🦟8」─1─中国共産党の世界支配の為の資源・食糧・エネルギー戦略。~No.20No.21No.22 

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 2023年4月26日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「中国の一極支配が進む「資源と産業の世界地図」 強固なエネルギー基盤を築いた強かな国家戦略
 コロナ禍で減速したものの、中国の経済成長には目を見張るものがあります(写真:まちゃー/PIXTA
 ロシアによるウクライナ侵攻を機に、ドイツや日本をはじめ、数多くの国でエネルギー安全保障の問題が顕在化している。そうした中で、ロシアや中東諸国といった資源国との連携を深めつつ、再エネ産業を推進することで、エネルギーの供給基盤を強化しているのが中国である。
 等記事では、元資源エネルギー庁石油天然ガス課長で、現早稲田大学教授の平田竹男氏の新刊『世界資源エネルギー入門』から一部抜粋し、資源と産業の両面で存在感を高める中国の強かな戦略について論じる。
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■強固なエネルギー基盤を確立
 コロナ禍で減速したものの、中国の経済成長には目を見張るものがあります。アメリカも先進国のなかでは成長率は高いほうですが、中国の成長はそれをはるかに上回るもので、いまや名目GDPアメリカに迫る勢いです。
 そして、経済の成長に伴い、中国の1次エネルギーの消費量は、アメリカの1次エネルギー消費量を2009年に逆転し、それ以降も増加し続けています。中国は1990年頃まではエネルギー自給国でしたが、現在は、世界最大のエネルギー輸入国となっています。
 しかしながら、中国は自らが描いたエネルギー戦略を着実に実現しています。注目すべきは、化石燃料、再生エネルギー、資源外交の3点です。
 まず化石燃料ですが、20数年前、筆者は資源エネルギー庁の石油天然ガス課長の職にありました。当時の中国は、石油利権の確保に懸命で、スーダンなどアフリカの権益を次々と買い漁っていました。天然ガスでは、LNG(液化天然ガス)輸入のための港湾の建設を進めたり、西気東輸政策を始めたばかりで、心もとない状況でした。
 それがどうでしょう。現在では、LNGもパイプラインを次々と建設し、エネルギーの輸入インフラは万全な状態です。ミャンマーからは中国ミャンマーパイプラインが、トルクメニスタンからは中央アジアパイプラインが完成し、さらにはロシア、シベリアからのパイプラインも稼働・拡大しています。
 わずか10数年足らずの間に、このように中国は化石燃料で確固たる供給体制を築き上げたのです。
 次に、再生エネルギーです。1997年、京都議定書が取りまとめられた当時とはまったく違い、再生エネルギーの増加は著しいものがあります。それどころか、中国は、太陽光発電などのためのパネルなど関連産業の育成に成功しており、世界の再生エネルギーの設置、運営をリードしています。
 その結果、水力発電風力発電太陽光発電関連設備の製造では、世界のベスト10の多くを中国企業が占めています。
 風力発電は装置だけでなく、発電運営会社の世界市場シェアの上位8社のうち、6社が中国企業です。世界の水力発電所建設については70%、世界の風力発電設備生産量では50%を中国企業が請け負っています。
 太陽光発電設備についても、世界の生産量のうち、ポリシリコンが58%、シリコンウエハーが93%、太陽電池セルが75%、太陽電池モジュールが73%と、中国企業の活躍が目立つ分野です。
 中国の再エネ支配力は、ある意味ではOPECよりも世界へのインパクトを持つものになる可能性があります。というのも、グラスゴー合意に基づき世界が再エネシフトに拍車をかければかけるほど、中国の関連産業が潤う仕組みとなっているからです。
■電気自動車で存在感を高める中国製造業
 それを象徴するのが電気自動車です。2021年における世界の電気自動車の販売台数の1位はテスラです。アメリカの会社ではありますが、中国やドイツでも生産しており、テスラは中国とも深い関係があります。それから、2位がBYD、3位がSGMWという会社で、ともに中国の会社です。7位も上海汽車という中国の会社です。上位10社のうち、中国企業が3社入っています。
 ドイツのメーカーも上位10社のうち4社にランクインしており、フォルクスワーゲンBMWメルセデスがそれぞれ4位、5位、6位です。さらにアウディが9位につけていますが、合計という意味では中国にかないません。また、8位のボルボスウェーデンの会社ですが、資本は中国です。10位、11位がヒュンダイ、キアで、韓国の会社が入ってきています。
 12位以降は基本的に中国のメーカーがほとんどです。13位にフランスのルノー、16位に日本のトヨタ、17位にアメリカのフォードとなっていますが、基本的に中国の会社が並んでいます。  
 それから19位に「小鵬汽車(シャオペン)」という会社がありますが、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng)、理想汽車(LiAuto)が中国の新興EVメーカーの御三家です。これらは三兄弟と言われており、まだまだ採算を採るのに苦労していますが、どんどん伸びてきています。
 また、中国は電気自動車の輸出を手がけています。2021年度においては、欧州に23万台を輸出しており、前年度の4.8倍です。また、アジアには22万台を輸出しており、日本にもBYDのバスが入ってきたり、東南アジア各地への輸出もしています。
 このように躍進する中国の電気自動車ですが、その背景には中国政府による政策があります。中国政府は、消費者には購入補助や免税といった金銭的インセンティブを与える一方、完成車メーカーや自動車の輸入事業者に対しては、従来の燃料車の生産・輸入台数に応じて、新エネルギー車(電気自動車、プラグインハイブリッド車燃料電池自動車)の生産義務を課しています。
 要するに、新エネルギー車を作っていなかったら、ガソリン車の輸出や生産はできないということです。その結果、新エネルギー車の国内販売台数は年々増え、2019年には新エネルギー車の割合が4.7%まで上がっています。そのなかでも、8割は電気自動車であり、テスラの電気自動車も中国ではよく売れています。
 中国は省エネ・新エネ車の技術ロードマップ2.0というものを発表しており、2025年、30年、35年の目標値が設定されています。ガソリン車の割合を25年には40%に、30年には15%、35年には0%に減らすという目標を掲げています。
 そして、ハイブリッド車は25年に40%、30年には45%、35年には50%に増やすことを目標にしています。それからEVなど、新エネルギー車は現状5%ですが、これを25年には20%、30年には40%、35年には50%まで増やすことを目標にしています。電気自動車へのシフトを打ち出し、ガソリン車をゼロにしていくという目標を明らかにしているわけです。
■現実主義的な温暖化対策「3060目標」
 中国は、CO₂​の排出量において、現在ダントツの世界1位です。2位のアメリカの2倍、3位のインドの4倍の量を排出しています。したがって、中国がCO₂排出量をどのように減らしていくのかは、中国のみならず世界にとっても大きな問題となります。
 カーボンニュートラル政策としては、2020年9月の国連総会において、習近平国家主席は環境問題への取り組みに関する中国の長期構想を発表しています。
 1つ目は、2030年までにカーボン・ピークを達成、つまり、CO₂排出量をピークアウトさせるということです。2つ目が、2060年までにカーボンニュートラルを達成させるということです。中国においてこれらの目標は「3060目標」と呼ばれ、カーボンニュートラル政策における大きな転換点となりました。
 中国の天然ガス供給の対外依存度は、45%を上回っています。自国でも天然ガスを産出しており、シェールガスも採れるとはいえ、それ以上に消費量が増加しており、今後も増えていくものと考えられます。
 そうした状況のなか、近年、輸入先として割合が増えてきているのが、ロシアです。2019年12月に完成した「シベリアの力」というパイプラインによって、東シベリアから天然ガスを輸入しています。さらに、西シベリア、東シベリアからの天然ガスを、モンゴル経由で輸入する「シベリアの力2」も建設予定です。
■資源外交で高まる「中国の影響力」
  また近年、中国はロシアだけではなく、他のエネルギー諸国とも精力的な資源外交を展開しています。
 2022年12月7日から10日まで、習近平サウジアラビアを訪問しました。近年、共にOPECプラスを設立し世界の油価をコントロールするなどロシアとの接近が目立つサウジアラビアですが、そこに中国が加わり、石油天然ガス開発、技術分野での協力、さらには金融分野においても協力を深めることで、石油の輸入代金にドルを使わない「脱ドル政策」を推進することが見えてきました。
 さらに2023年3月10日、中国の仲介により、サウジアラビアとイランが歴史的な和解をし、国交関係を樹立しました。これまで中東に深く関与してきたアメリカが、シェール革命を実現したことでエネルギー自給を達成し、中東への関心を以前ほど見せなくなっていたことを危惧する声がありましたが、中東最大の懸案であるこの両国関係をアメリカ抜きに改善したことに世界は驚きました。
 イランは日本と長く友好関係にある国ですが、ウクライナ侵攻ではロシアにドローンなどを提供していると報じられています。ロシア、中国、サウジアラビア、イランが手を組むようになれば、西側諸国には不都合なシナリオが浮かんできます。
 以上、中国のエネルギー戦略について、化石資源、再生エネルギー、資源外交の3つのポイントについて述べました。次々と計画が実現して中国の資源エネルギー戦略を担当する官僚は大変やりがいを感じていることでしょう。エネルギー安全保障の観点でとらえれば、日本も参考になる部分は敬意を払い取り入れていく必要があると感じています。
 平田 竹男 :早稲田大学教授/早稲田大学資源戦略研究所所長
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