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2024年7月14日 YAHOO!JAPANニュース まいどなニュース「中国軍、ポーランド国境での演習が示唆する未来 ウクライナ戦争に北方領土…高まる『海外派遣』の現実味
人民解放軍の海外派遣が今後懸念される ※画像はイメージです(Mike/stock.adobe.com)
ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく2年半が経つ中、中国軍は7月8日からロシアの友好国であるベラルーシで合同軍事演習を開始した。この演習は7月半ばまで続き、人質救出作戦や実弾射撃演習などが両軍で行われる予定である。しかし、なぜ中国はこのタイミングで人民解放軍をベラルーシに派遣したのだろうか?
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それには欧米陣営を牽制する狙いがある。ちょうど米国では7月9日からNATO首脳会合が始まり、ここで中国やロシアに対する強い懸念が示されることは間違いない。ロシアだけでなくベラルーシとも直接的な軍事交流を強化することで、欧米を牽制する意図がある。ベラルーシは7月4日、中国やロシアが主導する上海協力機構に新たに加盟し、欧米との対立を先鋭化させている。また、演習が行われている場所はNATO加盟国ポーランドと国境を接するベラルーシ西部のブレスト市であり、欧米陣営の圧力には屈しない反欧米陣営の多国間化を目指すという中国の強い意思が想像される。
そして、このベラルーシ軍との合同軍事演習から今後懸念されるのが、人民解放軍の海外派遣である。今回はあくまでも演習というが、欧米との対立が長期化する国際情勢においては、中国軍がウクライナ戦争でロシア軍を後方支援するためロシア・ウクライナ国境に派遣される可能性がある。ロシア軍の劣勢が顕著になった場合、中露が一体となった攻撃を仕掛ける可能性も排除できない。
また、ロシアにとって手薄な地域となっているシベリア極東地域においては、軍事的な空白を補うため中国軍が常設的に駐留し、日本を強く牽制する目的で北方領土の軍事開拓を強化する際に、中国軍が国後島や択捉島に足を踏み入れることも考えられる。
さらに、北朝鮮とロシアが軍事協力を含む包括的戦略パートナーシップ条約を締結する中、中国軍が北朝鮮軍を支援し、韓国や米国、日本を牽制する目的で派遣される可能性もある。中国にとって北朝鮮は米国の勢力圏拡大を抑える防波堤的な緩衝国家として機能しており、仮に北朝鮮と米国が政治的に接近するようなことがあれば、中国はすぐさま北朝鮮を引き止める策を講じるだろう。
もう一つの懸念は、ロシアやベラルーシ、北朝鮮などが尖閣、台湾、南シナ海など中国が抱える問題に絡んでくるシナリオである。無論、各国の能力には限界があるため、そこまで踏み込んだ協力ができるかは分からない。しかし、尖閣諸島や南シナ海における中国海警局のパトロールにロシア海軍が参加したり、台湾侵攻を想定した中国軍東部戦区の軍事演習に北朝鮮やベラルーシの兵士が参加したりすることで、日本を含む欧米陣営を政治的に揺さぶってくる可能性がある。
今後、現状の世界秩序を維持したい欧米陣営と、新たな秩序の構築を目指す中露陣営との対立は長期化すると考えられる。その盟主である中国としては、NATOのような集団防衛体制の確立は困難としても、友好国との間で軍事的な柔軟性を強化したいという狙いが今回の演習からは見え隠れする。
◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。
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5月10日 YAHOO!JAPANニュース まいどなニュース「習近平による「脱米外交」が加速 中小国の擁護者を目指す中国 世界に広がる反米感情も後押し
治安 太郎
習近平氏(新華社/共同通信イメージズ)
米中の間で対立が続く中、中国の習近平国家主席は5月上旬、フランスに続き東欧のセルビアとハンガリーを訪問した。習氏は5月8日、セルビアの首都ベオグラードでブチッチ大統領と会談し、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に参加する同国との間で経済や貿易、農業やテクノロジーなど幅広い分野で協力を強化していくことで一致した。また、2027年にベオグラードで万博が予定される中、中国企業が建設事業に積極的に関与していくことで合意した。そして、ブチッチ大統領は「台湾は中国である」との認識を示し、習氏はそれに大きな拍車を送った。
その後、習氏は中国やロシアとの関係を重視するハンガリーを訪問し、オルバン首相と会談した。ハンガリーもセルビアと同じく一帯一路に積極的に参加し、今回の会談では貿易やインフラ整備などを中心に関係を強化していくことで合意した。オルバン首相は欧州随一の親中・親露派で、中国が昨年公表したウクライナ戦争終結に向けての和平案(かなりのロシア寄り)にも支持する姿勢を示した。
今回の両国歴訪は、習近平による「脱米外交」と表現できよう。米国を中心に欧米陣営が中国への経済安全保障上の懸念を強める中、中国としては非欧米陣営を強化するべく、欧米と中小国との間に楔を打ち込み、より多くの中小国との関係強化を目指している。
習氏の中では既に11月に行われる米大統領選は終わっている。すなわち、バイデンが再選してもトランプが勝利しても米国の対中強硬姿勢に変化はなく、選挙戦の行方を注視していても意味がないことから、今のうちからより多くの中小国と関係を強化したいのだ。
そして、今日の世界情勢は脱米外交を展開し、中小国の擁護者を目指す中国にとって最適な環境と言えよう。昨年10月以降、イスラエルによるガザ地区への攻撃がエスカレートし、パレスチナ側の死亡者数は3万人を超えているが、ネタニヤフ首相は依然として攻撃の手を緩めない。しかし、強硬姿勢を貫くイスラエルに対する批判や反発は諸外国で拡大する一方で、トルコはイスラエルとの貿易を停止し、米国内でも若者たちによる反イスラエルデモがエスカレートしている。それにも関わらず、バイデン政権はイスラエル支持の姿勢を崩しておらず、それによってアラブ諸国だけでなく世界的な対米不信、反米感情というものも拡大している。実際、マレーシアやインドネシアなどのイスラム教国では、マクドナルドやスターバックスなどへの客足が減っているという。
今後、国際社会では欧米の影響力はますます衰退し、インドを盟主とするグローバルサウスの影響力が必然的に高まってくる。これは米国や日本にとっては望ましい環境ではないが、中国はよりいっそう脱米外交を展開していき、セルビアやハンガリーのような親中的な中小国が増えていく可能性がある。
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2023年8月14日 YAHOO!JAPANニュース まいどなニュース「結局「仲が良くない国家」の国民がターゲット 中国・改正反スパイ法…日本企業はリスクを直視せよ
治安 太郎
中国の習近平国家主席=(c)zixia/123RF.COM
7月1日に中国で改正反スパイ法が施行されてから1カ月半が経過した。従来では国家機密に触れるスパイ行為が摘発対象だったが、改正法では国家の安全や利益に関わる文書やデータ、資料、物品などにまで対象が拡大された。これまでのところ、スパイ行為の定義が大幅に拡大された同法によって日本人が拘束されたとの報道はない。
実際、中国の進出する企業の間では懸念の声がかなり広がっているように思う。これは筆者周辺の企業人たちの動きで、全企業のそれを反映しているとは一概には言えないが、「これから若い社員とその家族を上海へ赴任される予定だが、仮に拘束されれば我々はどう対応すればいいか分からない」、「徐々に人員を減らして事業をスマート化するべきかを検討している」などの声が広がっている。しかも、香港ビジネスからもこのような声が聞こえており、日本企業は香港の中国化を強く懸念している。
一方、産経新聞が7月に実施したアンケート調査(大手企業118社)によると、改正反スパイについて「大いに懸念している」が12.7%、「やや懸念している」は40.7%と過半数を超えた。この数字については様々な意見が想定されるが、筆者個人としては極めて少ない印象を受けている。言い換えれば、日本企業は対中ビジネスで政治リスクを十分に捉えていないと言えよう。
産経新聞の報道によると、これ以外は、「あまり懸念していない」が9.3%、無回答などで占められたという。
また、回答した企業の間では、約6割が「既に対応した」、「対応を検討している」としていたそうだが、多くの企業は駐在員や出張者に注意喚起したり、他社の状況をヒアリングしたりするに留まっていたという。駐在員の日常生活、出張社員の行動がスパイ行為として摘発されるリスクを前に、まさに各企業は手探りの状態だ。
中国ビジネスから脱皮を図るのは、日本企業にとって難題である。いくら日本企業の脱中国依存が進んだとしても、いざ日中関係が悪化した際には、日本企業の多くは撤退できないだろう。しかし、海外に進出する日本企業にとって最も重要なのは、モノや利益ではなく「社員の命と安全」でなければならない。
改正反スパイ法は、手続き上は、表面上は法であろう。しかし、その具体的な中身は政治で動く。その決定的証拠の1つが、これまでに拘束された人の国籍だ。
周知のように、反スパイ法が施行されて以降拘束された日本人は15人を超えているが、多くの外国人も拘束されている。たとえば、2019年1月には、2000年にオーストラリア国籍を取得し、スパイ小説の出版や中国政治に関する評論活動を行っていた男性がニューヨークから広東省広州の空港に到着後、中国当局にスパイ容疑で拘束された。
また今年2月には米メディアで、スパイ容疑などで出国できず拘束中の米国人が200人に上っていることが報じられた。さらに、中国遼寧省丹東市の地方裁判所は一昨年8月、国家秘密を偵察した罪に問われたカナダ人男性に対して懲役11年の実刑判決を言い渡した。男性は2018年12月に拘束された。
これら以外にも拘束ケースは多々ある。しかし、その者たちの国籍は、日本や米国、カナダやオーストラリア、英国や台湾などで、要は近年国際政治が流動的に変化する中、中国と政治的関係が良くない、対立している国家の国民が対象となっているのだ。反対に、反スパイ法でロシア人が逮捕された、ベラルーシ人が逮捕された、アフリカ諸国の国民が逮捕されたというケースは明らかになっておらず、事実上皆無なのである。中国と関係が良好な国々の国民は事実上、反スパイ法の摘発対象になっていない。
これを踏まえれば、改正反スパイも結局は政治力学によって運用されることは明白であり、日本企業はそれをもっと真剣に捉える必要があるのだ。
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