🦟12」─1─イギリス中枢に入り込む中国スパイ。~No.29 

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 中国共産党が日本に求めている友好・善隣とは、上下関係であって対等関係ではない。
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 2023年9月12日 MicrosoftStartニュース FNNプライムオンライン「イギリス中枢に入り込む中国スパイ…スパイ天国日本は気が付いていないだけ?
 イギリス中枢に入り込む中国スパイ…スパイ天国日本は気が付いていないだけ?
 © FNNプライムオンライン
 イギリスで、今年3月に中国のためにスパイ活動をした疑いで英議会の調査担当者ら2人の男が逮捕された。
 タイムズ紙によれば、2人の男のうち1人は20代のイギリス人・クリス・キャッシュ(28歳)である。
 イギリス中枢に入り込む中国のスパイ
 男は、議会の調査担当職員で、中国問題を調査し、対中政策に関与する与党・保守党議員への情報提供や提言を行う安全保障相が設立した政策グループ「China Research Group」のディレクターであった。議会通行証を与えられていたが、機密情報に触れられる権限は与えられていなかった。
 「China Research Group」のHPによれば、同グループは、中国の台頭に対して英国がどのように対応すべきかについての議論と新たな考え方を促進するために、英国の保守党議員のグループによって設立されたという。
 男は、カーンズ下院外交委員長に研究員として雇われ、対中強硬派のトゥゲンハート安全保障担当閣外相といった機密情報を扱う政治家との関係があった。
 この男は過去に中国・杭州のインターナショナルスクールで2年間、教鞭をとっていた。
 男が中国に滞在していた際、中国側から工作員として勧誘された可能性があるとみられているが、LinkedInなどのビジネス系SNSでの接触ではなく、中国滞在中などの海外で知りあった人物や議員活動中に出会った人物との接触により勧誘された可能性がある。
 この事件は、中国のスパイ(エージェント)が議会の調査担当職員でありながら、政府要人と近い位置にいたことから、議員への誤った情報の提供や中国に有利な政策の進言、イギリスの対中政策といった機密情報が中国に漏洩されるといった重大な危険性があった。
 イギリスでは、過去にも中国系弁護士のクリスティン・リー氏が中国共産党に代わって英国国会議員に不当な影響を与えようとしているとして、MI5が、国会議員に対し異例の「中国による干渉」の警告を発した。MI5は、リー氏が国会議員の活動を支援するための資金の寄付を含む政治的干渉活動を行っていたと主張していた。
 中国の政治介入を試みるスパイ活動は、イギリスをはじめ、アメリカ、オーストラリアやカナダ、台湾で顕著に確認されている。
 かねてから中国の諜報活動に関しては、イギリスでも脅威と認識されていた。7月にはイギリス下院の情報安全保障委員会が中国の安全保障上の脅威に対するイギリス政府の対応を「重大な失敗」と非難し、改善を求めていた。
 日本で同様の事象は起こり得るのか
 実は、中国のスパイが日本の政治中枢に入り込んだ事件はあまり発生していない。
 というよりは、「認知できていない・立件に至らない」といった表現が適切だと推察される。
 有名な事件としては、2012年、中国人民解放軍の情報機関「中国人民解放軍総参謀部第二部」出身である中華人民共和国駐日大使館の一等書記官(当時45歳)が虚偽の身分で銀行口座を開設したり、ウィーン条約で禁ずる商業活動をしていた疑いや公正証書原本不実記載の疑いで警視庁に出頭要請されたが、外交官特権により帰国した事件(李春光事件)がある。
 この事件では、当該一等書記官が松下政経塾に在籍していたこともあるほか、鹿野農水大臣(当時)や筒井農水副大臣(当時)らが進めていた日本の農産物の対中輸出事業に深く関与していた疑惑も浮上。当時の報道によれば、元書記官は鹿野氏らとしばしば接触し、副大臣室にも出入りしていたとほか、防衛省関係者とも接触していたといい、現代の日本における中国スパイ事件では最も政治に近い場所で起きた事件だろう。
 立件が難しい自国民によるスパイ活動
 イギリスの案件は、中国人によるスパイ活動ではなく、イギリス人によるものだ。中国のスパイ活動に加担する自国民(エージェント)の場合、中国のスパイ=工作機関員自体を見抜くのではなく、エージェントと中国工作機関員との接触を把握しなければならず、捜査機関でさえ見抜くのは至難の業だ。
 そして、日本で公になっていない“疑惑”の事案(立件できていないので事件ではない)が多くあるのが実情だ。現に、防衛省関係者によれば、現在も中国による影響力工作が政治に近い箇所に及んでいるのを確認していると言い、その認識は筆者も同様である。
 政治家の周辺で活動する“エージェントと疑わしい人物”は存在する。
 米国のシンクタンクCSISや豪州戦略政策研究所は、中国について、仲介者を通じた政府関係者への接触や資金提供などを通じた政治への影響力行使といった工作に力を入れていると指摘する。
 日本で同様の事案が想定されない理由がない。
 日本に求められる“意識”
 本事件では、男らは起訴されておらず、既に保釈されており、スパイ捜査の難しさを物語っている。
 タイムズ紙が指摘している通り、スパイ捜査では、証拠の収集が極めて困難である上に、実務的に秘匿捜査で収集した情報をどう証拠化するかという問題もある。
 そのスパイ捜査において、法整備の面が論点になるが、イギリスは本事件で公務秘密法を適用しており、日本にも同法に類似した特定秘密保護法がある。両法とも行為の定義や量刑に相違はあるが、秘密情報の漏洩・取得に対し罰則を設けており、一概にスパイ防止法が日本にないから、という話だけではないのだ。
 当然、日本ではセキュリティ・クリアランス制度や重い罰則を伴うスパイを取り締まる法の整備は必須であるが、いくら法整備を行ったところで、機密情報に触れうる者の“意識”が変わらなければ、いたちごっこになるだけだ。
 イギリスで起きた事件は、日本にとって対岸の火事ではない。
 【執筆:稲村悠・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事
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