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2024年2月25日 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「世界屈指の知識人エマニュエル・トッドによる主張 現代は「第二の植民地時代」である。
エマニュエル・トッド氏
家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。彼は、今こそ、終わりが見えないウクライナ戦争の現実を直視すべきだと言います。そのうえで、トッドがたどり着いた結論とは? 現代は「第二の植民地時代」であると語る真意を、2月13日発売の最新刊『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』(朝日新書)から一部を抜粋・再編して公開します。
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――現在、ウクライナでは戦争が続いています。この状況を止めることができていない欧米各国に対して、あなたはどのような考えをお持ちでしょうか。
エマニュエル・トッド:欧米はもはや民主主義の代表ではなく、少数の人や少数の集団に支配された、単なる寡頭政治になってしまったのです。
一方で、インドは北部では暴力があり、非常に複雑で原理主義政党が台頭しています。
トルコや他の国も同じかもしれません。しかし、これらの国々では民主主義が台頭しつつあると言えます。民主主義に向けた前向きな動きがあるからです。これは欧米には当てはまりません。
西側諸国の民主主義は、機能不全どころか、消滅しつつあります。ヨーロッパの共同体(EU)に関しては、もはや完全に寡頭制です。一部の国が他国より強く、一部の国には力がない。ドイツがトップにいて、フランスが下士官、その一方でギリシャは存在感がないといった具合のグローバルシステムです。
ウクライナ戦争も同様です。ヨーロッパは民主主義の価値のために戦っているふりをしているだけで、これは完全な妄想です。そして驚くべきことに、私たちはそれに気づいていません。自分たちの国について話すときには、「民主主義の危機を抱えている」と言っているにもかかわらず。
しかし、西洋以外の人々はそれを見抜いています。彼らは、私たちをありのままを見ているのです。西洋は、何か違うものに変わりつつあり、もはや十分な生産ができなくなっています。また先ほど言ったように、グローバル化とは、第二の植民地時代、つまり「グローバルな植民地時代」であることが判明したのです。
私たちのシステムは、もはやダイナミックな民主主義ではなく、消えゆく民主主義なのです。そして、戦争によって、この状態に誰もが適応する必要が出てきました。
繰り返しますが、ウクライナ人の苦しみや戦争の残酷さを忘れることはできませんが、戦争とは結局のところ、私たちにとって、現実を確かめる究極の試金石なのです。
こういう時こそ、歴史家、経済学者、その他あらゆるタイプの社会科学者が、より現実的で健全な方法で自分たちの仕事をするべきなのです。
――あなたは自由民主主義の価値を支持する知識人の一人です。たとえ自由民主主義が、今現在失われているとしても、失地回復するチャンスはまだあると思いますか。あなたがおっしゃったリベラルな寡頭制からの回帰の面から考えるといかがでしょうか。
トッド:それは私が、20年ほど前から考えてきたことです。まさに私が『帝国以後』を書いたのは、今から20年ほど前でした。この本はアメリカについて書いた本であり、イラク侵攻の少し前に出版されました。そして、この本には、私がここまでに話してきた多くの傾向が書かれています。
寡頭政治への推進、アメリカの「不労所得者国家」状態、貿易赤字……。そして、アメリカという国自体が必要と見せかけて世界に混乱を生み出す傾向などなど。
しかし、この本はある種の希望で終わっています。つまり、アメリカが再び民主的な価値観に戻り、何とか回復してほしいという希望でした。
そして、トランプ現象が始まったときも、私はトランプ自身でも、共和党でもなく、「覚醒した民主党」が新たな原動力のようなものを生み出すのではないかという期待を持っていました。真の民主主義、自由民主主義など、私たちがかつて愛した古いアメリカ国家に非常によく似た、新しいアメリカ国家への新たな原動力を生み出すのでないかと……。
しかし、それから20年経った今、私が『帝国以後』と同様の調査、つまり貿易赤字、アメリカの政治システムの内部機能、ワシントンの支配エリートのメンタリティについての調査を加えてみると、「もう過去の状態には戻らない」ことは明らかです。
アメリカで観察されているようなこの歴史的大変革は、私が言うところの「元に戻せない」ものです。歴史が続く限り、後戻りはできません。
私たちが何に対処しなければならないのか、正確にはわかりません。しかし、「以前のような民主主義に戻れるかもしれない」「戻せるかもしれない」という考えは、妄想です。
つまり、私たちは、新しいことに備えなければなりません。戦争とは関係なく、私たちはもっと悪い事態に備える必要があるでしょう。
エマニュエル・トッド
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