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儒教には、華夷秩序における上下の友好関係があっても友誼における対等での友好関係は存在しない。
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2024年12月18日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「やたら「歴史で物事を語りがち」現代中国人の心理 『中国ぎらいのための中国史』安田峰俊氏に聞く
「中国は嫌いだが三国志など中国の歴史は好き」という日本人は多い。日本では「現代と歴史は別物だ」と分けて考える傾向があるが、現代中国は歴史と密接につながっている。そして、中国人自身も日常的に歴史を”活用”している。今の中国を理解するため中国史を実用的に読み解くのが、ルポライターの安田峰俊氏による『中国ぎらいのための中国史』だ。現代中国人の行動様式や心理について、安田氏に聞いた。
※記事の内容は東洋経済の解説動画「【歴史と密接につながる現代中国】無差別犯罪を指す言葉「献忠」の背景/三国志は日本のオタクのほうが詳しい説/中国の「外交姿勢」にも透ける歴史の影響」から抜粋したものです。動画については外部配信先では視聴できない場合があります。その場合は東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。
【動画を見る】歴史と密接につながる現代中国/無差別犯罪を指す言葉「献忠」の背景/三国志は日本のオタクのほうが詳しい説/中国の「外交姿勢」にも透ける歴史の影響
――中国では歴史を日常的に”活用”しているそうですね。
自分が今置かれた状況を例えたり、また誰かを批判したり皮肉ったりする際などに、中国人はよく歴史上の人物や事件を出してくる。
2024年9月に深圳で日本人学校の児童が通り魔に殺害された事件があったように、中国で無差別殺人事件が相次いでいる。その状況を指して、インターネット上では「献忠(けんちゅう)」という言葉が広がった。
語源は明朝末期の武将である張献忠。明朝滅亡時の群雄割拠の中で四川省を支配した人物だ。ただ、彼が四川省を統治したときには清朝が勢力を拡大しており、天下を取る機会はもはやなかった。自暴自棄になった張献忠は無差別に臣下や四川省の人々を虐殺した。
直近の中国で起きている無差別事件も社会的に失敗して再起を図れない人たちが自暴自棄になったのが要因と言われており、それが歴史上の人物である「献忠」に例えられた。
■歴史が「現実世界」にリンクしている
――張献忠は日本ではあまり知られていない人物ですが、中国では有名なのでしょうか。
大学受験のために勉強してきた人なら知っている程度には有名だ。日本でいうと、高校の「日本史B」の教科書などで太字になっているような人物だ。
現代中国政治にも歴史は自然と出てくる。かつて共産党の機関メディアで「李丞相はけしからん」という趣旨の文章が掲載された。ここでの李丞相は、秦の李斯と唐の李林甫を指しており、李という名字のけしからん宰相が歴史上にいたことを紹介して、当時の国務院総理(首相)だった故・李克強を暗に批判した。
李斯は、秦の始皇帝時代を描く漫画『キングダム』の影響もあり、日本でも馴染みが出てきたが、張献忠や李林甫はほとんど知られていないだろう。彼らは日本史の知名度で例えて言えば、橘諸兄や高師直くらいの存在だろうか。
仮に日本で何かを指して「伊達稙宗のようだ」と説明しても、「お前は何をいっているんだ」となる。ところが、中国では教養がないほうが悪いので、聞いて意味を理解できなかった側が気まずさを感じる。
また古典作品からの引用も頻繁に行われる。日本に当てはめると『土佐日記』や『南総里見八犬伝』の言葉が引用された話を聞いたとき、すぐにピンとこなければならない感覚だ。中国ではそれくらい歴史を自然な形で使っており、雑学ではなく現実生活にリンクしている。
――なぜそこまで歴史が身近なのでしょうか。
ナショナリズムと結びついている面がある。中国の歴史はやはり長い。大昔に文明があり現在も栄えている場所はそう多くないので、自分たちの歴史に一種の自信を持っている。
また、歴史が中国のソフトパワーになっているところもある。中国発のゲームやSF作品は多数出てきたが、アメリカのハリウッドほど多くの人が受け入れるソフトパワーが、国力のわりにまだない。そこで歴史を強調しこだわりを見せている。
中国発の人気ソーシャルゲームに「原神」がある。キャラクター名は日本に寄せているが、ゲーム中のせりふやメッセージには、日本語の文法は正確なのに日本から見て不自然なこともある。それは漢詩を引用したり、歴史的由来のある言葉を使っているからだ。ゲームにさえ古典や歴史的教養が自然と使われている。
■かつての「朝貢関係」の擬似的な復活
――歴史をソフトパワーとして使う中、歴史意識が中国政治や外交に影響を及ぼしている例もありそうです。
実際、中国共産党の総書記を皇帝に、首相を丞相になぞらえることはよくみられる。党の学校では名目上の校長が党総書記だが、その学校の生徒は「天子門生」と皇帝の弟子とよばれる。
それは言葉遊びにすぎないが、外交姿勢や国際関係の見方がその言葉や意識に規定されているところもある。アジア諸国を招いた国際イベントを報じる際には報道で「万邦来朝」という言葉が出てきた。天下のさまざまな国が朝廷にやってきたことを指す言葉だが、かつての朝貢関係を擬似的に復活させた中華帝国的なニュアンスがみえる。
中国は近年まで対等な国家関係を経験することがなかった。前近代は周辺国が皇帝の徳を慕ってやってきて名目上の臣下の儀礼をとり、皇帝は贈り物を持たせて帰らせるという朝貢関係だったが、1840年からのアヘン戦争で敗北して以降、欧米列強より下に扱われることを経験した。
明治維新後にアジアの一等国として他国と対等な関係を築こうとしてそうなった日本とは異なる経験をしてきたのだ。
いざ国力が強くなったら、朝貢関係とも低く扱われた時代とも異なる態度を取るようになった。現在は他国との関係について、文面に「対等」という言葉が入るようになったが、中国に「対等」の感覚や実感はない。だから国際社会でどう外交をすればいいのかが、中国の中でもはっきりしていないのかもしれない。
それが攻撃的な外交スタイルである「戦狼外交」や、西側に対する恫喝的な姿勢につながっている可能性はある。
■「直訳メッセージ」に翻弄されないために
――中国側が歴史的な言い回しや考えでやっていることを理解する必要がありそうです。
2024年5月に中国の呉江浩駐日大使が、台湾に関わり続ければ「(日本の)民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言した。日本政府が厳重抗議したほどのきつい言い回しだが、本人たちは中国のことわざを引用しただけで「やけどするぞ」くらいのつもりで言ったのだろう。
そもそも在外公館が発信するときは通常、現地のネイティブ人材にチェックさせて、表現に問題がないかを確認してから出す。ただ、少なくとも中国の日本国内の在外公館は日本人を雇用したがらずネイティブチェックもせずに、直訳しただけのメッセージを出して騒ぎになっている。
中国側がちゃんとしていないことを日本側が忖度して考えなければならないのはおかしい。ただ、欧米圏と違い日本は同じ漢字圏ということで中国の発信を読み解く能力は相対的に高い。歴史や古典が会話の中で当たり前に出てくることを考えれば、くみ取る力があって損はない。
知識がないと中国で円滑なコミュニケーションはできないので、現代中国を理解していくために、雑学としてだけでなく実用的に中国史を学び勉強することは必要だ。
劉 彦甫 :東洋経済 記者
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