💥27」─1─中央アフリカ共和国の虐殺と中国共産党。2010年~No.101No.102No.103 @ 

中国マネーの正体 (PHPビジネス新書)

中国マネーの正体 (PHPビジネス新書)

  • 作者:富坂 聰
  • 発売日: 2011/10/19
  • メディア: 新書
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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 中国共産党の一帯一路構想(陸のシルクロードと海のシルクロード)とAIIB(新開発銀行)は囲碁である。
 地球上を「碁盤(盤)」と見立て、チャイナマネーを「碁石(石)」として諸外国に投資して借金地獄に落として試合し陣地を広げる。
 中国共産党囲碁の目的は、日本を利益・金で籠絡して、アメリカを包囲する事である。
 日本とアメリカは、中国の囲碁を知らない。
 特に、日本の政治家や財界人、そしてメディア関係者は無知である。
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 パトリック・J・ブキャナン「エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』も、ライヒの『ファシスズムの大衆心理』も『性の革命』もこの『批判理論』(フランクフルト学派マルクス主義)を反映している。最も影響を与えたのが『権威主義のパーソナリティ』で、これにより、経済決定論が文化決定論に置き換わられた。裕福で一家そろってクリスチャン、父親が権威主義的という家庭に育った子供は、独裁的な人種差別主義者に育つという決定論をぶつ。これを『ブルジュア社会に対する断固たる告発だ。ちょっと前まで単なる時代遅れとみなされていた事象を、ふいにファシスト的かつ歪んだ形態とこじつけた』と評された。……ファシズムの営巣を家父長制家族に見出したアドルノは、今度はその生息環境─伝統文化─をこう分析した。『ファシズムへの感染は中産階級に典型的な現象で、その〝文化に内在する〟といえる。よってそのような文化にすっかり順応した中産階級こそ、最も偏見に満ちた層と考えられる』と」
「マルクーゼ(フランクフルト学派マルクス主義の代表的学者)の『一元的人間』は、『右翼に対する不寛容、左翼に対する寛容』を要求し、そこに『教育的専制』を行い、一方で『開放的寛容』を要求した。これが一元的態度である。逆ファシズムである。ベトナム戦争で、戦争擁護派お黙らせ、戦争反対で、そのくせベトナムの旗を振る過激派を支持した。右翼の暴力を許さないが、左翼なら何でも大目に見る。これでなぜ左翼がテロを行い、右翼に対しては絶対許さない態度をとる事が当然であるかがわかる」
 「フェミニスムもマルクスの『ドイツ・イデオロギー』の中で、家父長制家族は、まず妻子を財産と考えると述べているところから始まる。物質的所有と同じと見る。エンゲルスは『家族、私有財産及び国家の起源』で、女性差別の根源は家父長制にあると論じ、これが基礎となった。エーリッヒ・フロムは、ジェンダー(性差)は固有なものではなく、西欧文化によって創出される、と主張し、フェミニズムの始祖となった。ライヒは『権威主義的家庭は権威主義的国家の縮小版……帝国家族は帝政国家で繁殖する』と述べる。アドルノにとっては家父長制家庭はファシズムの揺りかごである」
 「グラムシイタリア共産党書記長)は労働階級が、幻想だと知ると、革命の新兵として、『歴史的に反主流派とされる層、経済的に虐げられてた人々だけでなく、男性に対する女性、多数民族に対する少数民族、犯罪者まで』すべてが含まれると考えた。犯罪者が悪いのではなく、犯罪を起こさせた社会が悪いのだ、と。加害者が逆に保護さる。被害者は安隠と暮らしてきた保守的な階級だ、とばかり。『新世代の若者はみな疎外感にもがき苦しんでいるからこそ』犯罪に走るのだ。『黒人や貧困者、世の中の敗者』脱落者こそ英雄なのだ。……グラムシの理論は正しかったと証明された。70年にわたり世界を振動させた社会主義革命思想はついに崩壊した。結局レーニンマルクス主義は、本当の目的─絶対的権力掌握─を誤魔化す為にマルクス思想を政治的に利用するという当初の考えから抜け出す事が出来なかった。レーニン方式は疎んじられ、誰にも嘆かれる事なく死を迎えた。が、グラムシの革命は脈々と受け継がれ、今なお多くの賛同者を獲得し続けている」
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 グラムシ「歴史を飛び越え、人類普遍の真実とされる絶対的規範(歴史的伝統文化に根ざした普遍的価値観)は存在しない。道徳観は、一社会(個を制限する神の存在を否定した個の自分を肯定するマルクス主義社会のルール)によって構築される」
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 1993年 中国共産党第14期中央委員会第3回総会で、人民元を国際通貨にする為に「逐次兌換可能な通貨にする」という決議が行われた。
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 中国の外貨準備は3.8兆ドルで対外純資産は1.7兆ドルで、実体は2兆ドル以上の借金を抱えた借金大国である。
 日本は外貨準備は1.2兆ドルと少ないが、対外純資産は3兆ドルある。
 輸出で稼いだドルが対外資産で、そこから負債を引いた分が対外純資産である。
 黒字の輸出国家は、外貨準備高が対外純資産を上回っている。
 中国の対外純資産が不足する原因の一つに、中国共産党幹部による巨額の横領と資産を不正に海外へと移し隠しているからと言われている。
 AIIBに参加したイギリス、ドイツ、フランス、などの西洋先進国は、日本とは違って深刻な安全保障の脅威を持っていない。
 昔も今も。経済的利益を最優先する国々は、日本の存亡の危機を無視して中国との関係を強化している。、
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 2010年 アメリカの国勢調査(10年に一度実施)。
 白人の比率は、2000年の69.1%から63.7%に減った。
 中南米出身のヒスパニック系は、12.5%から16.3%に増加した。
 中国、韓国、東南アジア、インドなどのアジア系の比率も、年々増加している。
 このまま白人以外の移民が増加すると、白人系アメリカ人の人口比率は過半数を切り、最悪少数派に転落する恐れがあると言われている。
 大量移民する非白人は、アメリカンドリームを夢見て、低賃金で、低学歴者は肉体労働に高学歴者は知的労働に、広範囲な業種に進出した。
 その為、高賃金で働いていた白人労働者は、会社の経費削減と合理化によってリストラされた。
 その結果。貧富の格差は広がり、白人富裕層と白人・非白人の貧困層に分かれた。
 白人貧困層の不満は、白人富裕層ではなく移民として根付いた非白人貧困層に向けられ、不法入国でアメリ国籍のない非白人への差別として吹き出し暴力事件が多発した。
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 2012年 ミャンマー政府による、西部ラカイン州に住むイスラム教の少数民族ロヒギャ族(約110万人)に対するのジェノサイド(集団虐殺)。
 ミャンマーの公式記録には、ロヒギャ族と言う民族名ではなく隣国バングラデシュからの不法入国者としてベンガル人と呼んでいる。
 ミャンマーでは、民族対立と宗教対立が絡んで社会不安を複雑にしている。
 2013年12月 南スーダン内戦。ディンカ人のキール大統領に対するヌエル人のマシャール前副大統領のクーデター未遂事件。政府軍対反政府勢力の内戦で。国外へ脱出した難民は約60万人で、国内避難民は約160万人。
 5月 ノーベル賞受賞者であるチベットダライ・ラマ法王は、イギリスのを訪問してキャメロン首相と面会した。
 チャールズ皇太子夫妻は、ダライ・ラマ14世を王宮に招いた。
 中国共産党政府は、「会談が実現すれば中英関係は深刻な危機に陥る」と猛反対した。
 イギリスは、人権問題を重視する立場から、ダライ・ラマ14世の訪英を断行し、キャメロン首相やチャールズ皇太子との会談などの公式行事を行った。
 中国共産党政府は、内政干渉だとしてイギリスを激しく非難し抗議した。
 イギリスは、「誰が誰と何処で会うかは自分で決める権利がある」と突っぱねた。
 秋に予定されていた、キャメロン首相の訪中は延期された。
 中国共産党政府は、経済制裁的に対英投資を停止してイギリス経済に打撃を与えた。
 経済的に苦境に追い込まれたイギリス財界は、イギリスに直接関係しない人権問題で中国共産党政府の機嫌を損なうべきではないと、政府と議会に要請した。
 イギリスは、中国共産党政府の圧力に屈し、14年の香港における民主回復運動でも声明を読み上げても実行ある行動を取らなかった。
 6月 シリア政府は、反政府勢力との内戦と国内混乱が原因で欧米諸国との関係が悪化し、日本と欧米諸国の大使12名をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)として追放する考えを表明した。
 アサド政権は、日本との関係を維持したい為に、新聞発表から日本大使の名前を削除した。
 日本は、穏便な処置を取ったシリアに対し、アメリカ追随として欧米諸国の対抗措置に参加した。
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 2013年9月 中央アフリカ共和国における内戦。キリスト教武装勢力アンチ・バラカによる、イスラム教徒虐殺。
 12月2日 キャメロン首相は、ロンドン・金融街シティの要請を受けて、中国共産党政府に対して幾つかの約束をして訪中した。
 「イギリスは、西側諸国における最強の中国支援国になるだろう」
 「イギリスは中国の主権と領土保全を尊重し、チベットが中国の一部である事を承認すしており、これまで通り、チベットの独立は認めない」
 「ダライ・ラマ14世とは二度と会わない」
 同時に。イギリスは、香港の民主市民運動をも見捨てた。
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 戦わずに独立できたのは、韓国など数カ国のみであった。
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 2014年3月 習近平主席は、オランダのハーグで開催された核セキュリティ・サミットに出席し、中国と欧州連合(EU)をつなぐ巨大な新シルクロード構想を発表した。
 習近平主席は、イギリスを除くフランス、ドイツ、ベルギーなどヨーロッパ諸国を歴訪し、言葉に出さなくても訪問しない事で「上から目線」でイギリスに圧力を加えた。
 6月 李克強首相は、欧州歴訪でイギリスを訪問した際に、エリザベス女王との面会を申し込み、面会できなければ訪英しないと脅した。
 イギリスは、屈辱と知りながら中国の恫喝に屈服した。
 6月18日 李克強首相は、訪英し、ウインザー城エリザベス女王と握手した。
 李克強首相は、キャメロン首相と英中経済交流に関する幾つかの協定を結び、人民元を国際化する為に人民元決済銀行設立を宣言した。
 そして、政府・民間併せて140億ポンド(約2兆4,000億円)投資の契約にサインをした。
 イギリスは、イギリス王家の名誉と国家の誇りよりも経済的利益を優先して、中国マネーに屈服した。
 中国共産党政府は、金が有る者が覇者となって世界を支配する事を証明した。
 ロンドン・シティーの金融界は、ウォール街に奪われていた国際金融の中心地という位置を取り戻すべく、「人民元決済の仲介」を引き受け、人道と経済・経済を分離して金融・経済での中国との関係を強めた。
 英連邦諸国も、イギリスに倣って中国との関係を強めた。
 中国共産党の対日戦略は、国際的日本包囲網を構築し、政治・経済で日本を世界から孤立させて窮地に追い込み、苦境にある日本に微笑みをもって救いの手を差し伸べると言うものである。
 豊富な資金を使って、世界で日本批判の宣伝を強めて国際的反日世論を作って日本を揺さぶり、親中国派日本人を利用して日本国内の国内世論を誘導して日本を操作しようとしている。
 日本は、経済・金の為に恥を承知で中国に屈服するか、民族国家の志・気概・意地を通して瘦せ我慢で世界から孤立化するかである。
 中国が原因による日本の孤立は、歴史を鏡として見れば、過去にも幾度も起きている中国・西洋諸国連合の日本包囲網である。
 日本が対日包囲網に反発した時、日本は戦争へと追い込まれていた。
 7月 中国共産党政府は経済覇権主義を採用し、中国不利の国際金融システムを中国有利に改めるべく、国際ルールを中国ルールに書き換えるべく活動を本格化させた。
 7月15日 中国共産党政府は、ブラジル・ロシア・インド・南アフリカの五ヶ国で設立していた国際金融機関「新開発銀行」(BRICS)に、チリ・インドネシア・ナイジェリアを加えて新たに新開発銀行を誕生させ、本部を上海に置いた。
 新開発銀行は、アメリカの世界銀行国際通貨基金IMF)と拮抗する。
 中国共産党の狙いは、国際金融における人民元の影響力を強化する為に、国際金融のセンターをアメリカ(ワシントンとニューヨーク)から中国(北京と上海)に移し、国際金融を支配する事であった。
 アメリカは、「腐敗王国であるような中国には、国際金融センターなど成立しない」「このような環境汚染のある国で国際金融取引はできない」と、声を大にして非難し続けていた。
 中国共産党政府は、見せ掛けの法律を数多く作っても、施行する意志はなかった。
 党幹部は、法律に基づく許認可権を握り、私物化して賄賂を強制して私腹を肥やしていた。
 国際金融は、市場は透明性を保証する、国際法の遵守と民主・自由の確保を求めた。
 習近平主席は、党・政府・軍隊・民間での反対派の粛清をかねて、「虎もハエも同時に叩く」として反腐敗運動を開始した。
 そしれ、世界金融支配の本命であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立に本腰を入れた。
 そして、ユーラシア大陸全体を支配するシルクロード経済圏を建設するべく、400億ドル(約4.5兆円)のシルクロード基金を創設した。
 世界は、中国共産党政府が今も続けている人権弾圧や民族浄化から目を反らし、巨額な中国マネーの前にひれ伏した。
 日本が主導するアジア開発銀行(ADB)は、財務省と日銀の天下り機関に成り下がり、官僚主義で硬直化して国際的信用をなくしていた。
 日本は、国際経済を牽引する主要国の一員ではなくなっていた。
 日本人は国際人になろうという気概を捨て、日本企業は中国企業の下請けに甘んじ安住している。
 9月 経済協力開発機構OECD)は、15歳を対象に行った学力調査の数学で、上海が600点で世界一位となったが、イギリスは492点で先進国では低かった。
 イギリスは、上海市数学教育の指導を仰ぐべく、中国共産党政府に英語教師の交換留学を提案して了承を得た。
 イギリス人教師71名は、上海市を訪れ中国人教師から数学教育を学び始めた。
 10月24日 中国共産党政府は、APEC首脳会談でAIIB(アジアインフラ投資銀行)創設の覚え書きを交わそうとしていた。
 中国共産党が進めるAIIBの目的は、EUとの間に新たな交易・物流を建設するという「一帯一路(陸のシルクロードと海のシルクロード)」構想と人民元が支配する新シルクロード経済圏構想であり、発展途上国のインフラ整備を行って地域及ぶ住民に貢献するものではなかった。
 そして。安全保障戦略として、アジア地域でのアメリカの主導的地位を脅かして発言力を低下させる事であった。
 一帯一路構想には、中国軍を好きな地域に迅速に移動する軍用路という軍事的側面があり、中国共産党による軍事力支配を意味する。
 「アジアの問題は、アジア自身が解決する」
 中国共産党の最大の命題は、一党独裁体制の存続であった。
 日本国内の親中国派は、中国共産党との太いパイプから日本がAIIBに参加する事を主張していた。
 11月には、中国人教師29名が、教師交換留学としてイギリスを訪れ、中国の教科書を持ち込んで小学校で教え方を指導した。
 イギリスは、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB・資本金500億ドル)に参加する為に、大英帝国の子孫というプライドを捨て、ひたすら中国におもねへつらった。
 欧州諸国は、地理的に中国から遠く離れている為に、中国が軍事力を強化し領土拡大の膨張政策をとっても日本が抱く様な安全保障上の脅威とは無縁であった。
 経済低迷と移民問題に苦しむ西欧諸国は、経済的利益の為に巨額の資金を持つ中国に急接近し、中国が進め様としているアジアインフラ事業に参加して十数%でも利益を得たいと切望していた。
 其の為に、中国人に好印象を持って貰うべく中国共産党の主張に同調して、ダライ・ラマ14世の来訪を拒否し、日本批判を行った。
 日本は、中国共産党政府の領土拡大目的の軍拡政策を軍事的脅威として恐怖した。
 欧州諸国とロシアは、中国共産党政府の経済拡張政策を国際貢献として歓迎した。
 中国とは、日本にとって軍事的「恐れ」であったが、他国にとって経済的「利益」であった。
 地政学的な歴史的事実として、中国問題で日本が孤立する事は避けようがない最悪な宿命である。
 中国人は、気弱で損をする日本人とは違って、転んでも手ぶらでは起きないし、立ち去るにしても何かしらの利益を勝ち取っていく。
 日本人が「立つ鳥跡を濁さず」ならば、中国人は立ち去る時は全て奪い無価値な残骸だけを残すである。
 此れまでの中国による発展途上国への経済支援とは、資源獲得と多額の割り戻しを求める贈収賄であった。
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 国際平和維持軍司令官に、ノルウェーの女性軍人クリスティン・ルンド少将が就任した。
 10月 ノルウェー王国国防軍司令官ペールトマセ・ブーは、男女平等に従って、男子に限られていた1年間の徴兵義務の対象を女性にも拡大す手続きを開始した。
 ジョアン・マコウスキー(英国王立統合軍事研究所、RUSI)「北欧諸国は率先して男女平等を実現している。ノルウェーが女性の徴兵に踏み切るのも以外ではない」
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 2014年4月号 月刊 文藝春秋
 川口マーン恵美「欧州で教会離れが進んでいる
 教会が売り出され、いつしかモスク!?
 金権体質とスキャンダルで脱会者が急増中
 欧州経済でひとり勝ちといわれるドイツで、教会離れが進んでいる。
 現在、ドイツのキリスト教信者の数は、カトリックが2,400万人、プロテスタントが2,300万人。全人口の約60%を占めている。ところが、その数が、毎年50万人ずつ減っているというのだ。この調子で行くと20年後には人口の50%を切るはずで、キリスト教徒は近い将来、少数派になるかもしれない。
 日本のキリスト教信者は全人口の約1〜2%で、約200万人しかいないいっぽう、仏教徒の数は約8,500万人(全人口の約70%)にものぼる。日本人は信仰心が稀薄だといわれるが、ドイツの教会離れと同じペースで日本の仏教徒の数が減るということは、ちょっと考えにくい。
 昔のドイツなら、無宗教者は『人にあらず』と同意語で、大変スキャンダラスなことであったが、すでにこの25年来、プロテスタントは600万人、カトリックは200万人もの離脱者が出ており、無宗教は別に珍しくも何ともない事態となりつつある。
 こうした現象は欧州全体が抱える問題で、ドイツに限ったことではない。しかし、ドイツには他国にない特殊な教会事情がある。
 賠償金と『教会税』
 ……
 脱会増加の理由とは
 ……
 揺らぐ信仰心
 2013年1月、面白い調査結果が発表された。有名なリサーチ機関であるSINUS研究所がカトリック信者を相手に行った聞き取り調査である。信者の多くは、自分に信仰が無いとは思っていないが、信心深いとも思っていないらしい。た、神や宗教についての定義は極めて曖昧で、神と自分との関係を積極的に問うてみることもないないという。もちろん、死者の復活やマリアの処女懐胎をそのまま信じている人はいない。
 2005年の前回の調査から比べると、カトリック教会は多くの信頼を失った。特に熱心な信者が、幼児虐待のスキャンダルに深いショックを受け、また、教会の持つ女性蔑視の体質や、離婚者や同性愛者への差別的態度、また避妊の禁止などを非難するようになった。
 ……比較的信心深い人の多いカトリックにおいてさえ、信者と計上されている人が本当に信仰心を持っているかどうかは、はなはだ疑問であるということだ。もちろん、教会に所属せず、個人的に信仰を持つ人もいるだろうが、それはおそらく、生き方を教会に指示されたくない人たちだ。いずれにしても、価値観の多様化は、教会に有利には働かない。
 ドイツで定期的に日曜ミサに参加する人は、現在、人口の2%と言われている。私の周りで毎週教会に通う人は、かなりの田舎に住んでいるプロテスタントの親戚だけだ。彼らは今も食事の前にお祈りをしている。宗教に対する態度は、地方と都会、そして、年齢によって大きな開きがある。ドイツの信仰のかたちは、日本人のそれと似てきているかもしれない。
 教会がいつしかモスクに
 ……
 ドイツは建前こそ政教分離だが、これほど政治と宗教がしっかりとスクラムを組んでいる国も少ないのではないか。与党のCDU(キリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟)のCは、キリスト教のCである。学校でも、宗教は必修科目だ。ドイツの教育は州の管轄事項なので、州ごとに若干の違いはあるが、必修科目であることは憲法で定められている。最近では、最終学年が近くなると、宗教の代わりに倫理を選択できるところも多くなってきたが、基本的には、宗教の授業は大学に入るまで延々と続く。時代に即しているとは言い難い。
 一方、先細りのキリスト教と違い、どんどん伸びているのがイスラム教だ。売り出された教会が、モスクになってしまったところもある。移民の多い州の学校では、宗教の時間に、カトリックプロテスタントと並んで、イスラムの授業も始まっている。移民はこれからも増えるので、公立の学校でのイスラムの授業は、早晩、常態化していくだろう。
 それに備えて、イスラム教の教師を養成する科を新しく作った教育大学もある。イスラム教の授業の主導権をドイツが握れるよう、イスラム教師を正式に育成するためのものだ。イスラムの授業をイスラムの聖職者に任せると、反ドイツ的な教育が為されるかもしれないと、危惧しているのである。
 今のドイツでは、すでに、カトリックプロテスタントも、肝心な教えが人々の心に共感をもたらさない。多くのドイツ人にとって、宗教は反動的で、反民主主義なのである。しかし、その空洞に入り込んできたのが、さらに厳格な一神教であるイスラム教であるのが、何とも皮肉なことだ。弱まるキリスト教に、強まるイスラム教。教会の地盤沈下は深刻である」



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