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2019年4月25日号 週刊文春「文春図書館 私の読書日記
メキシコで『世界史の実験』を読む
鹿島茂
×月×日
急遽、メキシコシティに行くことになった。メキシコの生んだ偉大な建築家ルイス・バラガンの写真集を眺めているうちに、彼の設計した自宅やサン・クリストバル厩舎を何としても見たくなったからである。メキシコシティに向かう直行便で読んだのは大垣貴志郎『物語 メキシコの歴史 太陽の国の英傑たち』(中公新書 840円+税)。
一読した印象を述べると、メキシコ史の勘所(かんどころ)はアステカ=マヤ文明を征服したスペインがレコンキスタ時代のエンコミエンダ(委託統治)制を改良して使い回した点にある。『スペイン本国ではエンコミエンダ制を実施したことにより新たな封建領主になる者もあったので、植民地ではその弊害を避けるために所有権は譲渡され、征服者の功績に応じて征服した土地の一定数の先住民とその首長を集落ごに委託したと』。
この改良版エンコミエンダ制により土地所有から生まれる直系家族が成立しにくくなったことが大きい。エンコミエンダ制に代わって大土地所有のアシエンダ制が登場しても、民衆には土地所有の習慣がないために、家族形態は核家族に止まり、動産の平等分割から平等主義が生まれた。ナポレオン帝政によるスペイン帝政崩壊をきっかけにクリオージョ(メキシコ出自のスペイン人)のイダルゴ率い独立戦争が1810年に始まると、この平等主義的核家族形態の影響か戦いは血みどろの殺し合いとなる。1821年の独立以後も、メキシコの政治は、革命家が独裁者になり長期政権を敷くが最後には革命で殺されるか亡命するというパターンを繰り返す。レフォルマ戦争とナポレオン3世の介入戦争に勝ち抜いた国父ファレスとてこの弊を免れなかった。
『1867年以降も、彼の判断では国の情勢はまだ大統領の特別権限措置と権利保障停止の実行を必要としていた。ファレスは憲法を表向きには擁護しているようで実際には憲法なしで統治を続けていたのである』
メキシコという国のメンタリティを知るために格好の一冊である。
×月×日
メキシコシティは果たせるかな素晴らしい都であった。古層にアステカ文明の無意識が残り、その上にコンキスタドール以後の巨大建築が層を成すように立ち並んでいる。ディアス時代(1876~1911)には旧時代の建物群を切り裂いて、フランス第二帝政洋式の壮齢なレフォルマ大通りが開通する。ディアス独裁は1910年にサパタとビージャ(パンチョ・ビラ)が起こした革命で終止符を打たれ、共和政が誕生したが、このメキシコ共和国は革命を国是とするためか、その無意識的表象である革命が続行されている。すなわち、近年、アヴァンギャルドな現代建築のビル群は日本ではありえないほどシュールレアリズム的な様相を呈しているのだ。」
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北米大陸の先住民はインディアンであり、中南米大陸の先住民はインディオである。
南北アメリカ大陸で正真正銘のナショナリズムを主張できるのは、少数派(マイノリティ)のインディアンとインディオだけである。
インディアンやインディオの原始的祖先は、アイヌ人を通じて縄文人つまり日本民族日本人に繋がっている。
先住民が持っていたローカルな伝統、文化、言語、宗教、風習は、グローバルな宗教や哲学・思想・主義主張しして言語によって滅ぼされた。
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メキシコを含む南米諸国は、中世以降のヨーロッパや近代以降のアメリカ合衆国などからの介入による戦乱と搾取で苦しめられ、地元の麻薬カルテルや秘密武装集団で内戦が絶えない。
さらに、共産主義(マルクス主義)が浸透して殺戮が繰り返され貧困化の度をました。
先住民のインディオ達は、侵略者によって山奥に追いやられ極貧生活を強いられている。
全ての中南米諸国は、キリスト教国であり、西洋語であるスペイン語もしくはポルトガル語を国語とし、西洋文化を自国文化としている。
そこには民族主義は存在しないし、完全なる人種差別が支配する社会である。
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メキシコを含めた中南米大陸は、白人キリスト教徒商人によって日本人が奴隷として売られて行った暗黒大陸であった。
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