🐒32」ー1ー西側諸国で広がる「中国失望論」。習主席の3回の挫折で儚く消えた「民主化の火」。~No.87No.88No.89 

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 10月4日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「西側諸国で広がる「中国失望論」…知られざる習近平の「3回の挫折」と儚く消えた「民主化の火」
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長
 中国人は何を考え、どう行動するのか?
 講談社現代新書の新刊『ほんとうの中国 日本人が知らない思考と行動原理』では、日本を代表する中国ウォッチャーが鋭く答えています。
 本記事では、〈じつは中国の軍事力は「攻め」より「守り」を重視していた…孫子が説いた「意外な戦術」〉に引き続き、中国の皇帝制度と「中国式民主」について詳しくみていきます。
 ※本記事は、近藤大介『ほんとうの中国 日本人が知らない思考と行動原理』(講談社現代新書)より抜粋・編集したものです。
 皇帝制度と「中国式民主」
 昨今、アメリカを中心に、西側諸国の間で「中国失望論」が喧しい。曰く、
 「中国の経済発展をサポートしていったら、ある程度、経済発展した段階で、政治の民主化に移行するかと期待していた。ところが中国は、まるで違う方向に進み、習近平という皇帝を戴く強大な専制国家に変貌を遂げてしまった」
 アメリカ人の気持ちは分からなくもない。私も先代の胡錦濤政権の時までは、同様の期待感を抱いてきたからだ。
 儚く消えた「民主化の火」
 胡錦濤政権では、温家宝首相が責任者となって、内部で「民主化研究」を進めていた。私はこのプロジェクトに関わっていた学者に話を聞いたことがある。
 「小村の民主化から都市の民主化へ」(先徴観後宏観)「地方の民主化から首都の民主化へ」(先外囲後中心)「共産党内部の民主化から国家全体の民主化へ」(先易後難)という三原則のもと、段階的な民主化への移行を議論していたという。
 実際、温家宝首相は欧州歴訪の前日(2006年9月5日)、英『ロンドンタイムズ』他5社の協同取材に答えて、こう述べている。
 「民主というのは人類が共同して追究する価値観であり、共同で創造した文明の成果だ。(中略)直接選挙によって民主的に郷や鎮を管理することができれば、次は県を、その次は省を管理することができるだろう。そうやっていつの日か、国民が完全に国家を管理できる日が来ると確信している」
 ところが、2013年3月に正式に習近平政権が発足すると、「民主化の火」は掻き消された。2023年3月に異例の三期目に突入した際には、「総体国家安全観」(社会の総合的な安全)を前面に押し立て、さらにいっそう「安全」を優先させていく方針を打ち出した。
 「三回の挫折」
 1953年6月に習仲勲副首相の息子として生まれた習近平氏は、人生においてこれまで「三回の挫折」を味わっている。一回目は、1966年から10年続いた文化大革命で、青春時代に7年近く(1969年~1975年)、陝西省の梁家河という寒村で肉体労働に従事した。そこで毛沢東思想を徹底的に植え付けられたのだ。
 文化大革命 photo by gettyimages
 © 現代ビジネス
 二回目の挫折は、1989年に若者たちが政治の民主化を要求して北京の天安門広場を占拠した天安門事件である。この時、福建省共産党幹部(寧徳地方党委書記兼寧徳軍分区党委第一書記)だった習近平氏は、「民主化要求=社会混乱」と捉えた。
 三回目は、1991年のソ連崩壊である。当時は福建省福州市党委書記兼福州軍分区党委第一書記。ソ連を「社会主義の兄貴分」と敬愛していた習近平氏は、ミハイル・ゴルバチョフ書記長のような改革派がソ連国内を混乱させたと考えた。また、その後の新生ロシアの混乱ぶりも、「政治の民主化」を否定的に捉える根拠となった。
 こうして習近平主席・総書記は、中国共産党の伝統的な「民主集中制」を引き継いだ。
 共産党総書記という「皇帝」
 「民主集中制」はひと言で言えば、主権者である全国民が自分の政治的権利を、中国共産党中央委員会習近平総書記)に預ける。党中央は、そうして全国民から預かった絶対的な権限を、最大多数の国民の利益のために行使するという制度だ。
 中国の民主について、中国の関係者に改めて聞くと、こう答えた。
 「アメリカは約250年前に、世界各国から移民が集まって作った国だ。誰もが一票を持って大統領を選ぶことで安定を保ったのだ。
 それに比べてわが国は、偉大な古代の中華文明を引き継いで、四千年もの悠久の歴史を有している。特に、皇帝制度を二千年以上の長きにわたって連綿と続けてきた。
 それはわが国にとって、皇帝制度こそがもっともふさわしい統治の方法だからだ。広大な中国大陸に暮らすわれわれ中国人は、皇帝という『重石』を上に戴かないと、すぐに分裂してカオス状態と化してしまう。もしもアメリカ式の大統領選挙など実施したら、多額の賄賂が飛び交うか、候補者が暗殺されるか、多くの有権者が投票用紙に自分の名前を書いたりして、大混乱に陥るだろう。
 そもそも、もしもデモクラシー(民主)なるものがそれほどすばらしいものなら、中国史において、どこかで誰かが試しているはずだ。わが国には、『民が主』の欧米式民主よりも、皇帝という『民の主』による『中国式民主』がふさわしいのだ」
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 さらに〈10年で、半数の大富豪が「消えた」中国の現実…日本とは比較にならない、中国の「ハイリスク社会」〉では、中国の「ハイリスク社会」について詳しくみていきます。
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