🐖12」─4・B─各国も警戒、日本の「中国人留学生スパイ」の実態~No.96 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2023年12月12日10:32 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「各国も警戒、日本の「中国人留学生スパイ」の実態 悪意なき学生を利用するアメとムチの手口
 「中国当局が中国人留学生に対し、技術情報窃取のターゲットを物色させている」
 米連邦捜査局(FBI)がこのような懸念を報告書で公表したのは、2019年のことだった。
 そして今年、ドイツにおいても、「中国の国費でドイツに留学する学生が、留学先の大学や研究機関でスパイ行為を働く危険がある」と教育相が懸念を表明、大学に警戒を促した。
 各国に広がる中国への警戒感。ひるがえって日本はどうなのか。中国人留学生を利用したスパイ活動の実態について、官・民で諜報事案を捜査/調査した筆者が解説する。
■中国人留学生のスパイ活動とは
 中国の大使館・領事館は、中国人留学生に指示し、スパイ活動をさせたり、反体制活動の妨害を行っていると指摘されている。
 中国大使館には、それぞれの国に存在する中国人留学生団体の幹部をスパイ工作に就かせる専門の担当者がおり、その優秀な幹部たちは中国政府の意向に従順で中国大使館などの命令を忠実に遂行するのだ。
 過去の例で言えば、2008年の北京五輪聖火リレーが日本を通過する際、在日中国人留学生組織「中国人留学生学友会」のメンバーを中心とする中国人留学生が全国から3000人以上動員された。これは中国大使館の命令であったと言われている。
 中国大使館は、学生に対し「今回の声援活動は民間が自発的に行ったものであり、大使館といかなる関係もないと理解すべきだ」との内部通達まで出していたとの情報がある。
 筆者の知人である中国人留学生学友会の元幹部によれば、中国人留学生学友会の一部は中国大使館に直轄管理されており、その命に逆らうことは考えられなかったという。
 元幹部は中国共産党系の会議にも欠かさず参加していた。中国大使館のレセプションに参加した際は、そこで“命”を受けることもあったという。
 この”命”とは、様々な情報の収集だ。中国人留学生が所属する団体や研究室が持つ組織図や研究情報、団体や研究室のメンバーのメールアドレスからや住所、それぞれの留学生が交流する有益な人物に関する情報などが求められる。
 さらに、中国反体制派の活動に中国人留学生を潜り込ませ、使用した資料や出席者に関する情報を収集させる。中国人留学生のコミュニティーを通じて、反体制分子の割り出しをさせるほか、企業でインターンをする留学生に、様々な企業情報を収集させ持ち帰らせることもある。
 まさに「千粒の砂」戦略である。
■情報収集だけではない活動とは
 情報収集だけではない。プロバガンダにも中国人留学生を使う。
 例えば、中国人留学生による同窓会組織は、「真実の中国を日本に伝える」活動に尽力する。中国のエンタメやチャイナドレスなどの文化を日本人学生に伝え、中国に対する”誤解“を解くことに注力する。だが、そうした場で新疆ウイグル自治区の状況など中国にとって都合の悪い現実には触れない。この手法は後述する孔子学院と同様だ。
 また、共産主義模範作品の朗読会を企画するなどして、中国人留学生の愛国心を高める活動も展開している。
 元幹部によれば、中国の大使館・領事館は、留学生や留学生団体を操るのに、各種の活動資金(学費も含む)を支援する。留学生が帰国し就職する際の推薦状を作成するなど就職の便宜も図るという。
 推薦状における評価は、中国大使館・領事館が下した“命への答え”や祖国愛の程度に基づく。そのとき、“命”にどれだけ従順に従ったかは重要な評価基準となる。
 では、中国人留学生は“悪”なのか。
 中国では、海外の留学先で高度な知見を学び、その後中国に帰国し、国のために還元する留学生を「海亀」と呼ぶ。この海亀が悪意なくスパイ活動を余儀なくされる場合がある。
 例えば、留学した当初は、スパイ活動(技術窃取)をする意図を持っていないにもかかわらず、留学した先で第三者(中国在外公館関係者や当局)に接触され、要求に従わざるを得ない状況に陥り、技術を窃取し帰国するケースがある。
 中国の国家情報法は、国の情報活動に協力することを国民の義務と定める。中国当局に要請されれば拒否できない。
 典型例となる事件があった。2021年4月、警視庁が2人の中国人を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)など200に上る組織が2016年から2017年にかけて大規模なサイバー攻撃を受けた事件において、サイバー攻撃に使用された国内のレンタルサーバーを偽名で契約・使用したとの疑いだ。
 書類送検された中国人の1人は中国人の元留学生、王健彬。王は、レンタルサーバーを契約するよう人民解放軍サイバー攻撃部隊「61419部隊(第3部技術偵察第4局)」所属の女性軍人から頼まれたという。王が以前勤めていた中国国営企業の元上司が、王と女を繋いだという。王は女性軍人に国に貢献しろと脅されて加担してしまったのだが、当初、王に悪意はなかった。
 このように、悪意なき中国人留学生が、外部からの接触により、加担せざるを得ない状況に追い込まれている状況は多い。
 日本には、スパイ活動を展開する中国人留学生の拠点(組織)が多数あると見られている。前述した留学生団体や同窓会、それらを統括する中国大使館や領事館、孔子学院も同様だ。
 中でも孔子学院は、中国政府が世界各国の大学などに非営利教育機構として設置を進めていたもので、中国共産党が運営するスパイリクルート機関・プロパガンダ(政治宣伝)機関であるとの指摘が相次いでいる。日本では、早稲田大、立命館大桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大立命館アジア太平洋大、札幌大の13大学で設置が確認されている。
 孔子学院では、中国人留学生をスパイとして採用していると指摘されている。孔子学院の活動を通じて、中国に都合の良い情報のみを孔子学院の参加者に与え、感化し、親中派を拡大する宣伝工作を行っているのだ。
 このほか、間接的な関与も含めればキリがない。これが日本における留学生のスパイ拠点の実情である。
カウンターインテリジェンスの重要性
 中国のスパイが日本に数万~数十万人いるとのネット記事もあるが、前述のように悪意なく又は強制されたうえで利用されている状況があることに十分留意しなければならず、やや暴論であろう。
 元CIAのカウンターインテリジェンス分析官であったピーター・マティス氏も「中国のスパイ活動は階層的に行われており、情報収集の重要なチャネルとして素人を活用しているが、その多くは中国の諜報機関によって管理・計画されている」と述べている。
 筆者は、中国人留学生を目の前にして同じ話ができるだろうかと自問自答することがある。差別に繋がってしまうのではないかと恐怖を覚えることもある。
 しかし、ここまで述べた内容は、日本に対する脅威でありリスクである。中国人留学生によるスパイ活動について、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。悪意なく、手先として使われている場合が多くあると理解したうえで、どうかスパイ活動に対する危機意識を醸成していただきたい。
 日本にはスパイ防止法がないため罰則が軽く、起訴されたところで執行猶予となるケースも少なくない。スパイ活動が日本では多く行われていると認識しなければならない。
 また、政治中枢や世論に食い込む影響力工作も忘れてはならない。こちらのほうが深刻だろう。
 まず、社会において危機意識を向上させることが、日本のカウンターインテリジェンス(防諜)の向上につながる。
 稲村 悠 :日本カウンターインテリジェンス協会 代表理事
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