💞13」─1─不人気なユダヤ人は全世界から批判されても戦う理由。~No.38No.39No.40 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2023年10月15日 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「「なぜユダヤ人は不人気なのか」親日イスラエル人が明かす胸の内 全世界から批判されても戦う理由
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 2023年10月7日土曜日の朝は、イスラエルでは祝祭日となるはずだった。ユダヤ教の大型連休の終わりは、ユダヤ教の経典であるトーラー(律法)の巻物を持って踊ることで祝われる。若者たちの多くは、自然が豊かなイスラエル南部のガザの国境付近で野外パーティーを開いて休日を祝うことを好んでいる。
 【写真】柔和な表情から一転…鋭いダニ氏の眼力
 この朝、ハマスの1500人以上の武装勢力が国境を越えてイスラエルに侵攻し、数十の軍事基地や村落、キブツ(集団農村)を占拠したのだ。彼らは自然保護団体を襲撃し、いくつかの大きな町に侵入した。事実、大虐殺の最中だった。
 100人以上の人質を取っただけでなく、ハマスのテロリストたちは、遭遇したすべてのユダヤ人とアラブ人も民間人と兵士を問わず、組織的に殺害した。これはテロではなく、大虐殺である。
 現在、イスラエルアメリカの公式情報源によって確認されているように、小さな赤ん坊の斬首、村人を生きたまま焼き殺した。夫の目の前で妻を殺害などおぞましい行為があった。ナチス時代のホロコーストを生き延びた高齢者は自宅のベッドで撃たれた。あるハマスの過激派は若いベドウィン遊牧民族)の少女に40発の銃弾を撃ち込んだ。飼い主を守ろうとした忠実な家族の犬は、冷酷に撃たれた。レイプの報告や証言もある。ベエリやクファル・アザのようないくつかの村では、人々は溝に押し込まれ殺された。
 イスラエルにとって、これは単なるテロ組織との闘いではなく、むしろISISに似たグループとの闘いなのだ。日本の読者は、フリージャーナリスト後藤健二氏が2015年、シリアでISISに拘束され殺害された事件を覚えているだろう。同じような悲劇が先週の土曜日にイスラエル南部で1200人に起こったのだ。
■日本の冷淡な対応に驚き、失望 人びとの善意が利用されている
 イスラエルに対する国際的な支援は世界中から寄せられている。バイデン大統領は明確な連帯を表明し、他の敵が第二戦線を開くのを阻止するために米海軍機動部隊を派遣した。英国、フランス、イタリア、ドイツ、インドもイスラエルに味方している。ロシアの侵略と命がけで戦っている自由主義国家ウクライナも、ゼレンスキー大統領や最前線で戦うウクライナの戦士たちが連帯と支援のメッセージを送り、イスラエルに毅然とした態度で臨んだ。
 このような背景から、日本研究者であり、日本に留学し、日本とその国民に深い憧れを抱いている多くのイスラエル人は、日本政府の冷淡な対応に驚き、失望している。日本政府は、ハマスの大量虐殺行為に対する非難と、民間人を殺害したイスラエルの対応に対する同様の「懸念」との「バランス」をとっていた。この反応の背後にある中東における日本の利益(原油?)については、今のところ言及しない。日本の外務省が在外邦人や在外大使館の安全を案じていることは明らかであり、それは理解できる。そこには日本人の善意があるかもしれない。
 しかし、私たち全員が考えなければならないより深い問題がある。人々の善意がテロリストや大量殺人者に利用されることがあるということだ。例えば、パレスチナ難民を助けたいという寛大で善意の日本人から寄付された土嚢袋は、ハマスによってイスラエルへの侵攻を隠すために使われた。土嚢袋の中には、「パレスチナ難民に自由に配るための日本人からの寄付」と書かれているものまであった。日本や世界中の人々の善意と寛大さが、ハマス大義名分のために使われたのだ。
ハマスが人道的扱いを過度に要求する理由 背景に第二次世界大戦の苦い記憶
 第二次世界大戦の恐怖の後、欧米やアジア、特に日本では、多くの人々が戦争そのものを悪として糾弾し、平和、和解、人権を強調する崇高な世界観を採用した。紛争中に罪のない市民を守ることは、利己的な国家利益や軍事的優位を求める些細な野心よりも最優先されるようになった。そのため、ハーグ条約ジュネーブ条約に基づく武力紛争法は、「国際人道法」(IHL)と改名された。以前は、武力紛争法は戦争の惨禍を制限するための相互取り決めであるとされていた。たとえ国同士が遺憾ながら戦うことがあっても、一方はライバルの国民や捕虜を保護すべきであり、逆もまた然りであった。しかし第二次世界大戦後、各国が戦争法に違反するのを防ぐため、国際裁判所はこれらの人道法の多くは慣習的かつ無条件的なものであると裁定した。たとえ敵国が同じことをしなくても、私たちはその国の民間人を保護すべきなのである。
 戦争法違反が比較的軽微だった時代には、少なくとも部分的には機能していた。しかし、ここ数十年、殺人テロ組織はこのルールを自分たちに有利なように利用してきた。ハマスイスラエル南部で行ったように、彼らは民間人を虐殺し、自分たちの都合のいいように戦争のルールを無視し、罪のない民間人の陰に隠れ、善意の人々の人道的感情を享受することで、報復から身を守ることができた。
 イスラエルは、その歴史のほとんどの期間、存亡の危機に直面してきたため、国際人道法違反を繰り返し非難された(※編注:ヨルダン川西岸のイスラエルによる入植活動は国際法違反とされ、日本政府は即時かつ完全に凍結されるべきとの立場)。残念ながら、こうした非難が真実のケースもあった。イスラエル軍の歴史を通じて、遺憾な残虐行為があり、その多くは処罰された。しかし、ハマスのような組織との戦争で、ハマス側が「人道的」扱いを過度に要求することは、罪のない人々や難民への人道支援を装って、そのような集団が武装することを許す盾となった。
 何年もの間、ハマスが人口密集地からイスラエルに向けてロケット弾を発射し、さまざまな残虐行為を働いた。しかし、国際的な圧力により、イスラエルはガザの住民に水、電気、燃料、食料を供給せざるを得ないし、そうしてきた。ハマス側はこれらの資源を自国民の支援や再軍備に使い、民間人の犠牲を恐れる「人道主義」を利用して、イスラエルのあらゆる対応を制限した。
イスラエル軍人間性を保持する でもハマスに崇高な意図は通用しない
 イスラエルが不人気なのは、そのような人々の善意を隠れ蓑にした武装組織に直面したとき、イスラエル自国の民間人の命を守るために敵に攻撃をしなければならない場面が多かったからだ。それでも、イスラエルは長年にわたり、海外でさらに不人気になることを恐れて、ガザに水、電気、燃料、食糧を提供し、人道危機を防ぐために軍事的対応を制限してきた。惜しむらくは、その代償は許容範囲だろうと考えていたことだ。この過ちの結果、少なくとも1,200人のイスラエル人が残酷に殺害され、もしハマスが国際社会から再び支援を受けることが許されるなら、さらに多くの人々が殺害されるだろう。
 第二次世界大戦のトラウマから生まれた「人道主義」は、パレスチナの人々やガザ地区の住民にとっても不利益をもたらした。ハマスが自らを守り、回復し、再軍備するのを助け、ガザとこの地域を、一時的な停戦を挟んだ終わりのない戦闘の連鎖へと追いやったのだ。
 日本、ヨーロッパ、アメリカ、そしてイスラエルでさえも、多くのアナリストは、戦争への憎悪に忠実に、パレスチナ問題は対話と和平協定によってのみ解決できると考えていた。長い目で見れば、これは確かに真実である。パレスチナの人々は、地球上の他のすべての国と同じように、尊厳と良い生活をするに値する。
 しかし、最近の出来事は、ハマスイスラエルのすべてのユダヤ人と多くのアラブ人を絶滅させることを目的とし、この大義を推進するためにはいかなる合意や譲歩も利用する集団には、そのような崇高な意図は通用しないことを示している。これらの目標は、『我が闘争』におけるヒトラーの意図と同じように、イスラエルパレスチナ自治区の代わりにパレスチナイスラム国家を最終的に創設し、イスラエルの抹殺または解散を求めている。ハマス憲法ともいえる「ハマス条約」に明確に記されている。このような組織との外交が無益である理由を理解するには、これらの文書を読む必要がある。
 いうまでもなく、イスラエルは武力衝突の国際ルールを順守すべきである。私たちイスラエル人の多くが激怒しているように、敵のやり方を採用し、罪のない民間人に危害を加えてはならない。イスラエル軍の倫理規定には、"兵士は戦時においても人間性を保持する "と書かれている。イスラエル国防軍は、決して意図的に民間人を標的にすべきではなく、わが戦線の背後に避難しようとするガザの人々や投降した敵戦闘員を保護する義務がある。 
 民間人が密集する環境での戦争は民間人に避けられない危険を伴う。イスラエル軍は人道的回廊を作り、ハマスに属さない難民のための安全地帯を設けるべきだ。しかし、過去の誤った「人道主義」によって、作戦を早々に中止させたり、ハマスの標的への爆撃を制限したり、敵に電気、水、燃料を供給させたりすることは許されない。ハマスが自らの行動の結果から逃れられるようなことがあってはならない。ハマスの回復と再武装を許すことは、イスラエル人にとって存亡の危機であり、パレスチナ人にとっても、長期的には悲惨な結果をもたらすかもしれない。
■指導者の罪を裁くことはこの地域のすべての人に有益だ
 多くのアラブ人やパレスチナ人も、ハマスの所業に恐怖を感じている。アラブ人とドルーズ(イスラム系宗教団体)はイスラエル軍、警察、病院、その他の重要なサービスに従事している。アラブの町は連帯を示すためにユダヤ人被害者に避難所を提供した。イスラエルのアラブ人の多くは、ハマスに殺害された親族を追悼している。戦争が終わった後は、ガザの平和な住民のために、近代的な住居やインフラを備えた町を再建する絶好の機会となる。ハマスの問題をISISの問題のように扱うこと、つまりこの組織を解体し、指導者を逮捕し、人道に対する罪で裁くことは、この地域のすべての人々にとって有益なことだ。
 私の推測では、ガザでの戦争の悲惨な現実が世界中のテレビ画面に映し出される中、イスラエルは、この苦い現実の結果を無視することを選ぶ多くの人々の間で不人気であり続けるだろう。しかし、ホロコーストから70年後、イスラエル人とユダヤ人は、不人気という代償を払ってでも、自分たちの家族を守らなければならない。私の願いは、平和を愛する日本や世界中の人々が、時には悪をなだめるのではなく、悪と戦わなければならないということを徐々に理解していくことである。
 有名なアメリカ映画『グリーンマイル』では、主人公が残忍な殺人犯に言及し、彼がどのように被害者を操ったかを説明している: "彼は彼らを殺すために、彼らの互いへの愛を利用した"。ISISやハマスのような集団が、私たちの平和と人道への愛を悪用するのを許してはならない。少なくともイスラエルには、もはやそんな余裕はない。
 【英文はこちら】 「Why Israel is unpopular」 Professor Danny Orbach, Hebrew University of Jerusalem
〇Danny Orbach ダニ・オルバフ 1981年イスラエル生まれ。ヘブライ大学歴史・アジア研究学科教授。ハーバード大学で博士号(歴史学)取得。専門は軍事史、日本および中国近現代史イスラエル軍情報部に勤務後、テルアビブ大学、東京大学ハーバード大学歴史学と東アジア地域学を学ぶ。歴史学者、評論家、政治ブロガーとして、独、日本、中国、イスラエルと中東の歴史に関する考察を精力的に発表している。邦訳『暴走する日本軍兵士―帝国を崩壊させた明治維新の「バグ」』(2019、朝日新聞出版)がある。
 Danny Orbach(ダニ・オルバフ)
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