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2025年8月24日 YAHOO!JAPANニュース Wedge(ウェッジ)「アルゼンチン・チリを席捲する中国の存在感『観光客と中国雑貨だけではない。基幹産業を支配する中国の超長期戦略』(後半)
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【画像】アルゼンチン・チリを席捲する中国の存在感『観光客と中国雑貨だけではない。基幹産業を支配する中国の超長期戦略』(後半)
チリ・サーモンが買えない地元民、チリの重要産品を買い占める中国
3月10日。プエルトモントのホステルの女将エリーは「地元名産のチリ・サーモンが中国人の買い占めでどんどん値上がりして上等のサーモンが買えなくなった。銅もワインも何もかも中国はチリの最大のお得意様だから誰も文句は言えない」と嘆いた。
チリの輸出先は中国40%、米国16%、日本8%、韓国6%、ブラジル5%であり中国が断トツ。輸入先は中国24%、米国21%、ブラジル10% など。チリの輸出の半分を占める銅は中国が最大の輸出先。リチウム、ワイン、チェリー、ぶどう等も中国向けがトップだ。
社会主義者でも軍事独裁者でもチリとの関係強化を図る中国の深謀遠慮
チリは共産中国とは深い因縁がある。1970年チリのアジェンデ社会主義政権は南北アメリカ大陸で最初に中国を承認した。翌1971年に中国が国連の代表権を得て台湾が国連脱退した。
1973年チリではクーデターによりピノチェト軍事独裁政権が誕生して1989年まで独裁体制が継続するが、中国はイデオロギー的には真逆のピノチェト政権に対して積極的に経済交流を図った。
2005年に中国とFTC締結、2012年に中国はチリを戦略的パートナーに格上げ、2016年には包括的戦略パートナーに。そして2019年にはチリは一帯一路構想に加盟し中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加。中国とのFTC締結後の2007年には従来チリの最大の貿易相手だった米国を抜いて中国が最大の貿易相手国となった。
中東問題で忙殺される米国の間隙を突いた中国
2001年の同時多発テロ事件以降米国はアフガン侵攻さらに第2次湾岸戦争でイラク侵攻。戦争は2003年には終結したがアフガン、イラクにイスラム過激派が跋扈して米軍が2021年にアフガンから撤退するまで20年を費やした。こうして米国が中東問題に忙殺されている間に中国は粛々と中南米地域での権益確保の地ならしをしていたのだ。
同時に2000年代初頭は南米ではアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、エクアドル、ベネズエラなどで反米左派政権が続々誕生した。いわゆる“ピンクの潮流の時代”であった。チリも中道左派政権だった。それゆえ米国も南米へ積極的にアプローチしなかったのであろう。
2005年にはチリ国営銅会社(Corporacion Nacional del Cobre de Chile-=CODELCO)に中国企業が5億5000万ドルを前払いして価格の交渉権を獲得。市場より有利な価格が保証された。銅輸出港のアントファガスタで聞いた話では今年はトランプ関税で米国向け輸出が減る分を中国が輸入できるので中国は“漁夫の利”であるという。
チリは世界最大のリチウム埋蔵量を誇るが2018年には中国企業がチリのリチウム会社の株式の25%を取得。2023年電気自動車大手のBYDはアントファガスタでのリチウム精錬事業の認可を受けた。注)その後国際リチウム価格の暴落を受けて2025年に断念。
2019年には中国企業がパタゴニアでサーモンを養殖する水産会社を買収して中国による市場支配力を高めた。
インフラ建設分野では2020年以降中国企業は高速道路、サンチアゴ市内地下鉄、国立病院などを矢継ぎ早に受注している。中国系電力会社はチリの電力会社の株式を次々に取得して、信じられないことだがチリの総発電量の54%は中国系企業の支配下にあるという。
デジタル分野もホアウェイ(華為)、シャオミー(小米)が席捲
チリの携帯電話会社MOVISTAR、WOM、CLAROへはホアウェイがスマホを供給、シャオミーも販売網を全国展開している。ホアウェイは5Gネットワークも席捲し、さらにチリ南部のフィヨルド地帯の都市を結ぶ海底ケーブルを敷設。
電力や通信というクリティカルなインフラを中国企業に委ねても国家の経済安全保障に影響がないと歴代チリ政府は考えていたのだろうか。ちなみに現職ボリッチ大統領はガチガチの左翼であり大統領選で「チリを新自由主義の墓場にする」と訴え大統領就任後一番に訪中して一帯一路10周年式典に参加した親中派である。
筆者には歴代チリ政府の対応が些か不可解である。日本でも民営化ブームの時代に地方の経営悪化した公共水道事業を外国企業に売却することは経済安全保障に問題ないか議論されたことがあった。
チリでは1970〜1973年のアジェンダ社会主義政権下で急速な国有化を推進し国有企業はGDPの4割を占めた。その後新自由主義を採用したピノチェト軍事政権下で国有企業の民営化を進めた。民政移管後の政権でも右派・左派を問わず基本的に民営化を是としてきた。やはりアジェンダ政権の過激な国有化がチリではトラウマとなっているのだろうか。民間企業となった電力会社や通信会社は“資本の論理”に従い中国系企業相手でも構わず利益優先でディールしてきたため中国企業の席捲を許すような現状になっているのだろうか。
アルゼンチンの金融センターに聳える中国工商銀行ビル
ブエノスアイレスのプエルト・マデーロ地区には近代的高層ビルが立ち並んでいるが中でも目を引くのが中国工商銀行(ICBC)本部ビルである。運河を背景に斬新なデザインの高層ビルに大きくICBCのロゴが見える。ICBCから運河沿いの遊歩道を500メートルほど南下すると中国銀行ビルがある。
中国工商銀行は法人営業のみならずリテール事業も大規模展開してアルゼンチン国内に支店網を設け個人口座も100万以上という。そして人民元建て口座も開設している。
アルゼンチンの貿易相手国は第1位が隣国ブラジル、2位が中国、3位が米国。主要産品の大豆、牛肉は中国が最大のお得意様だ。2024年は大豆、リチウムの対中輸出が大幅増加して貿易収支に寄与。ちなみにアルゼンチンはリチウムの埋蔵量はチリ、中国についで世界第3位。
ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルーなど鉱物資源・農産物が豊富な南米諸国は過去10年で対中輸出が2倍以上増加している。他方で対米輸出は横ばい又は微増である。2025年には米国向けはトランプ関税の影響で減少は免れないが減少分は中国向け輸出増でカバーしたいというのが南米諸国の思惑である。
中国のアルゼンチンへの直接投資は累計30億ドル以上。ミレイ大統領就任後の2024年6月に中国は1300億人民元(=180億ドル)の通貨スワップをアルゼンチンと締結した。通貨不安・外貨不足が気がかりなアルゼンチンを支えているのは国際通貨基金と中国なのだ。さらに中国工商銀行を筆頭に中国の銀行団は総額170億ドルの商業ローンをアルゼンチンに供与している。
ミレイ大統領はトランプ大統領と親密で米国を“最大の同盟国”と呼んでいるが共産党嫌いのミレイ大統領も“政経分離”して中国の経済力に頼らざるを得ない。2024年11月のリオデジャネイロで開催されたG20でミレイ大統領は習近平主席と満面の微笑みを浮かべて会談したのだろう。
アルゼンチンもチリ同様に経済全体が重度の中国依存症
アルゼンチンはミレイ大統領就任以前の時代に財政難をカバーするために大型インフラプロジェクトを中国に頼った。2014年には包括的戦略パートナーシップ、2017年にアジアインフラ投資銀行に加盟、2022年に一帯一路構想に参加とトントン拍子に中国に傾斜していった。
中国の直接投資で大きいのは鉱物資源・エネルギー分野である。2022年には中国企業がアルゼンチンのリチウム生産会社に9.6億ドルを出資。
2010年には中国国営海洋石油(CNOOC)がアルゼンチン最大の民間総合石油企業に出資。2015年には中国石油化工集団(SINOPEC)がアルゼンチン国営石油(YPF)と石油ガス開発のパートナー協定を締結している。
アルゼンチンの石油ガス生産の現在と中国の深謀遠慮
ちなみにアルゼンチンはパタゴニア北部での石油ガスの開発に成功して2026年の目標を原油生産日量100万バーレル、天然ガス生産163百万立方メートルに設定。2023実績では原油・天然ガスともに世界19位である。
旅行中知り合ったコロンビア人石油掘削熟練労働者のフェルナンド氏58歳はパタゴニア油田の操業会社と1年契約(更新可能条件付き)した。同氏はコロンビア、ボリビアでも石油掘削に従事したベテラン。同氏によるとアルゼンチンは現在自国消費とパイプラインとトラックでのチリ向け輸出に当てているが大西洋から輸出するべくパイプラインを建設中という。
筆者は1995年頃に面談した中国国営石油探査会社の幹部の話を思い出す。彼は米国で石油探査の博士号を取得した専門家。当時南米ではベネズエラとエクアドルだけが産油国であった。当時から中国は南米での石油資源権益確保に動いており欧米系石油探査会社と比較したら只同然の費用でペルー、コロンビア、チリなどで石油探査作業を請け負って博士自身も陣頭指揮したと経験を語った。面談の翌週にはチベットの4000メートルの高地で探査作業すると言った。中国共産党の超長期的戦略と中国人の逞しさに感嘆した記憶がある。
中国の脅威は債務の罠だけではない、世界の安全保障上の脅威にも
3月24日。親子2代警察官という33歳のエリート警察官マウロは嫌中派の論客。中国の脅威は経済支配にとどまらないという。
ブエノスアイレス港の最新ターミナルは中国の融資により中国企業が建設したが開業以来寄港する船舶がほとんどなく遊休状態という。港湾当局は融資を返済できず中国がターミナルの経営権を握ることになるとマウロは懸念した。
アルゼンチンの排他的経済水域で中国漁船が違法操業して地元漁民が被害を受けているという。多数の中国漁船が連携して長期間違法操業している。彼らはマゼラン海峡を通過して漁期に合わせて太平洋と大西洋の漁場を行き来している。ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、ペルーなどが被害を受けている。アルゼンチン政府は中国に抗議しているが例により中国政府は違法行為を厚顔で完全否定しているようだ。
十数年前に中国はパタゴニアに地元州政府と契約して宇宙線観測センターと称して巨大なアンテナを建設した。ところが敷地は立ち入り禁止となっており実際どのような活動をしているのか州政府も把握していないという。200ヘクタールの広大な敷地で何が行われているのか。マウロは中国が巨大アンテナを軍事利用しているのではないかと推測していた。注)ネット情報では近年米国は対抗措置として付近にヘリポート、兵舎を備えた人道支援センターを作り監視しているようだ。
さらにアルゼンチン最南端の南極大陸の玄関口であるウシュアイアで中国は港湾建設プロジェクトを州政府と進めているという。ウシュアイアはマゼラン海峡に面しており中国が建設する港湾が軍事利用されれば中国海軍は大西洋と南極大陸へのアクセスが容易になるとマウロは危惧した。
問題はミレイ大統領がリバタリアン(自由至上主義者)であり中国の各種プロジェクトを民間企業の問題として不干渉の立場を維持していることだとマウロは指摘。大統領は極力小さな政府を目指して中央政府予算を大幅削減しており地方政府はインフラ建設予算を自分で手当てする必要に迫られる。ここに中国がつけ入るスキが生じるという分析である。
マウロ青年の懸念が現実となれば南米の安全保障に関わるし米国にとっても看過できない事案であろう。地球の反対側ではあるが我々日本人もアルゼンチン・チリにおける中国の超長期戦略を注視する必要があるのではないか。
以上 次回に続く
高野凌
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8月24日 YAHOO!JAPANニュース 毎日新聞「中国「一帯一路」に再び勢い 交通より資源へ、習指導部の戦略
アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国の鉱山=2025年3月24日、ロイター
中国経済の減速で陰りも見えていた巨大経済圏構想「一帯一路」が今年に入って反転し、勢いを取り戻している。研究機関の報告書が2025年上半期の新規投資及び建設契約の総額が1240億ドル(約18兆4000億円)で過去最大規模の水準に達したと分析した。
【図解で分かる】中国の巨大経済圏構想「一帯一路」
激しさを増す米国との対立や世界の多極化を見据え、戦略的ツールとしての一帯一路の重要性が再認識されているようだ。
オーストラリアのグリフィス大と中国の復旦大の研究機関が7月に発表した報告書によると、25年上半期の一帯一路関連の投資規模は24年の1年間分(1220億ドル)を既に上回った。
地域別に見ると、首位はアフリカが390億ドル(約5兆8000億円)で前年同期の5倍に急拡大した。200億ドル(約3兆円)規模のナイジェリアのガス開発プロジェクトなど大規模案件が押し上げた形だ。
次いで中央アジアが250億ドル(約3兆7000億円)で、カザフスタンへの鉱物関連の大型投資が主要案件という。
分野別にみると、内憂外患に備える習近平指導部の戦略が透ける。
着実に伸びているのはエネルギーや金属・鉱物の資源関連で、全体の6割近くを占めた。米国に対抗し、重要資源の供給網を強化するためとみられる。
また、テクノロジー関連が成長分野となっており、太陽光や水素などグリーンエネルギー技術に加え、電気自動車(EV)、電池のような製造業の投資も伸びている。これらは、停滞する国内経済の新たなけん引役として中国政府が期待する産業だ。
一方、これまで一帯一路の代名詞となってきた交通インフラは全体の約7%の規模にとどまり、その割合は、ピークだった18年の28%と比べて大きく縮小した。
鉄道や空港、港湾を建設したものの、完成後に赤字運営に陥る事例が途上国で相次ぎ、中国への莫大(ばくだい)な借金だけが残る「債務のわな」と呼ばれた。中国政府も不良債権を抱える事態は望んでおらず、近年は大盤振る舞いを避け、採算性や戦略的価値を精査する傾向が強まっていた。
対照的に、拡大しているエネルギーや金属・鉱物の開発は「産出される資源を担保にすることで、中国側が投資リスクを避けることができる」(報告書)との見方がある。
オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所が5月に発表したリポートは、途上国から中国への債務返済額は25年に350億ドル(約5兆2000億円)に達し、その中でも特に貧しい75カ国の返済額が220億ドル(約3兆3000億円)と過去最高になると分析。そのうえで「今後、途上国から見た中国の立場は資金提供者から借金取りへと変わるだろう」と指摘した。中国としても強硬に債権を回収すれば途上国との関係を損ない、対外イメージが悪化するジレンマを抱える。
「不良債権のわな」に対する中国の警戒心の高まりが、一帯一路の重点分野に影響を与えているとも言えそうだ。【北京・河津啓介】
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8月24日 YAHOO!JAPANニュース 日テレNEWS NNN「ヨーロッパ“最大級”中国大使館の建設計画 英ロンドンで大規模反対デモ
ヨーロッパ最大級となる中国大使館の建設計画に対し、イギリス国内で反対の声があがっています。23日には、ロンドンで大規模なデモが行われました。
NNNロンドン 本岡英恵記者
「ロンドンの有名な観光地ロンドン塔の目の前にヨーロッパ最大級の中国大使館の建設が予定されています」
2018年に中国政府が大使館の建設用に購入した王立造幣局の跡地はロンドン中心部に位置しています。
広さはおよそ2万平方メートル、サッカー場およそ3つ分にあたり、建設されればヨーロッパ最大級の中国大使館となります。
この巨大な大使館をロンドンの中心部に建設することに対し「中国政府の諜報活動などの拠点となるのでは」などの懸念から、地元住民や香港からの移住者らから反対の声があがっています。23日にはおよそ1000人が計画反対のデモに参加しました。
デモ主催者
「この場所に大規模な建設を認めることはイギリス政府が全体主義的な体制を認めたということになる」
イギリスメディアによりますと、中国側が提出した計画書の一部が黒塗りであったことなどから、イギリス政府は建設許可をまだ出しておらず最終決定を10月下旬に行うということです。
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