💣26」─1─プーチン・ロシアと日本軍部が陥った「サンクコストの呪縛」。~No.83No.84 

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 2025年8月14日 YAHOO!JAPANニュース Facebook「経済の常識 VS 政策の非常識
 100万人の戦死傷者を出しても侵略を止めないプーチンの愚行、戦時中の日本が陥った「サンクコストの呪縛」と同じか?
 原田 泰( 名古屋商科大学ビジネススクール教授)
 戦争はなぜ起きるのかと言えば、戦争で利益を得る人間がいるから起きると考えるのが一番単純で合理的だ。これに関連して、18世紀の末に、ドイツの哲学者イマニュエル・カントは、『永遠平和のために』で、民主主義(当時の言葉では共和主義)の国は戦争をしないと書いている。
 「戦争をすべきかどうかを決定するために国民の賛同が必要となる場合に、(戦争を)始めることにきわめて慎重になるのは、あまりに当然のことである。これに反して、共和的でない体制においては、戦争はまったく慎重さを必要としない世間事である。かれ(元首)は戦争によってかれの食卓や狩や離宮や宮中宴会などを失うことはまったくないし、そこで取るに足りない原因から戦争を一種の遊戯のように決定する」と書いている(本稿の引用文は分かりやすくしている)。
 要するに、自分が戦争で死ぬか戦争のために重税を課せられる立場にあるものは戦争をしたがらない。だから、市民が戦争に責任を負う政府ができれば戦争にならないはずだというものである(イマニュエル・カント『永遠平和のために』32-33頁、岩波文庫、1985年、原著1795年)。これは、戦争のコストを誰が負担するかによって戦争の可能性が変わるということである。
 日本はなぜ、太平洋戦争へと突き進んでしまったのか(近現代PL/アフロ)
 ただし、逆に言えば、戦争で死なないし、戦費もかからず、したがって重税も課せられず、かつ利益がありそうな戦争なら、民主主義の国も戦争をするということにもなる。西欧列強は、ナポレオン戦争から第1次世界大戦まで、戦争で死ぬ確率も高く、戦費も巨額になる、お互い同士での大規模な戦争をしなかったが、アジアやアフリカでは、植民地獲得戦争を度々行っていた。戦争で死ぬ可能性も低く、戦費もかからず、利益も大きいと考えていたからだろう。
 日本の戦争に利益はあったのか
 では、日本の戦争の場合はどうだったのか。小説家の永井荷風は、1941年9月6日の日記に、「今日わが国において革命[軍人が政府を乗っ取ったこと]の成功せしは定業なき暴漢と栄達の道なかりし不平軍人と、この二種の人間が羨望(せんぼう)妬(と)視(し)の極(きょく)旧政党と財閥、即ち明治大正の世の成功者を追い退(しりぞ)けこれに代わりて国家をわがものにせしなり。かつては家賃を踏み倒し飲酒空論に耽(ふけ)りいたる暴漢と、朋党相より利権獲得にて富をつくりし成金(なりきん)との争闘に、前者勝ちを占めしなり。……ここに喧嘩の側杖(そばづえ)を受けて迷惑するは良民のみなり。……手堅き商人はことごとく生計の道を失い威嚇(いかく)を業とする不良民愛国の志士となりて世に横行す。されど暴論暴行もある程度に止め置くこと必要なり。牛飲馬食もはなはだしきに過ぐれば遂には胃を破るべし。……志士軍人やからも今日までの成功をもって意外の僥倖(ぎょうこう)なりしと反省し、この辺りにて慎(つつし)むがその身のためなるべし。」(『断腸亭日乗』下、151-152頁、岩波書店、1987年)
 永井が利益と見たものは、戦争で得る利益より、国内での権力奪取による利益である。戦争は権力を得る手段と見ていたのだろう。戦争を続けていれば、軍人の力は増大する。
 戦争における利益とは
 西欧列強が植民地から得た利益は、金銀の強奪、金やダイヤモンドや石油など鉱山の採掘、胡椒・茶・コーヒーなど熱帯の生産物の獲得などである。日本の場合、朝鮮、台湾、満州から何を得たのだろうか。
 コメ、鉄鉱石、質の悪い石炭である(戦後、満州に石油が発見されたがが、戦前の日本には発見できなかった)。コメは国内に流れて米価を下げ、農民の苦境を増したとも言われている。現在の石破茂首相は、アメリカのコメを日本に流通させないのを絶対の国益と主張している。アヘンの密売で利益を得ていた日本人はいたが、日本全体にとって富と言えるような規模ではなかった。
 第2次世界大戦で日本がもっとも利益を得る方法は、すべての戦争当事国に武器弾薬食料日用品なんでもを売ることだった。1939年9月にドイツとソ連ポーランドに侵入して第2次世界大戦がはじまった。さらに41年6月にはドイツがソ連に侵入した(日本が参戦したのは41年12月)。ドイツは初戦では破竹の勢いだったから、ドイツに武器を売ったら戦争はすぐに終わってしまう。日本が利益を得る方法は、イギリスとソ連に武器を売ることである。日本は戦勝国側になれた。
 戦争している国に売るのは、日本が第1次世界大戦で行ったことである。これで開国維新以来、日露戦争での外国からの借金までをすべて返済し、日本経済は大いに潤った。しかし、これでは財閥、成金、労働者は利益を得ても、定業なき暴漢と不平軍人には利益がない。
 これまでの犠牲を手放してはいけない
 日本が利益と考えていたのは、「十万の英霊と二十億の国帑」(10万人の戦死者と10億円の戦費)によって得たものを死守しなければならないという主張だった。戦争をしていれば、少なくとも軍隊という組織の拡大とともに軍人は利益を得られる。
 中国での戦争の日本軍の戦死者はわずかだった。しかし、この戦争で国民には利益がない。日本の税金で満州国に100万人の軍隊を置いておけば、そこでの商売で利益が得られる日本人がいる。しかし、同じ税金を日本で使えばもっと利益があっただろう。
 当時の日本は、鉄道も道路も橋も何もかも不足していた。利益のない戦争を続ける理屈は、ここまで犠牲をもって得たものを手放すことはこれまでに戦死した英霊に申し訳ないというだけである。
 しかし、過去の損失はサンクコスト(埋没コスト)であって、将来の行動を考えるためにはコストとは言えない。なぜなら、満州国およびその他の植民地を得るためのコストは、今さら何をしても回収できないからだ。過去のコストを忘れて、これから華北に攻め入るコストと利益を比較して、攻め入るか止めるかを判断しなければならない。
 企業で言えば、これまで投資したから今さら止められないという判断は誤りで、これからの投資で得られるだろう利益とこれから投資するコストを比べるべきだということである。筆者は、サンクコストは、経済学でも経営学でももっとも役立つ概念だと思うのだが、日本の経済学ではあまり強調されていない。
 例えば、東大1、2年生に大人気とされている教科書『経済学を味わう』(市村英彦他、日本評論社、2020年)の索引には、サンクコストという言葉は出てこない(『マンキュー経済学 ミクロ編』東洋経済新報社、2019年、には出てくる)。その後も、日本は戦争を止めることができず、ついに1945年8月の敗戦を迎える。
 プーチンもはまっているサンクコストの呪縛
 日本はサンクコストに呪縛されていたのだが、ロシアのウクライナ侵略もサンクコストに呪縛されているのではないか。プーチンの言い分としては、多大な犠牲を払ってこれまでウクライナを侵略したのに(ロシアの戦死傷は100万人、うち戦死者と行方不明者は25万人、戦費は2000億ドル以上と言われている)、今さら撤退できないというのだろう。
 プーチン大統領もサンクコストの呪縛に陥っているのか(代表撮影/ロイター/アフロ)
 しかし問題は、これからも続けることが合理的かどうかである。戦争を続けるコストと止めることで得られる利益を比べるべきで、これまでの戦死傷者や戦費を考慮すべきではない。
 こう言ったら、これまでの人命や戦費を考えずに戦争の利益を考えて利益が得られるなら続けても良いのかという反論があるだろう。確かにそうだが、そもそもウクライナ侵攻に何の利益があったのだろうか。
 独裁者は何の利益がなくても国民を犠牲にできることこそを考えるべきなのかもしれない。しかし、独裁者にも限度があるはずだ。
 アフガン戦争で、ソ連軍は7.5万人の戦死傷者(うち戦死者は1.5万人)を生み出し、1989年にアフガンから撤退した。筆者は、共産主義はもっとも強固な独裁政権だと思っていたのだが、7.5万人の戦死傷者で戦争を止めた。
 プーチンは100万人の戦死傷者を出しても侵略を止めない。プーチンの独裁体制は、共産党独裁体制よりも13倍(100÷7.5)も強力ということになる。
 しかも、プーチン金正恩と親しくなっている。プーチンは、金正恩から、独裁者に国民の犠牲のリミットなどないと学んでいるのかもしれない。
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 HUPRO MAGAZINE「サンクコストとは?「もったいない精神」がもたらすより大きな損
 公開日:2019.10.08
 更新日:2021.07.13
 サンクコストとは?「もったいない精神」がもたらすより大きな損
 サンクコストとは、埋没費用とも言われ、ファイナンスや経済学で良く使われる用語です。事業やなどに投下した資金や労力のうち、どうやっても回収できないものを差します。本記事では知っておきたいサンクコストにまつわる知識をご紹介します。
 サンクコストとは?
 サンクコストの呪縛(じゅばく)の例
 世界的なサンクコストの代表例・超音速旅客機「コンコルド
 サンクコストバイアスを振り切ってキャリアアップ
 サンクコストとは?
 サンクコスト(sunk costs)は埋没費用と呼ばれ、事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や経済行為の撤退・縮小・中止をしても回収できない資金や労力のことです。
 下手にサンクコストを回収しようとすると、より損失が拡大する恐れがあるので、いわゆる「損切り」をすべきところなのですが、人間は投資したものが回収できないことに対して強いフラストレーションを覚えるため、もっと投資すれば業績が上向くかも?と合理的でない判断をしばしばしてしまうことがあります。
 サンクコストの呪縛(じゅばく)の例
 サンクコストはすでに回収できないものというのが決定していますが、自分が費やした費用や労力が大きいほど「元を取りたい」「損をしたくない」という持ちが働き、かえってマイナス効果を得てしまうことが日常的にしばしば起こります。それを「サンクコストの呪縛」「サンクコストの呪い」「サンクコストの誤謬」と表現します。そんな例をいくつかご紹介します。
 例
・好きな女性に振り向いてほしくて、ご飯をごちそうしたり、プレゼントをしたりといろいろ手を尽くしたが振り向いてもらえない。しかし今まで費やしたお金や時間や手間もあるので、諦められずアタックし続けてしまう。
 →サンクコスト:好きな女性に貢いだ物品や食事代
・野外フェスの当日が大雨。せっかくチケットを買ったのだからと参加したが、ずぶぬれになって風邪をひいてしまった。
 →サンクコスト:事前に購入していたチケット
・映画館に観に行った映画がつまらなかったが、チケット代を惜しんで最後まで見てしまい時間を無駄にしてしまった。
 →サンクコスト:購入したチケット
・食べ放題で途中でお腹がいっぱいになったが、払った分を食べていないと思い無理に食べてお腹を壊した。
 →サンクコスト:食べ放題に払った金額
 こうした例は枚挙にいとまがありません。サンクコストを回収したいと思ったばかりに、かえって損を生んでしまっているのです。
 これは日常生活だけではなく、事業においてもあてはまることで、投資金額を惜しんだ末に良くない結果を招いた例はいくつもありますが、そのうちもっとも有名なものをご紹介します。
 世界的なサンクコストの代表例・超音速旅客機「コンコルド
 イギリス・フランス政府共同の超音速旅客機「コンコルド」の開発は、世界的に有名なサンクコストの誤謬の代表例として良く知られています。
 コンコルドは、1976年から2003年まで運行していた超音速旅客機です。2時間59分でパリ・ニューヨーク間を飛行するという驚異的な速さ(通常の最速ジェット機でも5時間13分かかる)で飛行する夢の旅客機でした。
 しかし、そのマッハ2.2という超音速の速度が発するソニックブームと呼ばれる大音響の騒音や、非常に燃料費がかかる上に、乗客を100名ほどしか運べないため、大変に高額な航空券代がかかることなどがあり、開発の途中で明らかに採算が見合わないということがわかってきました。250機受注で採算ベースに乗るはずが16機しか製造されなかったのです。
 とはいえ、今まで投資した予算や時間、労力もさることながら、国家的プロジェクトの責任問題も絡み、プロジェクトは進行。その希少性やデザインの美しさからファンは多かったのですが、ファーストクラス料金のさらに20%増しという航空料金でも採算ベースに乗ることもないまま、最終的には数兆円もの赤字を出したということです。
 このことからサンクコストを振り切れず損失を増やしてしまうというサンクコスト効果のことを「コンコルド効果」ともいわれるようになりました。
 サンクコストバイアスを振り切ってキャリアアップ
 サンクコストをあきらめきれずに、損な状況にずっとい続けてしまう心理的傾向のことを「サンクコストバイアス」といいますが、これって何かに似ていませんか?
 そう、自分に取っては、もう得るものもない環境や、むしろこのままいたら今後のキャリアが望めないような職場でも、
 「今まで勤めてきたし……」
 「次の異動で希望部署に行けるかもしれない(低い確率)し……」
 とそのまましがみついてしまうような心理状況です。
 職場は、一日のうちに大部分を過ごす、人生にとって大事な場所です。
 仮に、もし今、新卒カードを持っていたとしたら、この会社に入社したいと思うでしょうか?もしそう思えるのであれば、現在の場所で自分を伸ばすことを考えましょう。
 もしそうではなく、やり続ければいつかは報われると思って、あまりキャリアアップの望めない会社にダラダラと居続けてしまうのは大変にもったいないことです。
 すぐに転職というのは極端としても、これからのキャリアを見据えて考えようと思った時に、将来に役立つ資格の勉強などから始めてみてはいかがでしょうか?
 そのまま、何となく今のポジションでいても、これからの保証はありません。
「これからの人生の貴重な時間をこの仕事に費やしていていいのか?」と考え始めた時が、ステップアップの第一歩です。
 今までの経緯にとらわれず、自分をより良く活かせるポジションや会社を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
 HUPRO 編集部
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