🐖56」─2─中国共産党のメディア戦争。アフリカで進む放送局支配。~No.273No.274No.275 ㉖

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 2020年11月20日 産経WEST「【エンタメよもやま話】中国が仕掛けるメディア戦争、アフリカで進む放送局支配
 中国共産党の5中総会で演説する習近平党総書記。中国による“海外メディア懐柔戦略”は激しさを増している=北京(新華社=共同)
 米大統領選でジョー・バイデン前副大統領(民主党)が当選を確実にしました。これによって最も注目されるのが今後の米国の対中政策です。
 激しい対中批判を繰り返し、対中貿易戦争でも報復措置で対抗し続けてきたドナルド・トランプ大統領に対し、バイデン氏が中国にどういった姿勢で臨むのかが世界の最大の関心事です。今の中国に少しでも甘い顔を見せると、米といえども一気につけ込まれて大変なことになるのは明白です。
 なぜか。習近平国家主席率いる中国共産党は、世界の国々を“親中派”に取り込もうと画策。ここ数年、各国の主要メディアや記者を金で抱き込み、世界を中国に都合のいいニュースであふれさせるという壮大かつ恐ろしい計画を着々と進めているというのです。
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 この問題が世界に知られるようになったのは2年前。2018年12月7日付の英紙ガーディアン(電子版)の記事でした。今回は、この記事の驚くべき内容を中心にご紹介したいと思います。
 まずは、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の重要拠点と認識しているアフリカでの出来事です。中国国営中央テレビ(CCTV)が2012年、ケニアにアフリカの拠点局「CCTVアフリカ」を開設してから約4年後。ナイジェリア(西アフリカ)の調査報道記者、ダヨ・アイエタン氏のもとに1本の電話がかかってきました。アイエタン氏は10年に当地で独立、非営利の報道機関を設立し、何者にもおもねらない質の高い活動を展開。16年には中国の実業家によるナイジェリアの森林の不法伐採を暴露しました。
 そんなアイエタン氏にかかってきた電話というのは、CCTVの新しいケニアのオフィスで働かないかという誘いでした。給与は少なくとも、今の2倍は出すといいます。アイエタン氏は高給に加え、今より安定した仕事内容という2つの誘惑に負けそうになりましたが、報道機関を立ち上げたばかりだったので、結局、その申し出を断りました。
 CCTVといえば、中国における主要なプロパガンダ(宣伝)機関の代表格です。そのCCTVが海外メディアへの影響力を強める戦略に踏み切るにあたり、最初のテストケースに選んだのがアフリカでした。
 きっかけは、チベット問題をめぐり、世界各地で聖火リレーへの抗議活動が勃発(ぼっぱつ)した08年の北京五輪でした。この出来事に憤慨した中国当局は、翌09年、世界のメディアに対する存在感や影響力を強める計画に66億ドル(約7000億円)をつぎ込むと発表。その最初の取り組みが「CCTVアフリカ」で、アイエタン氏のような中国にとって邪魔な記者を金で抱き込もうと奔走したのでした。
 「CCTVアフリカ」は当地の記者たちに、世界中の視聴者に、西洋の価値観にとらわれない「アフリカのニュースを報じる」ための立派な給与とチャンスを与えると約束しました。
 ケニアの主要テレビ局の一つ「KTN」から引き抜かれたケニアの記者、ベアトリス・マーシャル氏はガーディアン紙(電子版)に「われわれの視点でニュースを報じることができるのがうれしい」と話しました。
 しかし「CCTVアフリカ」の報道を研究した英ウエストミンスター大学のヴィヴィアン・マーシュ客員研究員は、マーシャル氏の主張に懐疑的です。なぜなら、14年に西アフリカで発生したエボラ出血熱に関する報道を分析したところ、記事の17%がなぜか中国に言及しているうえ、医師の派遣や医療援助の準備などに関し、中国の役割が強調されていることに気づいたからです。
 マーシュ氏はガーディアン紙に「彼らは前向きな報道に努めていましたが、中国の描写は慈愛に満ちた守護者のようで、ジャーナリズムの信頼性に欠けていると思いました」と述べました。ガーディアン紙は<こうしたニュースの真の目的は、アフリカの話ではなく、中国の力や寛大さ、そして中国が世界の出来事の中心にいると強調することである>と報じています。
 そしてCCTVはアフリカで行ったメディア戦略を世界に拡大するため、16年に国際放送部門を分離し、新たに「中国グローバルテレビネットワーク(CGTN)」の放送を始めました。英語だけでなく、スペイン語、フランス語、アラビア語、ロシア語のチャンネルも運営する力の入れようです。
 そんなCGTNは、ルワンダやガーナを含む多くのアフリカ諸国では、何千もの農村に無料で放送されるなどますます影響力を強めています。なぜ無料かというと、中国の有料テレビ運営会社、スタータイムズが協力しているからです。スタータイムズの最も安いプランでは、中国とアフリカのチャンネルは普通に視聴できますが、BBCやアルジャジーラを見るには追加コストが必要なため、加入者のほとんどは見ていません。
 こうして中国は、アフリカで自国のプロパガンダ(宣伝)を日々、放送し続けています。アフリカの有料テレビの加入者2400万人のうち、既に半数近くの約1000万人がその影響下にあるとみられ、業界アナリストは、その数字はさらに増えるとみています。
 加えて、アフリカの放送局は、スタータイムズがアフリカのいくつかのメディア市場で地元企業の追い出し工作を展開していることに懸念を示しています。スタータイムズはアフリカの一部地域でアナログからデジタルテレビへの切り替え業務を担っているほか、テレビ衛星を打ち上げるなど圧倒的な力でアフリカの放送局を裏から支配下に置こうとしているのです。
 前述のガーディアン紙はこう明言します。<「中国人民解放軍政治工作条例」が改定された2003年以降、いわゆる「メディア戦争(Media Warfare)」は北京(中国政府)の軍事戦略の一部となっている。その目的は、外国政府が中国共産党に有利な政策を行うよう、海外の世論に影響を与えることである>
 こうした中国の戦略は、欧米でも積極的に展開されています。(岡田敏一)
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 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。
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