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2024年2月22日 YAHOO!JAPANニュース JBpress「新疆生産建設兵団とは?ウイグル人研究者が明かす、中国が新疆ウイグル自治区を支配するために敷いた二重行政構造
国境を警備する新疆生産建設兵団(写真:新華社/アフロ)
2月1日、新疆ウイグル自治区の政府は、新疆ウイグル自治区内のモスクを中国式のデザインにしていくことを義務付けると発表した。今後、モスクを新設する場合や、改装や拡張の工事を行う場合は、建築の方法や建物の装飾を中国式にしなければならない。このほかにも、学校やモスク以外での宗教教育を禁止するなど、中国政府は新疆ウイグル自治区内の管理体制を一層強めている。
【実際の写真】新疆生産建設兵団が新疆ウイグル自治区に建設した都市
新疆ウイグル自治区を中国化するために、中国政府は今何をしているのか。『ウイグルを支配する新疆生産建設兵団 東トルキスタン秘史』(ハート出版)を上梓したウルムチ出身のウイグル人、千葉大学非常勤講師のムカイダイス氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──本書では「新疆生産建設兵団」について書かれています。新疆生産建設兵団とは何でしょうか?
ムカイダイス氏(以下、ムカイダイス):新疆生産建設兵団は、新疆ウイグル自治区の中にある14の人民解放軍の師団の総称です。つまり、これは軍ですが、同時にそれ自体が様々なものを生産して販売する企業でもあります。
さらに、新疆生産建設兵団は行政機関でもあります。新疆ウイグル自治区の中の地域と水源を占領して、そこに街を造り、新疆ウイグル自治区と同じように、行政の権限を持たせています。軍が企業として、行政として、共産党の機関として機能する「軍・政・党・企」一体の特殊な機関です。
新疆生産建設兵団は、新疆ウイグル自治区にありながら、新疆ウイグル自治区ではなく、新疆ウイグル自治区にとっては治外法権の場所という、世界でも類を見ない奇妙なところです。新疆生産建設兵団内の人口はおよそ400万人ですが、毎年20万人以上の勢いで人口が増え続けています。
新疆ウイグル自治区内に、中国政府は最初、自治区に属さない行政区間を置くことを憲法で説明することができませんでした。そこで、1990年代に新疆ウイグル自治区のトップに新疆生産建設兵団の司令官を据えて兼任させたのです。
「逃げるものは射殺しろ」という新疆ウイグル自治区トップの陳全国・中国共産党委員会書記の文章が流失し、毎日新聞を含む世界中の報道機関がこれを報じました。新疆ウイグル自治区は「自治区」なのに「なぜトップが中国共産党の軍の司令官なのか」、世界中がもっと中国に問わなければなりません。
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◎新疆公安ファイル(毎日新聞)
海外の学者はたくさん声をあげてくれていますが、日本のウイグルを研究してきた学者は積極的に声を上げているとは感じられません。これは、私にはとても悲しいことです。日本の学術界は、こんなに及び腰になる必要はありません。
私の本来の専門は民俗学で、新疆ウイグル自治区やウイグル人の文化の研究者ではありません。でも、学術論文を含め、新疆ウイグル自治区の実情について書かれるものが少ないので、こうして本を書いています。
私たちがどのようにして統治され、消されていくのか、記録しなければなりません。歴史に記録して、分析していくためには、今はとても重要な時期です。
──2015年4月、在日中国大使館のウェブサイトに、新疆ウイグル自治区に「ココダラ市」という新しい市がつくられると発表がありました。その中には、「兵団は今後も経済成長に合わせて市を増やしていく計画」と書かれています。なぜ中国政府は新疆ウイグル自治区内に次々と新しい市をつくっているのでしょうか。
■ 新疆ウイグル自治区内に新しい都市をつくる理由
ムカイダイス:ココダラ市は、新疆生産建設兵団の中に新しく作られた市です。中国本土から移住してくる中国人の受け入れ先です。これは新疆ウイグル自治区を「新疆生産建設兵団」が呑み込んでいくための戦略です。
あと40~50年したら、新疆ウイグル自治区の土地の多くが新疆生産建設兵団に呑み込まれ、ウイグル人の人口が漢民族より少なくなるだけではなく、「新疆ウイグル自治区」がなくなってしまう可能性もあると私は見ています。
──本書には、新疆ウイグル自治区の漢族の移住を増やす一方、ウイグルの人たちを中国本土に移転させて、本土の労働力にしているというお話がありました。
ムカイダイス:新疆ウイグル自治区には、現在およそ2000万人の漢族がいます。現地では既にウイグル人よりも漢族のほうが多いのです。でも、中国共産党は満足していません。新疆ウイグル自治区において「7人の漢族あたりに1人のウイグル人」という人口構成を目指しています。
中国政府は、中国本土の沿岸地域や新疆生産建設兵団の中にウイグル人を移して、安い労働力として働かせています。ウイグル人を移住させて、代わりに漢族を新疆ウイグル自治区に入れるのです。
中国でも高齢化が問題になっており、工場で働く若い労働力が足りません。ウイグル人の人口は比較的若いので、中国本土の沿岸の工場地帯に移して働かせています。
また、中国では工場の多い沿岸部の環境破壊が進んでいますから、工場を沿岸部から新疆ウイグル自治区に移し始めています。中央アジアにある新疆ウイグル自治区は一帯一路の出入り口なので、ここに工場があったほうが輸送の面でも便利だという側面もあります。
──農地の確保という側面もあるようですね。
ムカイダイス:広大な中国本土には、14億人を養うだけの十分な農地がありません。ところが、ウイグルには豊富な天然資源や食料を生産できる場所があります。だから、新疆生産建設兵団は、ウイグルで必要なものを生産して14億人の漢族を養いたいと考えているわけです。
2000万人の漢族が、水や川がある北の草原を開墾して都市をつくっています。
問題は新疆ウイグル自治区の南のエリアです。ここはオアシス地域ですが、漢族が押し寄せたとしても、このあたりにはそれほど人が住めません。開墾する土地がそもそも少ない。
そのため、中国政府はここに大人用と子供用の強制収容所をつくり、この地に住むウイグル人を収容しています。強制収容所では、ウイグル人のアイデンティティを捨てさせ、共産党を信奉して習近平を父として生きるように、人格や思想を矯正しています。
日本の土地も中国人に買われていると言われますが、ここにも危険があるのかもしれません。購入者の肩書や所属する企業の名前だけでは、その本性は分かりません。新疆生産建設兵団は、様々な形に名前や素性を変化させます。
水源と土地を押さえることで、いかにその土地の人々を押さえ込むことができるのか、中国共産党は新疆ウイグル自治区で実験しているのだと思います。新疆生産建設兵団という一つの勝利のモデルをつくっているのです。
■ 新疆生産建設兵団に日本からお金が流れている現実
──新疆生産建設兵団は様々な事業を手掛けているという話です。実際にどんなビジネスを営んでいるのでしょうか。
ムカイダイス:新疆ウイグル自治区では、天然ガス、石油、レアアースといった天然資源が取れます。そのような国防にとって重要な資源は中央軍事委員会が押さえています。こういった天然資源の採掘には、新疆ウイグル自治区ばかりではなく、新疆生産建設兵団でさえも近づくことができません。
そのほかに、新疆ウイグル自治区では中国全土のおよそ4割の石炭を生産しています。また、綿やトマトの生産も盛んです。この3つは大きな産業です。
企業活動の面でいうと、新疆ウイグル自治区には「一帯一路」を通して海外に橋や道路を造る企業があり、アフガニスタン、パキスタン、アフリカ、トルコなどで橋や港の建設などに携わっています。「北新路橋」という企業で、新疆生産建設兵団の中で最も大きい企業です。
──日本企業が、新疆ウイグル自治区産の素材を使い、服や食品、太陽光パネルの生産などを行ってきたことについて書かれています。
ムカイダイス:この本では、オーストラリアの研究機関が発表した資料に基づいて14の日本企業の名前を書きました。英ヨーク大学・国際人権法教授の小保方智也さんなども、世界の強制労働の実態について調査して報告しており、この方の資料も参考にしています。
この報告書に出てくる14の日本企業の中には、新疆ウイグル自治区の綿を使った企業として、ユニクロや無印良品などが挙げられます。カゴメは新疆ウイグル自治区のトマトを使っていましたが、使用をやめました。また大手繊維メーカーのグンゼがウイグル産のものは使わないと発表しています。
日本ウイグル協会は、疑いのあるすべての企業に新疆ウイグル自治区産のものを使っていないかどうか調査するための質問状を送っていますが、多くの企業は「使っていない」と回答しています。
私個人で調査をして、どの企業が新疆ウイグル自治区産のものを使っているか、判断することはできません。ただ、ユニクロに関しては「中国産」という表示の製品が減ってきている印象を受けます。はっきりした問題になる前に、それぞれの日本企業は問題を解決する努力をしていると思います。私はこういった努力を高く評価しています。
現在、問題視され始めているのは、新疆ウイグル自治区産のポリシリコンでつくられる太陽光パネルです。太陽光事業の是非について私が意見するつもりはありませんが、強制労働から生産された太陽光パネルが日本で使われていいのかということは問いたいと思います。
また、新疆生産建設兵団は軍です。日本のお金が海外の軍に流れていいのでしょうか。新疆ウイグル自治区のロプノールという地域では、47回から49回の核実験が行われました。核の製造拠点があり、核兵器がある。そういうところに、日本のお金が流れていることは、もっと知られるべきです。
──本書では、毛沢東が新疆生産建設兵団を設立した理由についても書かれています。
■ すべてが計画的だった毛沢東
ムカイダイス:中国政府は新疆ウイグル自治区を「いにしえから我が領土」と主張していますが、新疆ウイグル自治区はかつて「東トルキスタン」と呼ばれていました。1756年に、清の時代に占領されて植民地化されましたが、その後も東トルキスタンの国民はずっと戦い続けました。
1884年に、清朝はこの土地を「新疆」と名付けました。「新たな領土」という意味です。でも、清やその後の国民党時代に、完全に支配下に置かれたかというと、必ずしもそうとは言えません。
1933年には、国民党を追い出して「東トルキスタンイスラム共和国」が樹立しています。ただ、軍事的な力は弱く、1年足らずで滅びてしまいました。ここにいる民はウイグル人とトルコ民族で、言語も宗教も国民党とは異なります。
その後、再び戦ってウイグル人たちのリーダーによって主権と国土を取り戻し、1944年に「東トルキスタン共和国」が樹立されました。1933年にできた「東トルキスタンイスラム共和国」から「イスラム」を取ったのは、東トルキスタン共和国が共産主義を掲げていたからです。
この時代、共産主義者の毛沢東も国民党と戦っていました。東トルキスタン共和国のトップ、アフメットジャン・カスミーと毛沢東は同じ共産主義ということもあり、両者は協力関係を築きました。
国民党を倒すために共闘してくれるならば、モンゴル、チベット、ウイグルを独立させるために支援・応援すると毛沢東は約束しました。ところが、後に毛沢東とスターリンが会談して、水面下でモンゴルを独立させて、東トルキスタン共和国を中国に譲るという協定を結んでいたのです。
東トルキスタン共和国のリーダーたちは、毛沢東に呼ばれて、1948年8月22日にイルクーツク空港から飛び立ち、そのまま飛行機事故で亡くなっています。この時に毛沢東から呼ばれたことに関しては証拠がなく、この事故に関してはいろんな意味で議論があります。
1949年、ソ連の軍事援助を受けながら、50万人の解放軍の兵団が東トルキスタン共和国に入ります。この50万人の兵団が新疆生産建設兵団の母体になりました。
この50万人のおよそ半分の25万人が、資源、水源、地政学的な要所という観点で重要な新疆ウイグル自治区内の14カ所に分かれて、各地を占領してウイグル人の抵抗を抑え込みました。その際に、現地のウイグルの人々を虐殺して資源を奪っています。
ウイグルに進軍するために、毛沢東はソ連から多額の借金をしました。毛沢東は、ウイグルの鉱山などの天然資源を開発することで、借金の返済にあてたのです。毛沢東は最初から計画的でした。先に、新疆ウイグル自治区に調査部隊を入れて、どんな資源がどこにあるか調べていたのです。
50万とも言われる人民解放軍を進軍させた時も、1万人のエンジニアを同行させて、植民地化して、天然資源や食料を使う技術も一緒に導入しました。最初から、新疆ウイグル自治区の資源を略奪して、中国本土に送ることを考えていたのです。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。
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世界は、中国共産党がウイグル・チベット・内モンゴルなど小民族に対するジェノサイドを非難している。が、日本は実情から目をそらし中国共産党に弾圧されている少数民族を助けようとはしない。それが日本の政治家、官僚、企業家・経営者、学者・教育者そしてメディア業界の本性である。
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