- 作者:陣野 俊史
- 発売日: 2006/02/21
- メディア: 単行本
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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
意欲・野心のある若者は、仕事・カネ・地位・異性など豊かで満ち足りた生活を求めて、貧しい土地から豊かな土地へ、辺境から中央へ、地方から都市へと移動する。
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2017年3月1日号 ニューズウィーク日本語版「ヨーロッパ移民問題の焦点はイスラム教徒からアフリカ人へ アフシン・ラモビ
選挙では反イスラムの右派が支持をあつめているが
真の問題はアフリカから流入する経済難民だ。
現在のヨーロッパが直面している共通の政治課題は、移民問題だ。昨年も30万人の難民や移民が中東とアフリカから押し寄せた。ドイツでは、大量の難民流入を巡ってアンゲラ・メルカル首相への批判が高まり、州議会選挙で反移民の右翼政党が躍進した。右派が大きな支持を集めたのは、第二次大戦後初めてのことだ。
著者が滞在中のオランダでも、移民問題が今週の総選挙の大きな争点となり、伝統的にリベラルなオランダの有権者がヘールト・ウィルダース党首が率いる極右・自由党や中道右派政党の支持に回る例が増えている。フランス大統領選でも、ドナルド・トランプ米大統領の『アメリカ・ファースト』に倣って『フランス・ファースト』を唱える極右・国民戦線の党首マリーヌ・ルペン候補が世論調査で首位を争っている。
右派の台頭を後押ししているのは、イスラム教徒の移民に対する強い不信感だ。筆者はアムステルダムで、普段はリベラルなコスモポリタンの女性からこう言われた。『移民は歓迎する。でも、私たちの価値観に反対する移民は歓迎できない』
この発言が、女性は顔をベールで隠し、若い男性はあごひげを伸ばす急進派のイスラム系移民を指していることは言うまでもない。
ヨーロッパが今後も移民問題に悩まされ続けることは間違いない。ただし、次の難民の波はイスラム教徒ではなく、多種多様な信仰を持つサハラ砂漠以南のアフリカ人が多く占るだろう。イタリアのランペドゥーサ島と、地中海沿岸のギリシャの港町の違いを見れば明らかだ。
地中海を命懸けで横切り、ランペドゥーサ島に上陸する移民の多くは、経済的豊かさを求めるサハラ以南のアフリカ出身者だ。一方、ギリシャの港に上陸するのはシリア内戦を逃れた難民が多数を占める。戦火が下火になれば、難民の流入は減る。最終的には多くのシリア人は帰国の途に就くかもしれない。
都市化とネットの産物
だが、アフリカ系移民は違う。彼らをヨーロッパに向かわせるのは、長期的な経済の動向と人口動態、都市化だ。アフリカからの移民の波が衰える気配はない。
アフリカの中央値は20歳、ヨーロッパは42歳だ。過去10年間、サハラ以南のアフリカでは経済的に明るい兆候が見られるが、大半の国々は若者たちに十分な雇用を提供する余力がない。
例えばナイジェリアは次の主要な新興国候補として注目されるが、若者たちの大量流出は止まらない。彼らは貪欲な密航業者の手引きで危険なサハラ砂漠を縦断してリビアに入り、さらに危険な密航船でランペドゥーサ島に向かう。
アフリカの都市化とインターネットを見逃せない要因だ。国連の予測によれば、アフリカの都市人口は現在4億7,000万だが、50年には10億人を超える。
都市は農村部に比べ、金融サービスや情報ネットワーク、医療施設、NGO(非政府組織)へのアクセス環境が整っている。それ自体はいいことだが、同時に都市住民は密航業者のネットワークと密航者の成功話に触れる機会も多い。
ネット環境の整った都市に住んでいるが、雇用機会がほとんどない若者の存在は社会の不安定要因だ。だから政府には、彼らの流出を止めようとする動機がほとんどない。その結果、アフリカの都市化が進めば進むほど、祖国に幻滅して外国での生活を夢見る若者立ちも増えると予想されている。
ある意味でアムステルダムは、現代につながる偉大な革命の発祥地と言えるかもしれない。この革命の原動力は、豊かさへの渇望と個人主義だった。この都市の一角で誕生したオランダ東インド会社は、世界最初の多国籍企業であり、現在では空気のような存在になったグローバル経済の種をまいた。
それを考えれば、大量のアフリカ系移民がヨーロッパに殺到する現状は、歴史の皮肉と言えんsくもない」
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2018年5月15日 産経ニュース「【緯度経度】扉を開けると「移民は来るな」のステッカーが…寛容政策が生んだ新世代「極右」 三井美奈
日本に住むのは日本人。韓国に住むのは韓国人。ではヨーロッパには誰が住むのか。
「絶対に白人だ」と答える人は、欧州で極右と呼ばれる。その中でも、実力行使で移民流入を防ぐ若者集団が勢力を伸ばす。フランス中部リヨンの本拠地を訪ね、本音を聞いた。
指定された住所は坂の上のバー。青い扉を開けると、「欧州防衛」「移民は来るな」のステッカーがあった。報道担当のロマン・エスピノ氏(25)は小柄な銀行員で、ネオナチの強面(こわもて)とはほど遠い。「私たちは行動する右翼。左翼は『人道主義』と称し、不法移民を助けています」と言った。
名称は「イデンティテール(英語でアイデンティティー)の世代」。白人キリスト教文化こそ欧州人のルーツ=アイデンティティーと主張し、イスラム移民を「よそ者」とみなす。2012年に発足し、メンバーは20代を中心に国内で約2千人に上る。ドイツや英国、イタリアにも支部があるという。
先月、雪のアルプス山中で大胆な行動に出た。イタリアからの移民入国ルートを約100人で封鎖した。ヘリコプターを飛ばし、「欧州はあなた方の家ではない。帰れ」と書いた赤い垂れ幕を掲げた。経費は3万ユーロ(約400万円)で、その後も1日1200ユーロ(約16万円)かけて監視を続けた。モスク(イスラム教礼拝所)を占拠したこともある。富裕な支援者が背後にいるのは間違いない。
「世代」の言葉には、現在の欧州連合(EU)を作った世代への反発がある。1960年代の若者運動の主役たちが、EUにリベラルな価値観を吹き込んだ。通貨統合と検問撤廃で「国境なき欧州」を実現し、人権尊重、異文化共存を掲げた。寛容な難民・移民政策はその延長線上にある。エスピノ氏は「彼らが欧州を駄目にした。伝統をぶち壊した」と言う。
繊維産業の街リヨンには60年代、旧植民地・北アフリカから労働移民が集まった。エスピノ氏は市郊外の不動産業者の息子だ。「近所にイスラム移民が急増し、2世の不良に『白いチビ』とこづかれていました」と回想する。
自分の存在を脅かす「よそ者」への憎悪は、トランプ米大統領の米国第一主義を支える白人至上主義者の思想と重なる。彼は、寛容な欧州が生んだ鬼っ子だ。
「イスラム教徒は国より宗教法を重んじ、絶対に欧州に同化しない」「国が奪われる」。その言葉は「極右のたわごと」で片付けられない。リヨンやパリの郊外電車では外国語が飛び交い、白人客がいないことも珍しくない。イスラム移民は独自の共同体を作りがちだ。就職差別や貧困から白人社会との溝は広がり、互いに憎悪を募らせる。
米民間調査によると、イスラム教徒は現在、欧州人口の5%。2050年には11%を超え、フランスでは13%になる。
EUも「移民・難民がこれ以上、来ては困る」が本音だが、不法移民の強制排除には及び腰になっている。「差別は駄目」と言い、イスラム教徒と白人社会の対立に目をつぶる。これがエスピノ氏たちには偽善と映る。
アルプス作戦後、エスピノ氏が勤務する銀行には「彼を解雇しろ」という要求が殺到した。黒人活動家が店頭で「フランスはアフリカを略奪し、紛争を助長した。移民受け入れは当然」と訴える騒ぎとなり、同氏は一時休職を迫られた。憎しみは連鎖する。(パリ支局長)」
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人類史・世界史・大陸史では、古代から幾度となく民族大移動が起き、移住者による混乱と殺戮は繰り返されてきた。
移住者が定住し同化すれば混乱は終熄して安定し、平和が訪れ、人々は平穏な生活を取り戻した。
民族移動は、西洋でも繰り返し起きていた。
昔から住んでいた古い民族は古い文化とともに死に絶え、住み着いた新しい民族は新しい文化をもとに新たな繁栄を築いた。
滅び行く古い民族は二派に分かれた、新しい民族と文化を積極的に受けいれて同化しようとする者と古文化を守って異化に固執する者と、に。
前者は新しき者として生き残り、後者は古き者として死に絶えた。
その新陳代謝が、人類の歴史であり文明・文化の歴史である。
発展史において、年老いた古き文化が年若き新しい文化に吸収され同化する事はあっても、活力ある新しき文化が衰えた古い文化に吸収され同化する事はない。
それが、歴史の教訓である。
移民者は若くて元気が良く、先住民は老いて元気が無い。
古代ギリシア・古代ローマは、ゲルマン民族大移動で消滅し中世ヨーロッパが始まった。
西洋キリスト教文明は、古代ギリシャ文明・古代ローマ文明を消滅させた上に築かれた新たな文明である。
ゲルマン民族の子孫である現代のヨーロッパは、新たな民族の大移動で変質し、数百年後には消滅する。
そして、西洋キリスト教文明も新たな文明によって何時かは消滅させられる。
古代エジプト文明も、古代黄河文明も、古代揚子江文明も、全てが死んだ遺跡、廃墟を無残に晒して消滅している。
「歴史は繰り返す」とは、「永遠に存続できるモノはない」という事である。
文明も、国家も、民族も、宗教も、言語も、何時かは死に絶えて消滅する。
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現代ヨーロッパと移民問題の原点―1970、80年代、開かれたシティズンシップの生成と試練
- 作者:宮島 喬
- 発売日: 2016/02/27
- メディア: 単行本