☭69』─1─プーチンの「引き分け」の解決提案は2島返還ではなく1島返還。~No.140 @   

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   ・   ・   【東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博】・  
 ロシアは、強奪した領土を平和的に返還する事はない。
 ロシアから旧領土を取り返すには、武力しかなかった。
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 戦前の日本、日本軍部であれば、ソ連崩壊時に、治安目的で北方領土に軍隊を派遣し奪い返した事であろう。
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 世界は軍事力で動いていた。
 現代の世界は、核兵器で動いている。
 核兵器を持たない国は、世界の一流国ではなく、国連の常任理事国にはなれない。
 大国の条件である国力とは、経済力と軍事力であり、真の軍事力は核兵器である。
 日本は、中途半端な半人前の大国である。
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 2018年10月18日 「プーチンが密かに狙う北方領土「1島返還」
 フォーサイト-新潮社ニュースマガジン 名越 健郎
 ソチで、ロシア専門家らが集まるバルダイ会議に出席したプーチン大統領=2018年10月18日 【AFP時事】
 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は10月18日、世界のロシア専門家を集めて毎年行うバルダイ会議で、北方領土問題について、前提条件なしに年内に日露平和条約を締結するとの9月の提案に対し、安倍晋三首相が直後の非公式協議で、「日本はそのようなアプローチは容認できない。先に領土問題を解決すべきだ」と述べて、提案を拒否したことを明らかにした。大統領は「それでもいいが、われわれは70年間足踏みをしている。出口が見えてこない」と述べ、日本の立場に不満を示した。
 島の質問「面白くない」
 大統領は発言前、日本人からの質問と知ると、「島の質問か。面白くないな」と軽くいなし、「日本がたえず提起する領土問題は、われわれは存在しないとみなしているが、にもかかわらず、対話を拒否していない」と述べ、領土問題は存在しないとの認識を示した。また、「われわれは安倍首相の要請を受け、元島民の墓参要件を緩和するなど、信頼に必要な条件を作り出してきた。しかし、日本はわれわれに制裁を科している。シリアやクリミアはどこにあるのか。なぜ制裁を科したのか。それが信頼を高めることになるのか。それでも、われわれは対話を継続する用意があり、接触を避けていない」とクリミア併合後に日本が欧米に追随して発動した制裁を改めて批判した。
 さらに、「われわれは中国と40年間領土問題を交渉し、先に善隣友好協力条約を締結した後、領土問題を決着した。友好関係を構築し、領土問題を解決する条件を整え、妥協的な解決策を見出した。安倍首相にも、先に平和条約を結んでも領土を棚上げするわけではないことを話した。中国との関係を前例にしようというのが私の提案だった」と述べ、現状では袋小路が続くとの認識を示した。
 安倍首相は「次の首脳会談が重要になる」とし、11、12月の国際会議で2度行う予定の日露首脳会談に意欲を見せるが、大統領の後ろ向き発言を見る限り、進展はありそうもない。
 米中貿易戦争で中国寄り
 プーチン大統領は米中貿易戦争に関する質問にも答え、「状況を悪化させるような事態に過敏に反応する必要はないが、国益を守ることは疑いなく重要だ。中国とロシアは常にそうしてきた」と述べ、中露の一体感を強調。「(米中の)貿易戦争も(ロシアへの)制裁も、米国の内政と結びついている。中間選挙や大統領選挙を前に、経済の方向性を維持する必要があるということだ。短・中期的には一定の効果があっても、長期的には否定的な影響が出てくる。世界経済に打撃を与え、それが米国を直撃するだろう」とし、米中貿易戦争はドナルド・トランプ政権の内政的要請との見方を示した。
 また、「中国人には忍耐力がある。中国の経済力なら、貿易戦争に耐えることができる。中国の経済規模は人口を勘案すれば米国をしのぐ勢いだ。経済政策を修正したとはいえ、成長率は依然高い。世界も世界経済もいずれ変化していく」などと語った。米中貿易戦争で中国に加担する発言であり、近年の中国傾斜外交を見せ付けた。本音では、ロシアは米中が貿易戦争でともに消耗することを望んでいるかもしれない。
 中露の蜜月は、9月にロシア極東一帯で行われた大型軍事演習「ボストーク2018」に中国軍約3,200人が参加したことにも見られた。中露の合同演習は陸海でこれまで計15回程度行われており、珍しくはないが、米国を仮想敵に仕立てた過去最大規模のロシア軍の演習に中国軍が参加したことはやはり意味がある。ロシアの安保政策を担うニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は、「ロシアは中国のような非欧米の新興大国と同盟を構築していく必要がある」と述べており、政権内で中露同盟論が議論されている模様だ。米国の対中、対露政策が、中露をますます接近させている。
 日本人の質問に「面白くない」と投げやりだった大統領は、中国人の質問には、「尊敬する友人であり仲間」と敬意を表しており、中国志向、日本離れを態度で示していた。
 2島返還なら「1本勝ち」
 「前提条件なしに年内に平和条約を」といった最近の大統領の対日発言を見ると、領土問題でのロシアの落としどころは歯舞諸島だけの「1島返還」ではないかと思えてくる。
 国後、択捉について大統領は「1956年の日ソ共同宣言にはひと言も書かれていない」などと帰属協議を一貫して拒否している。歯舞、色丹の引き渡しをうたった56年宣言についても、「2島の主権がどちらに属するかなど引き渡し条件は何も書かれていない」とし、無条件で返すわけではないと強調している。
 外交筋によれば、2015年11月のトルコでの首脳会談で、安倍首相が56年宣言が2島引き渡しを明記していることを指摘すると、プーチン大統領は「それでは日本の1本勝ちじゃないか」と反発したという。大統領の落としどころは柔道用語の「引き分け」であり、2島が交渉対象になる場合、「引き分け」とは歯舞、色丹の分割となる。
 色丹島にはロシア人が3,000人近く居住し、千島社会経済発展計画に沿ってインフラ整備も強化している。返還の場合、補償や手続きが面倒なのに対し、歯舞には国境警備隊が駐留するだけで、引き渡しは容易だ。先に平和条約を結ぶと、56年宣言に沿って2島引き渡し交渉が行われるが、2島が丸ごと戻ってくるわけではなさそうだ。歯舞だけなら4島全体の面積の2%にすぎず、日本の外交は完敗となってしまう。
 千載一遇のチャンスをふいに
 愛国主義大国主義の風潮に乗るロシアの日本専門家の大半はプーチン提案に好意的だが、唯一批判的だったのが、ボリス・エリツィン政権初期の外務次官として対日外交を担当したゲオルギー・クナーゼ氏だった。
 クナーゼ氏はラジオ局『モスクワのこだま』で、「前提条件なしの平和条約締結」提案について、「全く実現の見込みはない。一種のトロール網のようなものだ。プーチン自身も期待はしていないだろう。日本にとっては、ロシアが問題の解決を望んでいないことを新たに示しただけだ。安倍にとって、この提案を受け入れることは政治的自殺行為になる」とコメントした。
 同氏はウクライナ紙とのインタビューでは、「これほど侮辱的な提案は、ソ連のレオニード・ブレジネフ時代ですら日本に行わなかった」と酷評した。クナーゼ氏は在任中、早期平和条約締結というエリツィン路線に沿って、戦勝国の論理を否定する新たな対日外交を推進した。「法と正義」による領土問題解決を主張し、日本の立場も理解していただけに、過去の日露交渉の歩みを否定するようなプーチン提案は衝撃だったようだ。
 クナーゼ氏と言えば、ソ連崩壊直後の1992年3月、国後、択捉の帰属協議と歯舞、色丹の返還協議を同時並行で進め、合意したら平和条約を締結するとの秘密提案を日本側に打診したことがある。しかし、4島返還を当然視した日本政府・外務省はクナーゼ提案を時間稼ぎとみなして無視した。クナーゼ提案を基に本格交渉を行っていれば、当時の日露の圧倒的な国力格差から見て、歯舞、色丹は確実に日本領となり、国後、択捉は結局は分割され、「3島プラスアルファ」のような解決策が有力だっただろう。
 2001年のイルクーツク会談では、今度は森喜朗首相がクナーゼ提案と瓜二つの並行協議案をプーチン大統領に提案したが、ロシアが無視した。
 1992年のクナーゼ提案は、一握りの外務省幹部が拒否を決め、官邸にもほとんど報告していなかったと言われる。ソ連崩壊から27年も経て、北方領土問題がますます後退している責任は、92年に千載一遇の機会をみすみす座視した当時の外務省幹部にある。失敗を繰り返さないためにも、外務省は文書公開を通じて当時の責任の所在を明確にしておくべきだろう。(2018年10月)
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 【名越 健郎】1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。」
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 11月26日 LILI.COM 時事ドットコムニュース「「2島+α」否定せず=本格交渉控え説明回避−安倍首相
 安倍晋三首相は26日の衆院予算委員会で、北方領土問題をめぐり歯舞、色丹の2島返還と、残る2島での共同経済活動でロシアとの平和条約を結ぶ「2島+α(アルファ)」論を否定しなかった。明確な答弁を避ける場面も多く、プーチン大統領との交渉本格化を控えフリーハンドを確保する狙いとみられるが、首相がどのレベルで手を打とうとしているか臆測を広げそうだ。
 【特集】プーチンが密かに狙う北方領土「1島返還」
 「+α」論は事実上、国後、択捉2島の返還断念を意味する。国民民主党後藤祐一氏が「2島で終わりとするなら問題だ」と追及したのに対し、首相は正面から答えず、「交渉対象は4島の帰属の問題だと一貫して解釈している。双方に受け入れ可能な解決策に至りたい」と述べるにとどめた。
 野党側は納得せず、「4島はロシアに不法占拠されているのか」などとただした。しかし、首相は「わが国が主権を有する。この立場に変わりはない」などと繰り返した。
 首相は先のプーチン氏との会談で、歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意。「2島先行返還」にかじを切ったと受け止められると同時に、「+α」論を視野に入れているとの見方が出た。(2018/11/26-18:52)
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