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2021年4月12日17:12 MicrosoftNews zakzak 産経新聞社「【ニュースの核心】北京五輪「共同ボイコット」なら習政権に大打撃! 欧米諸国はベルリン五輪に苦い教訓 日米会談で日本は「弱腰」脱却へ
菅義偉首相と、ジョー・バイデン米大統領が16日、米ワシントンで行う日米首脳会談を世界が注目している。バイデン氏が1月の就任後、初めて対面で会う外国首脳のうえ、米国務省が、中国当局によるウイグルでの「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に言及して、来年2月開幕の北京冬季五輪を、同盟・友好国とともに「共同ボイコット」する可能性に言及したからだ。中国共産党政権による人権弾圧や軍事的覇権拡大を黙認することは、ユダヤ人迫害を知っていながら、1936年のベルリン五輪を容認し、ナチス・ドイツの台頭を許した欧米諸国の苦い記憶を刺激するとの見方がある。警戒される中国の暴発。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が核心に迫った。
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米国務省のネッド・プライス報道官が6日の記者会見で、北京冬季五輪への参加問題について、「世界の同盟国や友好国と緊密に協議する」と語った。ボイコットの可能性をやんわりと示唆したかたちだ。
プライス氏は「中国の人権侵害や新疆ウイグル自治区でのジェノサイドを懸念している」と語った。そのうえで、「われわれは先日、英国、カナダ、欧州連合(EU)とともに、新疆の残虐行為に関わった責任者たちを制裁した。われわれは懸念事項のすべてで連携しており、当然、北京五輪も協議対象の1つになる」と言明した。
注目されるのは、五輪参加問題を明確に「人権弾圧」と関係付けた点である。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は7日の記者会見で、「共同でのボイコットを同盟国と議論したことはない」と述べたが、各国との協議次第で、米国だけでなくEUや英国、カナダ、さらにはオーストラリア、ニュージーランドなど、「自由と民主主義」を守る国々が一致して、北京五輪をボイコットする可能性が出てきた、とみていい。
欧米諸国には、かつてナチスによるユダヤ人迫害を知っていながら、1936年のベルリン五輪を容認し、アドルフ・ヒトラーの台頭を許してしまった苦い記憶がある。これを踏まえれば、私は「欧米が中国のジェノサイドを批判しながら、北京五輪に参加するのは難しい」とみる。
欧米の民主主義国が一致団結して北京五輪をボイコットする事態になれば、これまで各国が緩やかな中国包囲網を構築してきた状況とは、様相が一変する。これまで政治に関心が薄かった人々も「中国とは共存できない」と認識するようになる。
多くの人々が、「あの国はわれわれとは違う。自由と民主主義を脅かす脅威だ」と考えるだろう。北京五輪を国威発揚の機会にして、共産党独裁の正統化を狙っていた習近平総書記(国家主席)にとっては、大打撃である。
展開によっては、習政権が暴発する可能性もある。台湾あるいは沖縄県・尖閣諸島に対する武力侵攻だ。
■日米同盟根幹揺るがす日本の“後ろ向き”発言
習政権は北京五輪を控えていたからこそ、過度な武力行使を控えてきた。だが、その大イベントが決定的に傷つき、政権の正統性誇示どころか、逆に基盤が揺らぎかねないなら、いっそ台湾や尖閣諸島奪取に動いて、無理矢理にでも、政権の求心力を高めようとするかもしれない。
何もしないで北京五輪が潰れるのを放置すれば、国内の反習近平勢力を生き返らせ、勢いづかせてしまうからだ。
米国では最近、インド太平洋軍の新旧司令官たちが上院軍事委員会で「台湾侵攻は大方の予想より間近に迫っている」などと相次いで証言し、台湾侵攻に警鐘を鳴らす声が高まっていた。北京五輪ボイコットとなれば、米軍が最高警戒態勢に入るのも容易に予想できる。
さて、となると、注目されるのは日本だ。
日本は、米英加とEUが3月22日、ウイグル人弾圧で対中制裁に踏み切った際、仲間に加わらなかった。共同声明どころか、独自の批判声明も出さなかった。
加藤勝信官房長官が記者会見で記者に問われて、「自治区の人権状況を深く懸念している」と語っただけだ。加藤氏は、ご丁寧にも「人権を理由に制裁を実施する規定はない」とまで語っている。これでは「何もしない」と言ったのと同じである。
日本がこうした態度を取り続ければ、世界は自由と民主主義に対する日本の信念を疑うようになるだろう。そうなったら、日米同盟の根幹が揺らぐ。尖閣諸島防衛に米国の支援をあてにする姿勢とも矛盾してしまう。
来週予定される日米首脳会談は、菅首相率いる日本が中国への「弱腰」を脱却して、信頼を取り戻す機会にしなければならない。菅首相は米国とともに、中国の人権弾圧を強く非難すべきだ。そのうえで、台湾と尖閣諸島を守る強い決意を表明しなければならない。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。」
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