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2017年8月8日 産経ニュース「【経済インサイド】“宗教対立”インド食肉業界に打撃 ヒンズー至上主義政権が牛取引で規制 相次ぐ襲撃事件も
ニューデリーの家畜市場近くで放し飼いにされる牛(岩田智雄撮影)
インドの食肉業界が、政府による家畜市場での食肉処理を目的とした牛の売買禁止令や、牛取引業者へのヒンズー至上主義者による相次ぐ暴力の影響で、大きな打撃を受けている。肉の流通量が減っているほか、価格も大きく上昇している。
業者襲う政令と暴力
ニューデリー市内の家畜市場で、乳牛、肉牛取引業者のマンガト・キシャン・ラムさん(53)は「政府の命令のせいで、仕事の半分がなくなった」と不満顔で話した。
政府の命令とは、今年5月に牛を神聖視するヒンズー至上主義のモディ政権が「牛の幸福を守るため」と発表した法令のことだ。家畜市場での食肉処理を目的とした、雌牛、雄牛、水牛など全ての牛とラクダの取引を禁止したのだ。
食の自由の侵害や、食肉、皮革業者への影響を理由にイスラム教徒を中心とする業者が南部タミルナド州裁判所、さらに連邦最高裁に提訴し、最高裁は7月11日、「人々の生活が影響を受けるべきではない」として、法令の効力を3カ月間、差し止める命令を出した。政府は、法令の見直しを迫られており、家畜市場での肉牛の取引は復活した。しかし、食肉ビジネスは、いまだに正常化していない。
その大きな理由が、牛を神聖視するヒンズー至上主義者による相次ぐ暴力だ。
インドのデータ・ジャーナリズム市民グループ「インディアスペンド」の調査によると、2010年から今年6月25日までの間に、63回の牛肉(水牛を含む)に関連した襲撃事件があり、28人が殺害された。事件の97%はモディ政権発足後に起き、約半数の32件は、モディ氏与党のインド人民党(BJP)が州政権を握っている州で発生した。今年に入ってから、こうした事件は20件も起きている。
死亡した28人のうち、大半の24人は牛を神聖視しないインドで少数派のイスラム教徒で、ヒンズー教徒、シーク教徒、キリスト教徒も暴力の標的になった。
ラムさんは「最高裁による法令の差し止め命令はあっても、恐ろしくて、とても牛を取引できる雰囲気ではない」と表情を曇らせた。ラムさんの息子も隣接のハリヤナ州で乳牛を運搬する許可証を所持していたところ、暴徒に襲撃され、3000ルピー(約5000円)を強奪されたという。
「牛の運搬業者は、危険だからといって通常の2倍の値段を求めている。これでは仕事にならない」と不満をぶちまけた。
最高裁に法令の差し止めを求めた原告の一人、デリー食肉業協会のアルシャド・ハビブ・クレシ会長も「食肉の仕事は今、干上がっている」と話す。
輸出関連にも影響
牛の仲間の中で、デリー首都圏で食肉処理が認められている水牛の事業収入は、政令発表後、約3割減となり、水牛肉の価格は5割増しになった。水牛肉の品不足により、鶏肉やヤギ肉の価格も上昇している。約5万人の業者のうち、25%が仕事をやめているという。
クレシ会長は、最高裁の3カ月の差し止め命令期間中に、政府がどのような見直しを示すのかに神経をとがらせつつ、政府に対し、牛関連の暴力に断固とした措置を取るよう求めている。
インドでは、約8割を占めるヒンズー教徒の多くが特に雌牛を神聖視している。しかし、人口13億人以上の大国には、多様な文化が存在し、イスラム教徒やキリスト教徒、一部のヒンズー教徒にはこうした習慣はない。牛の食肉処理についての規制は、連邦制国家の中で州によってまちまちだが、家畜市場での取引禁止令はモディ政権が連邦政府として、初めて行った規制で、全国的に影響が広がった。
インドは、世界有数の水牛肉輸出国でもあり、タイムズ・オブ・インディア紙によれば、15年度の輸出額は約2700億ルピー(約4700億円)に上るが、輸出関連業者も、被害を受けているもようだ。(ニューデリー 岩田智雄、写真も)
ヒンズー教 古代インドのバラモン教と土着の信仰が融合して、長い時間をかけて形成された多神教。ブラフマー、ビシュヌ、シバの3神を重要視する。冠婚葬祭や食習慣、風習など国民の生活全般の土台となっており、特有の社会身分制度「カースト」もその一つ。牛は神聖な動物として崇拝され、食べることは禁忌とされる。ヒンズー教徒は国民の79.8%で、ほかにイスラム教徒14.2%▽キリスト教徒2.3%▽シーク教徒1.7%▽仏教徒0.7%▽ジャイナ教徒0.4%−となっている(2011年国勢調査)。」
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