・ ・ ・
関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
2021年8月26日号 週刊新潮「変見自在 高山正之
イランちょっかい
アブラハムの妻サラは不妊症で子はなかった。
75歳になったサラは夫に女奴隷ハガルを抱くように勧め、女はやがてイスマエルを生んだ。
神は気紛れで、90歳になったサラを妊娠させ、イサクが生まれた。
神はイサクを愛し、その子孫がユダヤ人となった。
腹違いの兄イスマエルはアラブ人の祖となった。
同じセム族なのにここで奇妙な亀裂が入った。
ユダヤ人イエスの生涯を語る新約聖書にはイサクだけが語られた。
アラブ人ムハンマドのコーランには逆にイスマエルだけが語られた。
イスラム教徒はメッカのカーバの黒石を巡ったあとザムザムの泉に行ってその水を飲むのが形だ。
サラにいびり出されたハガルと幼いイスマエルが渇きで死にかけたとき砂漠の中から湧き出た泉がそのザムザムだ。
そんなわけで同じセム族なのにユダヤ人とアラブ人はずっと憎しみ合ってきた。
イスラム最盛期にはエルサレムも征服し、ユダヤ教徒の聖地ソロモンの丘にイスラムの神殿『岩のドーム』を建てた。
ユダヤ教徒にはその丘の西の壁だけが残され、それで世間は『嘆きの壁』と呼んでいる。
先の大戦のあと、国連はパレスチナの地を分割して一方にユダヤ人の国イスラエルの建国を認めた。
アラブ人は怒る。オレたちが取った地にユダヤ人の国を作らせるな。
かくてイスラエル建国の翌日からシリア、イラクなどアラブ諸国がイスラエルを攻めに攻めた。
およそ30年間、4度も戦い、双方とも嫌気がさして今は膠着状態にある。
考えてみれば同じ血が流れるセムの民だ。最近は近親憎悪も薄れ、サウジもエジプトもイスラエルとの和解を選び出した。
ところが『そんな和解は認めない』『イスラエルを滅ぼさねばならない』と脇から煽る国がある。ペルシャ人の国イランだ。
彼らは人種的にはアーリア系でギリシャの民とは同族になるが、宗教はオリンポスの神々ではなく、ペルシャ人預言者ゾロアスターの教えを信仰する。
因みに聖典『アベスタ』には『悪が蔓延(はびこ)るとき処女が懐妊して救世主が生まれ、悪を倒して千年王国を立てる』とか『最後の審判』とかが描かれている。ゾロアスター教は中東の民にも影響を与え、バビロンに囚われたユダヤ人はアベスタを下敷きにユダヤ教(旧約聖書)を書き下ろしている。
ユダヤ教から生まれたキリスト教はもっと露骨にマリアの処女懐胎から救世主の復活を語った。
イスラム教はそのすべてをひっくるめ、モーゼもイエスも登場させている。
ゾロアスター教徒のペルシャ人にすればイスラムも可愛い孫宗教に見える。
この際、本家としてイスラム世界を糾合し、彼らの敵イスラエルを倒して見せようとホメイニ師は考えた。
それでイラン式ジハードをアラブ人に教え込んだ。いわゆる革命の輸出だ。
平たく言うと『殉教すれば本人は72人の金髪の美女が待つ天国に行ける』(AP)し、遺族には『かなりの年金が出される』と。
それはアラブの若者を十分刺激し、自爆テロを志願する者が列をなした。
イランは自爆に必要な機材と遺族のための年金を用意し、今では国家予算の半分が対イスラエル工作に使われている。
しかぢペルシャ人は基本イスラム教徒ではない。酒も不倫も大好きだ。ユダヤ人も別に憎くもない。今度の五輪では亡命イラン人柔道選手とイスラエル人選手が談笑していた。
しかしイラン政府はイスラムの頂点を目指して国費を乱費し続ける。国民はそっぽを向く。今度の大統領選も大半が棄権した。
一方のアラブ人もお節介に自爆テロを持ち込む余所者にうんざりしている。
そんな中、NHKの豊原謙二郎アナが五輪開会式でイランを『アラブの国』に数えていた。
当事者がみな顔を引きつらせた珍しい例だ。」
・ ・ ・
現代日本の中に「中立的な立場にある日本は中東の混乱、中東の戦争を調停する事ができる」という日本人がいるが、彼らは歴史・宗教・文化が理解できない日本人である。
・ ・ ・
同じイスラム教徒と言っても、アラブ系イスラム教徒とペルシャ系イスラム教とは100%同じではない。
・ ・ ・
褐色人種と言っても、ペルシャ人とアラブ人は違う言語系統を話す異なった人種であり民族である。
ユダヤ人とアラブ人は、旧約聖書、ノアの息子であるセムの子孫である。
セムは、アッシリア、アラビア、イスラエル、アラムなどの諸民族の祖。
大辞林4.0 :ユダヤ人は、ユダヤ教を信仰する人々。古代ではパレスチナに居住していたイスラエル人の子孫である。
ユダヤ人とアラブ人との戦争の原因は、宗教対立ではなく、民族のDNA遺伝子に刻まれた「神に愛された弟(イサク)と神に見捨てられ追放された兄(イシュマエル)」という物語による消し難い近親憎悪で、その原因を作ったのはユダヤ教のアブラハムであった。
広辞苑 :アブラハム(旧約聖書で「諸国民の父」の意とされる)前2000年頃の人。旧約聖書では、子イサクを通じてイスラエルの民の祖、また、子イシュマエルを通じてアラブ人の祖。
・ ・ ・
イサクは絶対神に祝福された正妻の子で、イシュマエルは正妻が夫アブラハムに差し出した女奴隷の子であった。
イサクはアブラハムの後継者とされ、イシュマエルは母親と一緒にアブラハムの元から荒れ野へと追放された。
・ ・ ・
広辞苑
中近東 :中東と近東との総称。おおむねペルシアおよび旧オスマン帝国の領土に相当。
近東 :バルカン諸国・トルコ・シリア・エジプトなど旧オスマン帝国領に対するヨーロッパの呼称。
大辞林4.0
中東 :ヨーロッパから見た名称で、極東と近東の間の地域。20世紀初めまではインド半島・イラン・アフガニスタンなどの総称として用いられた。
ベドウィン:アラビア半島内陸部を中心に、シリア・北アフリカの砂漠に生活するアラブ系遊牧民。ラクダを中心に山羊や羊を飼育する。
・ ・
広辞苑
アラブ人 :本来はアラビア半島に住むセム系の遊牧民の総称。現在はアラビア語を母語とし、イスラム勃興以降のアラブの歴史・文化遺産に帰属意識を持つ人々を指す。西アジアから北アフリカにかけて居住。アラビア人。
ペルシア :(イラン南西部の古代地名パールサP rsaに由来)イランの旧称。アケメネス朝・サファヴィー朝・カージャール朝などを経て、1935年パフレヴィー朝が国号をイランに改めた。
・ ・
明鏡国語辞典
アラブ :アラビア語を母語とする民族。アラブ人。また、サウジアラビア・イラク・エジプトなど、アラブ諸国の総称。
・ ・ ・