🛳40」─1─台湾有事によって専制主義の時代が戻り民主主義勢力は撤退戦となる。~No.243 

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 2022年10月30日 YAHOO!JAPANニュース クーリエ・ジャポン歴史学者ピーター・フランコパン「専制主義の時代が戻り、今の民主主義勢力は撤退戦のさなかにある」
 2022年10月の中国共産党大会で国家主席に再選された習近平は、台湾侵攻の可能性を否定しない。世界を戦争に巻き込みかねない今の中国をどう捉えるべきか──、『シルクロード全史』などの著書で知られ、中国の歴史にも詳しい、英オックスフォード大学の歴史学教授のピーター・フランコパンに仏誌が聞いた。
 【画像で見る】長期政権を築いた習近平
 20世紀初頭のような現在の世界情勢
 歴史学者のピーター・フランコパンは、2018年の著書『新しいシルクロード』(未邦訳)で中国の「一帯一路」構想を分析した。そこで描かれたのは、ユーラシア大陸に広がる太古のネットワークを復興しようという習近平の世界的野望だった。当時の中国はまだ平和的で建設的だったが、今では「鉄の壁」の向こう側にいる内向きな国になっている。中国はロシアと強固なパートナーシップを築いた。
 世界では専制主義国家と民主主義国家という異なる国家モデルの対立が始まっており、歴史が一巡したようだ。今見られるのは、「大陸国家同盟(ロシア、中国、イラン、トルコ)」と「海洋国家同盟(アメリカ、イギリス、日本、台湾)」の対立という、20世紀初頭のような動きだ。
 歴史の理解が重要な今、世界史を専門とするフランコパンに第20回中国共産党大会について話を聞いた。
 長期化する習近平体制は「安定」
──3期目の習近平政権が始まり、この体制が2030年代まで続く可能性も出てきました。このような長期の政権運営は、中国にとって良いことなのでしょうか。
 重要なのは、それが中国共産党にとって良いのかどうかということです。党にとっては、習近平による権力保持は安定を維持できるという意味で好都合でした。後継者争いという権力闘争を繰り広げずにすんだわけですからね。
 習近平を権力に飢えた支配者と嘲笑するよりも、なぜ継続性や安定性が今それほど大事なのかを考えるほうが有益でしょう。アメリカやロシアの状況を考えると、世界経済や国際情勢が安定しているとは決して言えません。不安定要素はそれ以外にもあります。
──2022年2月、習近平プーチンは、共同声明で中ロ間の「限界のない友情」を表明しました。まるで世界が第一次世界大戦の「中央同盟国」の時代に戻ったように感じます。
 専制主義国家の時代が戻ってきたのです。これは単なる印象論ではなく、その傾向は数字でも示されています。この10年近く、専制主義国家で暮らす人口が、絶対数でも、相対的な割合でも年々増えています。民主主義はまだ失われていないものの、撤退戦を強いられている状況です。
 高所得国の状況も、まるで中世のようです。一握りの財界の有力者やエリートに巨額の富と政治権力が集まり、そういう一個人が宇宙開発事業まで進めています。デジタル技術を使った国民の監視というのも、かつての封建君主による支配とそっくりです。
 中国が台湾に軍事侵攻する可能性はある
──習近平プーチンに倣って、台湾侵攻に踏み切る可能性はありますか。
 その可能性は否定できません。習近平は、第20回共産党大会初日の10月16日の演説で「武力行使も選択肢の一つだ」と明言しています。とはいえ、二人は同盟を結んでいるわけではありません。両者は相互に依存しているわけでも、利害関係が厳密に合致しているわけでもないのです。この二人の指導者の連携は、西側に対抗して別の世界観を打ち出すという象徴的なもので、打算的な結婚のようです。特に中国側はそのような意識でいます。
 これから何が起こるかを予測するのは難しいです。しかし、私は、ロシアによるウクライナ侵攻によって、中国が台湾に武力行使するリスクは減ったのではないかと見ています。なぜなら、今回ロシア側には、兵員の訓練、軍事物資の供給、指揮系統の整備など、多数の不足点があったと露呈しているからです。
 戦略家は詳細にこの惨状を分析し、中国は貴重な教訓を数多く得ているでしょう。それらが台湾などの構想に活かされていくのは間違いありません。
──中国は平和的な国だと言われてきましたが、そうではないのでしょうか。
 歴代王朝のなかでも強大だった宋や唐時代の領土は、今の中国よりも狭いです。中国の領土拡大があったのはここ数百年のことで、1644年から1911年までの清朝時代に始まりました。そのとき植民地化されたのは、主に今の中国の西側の地域です。ただ、中国文明はヨーロッパとは異なり、遠くに海外植民地を建設したり、その一環で奴隷制度や強制労働を導入したりしませんでした。
 その事実を、中国はアフリカ政策などで上手に利用しています。アフリカの国々を訪れた中国の政治家や外交官がよく語るのは、ヨーロッパ人が人々を大西洋の向こうに連れ去ってプランテーションで働かせ、「主人」がいかに富を得たということです。一方、中国はそのようなことは少なくとも国境の外側では一切しなかったと伝えるのです。
 台湾支配の方法はいくつもある
──台湾への侵攻は、第二次世界大戦の水陸両用作戦に匹敵する大胆な作戦に思えます。中国史上でそのような軍事作戦が遂行されたことはあるのですか。
 清朝は17世紀に台湾を征服しています。『戦争論』を著したカール・フォン・クラウゼヴィッツが言うように、「戦争とは、ほかの手段を使って継続する政治」です。すべての戦争はリスクや危険を伴い、何が起きるかを事前に予測することはできません。それはロシアのウクライナ侵攻でも明らかです。
 軍事行動というのは兵站の準備だけでも複雑です。さらに島を攻めるとなれば、その困難さは非常に大きくなります。台湾は攻略難度が高い標的です。まずはその地理的条件ゆえに、海峡を越えて上陸用舟艇を送り、兵士に崖を攻めさせなければいけません。これは非常にリスクが高く、さらに台湾の軍隊は、そのような攻撃に対抗する準備を何十年も重ねています。加えて米軍の強大なプレゼンスもあります。
 つまり、台湾を軍事的に攻め落とすのは大胆な作戦です。それよりもっと安く、もっと効果的に習近平や中国政府が言う「統一」を進められる手段もあります。でも、それには時間がかかるのです。したがって、私たちがいま分析すべきは、期限を策定する権限を持つのは誰か、期限はいつかという点です。それに関する中国共産党の方針は非常に明確です。
──中国共産党は1949年も1958年も台湾侵攻に失敗しています。なぜいまならできると考えているのでしょうか。
 中国の影響によって世界が変わったからです。数十年前の中国は内戦と第二次世界大戦で疲弊した農業国で、侵攻成功の見込みはゼロでした。でも、今の中国共産党は、巨額の貿易黒字で貯めたリソースを軍事予算に大きく割いています。中国人民解放軍の海軍の船舶数はいまや米軍を上回ります。潜水艦や空母の数にしても同様です。極超音速ミサイルなどの新しい装備や技術に加え、中国はデータやデジタル資源、戦略資源にも重点的に投資をしています。一世紀前とは異なり、いまの中国は手ごわい相手になっているのです。
──中国共産党は、台湾は2000年前から中国の一部だったと主張しています。中国は台湾に対する「歴史的権利」を持っているのでしょうか。
 歴史的権利というこの問題は地雷原のように多くの危険をはらんでいます。フランスは東南アジアの国々に対して歴史的権利を持つのでしょうか。あるいは、スウェーデンピョートル大帝の前までロシアのかなりの部分を支配していましたが、ロシアに対する歴史的権利を持つのでしょうか。
 いまの国際法では、異なる運命をたどった土地、領土、モノは取り返せません。ただ、台湾がこの数十年、法的には宙ぶらりんの状態にあったのは事実です。独立はしていないけれども、アメリカをはじめとした国々が支えるという、自然でない形で存在してきたのです。この状態が未来まで続く可能性もあります。考えるべきは「権利」ではなく、台湾の住民が何を望み、何を必要としているかです。台湾の人々に聞いてみるべきです。
 プーチンは、同様にドネツク、ルハンシク、クリミアで住民たちの意見を聞くこともできました。しかし、プーチン武力行使を選びました。その結果、西側諸国が一つに団結し、ロシアは弱体化したのです。ウクライナ侵攻から学べることは多々ありますが、この教訓こそ、いま中国政府がいちばん考えるべき点ではないかと、私は思っています。
 Jérémy André」
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