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時代遅れの日本の歴史教科書は古代アメリカ文明を軽視し無視してきた。
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2023年12月13日7:03 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本人はこれまで「古代アメリカ文明」を知らなさすぎた…「マヤ、アステカ、ナスカ、インカ」を一冊で説明する「初の新書」が明らかにした「意外な文明観」
インカのマチュピチュ遺跡(撮影:青山和夫)
「古代アメリカ文明」は日本の歴史教科書において質量ともに不十分に扱われてきた。
しかし、古代アメリカ文明を構成するメソアメリカ文明とアンデス文明は、世界で4つしか誕生しなかった「一次文明」(もともと文明がないところに独自に生まれた文明)の2つを構成する。つまり、古代アメリカ文明は、人類の文明の起源と形成を知るうえでたいへん重要な位置を占めるのだ。
【画像】日本人が知っている「世界四大文明」は欧米では通じない!…その驚きの理由
そのように重要にもかかわらず多くの日本人がよくわかっていなかったメソアメリカ文明とアンデス文明を一冊にまとめた初の新書、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』がこのたび刊行される。
最新の研究の成果をもとにそれぞれの専門家が文明の「実像」をわかりやすくまとめたという本書では、具体的にどのようなことが書かれているのか。編・著者の青山和夫氏が本書を紹介してくれた。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
「文明は大河流域に生まれる」説は間違い
マヤ文明のティカル遺跡(撮影:青山和夫)
本書の目的は、古代アメリカのメソアメリカ文明とアンデス文明を一緒に解説する日本初の新書として、学問的な謎を解いて最新の研究の成果や魅力を読者にわかりやすく伝えることである。
私たちは、学術研究と一般社会のもつ知識の隔たりを少しでも小さくできればと強く願いながら本書を執筆した。
ただし本書は、アメリカ大陸の多様な先スペイン期社会を網羅するのではない。メソアメリカを代表するマヤとアステカ、アンデスで最も名前が知られているナスカとインカの実像に迫る。それぞれ日本を代表する専門家が、自らの研究成果や現地の経験を織り交ぜながら、高校生にもわかるように平易な表現を心がけた。
なお増田・青山『古代アメリカ文明―アステカ・マヤ・インカ (世界歴史の旅)』(2010年)のメインタイトルは本書と同じであるが、メソアメリカとアンデスの主要遺跡の旅行案内書であり、本書とは目的と構成が異なる。
本書は、公共祭祀建築(神殿ピラミッドや基壇など)、公共広場、図像、メソアメリカ文明の場合は文字にも注目して、それらが社会を動かす仕組みとして果たした役割を見ていく。
メソアメリカとアンデスでは、支配層と民衆のせめぎ合いが社会を動かす仕組みを更新させていった。このせめぎ合いの中心となる場が、公共祭祀建築や公共広場であった。公共祭祀建築とそれに伴う図像は「見る」人びとを突き動かし、より巨大な公共祭祀建築を建造して社会を動かす仕組みを編み出した。
メソアメリカでは、文字が使われた。マヤ文明(前1100年頃~16世紀)は、先スペイン期アメリカ大陸で文字(4万~5万)、算術、暦、天文学を最も発達させた。それは、スペイン人が侵略する直前に発展したメソアメリカのアステカ王国(後1428~1521年)や南米のインカ国家(1400年頃~1532年)より2500年ほど前に興った(図)。
第一章では、公共広場と公共祭祀建築からマヤ文明の起源と形成を見ていく。それは、ユカタン半島を中心にメソアメリカの南東部で展開した、主要利器が石器の都市・文字文明であった。
マヤ文明最古(前1100年頃)かつ最大の公共祭祀建築が見つかったメキシコのアグアダ・フェニックス遺跡の最新の調査成果についても紹介しよう。古典期(後200~1000年)には、公共祭祀建築と神々の図像に加えて、一握りの支配層が読み書きしたマヤ文字とそれに伴う権力者の図像が、「語り」を物質化し「見せる」ことによって、社会を動かす新たな仕組みを提供した。
第二章では、考古学と絵文書と呼ばれる歴史文書からアステカ王国の実像に迫る。アステカ人はメキシコ盆地の主都テノチティトラン(現在のメキシコ市)、テツココ(テスココ)、トラコパンの三都市同盟を中心にメソアメリカ最大の王国を築いた。公用語はナワトル語である。テノチティトランは、マヤ地域から1000キロメートル以上も離れている。アステカ文字はマヤ文字ほど精緻ではなかったが、宗教や暦、天文から租税まで記録された。
一方でアンデスは、インカのような巨大な社会が最終的に成立したにもかかわらず、文字を必要としない無文字文明であった。アンデス文明のキプ(キープ)では、縄の結び目の位置、数や色によって、人口、兵力、作物や家畜などを記録した。
アンデスでは前3500年頃から神殿が建設され、後に地上絵で有名なナスカなどの社会が開花した。第三章では、前400年頃に製作が始まったナスカの地上絵について詳しく解説する。
地上絵が描かれたナスカ台地は、ペルー南海岸に立地する。地上絵だけでなく、神殿、居住遺跡や土器などの遺物の研究を通じて、ナスカ社会の通時的な変遷を論じる。そしてリモートセンシング(遠隔探査)技術や人工知能(AI)を用いた地上絵の現地調査の最新の成果を紹介して、地上絵はなぜ制作されたのかに迫る。
侵略戦争で「勝者」となったスペイン人は、インカを一枚岩的なローマ帝国に由来する都市的古代社会イメージで「理解」し、一方的に「インカ帝国」と解釈した。
第四章では、この誤解がインカを実像から遠ざけていることを詳説する。
考古資料、スペイン人の歴史文書、16世紀の先住民の語りがケチュア語で綴られた「ワロチリ文書」や民族誌から、無文字社会のインカの実像に迫る。
インカ王はあらゆる者の頂点に君臨する「帝国」の絶対的な支配者ではなく、宇宙の揺るぎなき支配者・権力者である山の神々を怖れ敬い、その超大な力との関係を維持しながら統治した。
マチュピチュ遺跡は、日本で最も有名なユネスコ世界遺産の一つであろう(図)。それはインカの主都クスコの北西にあり、パチャクティ王と王族の王領であった。
古代アメリカの二大一次文明の研究は、両文明の特徴をより明らかにするだけでなく、人類の文明とは何かをより深く考えるうえでも重要である。
例えば、比較的乾燥したメソポタミアやエジプトの低地では、「文明が生まれる条件」として大河が強調される。
ところが高地と低地のきわめて多様な自然環境で文明が発達したメソアメリカとアンデスでは、大河がない場所が多い。大河どころか、河川がほとんどない場所でも文明が栄えた。したがって、「文明は大河の流域で生まれた」という中学歴史教科書の記述は、時代遅れの間違った考え方である。
旧大陸のいわゆる「四大文明」では、青銅器・鉄器や文字が文明の指標として用いられる。
しかし、メソアメリカとアンデスでは基本的に石器が主要利器であり、鉄器は用いられなかった。また上述のように、文字は、無文字文明であったアンデス文明には当てはまらない。
古代アメリカは文字、技術や自然環境をはじめとして、西洋中心史観や旧大陸中心史観を相対化するデータが生み出されてきた地域である。本書一冊で、マヤ、アステカ、ナスカ、インカの四つの実像について知ることができる。
本書を通して、まだ日本であまりよく知られていないメソアメリカ文明とアンデス文明について少しでも興味関心を深めていただければ、執筆者一同にとって大きな喜びである。
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「多くの人が生贄になった!?」「大河の流域でないと文明は生まれない!?」「 無文字社会にリテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える。青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です!
青山 和夫(茨城大学教授)
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12月13日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本のマスメディアが「捏造・再生産」してきた「古代アメリカ文明の謎と神秘」
青山 和夫茨城大学教授
日本における古代アメリカ文明は「謎と神秘」というイメージが先行してきた。多くの人が、「宇宙人がナスカの地上絵を描いた」「マヤ人の人類滅亡の預言」などの不思議な都市伝説を聞いたことがあるだろう。
しかし、こうした都市伝説の多くは商業主義的な利益を優先するマスメディアが「捏造」したものだった。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
「宇宙人起源説」や「人類滅亡の預言」の信ぴょう性
私たちは、古代アメリカ文明の大きな恩恵を受けている。(参照記事:「数千年をかけて「100種類以上の野生植物を栽培化」…「古代アメリカ文明」がもたらした「食文化革命」」「ビール、ちくわ、体格改善、温暖化防止…「古代アメリカ先住民の贈り物」のすごすぎる活躍」)
それにもかかわらず、古代アメリカ文明は、「謎・神秘の古代文明」というイメージが先行して、実像が紹介されることは少ない。商業主義的な利益を優先するマスメディアが、謎、不思議、神秘をおもしろおかしく強調して、歪められた謎と神秘の古代アメリカ文明観を捏造・再生産しつづけている。
歪められた謎・神秘の古代アメリカ文明観は、枚挙にいとまがない。
例えば、生贄を過度に強調する「血生臭い文明」というイメージがある。スペイン人は植民地化を正当化するために、生贄の数を捏造して誇張した。アステカ王国の主都テノチティトランの大神殿で「4日間に8万4000人を生贄にした」と記したスペイン人文書もあるが、物理的に実行不可能である(本書第二章)。
2012年に「マヤ人は人類滅亡を予言した」というデマが流行ったが、マヤ人はそのような予言をしなかった(本書第一章)。
「失われたアトランティス大陸の避難民が中南米で古代文明を築いた」という伝説がある。しかしアトランティスはプラトンが想像した架空の大陸であり、存在しなかった。また、いわゆる「ムー大陸」も架空に過ぎない。
商業主義の非良心的なマスメディアは、「超古代文明」の「オーパーツ(場違いな人工物)」に触れつづける。彼らは「宇宙人がナスカの地上絵を描いた」、「宇宙飛行士を描いた石板がマヤ文明の遺跡にある」といった「宇宙人起源説」や「宇宙人と接触することによって先住民が英知を得た」という興味本位の嘘まで流している。
当然ながら、アンデス先住民がナスカの地上絵を描いた(本書第三章)。またマヤ文明の石板は、メキシコの世界遺産パレンケ遺跡で7世紀に君臨したパカル(「盾」の意味)という名前の大王の死生観を表現したものである。
いわゆる「マヤの水晶ドクロ(クリスタルスカル)」も「オーパーツ」とされる。先スペイン期にはない回転式の道具で加工されたのがその根拠という。
しかし実際のところ、これは19世紀にドイツで製造された工芸品であり、「オーパーツ」ではない。20世紀前半にロンドンでこれを購入した自称「発見者」が、「マヤ文明の遺跡で見つけた」と大嘘をついただけである。
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12月13日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「なぜ日本人は「古代アメリカの謎と神秘の都市伝説」ネタが好きなのか…その「意外な理由」
青山 和夫茨城大学教授
「マヤ」や「インカ」の名前を聞いたことがある人は多いだろう。だが、その「実像」をくわしく知っている人はどのくらいいるだろうか。
日本における古代アメリカ文明の取り上げられかたは、テレビなどのマスメディアで巨大な神殿や都市の遺跡に謎や神秘を見出すものが多い。
その偏った観点の背景には、じつは中学・高校の歴史教科書の存在があった。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
日本の歴史教科書の「偏り」
歴史はしばしば勝者によって書かれ、書き換えられるといわれる。
スペイン人という「勝者」の侵略・植民地化によって「敗者」となった古代アメリカの二大一次文明は歴史の表舞台から消され、後世に及ぼす影響が過小評価されてきた。
19世紀に欧米の探検家たちが、すでに廃墟と化していたメソアメリカやアンデスの諸遺跡を再発見した。300年にわたる植民地支配によって、多くの先住民は社会の最底辺に置かれていた。大部分の探検家は、貧困に苦しむ先住民の先祖が巨大な神殿ピラミッドや都市を築いたとは想像さえできなかった。
「宇宙人や外部の文明が、先住民に文明をもたらした」という誤解の根底にあるのは、「先住民は独自に文明を創造できない」という権力格差や人種偏見に根差した先入観である。いわゆる「超古代文明」や「都市伝説」は、先住民の豊かな歴史・文化伝統に対する侮辱であることが認識されなければならない。
私たち研究者が探求するのは、オカルト的な謎ではない。あくまで学問的な謎である。
しかし学術研究の成果は、なかなか一般社会に浸透しない。世の中にはマヤやインカの名前を聞いたことがある人は多いが、その実像はまだあまり知られていない。アメリカ大陸の多様性に富んだ諸文明は一括して語られ、「インカ・マヤ・アステカ」、「インカ・マヤ」や「マヤ・アステカ」というように同一視あるいは混同される場合が多い。
この「マヤ・アステカ・インカ」シンドロームというべき傾向を助長しているのが、中学歴史と高校世界史教科書である。中学歴史教科書では、今なお時代遅れの「四大文明」・ユーラシア大陸中心的な歴史が語られつづけているのが大きな問題といえよう。
高校世界史教科書では、古代アメリカの歴史の記述はユーラシア大陸と比べて質量ともに不十分である。メソアメリカとアンデスは明確に区別されず、「中南米の先住民文明」というきわめて短い同一の節で扱われている(山川出版社『詳説世界史』、2023年)。「マヤ・アステカ・インカ」シンドロームは、さながら古代の日本列島、中国文明、アンコール・ワットに代表されるクメール文明を一括して語るような文明への精緻なまなざしを欠く粗雑な記述といえる。
アステカやインカは、後章の「大交易・大交流の時代」で「勝者」に征服された文明として再び登場する。アメリカ大陸の二大一次文明は、ヨーロッパの侵略戦争に敗北した「敗者の歴史」なので、あたかも重要ではないかのようである。生徒は偏った教科書をもとに勉強するわけだから、西洋史や東洋史と比べて知識に差が出るのは当然といえよう。
謎と神秘の古代アメリカの「都市伝説」は、マスメディアやSNSにあふれている。それは、社会的な要求の交差点として多くの日本人が好んできたことも事実である。問題なのは、嘘や偽物であるのを知っていながら、テレビ番組やオカルト雑誌といった「商品」の制作に利用するという姿勢といえよう。
困ったことに、偽情報を発信するメディア関係者とそれを消費する大人は、どちらも中学高校で偏った「勝者の歴史」を学んだ元生徒である。
古代アメリカ文明の実像がまだあまり知られていないのには、中学高校教科書以外にも理由がある。その一つが、メソアメリカ文明が栄えたメキシコと中央アメリカ及びアンデスが位置する南アメリカが、多くの日本人にとってまだ馴染みの薄い遠い地域であるためといえる。
アンデス考古学の鶴見英成(放送大学)は、古代アメリカ文明が大航海時代まで日本列島の歴史に直接には関係ないことも一因と述べる。
地理的な遠さのためだけではない。メソアメリカとアンデスを一緒に扱った出版物、特に一般読者向けの本が少ないことも原因であろう。
最近の例外は、例えば関・青山『岩波 アメリカ大陸古代文明事典』(2005年)、増田・青山『世界歴史の旅 古代アメリカ文明 アステカ・マヤ・インカ』(2010年)や杉山・嘉幡・渡部『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』(2011年)くらいしかない。
本書はこの不足を補うべく、古代アメリカの二大一次文明を一緒に解説する日本初の新書である。
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12月7日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本人が知っている「世界四大文明」は欧米では通じない!…「日本特有の教科書用語」が生まれた「驚きの理由」
青山 和夫茨城大学教授
日本の教科書に書かれた「世界四大文明」という言葉。じつは「学説」ではないことはあまり知られていない。
「四大文明」という言葉が長年一人歩きし、「世界に最初に生まれた4つの文明」というイメージが広く定着している。だが、じつはほかにも文明は生まれていた。
日本に流布している「世界四大文明」史観を脱構築していこう。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
「四大文明」と言ったのは、口調がいいから
日本の読者にとっては、「世界四大文明」(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)は耳慣れている言葉であろうが、じつは学説ではない。考古学者の江上波夫が普及させた教科書用語である。
それは、江上が関わった山川出版社の高校教科書『再訂世界史』に1952年に登場した特異な文明観であり、欧米には存在しない。なお「四大文明」という呼称は、20世紀初頭には日本と中国に存在していた。
ユーラシア史家の杉山正明によれば、江上はマヤやアンデスなど世界には他に文明が栄えたことを認めていた。一方で「四大文明」と言ったのは、「口調がいいからで、本当はいろいろあるさ」と杉山に大笑いしたという。
ところが「四大文明」は一人歩きして長年にわたってマスメディアや教科書に取り上げられ、旧大陸(ユーラシア大陸とアフリカ大陸)中心的な世界史観を形成してきた。
図メソアメリカ文明とアンデス文明
本書で取り扱う古代アメリカ文明は、メソアメリカ文明とアンデス文明からなり、先スペイン期(16世紀以前)に盛衰したさまざまな社会の総称である(図)。
古代アメリカ文明はAncient American Civilizationsの訳であり、ここでいう「古代」は日本列島の縄文時代から室町時代に相当する。日本史の古代とは異なるので、気をつけていただきたい。
メソアメリカとアンデスは、旧大陸社会と交流することなく、アメリカ大陸でそれぞれ独自に興隆した一次文明であった。一次文明とは、メソポタミア文明や中国文明と同様に、もともといかなる文明もないところから独自に生まれたオリジナルな文明を指す。
つは一次文明は世界に4つしか誕生しなかった。つまり、メソアメリカ文明とアンデス文明は世界で4つだけの「世界四大一次文明」の二つを構成した。
メソアメリカとアンデスという一次文明の研究は、旧大陸や西洋文明と接触後の社会の研究だけからは得られない新たな文明史観や視点を提供して、西洋中心史観や旧大陸のいわゆる「四大文明」中心的な世界史の脱構築につながる。
アメリカ大陸の二大一次文明に関する研究は、日本でもかなりの蓄積がある。しかし残念ながら、今なお学術研究と一般社会のもつ知識の隔たりは大きい。
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ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
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「多くの人が生贄になった!? 」「大河の流域でないと文明は生まれない!? 」「 無文字社会にリテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える。青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です!
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