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現代の日本人は、昔の日本人と比べて現実・事実が見えず、民族的な歴史力・文化力・伝統力・宗教力がなく、平和論はおろか戦争論、軍事論、地政学が理解できない。
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2022年6月30日 MicrosoftNews JBpress「米国にも日本にもいる「中国海洋戦力は張子の虎」論者の大きな間違い
軍事パレードに登場した中国軍のDF-26弾道ミサイル© JBpress 提供 軍事パレードに登場した中国軍のDF-26弾道ミサイル
(北村 淳:軍事社会学者)
今から数年前までは、米海軍の対中情報分析担当者やシンクタンクの中国軍事専門家などの対中警戒派以外の米軍関係者や軍事専門家などの主流の人々は、中国海洋戦力が加速度的に強化されつつある状況を感覚的には認識しつつも、中国海洋戦力(中国海軍、中国空軍、中国ロケット軍)が名実ともに米海軍を脅かす存在になることを認めようとはしなかった。
いくら中国海軍を中心とする中国海洋戦力が飛躍的に強化されているといっても、アメリカなどの先進軍事技術を模倣したり盗用したりして生み出した中国海洋戦力は張子の虎にすぎず、百戦錬磨の米海軍にとっては恐れるに足りない、と考えていたのである。
米海軍首脳から多くの一般国民までが抱いていた米海軍戦力に対しての強固な自信は、米海軍だけがスーパー空母(戦闘攻撃機をはじめとする70機以上の各種艦載機を搭載する大型原子力空母)を保有しており、強力無比な空母艦隊を世界中に派遣することができるからであった。
実際に、いまだに次のように考えている米軍関係者や政治家なども少なくない。
米海軍は、11隻のスーパー空母と9隻の強襲揚陸艦(海兵隊先鋒部隊を、戦闘攻撃機やオスプレイ、ヘリコプター、戦車や装甲車などとともに目的地沖合に急行させる大型軍艦)を運用し、世界中に強力な戦闘部隊を遠征させられる。それに比べれば中国海軍など今なお恐れるに足りない。中国海軍はようやく3隻目の空母を完成させたに過ぎす、その中国空母が積載できる航空機は米海軍空母の半数に過ぎないのだ──。
もはや意味をなさない空母戦力の比較
だが、台湾を巡る米中間の対立が飛躍的に高まり中国海洋戦力との対決が現実味を増してきている昨今、米海軍などの対中警戒派の中からは、上記のような米海軍優越姿勢に対して、次の如き強い警告が発せられている。
「台湾や南シナ海でのトラブルが引き金となって米海軍が中国軍と正面衝突することになった場合、中国側は対艦弾道ミサイルをはじめとする様々な接近阻止戦力を投入してくる。空母艦隊対空母艦隊の決戦などはアマチュアの戦争シミュレーションゲームの世界だけの話であって、現実には起こり得ない。したがって空母の大きさや保有数などを比較して安心しているようでは、中国との戦いは戦う前から負けているようなものである」
たしかに空母戦力の大小比較によって米中海洋戦力を単純に比べてしまうようなメンタリティーは、今から80年前のミッドウェイ海戦において、日本海軍空母艦隊(出動した空母4隻と艦載機248機が全滅)を米海軍空母艦隊(出動した空母3隻、艦載機233機、陸上基地機127機のうち空母1隻と航空機150機を失う)が全滅させて以降、四半世紀にわたって米海軍や一般の米国民が持ち続けてきた感覚である。
しかし中国軍首脳が「我々は日本と違う、見くびるな」と米軍に警告しているように、中国軍は対艦弾道ミサイルをはじめとする多種多様な接近阻止戦力(米側の艦艇や航空機が中国沿海域に接近するのを撃破する各種ミサイルや艦艇・航空機それに機雷)の構築に努め、いまだに強化し続けている。
その状況を踏まえ、上記の対中警戒派はこのように警告する。
「中国の対艦弾道ミサイルを、単なる見せかけの虚仮威し(こけおどし)に過ぎない、と見くびっている人々が少なくないが、これまで米軍情報筋やシンクタンクによる中国戦力の分析予測は、常に大幅な上方修正をなさねばならなかった。したがって、対艦弾道ミサイルに関しても、米軍や西側諸軍が開発できていないからといって中国軍が開発したというのはブラフに過ぎないと勝手に思い込むのは大いなる誤りである。沖縄沖で空母『ロナルド・レーガン』が中国ロケット軍対艦弾道ミサイルによって撃沈され、空母とともに6000名の将兵と70機以上の航空機を失ってからでは手遅れなのだ」
命中精度が高い中国の弾道ミサイル
ちなみに中国ロケット軍が実戦配備中の対艦弾道ミサイルは、東風21丙型(以下「DF-21D」)と東風26型中距離弾道ミサイルの対艦攻撃バージョン「DF-26B」である。
DF-21Dは、中国軍が世界に先駆けて鳴り物入りで開発を成功させた対艦弾道ミサイルだ。攻撃射程距離は500~2150kmでCEPは20mと言われている(「CEP(半数必中界)」とは発射したミサイルの半数が命中する目標の中心からのズレを表す。弾道ミサイルでのCEP20mというのは極めて命中精度が高いことを意味している)。
© JBpress 提供 軍事パレードに登場したDF-21D対艦弾道ミサイル
一方のDF-26Bの最大射程距離は4000kmであり、数値的には、中国からグアム島のさらに東方洋上の米空母を攻撃することが可能である。ただし、中国軍にとってそのような遠距離で米艦隊を撃破する必要性は乏しい。現実的には、第一列島線周辺海域に接近した米空母や強襲揚陸艦を、米側に探知されにくい中国内陸深部から発射して攻撃するものと考えられる。実際に昨年(2021年)実施された南シナ海上の目標に向けての実射テストでは、中国内陸部の青海省から発射されている。
中国海洋戦力を見くびる姿勢は慎むべき
アメリカと同じく日本でも、中国海洋戦力を張子の虎とみなす論調が見受けられる。しかしながら、上記の対中警戒派の警告のように、中国海洋戦力を見くびる姿勢は慎まなければならない。
まして日本はアメリカと違って、中国海洋戦力と正面切って対決する戦力を持っているわけではない。それどころか、アメリカの軍事力に頼り切っているにもかかわらず、アメリカの“虎の威”を借りてあたかもアメリカの片腕のように自己錯覚している。そんな日本が中国の空母や、対艦弾道ミサイルを「虚仮威しに過ぎない」などと嘲笑っても、国際社会の嘲笑を買うだけだ。」
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