💥29」─1─クルド人の独立を求める戦争か、独立を求めない平和か。~No.113No.114No.115 @ ⑱

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 トルコ、イラク、イラン3ヵ国におけるクルド人の独立を求める住民投票は、戦争の原因になるとして猛反対されている。
 クルド人の独立は、如何なる国も認めないどころか否定している。
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 2017年9月24日 産経ニュース「イラククルド人自治区、25日に住民投票 独立賛成多数の公算 周辺国に緊張
 イラク・アルビルで開かれたクルド独立賛成派の大規模集会に参加した大勢の人々=22日(共同)
 【アルビル(イラク北部)=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区で25日、同国からの分離独立の可否を問う住民投票が行われる。実施されれば独立賛成が多数を占める公算が大きく、自治政府は独立への足がかりとする方針を示している。イラク中央政府のほか、クルド人を抱えるトルコやイランなどは国内に独立機運が波及するのを恐れ、投票が行われれば対抗措置を取ると警告しており、緊張が高まっている。
 23日、アルビル中心部の商店街には「賛成に投票を、独立にイエスを」などと書かれたポスターが掲げられていた。赤、白、緑に金色の太陽をあしらったクルド民族の旗を売る露店もある。
 「(投票を行って)周辺国が経済的に制裁したとしても問題ではない。自由は経済よりも重要だ」。商店経営のイスマイル・アブドルラハマンさん(41)が独立の意義を訴えた。
 クルド自治政府側は予算配分の増額や地方自治の拡大などを求めているとされ、中央政府と代表者同士で協議してきた。しかし、22日には、主要都市アルビルで独立支持派の集会に数万人が参加し、自治政府トップのバルザニ議長の演説に気勢を上げるなど、投票実施の流れは変わらない。
 トルコの大統領府は23日、「新たな地域の危機」を引き起こしかねないと懸念を表明。軍事演習を行って牽制してきたほか、治安維持のためには越境も辞さない姿勢を示す。
 こうした動きに対し、アルビルで会ったクルド自治政府の治安部隊、ペシュメルガの隊員(40)は、イラクでのイスラムスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討に部隊が大きく貢献したことを挙げ、「大国もできなかったことを成し遂げたのだから、(軍事衝突しても)当然守りきれる」と述べた。
 さらに、「われわれは他国の領土を求めているわけではない。独立の権利について問うだけだ。民主主義や人権を重視する欧州や世界に、何が問題なのか聞いてみたい」と訴えた。
 投票は中央政府クルド自治政府の係争地である油田地帯キルクークでも行われる。米国や国連安全保障理事会まで実施に反対する中、「国家なき最大の民」とも呼ばれてきたクルド人の動向が注目される。」
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 9月25日 産経ニュース「クルド人自治区 きょう住民投票 イラク政府は国境管理の移譲要求
 記者会見するマサウード・アルバニ・クルド自治政府代表=24日、アルビル(ロイター)
 【アルビル(イラク北部)=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区で25日、同国からの分離独立の是非を問う住民投票が実施される。これに反発するイラク中央政府は24日、他国との国境の検問所や国際空港の管理を明け渡すよう求めた。クルド自治政府に対する対抗措置だ。
 ロイター通信が伝えたもので、中央政府は諸外国に対し、自治政府との石油取引を停止することも求めた。石油売却による収入は自治政府の重要な財源となっている。
 また、イラク同様に国内にクルド人を抱えるトルコのエルドアン大統領と、イランのロウハニ大統領は24日、電話で会談し、投票は地域の混乱を引き起こすとして、ともに懸念を示した。
 クルド自治政府のトップ、バルザニ議長は24日の記者会見で、住民投票を行う方針に変わりがないことを改めて表明。中央政府や周辺国との対立が激化する可能性が強まっている。」
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 9月26日07:45 産経ニュース「イラクとトルコ両軍が「反クルド」の合同軍事演習
 独立の可否を問う住民投票に賛意を示し、街に繰り出すクルド人ら=25日、イラクのアルビル(ロイター)
 イラク北部のクルド人自治区に隣接するイラクとトルコの両国軍は25日、26日から大規模な合同軍事演習をトルコと自治区の国境地帯で実施すると明らかにした。クルド自治政府が25日、独立の是非を問う住民投票を強行したことに反発した措置。独立を封じる決意を軍事力誇示で強調する方針で、周辺地域の緊張が高まってきた。
 一方、中心都市アルビルなど自治区各地では25日夜、多数の市民が通りに繰り出して投票実施を祝った。クルド選管当局は同日夜に投票を締め切り、開票を開始した。投票率は80%を上回る勢いで、独立賛成票が圧倒的多数を占める見通しだ。
 自治政府が実効支配する係争地キルクークの州政府は同日、夜間外出禁止令を出した。イラク中央政府の指揮下にある民兵組織などがキルクークへの進軍に意欲を示しており、衝突を懸念した予防的措置という。(共同)」
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 9月26日10:06 産経ニュース「クルド住民投票が終了、隣国トルコとイラクは合同軍事演習で威圧
 イラク北部クルド人自治区の中心都市アルビルで投票する女性ら=25日(共同)
 【アルビル(イラク北部)=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区などで25日に行われた分離独立の是非を問う住民投票は、同日夜に投票が締め切られ、集計作業に入った。ロイター通信によると、投票率は78%に上った。独立支持が多数を占める公算が大きく、イラク中央政府やトルコなど周辺国が警戒を強化している。
 こうした中、イラク北部と隣接するトルコ側国境で、トルコ、イラク両軍が合流した。バグダッド発のロイター通信によると、イラク国防省は両軍が大規模な合同演習に入ったとしている。トルコはクルド系テレビ局の同国内での視聴を遮断するなど、周辺諸国では住民投票を強行したクルド自治政府への対抗措置が相次いでいる。
 また、クルド自治政府イラク中央政府が帰属をめぐって係争中の油田地帯キルクークでは25日夕、夜間外出禁止令が布告された。派遣されたイラク軍兵士が市街から外部に通じる道路などを封鎖したという。
 キルクーククルド人、アラブ系のほか、トルコ系のトルクメン人など複数の民族が住んでおり、住民の対立激化が懸念されている。
 一方、地元のクルド系テレビ局は、深夜まで各地のクルド人らが歌い踊る祝賀の様子を伝えた。
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 9月26日10:06 産経ニュース「クルド住民投票が終了、隣国トルコとイラクは合同軍事演習で威圧
 イラク北部クルド人自治区の中心都市アルビルで投票する女性ら=25日(共同)
 【アルビル(イラク北部)=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区などで25日に行われた分離独立の是非を問う住民投票は、同日夜に投票が締め切られ、集計作業に入った。ロイター通信によると、投票率は78%に上った。独立支持が多数を占める公算が大きく、イラク中央政府やトルコなど周辺国が警戒を強化している。
 こうした中、イラク北部と隣接するトルコ側国境で、トルコ、イラク両軍が合流した。バグダッド発のロイター通信によると、イラク国防省は両軍が大規模な合同演習に入ったとしている。トルコはクルド系テレビ局の同国内での視聴を遮断するなど、周辺諸国では住民投票を強行したクルド自治政府への対抗措置が相次いでいる。
 また、クルド自治政府イラク中央政府が帰属をめぐって係争中の油田地帯キルクークでは25日夕、夜間外出禁止令が布告された。派遣されたイラク軍兵士が市街から外部に通じる道路などを封鎖したという。
 キルクーククルド人、アラブ系のほか、トルコ系のトルクメン人など複数の民族が住んでおり、住民の対立激化が懸念されている。
 一方、地元のクルド系テレビ局は、深夜まで各地のクルド人らが歌い踊る祝賀の様子を伝えた。」
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 9月27日22:19 産経ニュース「「国家分断」を象徴 イラククルド住民投票
 26日、住民投票を祝うクルド人ら=イラク北部ドホーク(ロイター)
 イラク北部のクルド自治政府が独立の是非を問う住民投票を強行したことで、イラク国内の分断状態が改めて浮き彫りになった。最大人口を占めるイスラムシーア派スンニ派クルド人という国内の主要3勢力が不信感や敵意を解消できず、融和や団結とはほど遠い実態をさらけ出した格好だ。
 「憲法違反だ」「軍事的に介入する」。イラク中央政府のアバディ首相は住民投票の直前、さまざまな形で実施しないよう圧力をかけた。しかし、クルド自治政府のトップ、バルザニ議長は中央政府は民主的でないと批判した上、「失敗した協力関係には決して戻らない」と言い放ち、投票実施へと突き進んだ。
 旧サダム・フセイン政権は多数のクルド人を殺害しただけでなく、シーア派住民も抑圧してきた。にもかかわらず、2003年の同政権崩壊以後、一貫して政権を担ってきたアバディ現首相らシーア派主体の勢力はその教訓を生かさず、クルド人ら他民族に配慮した運営を行ってこなかった−という不満が背景にある。
 シーア派政権の軍は14年、北部のモスルやティクリート、油田都市キルクークなどを次々とスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に明け渡し、推定3750万人のイラクは大きな混乱に陥った。北部や中部にはスンニ派住民が多く住むといわれ、シーア派政権は他民族を含む国民全体を守りうるのか−という疑問を招いた。
 また、南部にはシーア派住民が多く住んでおり、歴史的にも宗教的にも隣接するシーア派大国イランに近い。それも民族融和を妨げている一因だ。
 イラクは1921年、オスマン帝国の解体に伴い、英国が北部モスルと中部バグダッド、南部バスラという帝国時代の3つの行政単位を合わせてできた国だ。もともと国民統合の旗印に欠けていると指摘されてきた。今回の住民投票強行は、建国から約100年をへてもなお、その課題を克服できずにいる実態を象徴している。
 クルド人にしても一枚岩とは言い難い面がある。バルザニ議長が率いるクルド民主党(KDP)とクルド愛国同盟(PUK)は1994年、武力抗争を繰り広げた経緯がある。PUKの一部勢力は今回の住民投票についても、時期がよくないとして難色を示していたといわれる。(カイロ 佐藤貴生)
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 9月28日 産経ニュース「強まるクルド包囲網 トルコ、イランが圧力
 27日、イラク北部クルド人自治区の中心都市アルビルの国際空港で窓口に並ぶ利用者ら。クルド民族の旗が掲げられていた(AP)
 【カイロ=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区などで行われた住民投票で、独立賛成が圧倒的多数を占めたことで、隣接するトルコとイランがさらに強硬な手段に出る恐れが強まっている。住民投票には法的拘束力がないにもかかわらず、周辺国のクルド人らの民族意識を目覚めさせた可能性も出てきた。両国とも地域大国であり、予断を許さない事態が続きそうだ。
 締め付け強化も
 ロイター通信によると、推定1000万人以上と最も多くのクルド人を抱えるトルコは27日、住民投票の結果発表に合わせるように、防衛費を22億ドル(約2500億円)積み増す方針を示した。
 一方で、トルコの民族主義政党は複数の民族が混在するイラク北部キルクークを念頭に、トルコ系少数派住民のトルクメン人を守るため、「少なくとも5千人の義勇兵が戦いに加わる用意がある」と表明するなど、さまざまな動きが現れつつある。
 トルコ政府は2015年、独立国家樹立を掲げる非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)の戦闘員を1年で3100人殺害したと発表するなど、強い敵対心を持っている。
 エルドアン大統領は「強い指導者像」を掲げ、今年4月の国民投票で幅広い強権を手に入れただけに、今後、PKKをはじめとするクルド人への締め付けを強める可能性もありそうだ。
 ただ、トルコの企業などはイラククルド人自治区に多額の投資を行っているとされ、どこまで自治政府への対抗措置を打ち出すかは不透明な部分もある。外国航空会社が相次いで自治区へのフライトを停止する中、トルコ航空は28日も運航している。
 多民族国家の苦悩
 ロイターによると、イランではイラクとの国境に近い西部で、クルド人の一部が隣国での住民投票実施を受け、街頭に出て祝ったもようだ。
 事実とすれば、懸念されてきた「独立機運の波及」が現実のものとなっていることになる。当局は軍事演習を実施中で、西部の上空を戦闘機が飛行するなどして牽制しているようだ。
 イランはペルシャ系が人口の6割で、他はトルコ系やクルド人、アラブ系などが占める多民族の国だ。特定の民族に独立機運が芽生え、他の民族に飛び火する事態は避けたいとの思いがにじむ。
 イスラム革命直後の1979年には、新体制側とクルド人との間で何度か軍事衝突が起き、多数のクルド人が死亡した。ただ、イランにはシーア派クルド人もおり、社会への同化も進んでいるといわれる。」
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 10月1日 産経ニュース「クルド自治州とイラク中央政府のにらみ合い続く 独立めぐる住民投票から1週間
 【カイロ=佐藤貴生】イラク北部のクルド自治政府が行った住民投票で、9割超が独立に賛成してから2日で1週間となる。投票結果に法的拘束力はないが、イラク中央政府のアバディ首相は住民投票の実施は違憲で認められないとし、自治政府との協議に応じない姿勢を崩しておらず、にらみ合いが続いている。
 また、中央政府は同様にクルド人住民を抱える隣国トルコやイランと軍事演習を行うなどして圧力をかけている。大きな混乱などは起きていないもようだ。
 イラク中央政府は9月末、クルド人自治区への国際航空便の乗り入れを全面的に禁止。空域を管理している立場から海外の航空会社に運航を停止するよう通告した。また、自治区の主要財源である原油売却で得た収入を中央政府に明け渡すよう求めるなど、「国家主権」を盾に経済面から締め付けを強めている。国連や米国が双方の対話を仲介する意向を示しているが、進展は伝えられていない。
 域内にイスラムスンニ派が多く住むクルド自治政府のバルザニ議長は、シーア派主体のアバディ政権が地方分権や予算の適正配分に努めていないとして、住民投票を強行した。」
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 10月5日 産経ニュース「対クルド制裁強化へ イラン・トルコ首脳会談
 イランのロウハニ大統領(右)と握手するトルコのエルドアン大統領=4日、イランのテヘラン(AP)
 【カイロ=佐藤貴生】トルコのエルドアン大統領は4日、イランの首都テヘランを訪れてロウハニ大統領と会談した。会談後の共同記者会見で両者は、イラク北部のクルド自治政府が9月下旬に強行した独立の是非を問う住民投票について、結果を認めない姿勢を示したほか、協力して自治政府への制裁を強化する方針を表明した。
 共同記者会見でロウハニ大統領は、「イラクの国家分裂は拒否する」とし、イラク−イラン間の国境線の変更は認めないと言明。エルドアン大統領は、住民投票は「違法」だとし、イラク中央政府とも協力の上、さらに強硬な制裁を行う用意があると述べた。
 イラククルド人自治区などで行われた住民投票では、投票総数の9割以上が独立を支持。国内にクルド人住民がおり、独立機運の波及を恐れるトルコとイランは、イラク中央政府と軍事演習を行うなど連携を強めている。ロイター通信によると、中央政府は3日、クルド人が所有する4つの金融機関に対するドルの供給を停止する経済制裁を始めた。
 また、ロウハニ大統領はトルコへの天然ガスの輸出を増強する考えを表明。貿易の決済は両国の通貨で行う方針も確認され、来週にも経済面での協力拡大について協議するとの見通しを示した。」
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 10月14日 産経ニュース「【クルド問題】キルクーク緊張、イラククルド互いに兵派遣…衝突回避へ努める動きも
 27日、イラク北部クルド人自治区アルビルで、住民投票の結果を発表する投票管理委員会の幹部ら(共同)
 【ダマスカス=佐藤貴生】イラク北部のクルド自治政府が9月下旬、中央政府に反して独立を問う住民投票を強行したのを受け、軍事的緊張が高まっている。英BBCテレビ(電子版)によると、イラク中央政府は双方の係争地域である油田都市キルクークに兵を派遣。これに対し、自治政府側も治安部隊ペシュメルガ数千人を現地に増派した。
 BBCによると、中央政府の軍隊や連邦警察のほか、イスラムシーア派民兵らが乗った車列が12日、キルクーク方面に向かった。中央政府のアバディ首相は、周辺のスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討のためだとし、クルド側との軍事的対立が目的ではないと主張した。
 これに対して自治政府は、すでにペシュメルガ数万人が配置されているキルクークに兵士を増派。12日には約6000人が加わったとの情報がある。自治政府高官は13日、中央政府の動きは軍による「脅迫」だという認識を示した。一方で自治政府側も兵力配置の最前線を後退させるなど、双方が偶発的衝突を避けるよう努めているもようだ。
 住民投票では総数の9割以上がクルド人自治区の独立を支持。同じく国内にクルド人を抱える隣国トルコやイランが軍事演習を行うなどして牽制してきたほか、イラク中央政府は国際便の運航停止や一部金機関に対するドルの供給停止などの対抗措置を取ってきた。」
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 10月20日 産経ニュース「クルド自治政府 内部離反・米対応誤算 キルクーク支配権失う
 キルクークをめぐる動き
 【カイロ=佐藤貴生】イラク政府は北部の係争地キルクーク周辺をわずか2日間で制圧し、実効支配していたクルド自治政府の部隊を排除した。自治政府のバルザニ議長は、独立の是非を問う住民投票を強行したことについて、「無駄にはならない」と述べる一方、中央政府との戦闘を回避する意向を表明。事実上の“敗北宣言”とも受け取れる。
 住民投票を行ったことで、2003年のフセイン政権崩壊以来歩みを進めてきた「クルド人国家」の実現は逆に遠のいた格好だ。自治政府側には2つの点で誤算があった可能性が浮上している。まずはクルド側の内部離反だ。自治区には長い歴史を持ち、独立を訴えてきた2つの主要政党がある。バルザニ氏率いるクルド民主党(KDP)と、クルド愛国同盟(PUK)だ。
 キルクークをおさえるPUKの一部勢力は、住民投票について「時期が悪い」と反対してきた。今回も中央政府軍に対し、ほぼ無抵抗のまま兵を引いた。両政党が強固な協力体制を築けなかったことが手痛い反乱を招いた。
 もう一つが米国の対応だ。クルドの部隊は14年、イラク各地を占拠したイスラムスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討で、米国と連携し大きな役割を果たした。
 西側外交筋は、その貢献を背景に住民投票に踏み切ったバルザニ氏には、「最後は米国が仲介に入るという期待があったのではないか」とみる。結局、米国は最後まで中央政府との間を調停せず中立を守り、クルド側は孤立した。
 ISが7月に北部モスルを明け渡して以降、戦闘は比較的小規模な集団の掃討へと移行。米国にすればクルド部隊の“利用価値”が減少していた面もあろう。
 中央政府のアバディ首相は来春に総選挙を控え、クルド側に妥協するような弱腰をみせられない立場にあったことも見逃せない。経済面の制裁にとどめるようなそぶりを示しておき、一気に精鋭部隊を動かして失地回復を果たした。
 中央政府は奪取した周辺油田の再開発を英石油会社に依頼したほか、クルド語での記者会見を禁じたともいわれる。住民投票が双方の対立感情に火をつけた形で、遺恨は今後、長くくすぶりそうだ。」
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 10月30日 産経ニュース「クルド独立運動に転換点 バルザニ議長の退任承認
 【カイロ=佐藤貴生】イラク北部のクルド自治政府のトップ、マスード・バルザニ議長(71)が任期を延長せず11月1日に退任する意向を表明し、自治政府議会は29日、賛成多数で承認した。バルザニ氏が議長の座を降りることで、イラクにおけるクルド独立運動は大きな転換期を迎える。9月下旬に強行された独立を問う住民投票を機に中央政府自治政府への締め付けを強めており、新たな世代にとって厳しい船出となることは確実だ。
 バルザニ氏は16歳でイラク側との戦いに加わり、1970年代に父親の後を継いでクルド民主党(KDP)を率いてきた。山岳地帯での長い戦歴から「山の支配者」などと呼ばれる。クルド人独立を掲げて戦ってきたもう一つの主要政党、クルド愛国同盟(PUK)も10月、創設者でイラク前大統領を務めたジャラル・タラバニ氏が死去したばかりだ。
 クルド自治政府は現在、KDPのバルザニ氏の下でおいのネチルバン氏が首相を務め、PUK側では副議長のほか、タラバニ氏の息子のクバド氏が副首相を務める。今後はこうした面々が主導的役割を果たす見通しだが、2005年からバルザニ氏が議長に居座り続けたため、「KDP側に権力のバランスが偏った」(現地の外交筋)といわれる。
 11月1日に実施予定だった自治政府の議長・議会選は8カ月間先延ばしされることが決まっており、先の外交筋は「議長ポストは空席になる」との見通しを示す。住民投票実施を受け、イラク中央政府自治政府の実効支配下にあった北部キルクークへ進軍した際、PUKの部隊が戦わずに撤退したことなどでKDP側との関係は冷え込んでおり、この期間に対立の火種が権力闘争に発展する可能性も否定できない。
 イラク中央政府を取り巻く環境も変わりつつある。ティラーソン米国務長官は今月下旬、イスラムスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)との戦いなどに加わったイランの軍事顧問やシーア派民兵について、「イランに戻るべきだ」と表明。これに対し、中央政府のアバディ首相は「イラクの機関の一部だ」と述べて反発した。
 ISとの戦いなどで良好な対米関係を維持してきたとされるアバディ政権も、来春の議会選を前に正念場を迎えつつある。自治政府との駆け引きにも影響を及ぼしそうだ。」
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クルド人 国なき民族の年代記――老作家と息子が生きた時代

クルド人 国なき民族の年代記――老作家と息子が生きた時代

  • 作者:福島 利之
  • 発売日: 2017/06/16
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