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2023年1月18日6:03 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本近海で年末年始に起きていた恐るべき事態と中国がアメリカに仕掛ける「第三次世界大戦」のプレッシャー
昨年の暮れ、わが国及び台湾周辺において、中国とロシアの海軍や空軍の艦艇及び航空機が共同演習を行うなどの挑発的な活動を実施した。また、北朝鮮もこれに呼応するように弾道ミサイルなどを発射した。令和5年の荒波を予感させるようなこれら軍事行動にはどのような意味があるのか。それぞれの活動を振り返りながら考えてみたいと思う。
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中国海軍空母打撃群の演習
Photo by Keith Tsuji/Getty Images
また、今回この「海上連合2022」が今までのような春や秋ではなく、気象海象の厳しい12月に行われたのにも意味があると思われる。
というのも、2018年以降、例年この時期に北海艦隊のクズネツォフ級空母「遼寧(りょうねい):CV-16/65,000トン級)」を始めとする空母打撃群(グループ)が、太平洋へ進出して演習を実施していることから、今回この同時期に、「海上連合2022」を重ね、同演習は東シナ海で、空母グループは太平洋で演習することによって、台湾を囲んで東シナ海から太平洋へかけての軍事的プレゼンスを強調する狙いがあったものと考えられるからである。
この空母グループの最近の活動については、2022年5月19日の拙稿『中国の「挑発行動」が止まらない…空母が実戦的“演習フェーズ”に突入した意味』で詳述しているので、こちらをご参照いただきたい。
この拙稿でも述べているが、このグループの活動は年々その訓練内容が深化してきており、昨年初めてこのグループに参加した中国最新鋭のレンハイ級ミサイル巡洋艦が、今回は2隻「鞍山(あんざん)CG-103及び無錫(むしゃく)CG-104/13,000トン級」と、これにミサイル駆逐艦「ルーヤンIII:DDG-120/7,000トン級」、ミサイルフリゲート「ジャンカイII:FFG-542/4,000トン級」、「フユ級高速戦闘支援艦:AOE-901/48,000トン級」の3隻が随伴し、これら計6隻の陣容で今回のグループが構成されていた。
一見、昨年5月は8隻で構成されていたグループが今回は6隻と規模が小さくなったように感じられるが、これは今回このグループとは別に、北海艦隊所属のレンハイ級ミサイル巡洋艦「拉薩(らさ)CG-102/13,000トン級」、ミサイル駆逐艦「ルーヤンIII:DDG-124/7,000トン級」、フチ級補給艦「AO-889/23,000トン級」計3隻の艦艇群が別動隊として構成されていたことによると思われる。
この3隻の艦艇群は、空母グループに先んじて12月14日に大隅海峡を(空母グループは12月16日に沖縄・宮古島間を)通峡して太平洋へ進出しており、過去の訓練状況などから、空母グループに対抗する仮想敵部隊としての任務を付与されていたものと推定される。同時に、この艦艇群はわが国に対する挑発行動も兼ねていたと見られ、太平洋進出時はわが国により近い大隅海峡を通峡したほか、本正月の3日未明には、2016年以来7年ぶりに与那国島と西表島間のわが国の接続水域を航行したあと、尖閣諸島の魚釣島(沖縄県)西方約70kmの海域を北上(空母グループは元日に沖縄・宮古島間を通峡)し、帰航した。
航空機の活動
統合幕僚監部 報道発表資料(11/30)より
以上のような、中露による艦艇の活動に呼応する形で航空機も活発にわが国周辺を活動した。
昨年12月の「海上連合2022」に先立ち、11月30日には中国戦略爆撃機(H-6)2機とロシア戦略爆撃機(Tu-95)2機による、中露共同パトロールと称される示威行動が行われた。この爆撃機の飛行に際し、対馬海峡付近と沖縄・宮古島間周辺の空域で中国の最新鋭戦闘機(推定J-16)がエスコート(援護飛行)を実施した。
このようなわが国領空付近の空域で中国の戦闘機がエスコートすることは、わが国のスクランブル(戦闘)機と戦闘機同士が近接する可能性があり、偶発的な衝突事案に発展しかねない極めて危険な行為である。わが国は、このような行為に対して政府は強く抗議するべきであろう。
また、本正月の元日と2日には、空母グループの沖縄・宮古島間の北上に合わせて中国軍の偵察型無人機(WZ-7)が沖縄・宮古島間から宮古島南方の海域で午前から午後にわたり偵察活動を実施した。この機種の無人機がわが国周辺で確認されたのは初めてであった。
中国無人機の活動の危険性やその詳細については、2022年9月5日の拙稿『【緊急】沖縄周辺で活発化する中国軍事ドローンの飛行高度と運用が危険すぎる…民間機と衝突事故の可能性も』を参照していただきたい。
北朝鮮もこれら中露の軍事活動に呼応か
前述のような中露の軍事活動とは別に、北朝鮮は昨年12月23日から本正月の元日未明にかけて、計6発(23日×2,31~1日×4)の短距離弾道ミサイルを発射した。中露海軍による「海上連合2022」や中国空母グループの演習などの軍事活動と時機を同じくしてこのようなミサイル発射が行われたのは、とても偶然とは思えない。北朝鮮は中露の軍事活動に敏感に対応しているものと見るべきではないだろうか。
2021年11月4日の拙稿『中国&北朝鮮合同「台湾侵攻」へのカウントダウン…米高官が示唆した「6年」の現実味』で述べたように、2021年10月21日には北朝鮮・朴明浩(パク・ミョンホ)外務次官が、「台湾の情勢は、朝鮮半島の情勢と決して無関係ではない」、「我々は、台湾問題に対する米国の覇権主義的行動を、朝鮮半島情勢と絡めてこれを注視する」との談話を発表し、米国が主導する多国籍軍の共同訓練を非難するとともに、台湾有事の際は座視しないことをほのめかしていた。
つまり、北朝鮮もロシアと同様に、中国の台湾への武力侵攻に際して米軍を始めとする多国籍軍がこれに関与した場合には、「わが国も側面から軍事的にこれを支援する」という意思を体現することによって、北朝鮮が米韓合同軍などから攻撃を受けた際には、「中国による軍事支援を期待している」ということを中国に明示したかったのだと考えられるのである。
われわれが今なすべきこと
結言すれば、中国の台湾侵攻が現実味を帯びてきた中で、ロシアや北朝鮮のスタンスが次第に明らかになってきたということである。つまり、「台湾侵攻に際して米軍や自衛隊を始めとする多国籍軍がこれに関与すれば、ロシアも北朝鮮も座視しない」という姿勢であり、これは第3次世界大戦へと繋がる可能性が大きいということである。
令和4年は、ロシアによるウクライナ侵攻で、欧州方面において第3次世界大戦が勃発することが危惧されていたが、令和5年以降はこれに加えて東アジアにおいてもその可能性が危惧される事態になってきた。今わが国では、敵基地攻撃能力保有の是非や防衛費増額の財源などがクローズアップされている状況にあるが、悠長な議論とは裏腹に危機は次第に差し迫ってきている。
本稿でも述べたように、中国は最近になって台湾などへの軍事挑発をエスカレートさせており、最早武力による台湾統一を隠そうともしていない。そして中国は、米軍を始めとする多国籍軍がこれに介入することを可能な限り阻止すべく、自国の軍事力を増強するだけでなく、ロシアなど周辺国も巻き込むことによって、第3次世界大戦へと拡大することを恐れて米軍などが介入をためらうことを狙っているものと見られる。
中国によるわが国尖閣諸島への度重なる挑発行為もその一環であろうと筆者は考えている。中国が台湾へ武力行使する際には、これに先んじて陽動目的で尖閣諸島を占拠するなどの軍事行動に出る可能性は大きい。
つまり、中国が台湾への武力統一を企図した場合には、極めて高い確率でわが国は巻き込まれることになるということだ。これに備え、われわれは何よりもまず、憲法も含め、有事を見越した法整備を急がなければならないのである。
鈴木 衛士(元航空自衛隊情報幹部)」
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