成長か
 企業の業績も大きく悪化している。ドイツ政府によれば、昨年の企業倒産は前年比22.1%増の1万7814件だった。「産業の空洞化」も顕在化しており、昨年の海外企業によるドイツへの投資は過去10年で最低水準だった。一方、国内の事業コストの増加を嫌気して、海外投資を検討する企業も増加している(3月12日・14日付ロイター)。
 ドイツ経済を牽引してきた自動車産業も苦境に陥っている。成長が期待される電気自動車(EV)市場で中国メーカーとの競争に敗れつつあり、「ドイツの自動車産業は生存の危機にある」との嘆き節が聞こえてくる。
 昨年は0.3%減だった経済成長率が、今年もマイナス成長となることが現実味を帯びてきているのだ。
 経済が不調になれば政治に悪影響が及ぶのが世の常だ。「反移民」などを訴える政党・AfD(ドイツのための選択肢)の支持率が第2位となる状況が続いており、ドイツ政府関係者の頭痛の種となっている。
 極右支持が若者のトレンドに
 ドイツ連邦銀行中央銀行)のナーゲル総裁は3月23日、「右翼過激派が同国の繁栄を脅かしている」と警告を発した。ナーゲル氏の懸念とは、反移民の風潮が海外の熟練労働者をドイツから遠ざけてしまうことだ。
 ドイツ政府の推計によれば、2035年までにドイツ全体で700万人の熟練労働者が不足する。だが、反移民ムードの高まりから、ドイツ経済にとって不可欠な存在となった外国人熟練労働者の離職が増加し始めている(3月27日付ロイター)。
 これに対し、AfDは「国内経済の悪化から目をそらすために我が党をスケープゴートにしているだけだ」と、政財界からの批判に耳を傾けようとしていない。
 ドイツに限らず欧州では「極右」と呼ばれる政党が支持を伸ばしており、特に若者の間で浸透している感が強い。3月10日に総選挙が実施されたポルトガルでは、極右政党のシェーガが議席数をこれまでの約4倍に伸ばした。この成功の秘訣は、カリスマ的な若いインフルエンサーを利用したことだと言われている。
 ドイツでもAfDは若者をターゲットにした戦略を積極に進めている。既存政党は若者の言葉を話していないが、急進的な極右政党は若者に響く言葉を話しており、「極右を支持することが若者の間でクールなことだ」との風潮が生まれているという(3月19日付クーリエ・ジャポン)。
 危機に瀕しているのはリベラリズム
 「西側諸国の民主主義の危機」が叫ばれているが、筆者は「危機に瀕しているのは民主主義ではなく、これまで政治を主導してきたリベラリズムなのではないか」と考えている。
 リベラリズムを信奉する政治家(リベラル政治家)は、移民などの積極的な受け入れや経済のグローバル化などを重視するが、生活費の高騰で不満が高まる中間層のことにはあまり関心を示さない印象が強い。
 これに対し、「極右」の政治家たちは中間層の怒りを代弁し、リベラル政治家への不満を糧に支持を伸ばしてきた。
 70年以上前に欧州統合の先鞭を付けた6ヵ国のうち5ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー)で極右化が進んでいる(4月2日付ニューズウィーク日本版)。
 これまでのところ、大きな混乱は発生していないが、極右の政治手腕には不確実さがつきまとう。社会的な対立が先鋭化している状況下で、いつ想定外の事態が起きても不思議ではないだろう。
 リベラル政治家が中間層の怒りに正面から向き合わない限り、ドイツをはじめ欧州で政治の危機が発生する可能性は排除できないのではないだろうか。
 藤和彦
 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。
 デイリー新潮編集部
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