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2024年8月15日 YAHOO!JAPANニュース FNNプライムオンライン「【解説】イギリスで極右主義者のデモ・暴動が拡大…世界で頻発する白人至上主義「偉大なる交代理論」とテロ
英国で、反不法移民や反イスラムなどを訴える極右主義者たちによる暴力が拡大している。英中部のサンダーランドでは8月2日、極右主義者たちが警察署やその関連施設を放火し、数百人が警官隊と衝突するなどして8人が逮捕された。他にも、極右主義者たちは難民申請者が滞在する建物やイスラム教寺院などを襲撃し、警官隊に向かって石や煉瓦を投げるなど暴徒化し、これまでの逮捕者は100人以上に上っている。
【画像】英国内での暴動に「暴力であり犯罪で決して抗議活動ではない」との見解を示したスターマー英首相
一連の暴力のきっかけは刃物少年が起こした少女3人刺殺事件
一連の極右主義者たちによる暴力のきっかけとなったのは、7月29日にリバプール近郊のサウスポートで行われていたダンス教室に刃物を持った少年が押し入り、6歳から9歳の少女3人を刺殺した事件だ。
その後の調査で少年は17歳で、両親がアフリカ・ルワンダ出身の移民2世であることが分かった。しかし、その後SNS上では、この少年は英国生まれの移民2世ではなく、ボートでやってきた不法移民などとの偽情報が拡散し、それによって極右の団体や活動家たちが抗議活動を呼び掛け、イスラム教徒などが西洋文明を破壊しているなど過激な内容の投稿が繰り返されるようになった。
一連の暴動について、スターマー英首相は暴力であり犯罪であって決して抗議活動ではないとの見解を示し、国民に対して冷静な行動を呼び掛けているが、事態がすぐに沈静化するかは分からない。
一方、今回の一連の極右主義者たちによる暴力は、近年のGreat Replacement(偉大なる交代)理論を中核とする極右テロの文脈から考えることができる。
各国で相次ぐ極右テロ
2019年3月、オーストラリア人の当時28歳のブレントン・タラントがニュージーランド・クライストチャーチにあるイスラム教寺院を襲撃し、金曜礼拝のため集まっていたイスラム教徒らを無差別に銃撃し、50人以上が殺害された。犠牲者にはパキスタンやアフガニスタン、バングラデシュやマレーシアなどから移民難民としてやってイスラム教徒も多く含まれ、これまでテロとは無縁のように思われてきたニュージーランドに衝撃を与えた。
タラントは事件前、Great Replacement(偉大なる交代)と題するマニフェストを8chanと呼ばれるネット掲示板サイトに投稿し、その中で白人の出生率の低下に強い危機感を示し、自身が欧州を訪れた際に白人の世界が移民・難民に侵略されていると危機感を抱き、反イスラム、反移民など強い排斥主義を覚えるようになったと言及した。
また、移民や難民に寛容な姿勢を示すドイツのメルケル首相(当時)やロンドンのサディク・カーン市長を非難し、トランプ大統領(当時)を白人至上主義のシンボル(Symbol of white supremacy)などとして称賛した。そして、この事件以降、タラントの影響を受けたと思われる極右テロが連鎖反応かのように発生することとなった。
その翌月には、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ郊外のパウウェイ市にあるユダヤ教礼拝所で、当時19歳の白人の男が銃を乱射して1人が死亡、3人が負傷した。男はサンディエゴに住むジョン・アーネストで、シナゴークに押し入った際にユダヤ教徒を中傷する言葉を叫びながら銃を乱射した。
アーネストもタラントのように8chanに自らのマニフェストに投稿し、その中でタラントのマニフェストを読んだが彼の考えは正しい、他の人たちも読むべきだとタラントを賞賛した。
同年8月には、当時21歳の白人パトリック・クルシウスがメキシコとの国境に近いアメリカ・テキサス州エルパソにあるショッピングモールで銃を無差別に乱射し、22人が犠牲となった。
クルシウスはエルパソから1000キロも離れたダラス近郊から事件を起こすためにやってきた。クルシウスも事件前に自身のマニフェストをタラントやアーネストと同じ8chanに投稿し、ヒスパニック系移民の人口増加をヒスパニックによるテキサスへの侵略と位置付け、タラントから強い影響を受けたと彼を賞賛した。
その一週間後には、今度はノルウェー・オスロ近郊のバールム(Baerum)にあるモスクで白人の男が発砲し、1人が負傷した。男はモスク内でコーランを読んでいた信者の男性に取り押さえられ、その後警察に逮捕された。逮捕されたのは当時21歳の白人フィリップ・マンスハウスで、この男も犯行前にEndchanと呼ばれるネット掲示板にマニフェストを投稿し、私の出番だ、私は聖なるタラントから抜擢されたなどとタラントに言及し、パウウェイのアーネストをタラントの一番弟子と呼び、エルパソのクルシウスついて、彼は彼の国を取り戻したと賞賛した。
さらに2022年4月、アメリカ・ニューヨーク州バッフォローにあるスーパーマーケットで当時18歳の白人ペイトン・ゲンドロンがライフル銃を無差別に乱射し、黒人の買い物客ら10人が死亡する事件が発生した。バッファローは黒人が多く住む地域で、ゲンドロンは黒人を意図的に狙ったとされる。ゲンドロンも180ページにも及ぶ犯行予告のマニフェストをインターネット上に公開し、タラントやクルシウス、アーネストなどを称賛し、タラントが強調するGreat Replacement theoryに言及するなど、過去の極右テロ事件から強い刺激を受けていた。
Great Replacement(偉大なる交代)理論とは
Great Replacement理論とは陰謀論で、「本来白人の世界である欧米では近年、イスラム教徒やユダヤ教徒、黒人やアジア系、ヒスパニックなど非白人の人口が増え、白人の優位性が脅かされつつあり、白人の世界が非白人によって侵略させており、白人の世界を取り戻す義務が我々にはあり、そのためには暴力も正当化される」という考えだが、ここで紹介した事件を振り返ると、それぞれの事件では標的は異なるものの、非白人によって白人の世界が脅されているという犯人の危機感は共通し、そこには強い連続性が見られる。
今回の英国での暴動でも、イスラム教徒などが西洋文明を破壊しているなどと過激な投稿が見られるが、それは近年各地で発生してきた一連の極右テロの核心となってきたGreat Replacement理論と異なるものではない。欧米では極右政党が躍進を続けているが、そのような中でGreat Replacement理論がより社会で受け入れられるようになることが強く懸念される。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】
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