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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
中国共産党は、反宗教無神論者である。
イスラム教原理主義テロ組織にとって、新たな超大国・中国はアメリカに変わる憎悪の標的になりつつある。
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2024年10月18日19:02 YAHOO!JAPANニュース FNNプライムオンライン「中国人を狙ったテロで死者が…広がる反”一帯一路”の声 海外邦人に対するリスク
パキスタン南部カラチにある国際空港付近で10月6日、中国人たちが乗車する車列に対する爆破テロが発生し、中国人2人を含む3人が死亡、10人以上が負傷した。
【画像】中国人と間違われた?日本人ケガのテロも発生
実行したのはパキスタン南西部バルチスタン州の分離独立を主張する反政府武装組織「バルチスタン解放軍」で、事件後、バルチスタン解放軍は中国人を狙ったとする犯行声明を出した。
「一帯一路」への反発
中国の習政権は巨大経済圏構想「一帯一路」を進めるにあたり、パキスタンを戦略的同盟国に位置付け、長年多額の経済支援を行い、高速道路や湾岸施設などインフラ整備で協力を深めてきた。
しかし、バルチスタン州には鉄鉱石や石炭、天然ガスなど資源が豊富であるにもかかわらず、失業率や貧困率がパキスタンでも最悪のレベルで、その恩恵が現地のバルチ人に還元されないという不満がバルチスタン解放軍にはある。
カラチでは2022年4月にも、大学校内にある孔子学院という中国政府が運営する施設付近で自爆テロが発生し、中国人3人を含む4人が死亡し、バルチスタン解放軍は犯行声明を出し、中国人が搾取と占領を続ければ今後も中国人を標的とした攻撃を続けると警告した。
また、2018年11月には在カラチ中国領事館に対するテロ攻撃があり、銃撃戦の末に警察官2人を含む4人が死亡し、この事件でもバルチスタン解放軍は同様の声明を出している。バルチスタン解放軍は他の地域でも中国権益を狙ったテロを繰り返しており、中国政府はパキスタン政府に対して中国人の安全を徹底するよう強く求め続けている。
しかし、中国が一帯一路プロジェクトを対外的に進める中、それによって親中国的な姿勢に徹する国々が増えているのは事実であるが、それに対する反発も聞こえてくる。
一帯一路が失速するとの研究結果が
例えば、アフリカのザンビアでは2020年6月、首都ルサカ郊外にあるマケニ市で中国企業の中国人幹部3人が現地の従業員2人に殺害されるという悲惨な事件があった。この事件の背景には、同中国企業で働く地元住民たちが中国人幹部から不当な雇用条件を強要されるなどの不満があったとされるが、現地では中国企業の不当な雇用や扱いに対して不満の声が広がっており、地元の行政機関なども中国人のみの雇用を止めるべきだと指摘した。
このような中、2021年9月、米ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所が発表した統計によると、これまで中国が実施してきた一帯一路プロジェクトのうち、全体の35%で労働違反や汚職、環境汚染などの問題が発生し、マレーシアで115億8000万ドル、カザフスタンで15億ドル、ボリビアで10億ドルものプロジェクトが中止に追い込まれ、今後一帯一路は失速すると指摘した。
パキスタンやザンビアだけでなく、グローバルサウス諸国では反”一帯一路”の声が今後も続くことだろう。グローバルサウス諸国では今後人口が急激に増加するが、それに見合うペースで安定した雇用が創出されるかは未知数であり、中国が一帯一路を進めていく中で地元民の不満が蓄積し、中国権益(中国人)に対する抗議デモや犯罪、最悪の場合はバルチスタン解放軍のようなテロという形で不満が示されることだろう。
日本人が中国人と間違われテロの標的に…
そして、海外邦人の安全の観点から、我々はその動向を注視していく必要がある。カラチでは今年4月、日本人駐在員5人が乗った車に対する自爆攻撃が発生し、日本人1人が負傷する事件が発生したが、この事件では犯行声明は出ていない。
しかし、上述の通り、パキスタン国内では中国人を狙ったテロが断続的に発生しており、この事件も当初は中国人を標的にしていたのではないかと筆者は考える。事件が報道されると日本人だったということで、もしかするとバルチスタン解放軍は犯行声明の発表を控えた可能性もあろう。テロという形で不満を示すのは決して許されないが、バルチスタン解放軍はアルカイダやイスラム国などのジハード組織とは異なり世俗的な武装勢力であり、標的を冷静に判断し、決して日本に強い敵意を抱いているわけではないだろう。
しかし、海外邦人の安全の観点から、パキスタンを含めグローバルサウス諸国の人々が中国人と日本人を明確に区別できるかと言えば、その可能性は基本的には低いだろう。4月の事件もそれによって日本人が乗る車列が標的となった可能性もあり、反一帯一路の声が広がる中、海外邦人が誤って中国人と判断されるリスクというものを注視していく必要があろう。日本企業の間でもグローバルサウスへの関心が広がっているが、駐在員の安全という観点から反一帯一路の動向を注視していくべきだろう。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】
和田大樹
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2024年10月8日20:35 YAHOO!JAPANニュース ニューズウィーク日本版「パキスタンの空港近くで「中国人狙い」の爆破テロ──反政府武装勢力が犯行声明
<中国人2人が死亡した爆破テロで犯行を認めた反政府勢力は、「一帯一路」構想の一環でインフラ開発に携わる中国人を敵視している>
中国人を乗せた車列は、空港を離れるところを爆弾テロに襲われた(10月6日)
パキスタン南部の都市カラチにある国際空港の近くで10月6日の夜に爆発があり、中国人2人が死亡したほか8人が負傷した事件について、パキスタンからの分離独立を求める反政府武装勢力、バルチスタン解放軍(BLA)が犯行声明を出した。爆発は自爆テロによるものだったという。【シャミム・チョウドリー】
【動画】「中国人を狙った」爆弾テロが再び
パキスタンでは10月15日と16日に、中国とロシアが西側の影響力に対抗するために設立した安全保障同盟、上海協力機構(SCO)の首脳会議が開催される予定だが、今回の事件を受けて、首脳会議に伴う諸外国の要人の安全確保に懸念の声が上がっている。
パキスタンの各ニュースチャンネルは、複数の車両が炎に包まれ、現場から濃い煙が立ちのぼる様子や、軍や警察が現場一帯を封鎖する映像を放送した。対テロ当局者たちは、実行犯がどのようにして警備を突破することができたのか調査を進めている。
BLAの報道官であるジュナイド・バロチは今回の自爆テロについて、同空港に到着した中国人のエンジニアや投資家の車列が標的だったと述べた。BLAはパキスタン南西部にあるバルチスタンを拠点としており、過去にもパキスタン国内で外国人や治安部隊を標的にした攻撃を行っている。
<首脳会議を前に攻撃の恐れも>
イスラマバードにある在パキスタン中国大使館は、標的となった車列に乗っていた人物の中には、中国とパキスタンの合弁会社が開発した石炭火力発電所「ポート・カシム電力」のスタッフが含まれていたことを確認した。
パキスタンの治安当局によれば、車列が移動を始める前に、空港の外の道路は爆発物処理班が安全を確認していた。だがAP通信に匿名で話をした関係者によれば、地元住民や旅行者の利便性のために、道路は完全には封鎖されていなかったという。
パキスタン外務省は事件を「凶悪なテロ攻撃」と非難し、犠牲者の家族に哀悼の意を表した。パキスタンのシェバズ・シャリフ首相はBLAを「パキスタンの敵」と非難、テロに関与した者を必ず処罰すると断言した。
「この許しがたい行為を強く非難し、中国の指導部および国民の皆様に心からの哀悼の意を表明する」とX(旧ツイッター)に投稿し、「パキスタンは中国の友人たちの安全を守ることを約束する。彼らの安全と安心を守るために全力を尽くす」と中国に気を遣った。
アメリカからもパキスタンからもテロ組織に指定されているBLAは、約3000人の戦闘員を抱えているとみられ、パキスタンの治安部隊を標的とした攻撃を頻繁に行っている。アナリストはBLAについて、近年では人々の注目を集めるような攻撃を行う能力が向上していると述べており、上海協力機構の首脳会議に向けてさらなる攻撃の可能性が高まっているとみている。
中国人による「搾取や占領」を非難
ポート・カサム電力は、中国電力建設集団の傘下にある中国電建集団海外投資有限公司の一部であり、事件を受けて対応を調整中だ。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」構想の一環としてパキスタン国内での大規模なインフラ整備計画に資金を提供しており、これらの事業に携わる大勢の中国人労働者がパキスタンで暮らしている。
BLAはバルチスタンの独立を求めて長年にわたって活動を続けており、中国人が同地域での「搾取や占領」をやめなければ中国人を標的にした攻撃を行うと繰り返し警告してきた。8月にはバルチスタンで中国が出資する開発プロジェクトを標的にした一連の攻撃で50人以上が死亡した。
バルチスタンはパキスタンで最も大きいが最も人口が少ない州で、石油や鉱物資源が豊富だ。少数民族のバルチ族が暮らしており、彼らは中央政府から差別や搾取を受けていると主張している。
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2022年11月8日 YAHOO!JAPANニュース FNNポライムオンライン「隣国は何をする人ぞ 習近平3期目が抱える課題 …中国を狙ったテロと一帯一路構想への反発
中国のテロとの戦い
習近平国家主席の3期目がスタートした。3期目というと新たに5年という区切りを想像するが、2018年3月に国家主席の任期2期10年という党規約を撤廃した習氏であるので、それ以上に延びる可能性は高いと言えよう。
10月の共産党大会で、習氏は2035年までに社会主義現代化強国をほぼ確実にし、今世紀半ばあたりまでに社会主義現代化強国を実現させる意気込みを示した。また、台湾問題にも言及し、祖国の完全な統一は必ず実現しなければならないし、間違いなく実現できるとし、平和的な統一を堅持するが武力行使を決して放棄しないと改めて強調した。
3期目がスタートした習近平体制
バイデン政権は中国との戦略的競争を最も重視する姿勢を鮮明にしており、共産党大会での習氏の主張を含め、米中の安全保障や経済、サイバーや宇宙、テクノロジーなど多方面での競争・対立は今後いっそう激しさを増すことだろう。
しかし、テロリズム研究者として、筆者は習氏には悩ましい1つの問題があるように考える。それは中国のテロとの戦いだ。テロとの戦いというと、米国とアルカイダ、イスラム国などを思い浮かべるが、何もこういったイスラム過激派、イスラム教国で活動する地域的な武装勢力の標的は欧米諸国に限定されない。そして、中国はその標的となり、習政権10年の間でも、中国国外にいる中国人や中国権益が狙われるテロ事件が断続的にみられる。ここでは2つのケースを紹介したい。
中国を狙うテロが絶えないパキスタン
1つは、パキスタンだ。日本ではあまりメインで報道されないが、中国が進める一帯一路構想で常連国となっているパキスタンでは、中国権益を狙ったテロが絶えない。2022年4月下旬には、パキスタン南部の都市カラチの大学で自爆テロ事件が発生し、中国人3人を含む4人が犠牲となった。その後、同テロ事件ではパキスタンからの分離独立を掲げる武装闘争を続ける「バルチスタン解放軍(BLA)」が犯行声明を出し、中国が搾取と占領を止めなければ今後も現地で中国人を標的にしたテロ行為を続けると警告した。
一帯一路構想で連携強める中国とパキスタン
BLAは以前から中国権益を狙うテロ事件を繰り返している。大きな事件では2018年11月、武装した集団がカラチにある中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡した。この事件でもBLAは同様に犯行声明を出し、中国が地元の資源を搾取し続けており、それを停止しない限り攻撃を続けると警告した。また、2019年5月には南西部バルチスタン州グワダルにあるパールコンチネンタルホテルで武装勢力による襲撃事件が発生し、ホテルの従業員など5人が死亡したが、BLAは同事件でも中国人や外国人投資家を狙ったとする犯行声明を出している。
一方、他のイスラム過激派による中国権益を狙った事件も続いている。2021年7月には、北西部のカイバル・パクトゥンクワ州で中国人たち30人以上が乗るバスが爆発して谷に転落し、少なくとも中国人9人を含む13人が死亡した。その多くは一帯一路のプロジェクトに従事する中国人技術者たちだったが、その後、パキスタン政府はイスラム過激派「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の戦闘員が爆発物を積んだ車両でバスに突っ込んだと発表した。また、同年4月には、バルチスタン州の州都クエッタにあるセレナホテルで爆発物を用いたテロ事件があり、4人が死亡、11人が負傷した。事件後にTTPが犯行声明を出したが、当時このホテルには在パキスタン中国大使が宿泊していたとみられるが、事件当時大使はセレナホテルに滞在しておらず無事だった。
このようにパキスタンでは、同国に経済的な浸透を見せる中国への反発がテロという形で顕著に表れている。習政権の1期2期の10年間でも多くの反中テロが起こっているが、3期目もパキスタンとの既存の関係が続く可能性が高いことから、3期目においても反中テロというものが続くことが懸念される。
中国とタリバンの複雑で難しい関係
もう1つがアフガニスタンである。昨年夏にイスラム主義勢力タリバンが実権を再び掌握した以降も、同国ではタリバンとアルカイダが密接な関係にあり、アルカイダの他にもインド亜大陸のアルカイダ(AQIS)、同国でシーア派権益を中心にテロ攻撃を頻繁に続けるイスラム国のホラサン州、中国からの分離独立を掲げるウイグル系過激派、インドが警戒するパキスタンを拠点とするイスラム過激派など多くの組織が今なお存在する。国連安保理などが近年公開する情報によると、アルカイダのメンバーが同国に400人から600人、AQISのメンバーが180人から400人、そして中国も懸念するウイグル系の過激派は500人程度いるという。
そういう統計も懸念してか、中国の王毅外相は2021年7月下旬、天津市でタリバンの幹部と会談し、タリバンがテロ組織と関係を断つことを強く望むとの意思を示した。タリバンが実権を再び掌握して1年が過ぎるなか、中国は依然として同国でウイグル系過激派が組織を拡大し、それが新疆ウイグル自治区の分離独立問題に飛び火することを警戒している。
新疆ウイグル自治区を訪問する習主席(2022年7月)
10月の共産党大会の前後でも、たとえば、北京市北西部にある四通橋では「ロックダウンではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食糧を」、「独裁の国賊・習近平を罷免せよ」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられ、上海でも若い女性2人が「不要」などと書かれた横断幕を持って車道を歩く動画がツイッター上に投稿された。チベット自治区の中心都市ラサでは新型コロナ政策に抗議する数百人レベルの大規模デモが発生し、一部が警官隊と衝突したとされるが、ゼロコロナの徹底や経済成長率の鈍化などにより、中国国内では社会的、経済的な不満、反政権的な怒りが高まっていると思われる。こういった反政権的な動向は、習政権3期目のウイグル過激派への警戒心をいっそう高める要素となろう。
アフガニスタンはリチウムや鉄、金、ニオブ、水銀、コバルトなど鉱物資源が豊富で、中国はこれらの鉱物資源の確保を重視し、同国を一帯一路の経済圏構想を進めるうえで重要なポイントと捉えている。アフガニスタンから米軍が撤退したことで、中国にとっては正に米中対立の中で政治的空白を埋めるためにもチャンスな時と言えよう。しかし、タリバンとアルカイダの関係、アルカイダとウイグル過激派の関係など中国にとっては懸念材料も多い。習政権3期目としても、経済的にタリバンへの支援を強化したとしても、その恩恵が警戒するイスラム過激派などに渡ることは絶対に避けたい。そこに中国とタリバンの複雑で難しい関係がある。
タリバンのムラー・アブドゥル・ガニ・バラダル政治責任者と中国の王毅国務院議員兼外相(2021年7月28日・天津)
一方、今後中国のアフガニスタンへの関与がいっそう強まれば、同国で中国権益を狙ったテロが増加する可能性が高い。2022年9月、アフガニスタンで活動するイスラム国系武装勢力「イスラム国ホラサン州」がカブールにあるロシア大使館を標的に自爆テロを起こしたが、Militantwireによると、イスラム国ホラサン州は最近発表する声明の中では諸外国への敵意を示し、特に中国への敵意が強く示され、今後は同国で政治・経済的な浸透を見せる中国権益へのテロが増える恐れが指摘されている。
欧米ほど多くはないものの、これまでもイスラム国やアルカイダは中国を名指しで非難し、テロで狙うとするメッセージを配信してきた。BLAのような脅威も続いている。習政権3期目も、これまでと同様の“中国のテロとの戦い”は今後も続くことだろう。
【執筆:和田大樹】
和田大樹
株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO/一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事/株式会社ノンマドファクトリー 社外顧問/清和大学講師(非常勤)/岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員。
研究分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研
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2024年4月22日 YAHOO!JAPANニュース FNNポライムオンライン「中国人と誤認して自爆テロか?日本人5人狙われ1人負傷…パキスタンで頻発する中国人狙いのテロ
中東ではイスラエルとイランの軍事的緊張が続く中、パキスタンでは日本人が負傷する襲撃テロ事件が発生した。パキスタン南部カラチで4月19日朝、日系企業の駐在員5人が乗った車両が襲撃され、1人がガラスの破片によって足に軽傷を負った。
自爆テロの現場にはモノが散乱していた パキスタン・カラチ 4月19日
5人は住まいから会社の工場に向けて車列を組んで通勤している最中にオートバイに乗った2人組から突然襲撃を受け、1人は身体に爆弾を巻き付けており、地元当局は自爆テロとの見方を示した。日本人5人の命が無事であって本当に良かったが、海外に駐在員や出張者を送る企業としては、“テロから社員の安全と命を守る”を改めて徹底する必要があろう。
このようなテロ事件が起これば、おおよそ何らかの武装勢力から犯行声明が出されるが、現時点で犯行声明は出ていない。しかし、近年のパキスタンのテロ情勢をもとに今回の事件を検証してみたい。
実は中国人狙いだった?
まず、今回の事件では日系企業の駐在員が乗る車列が攻撃を受けたということで、自然に日本人が標的となったと連想するかも知れない。その可能性もゼロではないが、筆者としては、実行犯2人は中国人を意識して襲撃したのではないかと考える。
日本人5人が乗っていた車両のフロントガラス パキスタン・カラチ 4月19日
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」により、パキスタンに多額の経済支援を実施し、経済的浸透を深めている。それによって多くの中国企業がパキスタンに進出しているが、パキスタン政府と経済的な親睦を強める中国への不満が地元で強まり、中国人を狙ったテロ事件が相次いでいる。
今回の事件と同じカラチでは2022年4月に大学で自爆テロ事件が発生し、中国人3人を含む4人が死亡した。事件後、パキスタンからの分離独立を掲げる「バルチスタン解放軍」という武装勢力が犯行声明を出し、中国が搾取と占領を止めなければ今後も中国人を標的にしたテロ行為を続けると警告した。
また、今回の事件と同様に、2021年8月、西部バルチスタン州グアダルで中国人が乗る車列に対する自爆テロがあり、中国人1人が負傷し、バルチスタン解放軍が犯行声明を出した。
バルチスタン解放軍は、それ以前からも中国権益を狙うテロ事件を繰り返している。2019年5月、同武装勢力のメンバーたちはバルチスタン州グワダルにあるパールコンチネンタルホテルを襲撃し、ホテルの従業員など5人が死亡したが、事件後に中国人や外国人投資家を狙ったとする犯行声明を出した。2018年11月にはカラチにある中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡したが、バルチスタン解放軍は中国が地元の資源を搾取し続けており、それを停止しない限り攻撃を続けると警告した。
他の地元武装勢力も中国権益を狙ったテロを繰り返している。2021年7月、北西部のカイバル・パクトゥンクワ州で中国人技術者ら30人以上が乗るバスに爆発物を積んだ車両が突っ込み、少なくとも中国人9人を含む13人が死亡した。事件後、パキスタン政府はイスラム過激派「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の戦闘員が爆発物を積んだ車両でバスに突っ込んだと発表した。
また、同年4月には、バルチスタン州の州都クエッタにあるセレナホテルで爆発物を用いたテロ事件があり、4人が死亡、11人が負傷したが、事件後にTTPが犯行声明を出した。当時このホテルには在パキスタン中国大使が宿泊していたとみられるが、事件当時大使はセレナホテルに滞在しておらず無事だった。
水力発電ダム建設現場で働く中国人技師5人が狙われた 2024年3月
最近でも今年3月、パキスタン北部の山岳地帯で中国人技術者らが乗る12台の車列が襲撃を受け、中国人5人を含む6人が死亡し、4月にも中国企業が建設や運営を担うグワダル港を武装集団が襲撃する事件が起こっている。
外国企業へ不満を強める若者たち
このように見てくると、日本人5人が乗る車列に対する今回のテロは、日本人を狙ったというより中国人を狙ったという動機が強く考えられる。現地の人々であれば日本人と中国人を見分けることは難しく、実行犯2人組は中国人と間違えて日本人を攻撃した可能性もあり得よう。
日本人5人の襲撃現場 パキスタン・カラチ 4月19日
しかし、だからと言って日本人が標的にならないという保障は一切ない。パキスタン国内での若者たちの経済的不満は強く、恩恵を受けられない若者たちがテロ組織の勧誘を受け、テロの世界にのめり込んでしまう土壌は決して少なくない。そういった若者たちが中国に限らず、進出する他国の企業にも不満や敵意を向けることは十分に考えられる。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】
和田大樹
株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO/一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事/株式会社ノンマドファクトリー 社外顧問/清和大学講師(非常勤)/岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員。
研究分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研
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2022年12月15日6:10 YAHOO!JAPANニュース FNNポライムオンライン「顕著になる中国のテロとの戦い…アフガニスタンで「イスラム国」系組織による初めての反中テロ
やはり起きた中国人を狙った襲撃
筆者は12月2日、「【現状分析】2つの潜在的リスク「アルカイダ」「イスラム国」…今年の世界的なテロ情勢を振り返る」と題する論考をこちらで発表した。
その中で『アフガニスタンでテロ活動を繰り返す武装勢力「イスラム国ホラサン州」が最近ネット上で中国への敵意を頻繁に強調している』と指摘したが、それが今回ホテル襲撃という形で現実のものとなった。
アフガニスタンの首都カブールで12月12日、多くの中国人が利用するホテルを狙った襲撃事件が発生し、医療機関の発表によるとこれまでに3人が死亡、20人以上が負傷した。死んだ3人はいずれも銃撃犯たちで、中国外務省によると中国人5人が負傷したという。
襲撃されたホテルでは火災も発生(12月12日)
事件後、「イスラム国ホラサン州」が犯行声明を出し、中国人を狙ったと標的を明確にした。「イスラム国ホラサン州」は実行犯たちの顔写真、事件直前の写真や動画などを事細かに公開し、同事件が念入りに準備計画されたものだったことがうかがえる。
襲撃されたホテルでは窓から飛び降りて脱出する人も(12月12日 Aamaj News)
この事件を受け、中国当局はあらゆる形態のテロを非難するとし、タリバン暫定政権に再発防止と安全強化を要請し、アフガニスタンに滞在する中国人に対して早急に退避するよう呼び掛けた。事件前日には、タリバン暫定政権の高官と駐アフガン中国大使が会談して治安問題について協議していた。
「イスラム国ホラサン州」は2022年9月にロシア大使館が標的となったテロ事件でも犯行声明を出したが、2021年以降、中国がアフガニスタンやパキスタンで影響力を拡大させ、ウイグル族への抑圧を続けていると中国を頻繁に非難したり脅迫したりするようになった。今回の事件はその一環であり、今後も中国権益を狙ったテロを計画、実行する可能性が高い。
「イスラム国ホラサン州」と中国の関係
今回の事件には、2つのポイントがある。
まず、「イスラム国ホラサン州」と中国の関係だ。「イスラム国」やアルカイダなどジハード組織はこれまでもウイグル族への抑圧を理由に中国を非難、敵視する声明を出してきたが、最近、「イスラム国ホラサン州」が中国を強調する背景には、中国によるアフガニスタンへの関与があると考えられる。
ウイグル自治区を視察する習近平主席(7月)
米中対立が深まり、米軍がアフガニスタンから撤退したことも関係してか、中国はアフガニスタンへの関与を強めようとしている。たとえば、首都カブールから南東40kmの地点にあるメス・アイナク地区の銅鉱山には推定で1108トンもの銅が埋蔵されているとみられ、中国の産銅会社「江西銅業」などは積極的に関与することで経済的な影響力を強めようとしているが、タリバンからの離反者も多く加わる「イスラム国ホラサン州」は、中国が地元の利権を搾取しているなどと反発を抱いている。
今回それが暴力として表面化したわけだ。これは中国が進める一帯一路への反発と捉えられ、それを推し進める習政権にとっては大きな課題となろう。
「イスラム国ホラサン州」とタリバンの関係
もう1つは、「イスラム国ホラサン州」とタリバンの関係だ。タリバンは昨年夏に実権を握って以降、国際社会に対して政府承認や人道支援、経済協力などを要請してきたが、タリバンがアルカイダなどテロ組織と関係を断ち切っていない、依然として女性の権利を軽視しているなどとしてタリバンの思うように進んでいない。
そのような中、中国権益を明確に狙ったテロ事件が発生したことで、今後タリバンと中国との関係が冷え込み、中国企業による経済進出が停滞するだけでなく、他の国々もアフガニスタンへの投資や支援にますます消極的になる可能性がある。
こういったテロ事件は、タリバンの治安維持能力が不十分であることを露呈するだけでなく、人権や食糧不足、経済停滞など多くの人道的課題に直面するアフガニスタンをさらなる負のスパイラルに追い込むものであり、断じて許せない暴力である。
タリバン政権下のアフガニスタンで起きた爆破事件(12月6日)
一方、「イスラム国ホラサン州」のように、「イスラム国」を支持する武装勢力はアジアや中東、アフリカに点在しているが、同組織が中国への敵意を強調することで、各地の支持組織も同様に中国権益への攻撃をエスカレートさせるかという問題がある。
しかし、各地に点在する「イスラム国」系武装勢力の大半の構成員は地元民で、現地に根差した武装勢力であり、独立して活動している。よって、連鎖反応のように各地で中国権益を狙ったテロ攻撃がエスカレートする可能性はかなり低い。
しかし、3期目の習政権が今後いっそう一帯一路を押し進め、南アジアやアフリカなどで政治的、経済的影響力を高めようとすれば、アフガンスタンのように各地で活動する「イスラム国」系武装勢力による反中テロに拍車が掛かる恐れは排除できない。
3期目の習政権にとって、今後テロとの戦いは難題になるかも知れない。
【執筆:和田大樹】
和田大樹
株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO/一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事/株式会社ノンマドファクトリー 社外顧問/清和大学講師(非常勤)/岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員。
研究分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大
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2021年9月9日 ニューズウィーク日本版「新たな超大国・中国が、アメリカに変わるテロ組織の憎悪の標的に
アブドゥル・バシト(南洋理工大学研究員)、ラファエロ・パンツッチ(英王立統合軍事研究所の上級研究員)
パキスタンの中国総領事館
2018年11月にはパキスタン最大の都市カラチにある中国総領事館が襲撃を受けた AKHTAR SOOMROーREUTERS
<中国人を標的にした襲撃が相次いでいる。大国の地位と新植民地主義への反発以外にも、テロ組織には中国を狙う別の目的が>
スーパーヒーローの責任はスーパーに重い。かの「スパイダーマン」はそう言っていた。そのとおり。だがスーパー大国には、スーパーな敵意や憎悪も向けられる。
アメリカ人なら痛いほど知っているこの教訓を、今度は中国が学ぶ番だ。数年前から、パキスタンでは中国人や中国の権益が絡む施設に対するテロ攻撃が繰り返されている。パキスタン・タリバン運動(TTP)のようなイスラム過激派や、バルチスタン州やシンド州の分離独立派の犯行とみられる。
この8月20日にも、バルチスタン解放軍(BLA)が南西部グワダルで中国人の乗る車両を攻撃する事件が起きた。BLAは2018年11月に最大都市カラチの中国総領事館を襲撃したことで知られる。
中国が今後、世界中で直面するであろう現実の縮図。それが今のパキスタンだ。中国が国際社会での存在感を増せば増すほど、テロ組織の標的となりやすい。中国がアフガニスタンのタリバンに急接近しているのも、あの国が再びテロの温床となるのを防ぎたいからだろう。しかし歴史を振り返れば、中国の思惑どおりにいく保証はない。
2001年9月11日のアメリカ本土同時多発テロ以前にも、中国は当時のタリバン政権と協議し、アフガニスタンに潜むウイグル系の反体制グループへの対処を求めたが、タリバン側が何らかの手を打った形跡はない。
中国政府が最近タリバンと結んだとされる新たな合意の内容は不明だが、イスラム教徒のウイグル人をタリバンが摘発するとは考えにくい。むしろ、この地域における中国の権益の保護を求めた可能性が高い。
中国人労働者はイスラム法を守るか
首都カブールだけでなく、今のアフガニスタンには大勢の中国人労働者や商人がいる。しかし彼らが厳格なイスラム法(シャリーア)を理解し、順守するとは思えない。その場合、タリバンは中国人の命を守ってくれるだろうか。今や超大国となった中国を敵視するテロリストの脅威を封じてくれるだろうか。
グワダルでの8月20日の襲撃の前月にも、カイバル・パクトゥンクワ州のダス水力発電所で中国人技術者9人が襲撃され、死亡する事件が起きている。直後にはカラチで中国人2人が別のバルチスタン分離独立派に銃撃された。
3月にはシンド州の分離主義組織に中国人1人が銃撃されて負傷。昨年12月にも同様の事件が2件起きている。さらに今年4月には、バルチスタン州で駐パキスタン中国大使がTTPに襲撃され、間一髪で難を逃れる事件も起きた。
こうした襲撃で犯行声明を出す集団の主張は多岐にわたり、この地域で中国の置かれた立場の複雑さを浮き彫りにしている。
一連の攻撃で最も衝撃的だったのはダスでの襲撃事件だ。中国筋は、攻撃したのはTTPの協力を得た東トルキスタンイスラム運動(ETIM)との見方を示している。
ETIMの実体は定かでないが、トルキスタンイスラム党(TIP)を自称する組織と重なっていると推定される。パキスタンと中国はインドを非難する声明も出したが、これは毎度のこと。パキスタンで何かが起きれば必ずインドが悪者にされる。
中国政府はアフガニスタンのタリバンにもクギを刺したようだ。7月に中国を訪問したタリバン幹部に対し、王毅(ワン・イー)国務委員兼外相はETIM/TIPと完全に手を切り、「中国の国家安全保障に対する直接的な脅威」である同組織に対処するよう求めている。
中国側は詳細を明らかにしていないが、アフガニスタンでタリバンが政権を握る事態を想定し、タリバン政権承認の交換条件としてテロリスト排除を求めたとみられる。
中国政府は、タリバン政権成立後にアフガニスタンの国内情勢が不安定化し、その隙を突いてETIMが台頭することを強く懸念している。その脅威は国境を接する新疆ウイグル自治区に直結するからだ。タリバン側はETIMの脅威を抑制すると中国側に約束したようだが、中国政府がその言葉をどこまで信用しているかは分からない。
いずれにせよ、パキスタンで中国人や中国の投資案件を狙ったテロが急増している事態は、米軍のアフガニスタン撤退を背景に、あの地域で中国を敵視する武装勢力が勢いづいてきた証拠だ。
中国としては、タリバン新政権と良好な関係を築くことにより、テロの脅威を少しでも減らしたいところだ。しかし問題の根は深く、とてもタリバン指導部の手には負えないだろう。
大国化したことで目立つ存在に
かつてのイスラム過激派は中国の存在を大して意識していなかった。あの国際テロ組織「アルカイダ」の創設者ウサマ・ビンラディンでさえ9.11テロ以前の段階では、アメリカに対する敵意という共通項を持つ中国は自分たちにとって戦略的な同盟国になり得ると発言していた。当時はまだ、中国も途上国の仲間とみられていた。
だが今の中国は世界第2位の経済大国で、アフガニスタン周辺地域で最も目立つ存在になりつつある。当然、中国に対する認識は変わり、緊張も高まる。
それが最も顕著に見られるのがパキスタンだ。中国とパキスタンは友好関係にあり、戦略的なパートナーでもあるが、パキスタンで発生する中国人に対するテロ攻撃は、どの国よりも突出して多い。
状況は今後、もっと深刻になるだろう。アフガニスタンからのテロ輸出を防いでいた米軍が撤退した以上、中国は自力で自国民の命と自国の利権を守らねばならない。
中国は従来も、アフガニスタンの南北に位置するパキスタンやタジキスタンで、軍事基地の建設や兵力増強を支援してきた。タジキスタンには中国軍の基地も置いた。アフガニスタン北部のバダフシャン州でも政府軍の基地を建設したが、これはタリバンに乗っ取られたものと思われる。
決して大規模な活動ではないが、全ては米軍の駐留下で行われた。米軍が治安を守り、武装勢力を抑止し、必要とあれば中国人を標的とする攻撃を防いでもきた。18年2月にはバダフシャン州で米軍が、タリバンやETIMのものとされる複数の軍事施設を攻撃している。
今後は、そうはいかない。イスラム過激派の怒りを一身に引き受けてきたアメリカはもういない。これからはイスラム過激派とも民族主義的な反政府勢力とも、直接に対峙しなければならない。
パキスタンのシンド州やバルチスタン州で分離独立を目指す少数民族系の武装勢力は、中国を21世紀の「新植民地主義国」と見なしている。中央政府と組んで自分たちの資源を奪い、今でさえ悲惨な社会・経済状況をさらに悪化させている元凶、それが中国だと考えている。
カラチでの中国人襲撃について名乗りを上げたバルチスタン解放戦線は犯行声明で、「中国は開発の名の下にパキスタンと結託し、われらの資源を奪い、われらを抹殺しようとしている」と糾弾した。
高まるウイグルへの注目
ジハード(聖戦)の旗を掲げるイスラム過激派は従来、アメリカと西欧諸国を主たる敵対勢力と見なしてきた。中国の存在は、あまり気にしていなかった。しかし新疆ウイグル自治区におけるウイグル人(基本的にイスラム教徒だ)に対する迫害が伝えられるにつれ、彼らの論調にも中国非難が増え始めた。
そうした論客の代表格が、例えばミャンマー系のイスラム法学者アブザル・アルブルミだ。
激烈にして巧みな説教者として知られるアルブルミは15年以降、米軍のアフガニスタン撤退後には中国が新たな植民地主義勢力として台頭すると警告してきた。支持者向けのある声明では「イスラム戦士よ、次なる敵は中国だ。あの国は日々、イスラム教徒と戦うための武器を開発している」と主張していた。
別のビデオでも、「アフガニスタンではタリバンが勝利した......次なる標的は中国になる」と言い放っている。
中国による少数民族弾圧を許すなというアルブルミの主張は、ミャンマーの仏教徒系軍事政権によるイスラム教徒(ロヒンギャ)弾圧などの事例と合わせ、アジア各地に潜むイスラム聖戦士の目を中国に向けさせている。
もちろん、新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒弾圧の問題は以前から知られていた。しかし、特にイスラム過激派の目を引くことはなかった。目の前にいるアメリカという「悪魔」をたたくほうが先決だったからだ。
その状況が今、どう変わったかは定かでない。しかしウイグル人の状況に対する注目度は確実に上がっている。イスラム聖戦派のウェブサイトでも、最近はウイグル人による抵抗の「大義」が頻繁に取り上げられている。
当然、国境を接するパキスタン政府も神経をとがらせている。中国と友好的な関係にある同国のイムラン・カーン首相は、中国の政策を支持せざるを得ない。しかしパキスタン国内にいるイスラム過激派の思いは違う。
彼らが中国の領土内に侵入し、そこでテロ攻撃を実行することは難しいだろう。だがパキスタン国内では、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)と呼ばれる大規模な道路建設事業が進んでいる。中国政府の掲げる「一帯一路」構想の一環だが、これはテロリストの格好の標的となる。
中国人の資産は格好のソフトターゲット
CPECは中国の新疆ウイグル自治区からパキスタン南西部のグワダル港を結ぶものだが、ほかにも中国主導の大規模インフラ建設計画はある。当然、パキスタンにやって来る中国人のビジネスマンも増える。テロリストから見れば、願ってもないチャンスだ。
パキスタンにいるテロ集団の思想は、必ずしも同じではない。だが敵はいる。今まではアメリカだったが、これからは中国だ。中国政府の好むと好まざるを問わず、パキスタン国内や周辺諸国で暮らす中国人や中国系の資産は、テロリストにとって格好のソフトターゲットになる。
中国は本気で21世紀版のシルクロードを建設するつもりだ。そうなればパキスタンだけでなく、アフガニスタンを含む周辺諸国でも中国企業の存在感が増し、現地で働く人を対象にする中国系の商人も増える。そして、その全てがテロの対象となる。
テロリストが目指すのは、自分の命と引き換えに自分の政治的なメッセージを拡散することだ。自爆という派手なパフォーマンスは、そのための手段。派手にやれば、それだけ新たな仲間も増えるし、資金も入ってくる。
アメリカが尻尾を巻いて逃げ出した今、権力の空白を利用して利権の拡大を図る中国に、テロリストが目を向けるのは当然のことだ。世界で2番目のスーパーリッチな国となった以上、中国はそのスーパーな責任を引き受けるしかない。そこに含まれる壮絶なリスクも含めて。
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