🔔55」─1・B─アメリカ地方政治の中枢に浸透する中国工作。〜No.142 

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 2024年9月23日 YAHOO!JAPANニュース 産経新聞「「米地方政治の中枢」に浸透する中国工作 NY州知事の元側近逮捕の衝撃 アメリカを読む
 米東部ニューヨーク州知事部局の元職員女性、リンダ・サン被告(41)が在任中、中国政府の「秘密の代理人」としてスパイ活動を行ったとして9月3日に起訴された。この事件は、中国の対米工作が「地方政治の中枢」に浸透していることを示し、米社会に衝撃を与えている。中国の対外工作は、米軍やハイテク産業への諜報活動、米国に亡命して活動する民主派の取り締まり、交流サイト(SNS)を通じた情報の収集・拡散にとどまらないものとなっている。
■コロナ対策の非公開会議を領事館員が〝傍聴〟
 2020年3月16日。中国湖北省武漢から広がった新型コロナウイルスへの対応を協議するニューヨーク州政府の非公開の電話会議を、一人の男がひそかに聴いていた。
 米メディアによると、男は在ニューヨーク中国総領事館の政治部門の責任者。彼を手引きしたのが当時、州政府でアジア系コミュニティーとの連絡係を担当していたサン被告だった。
 サン被告は、電話会議に男が紛れ込んでいることが発覚しないよう、「あなたの電話はミュート(消音)にしておいて」などと男にメッセージを送っていた。32分間の会議が終わると、男は「とても役立った」と感謝するメッセージをサン被告に送った。
 これに先立つ19年7月には、サン被告は訪米した台湾の蔡英文総統とクオモ・ニューヨーク州知事の接触を阻止していた。
■台湾の総統と州知事接触を妨害
 台湾側から蔡総統のニューヨークでの晩餐(ばんさん)会にクオモ知事を招待したいと通知されると、サン被告は「クオモ知事は公務でニューヨーク市内を離れている」とウソの欠席理由を台湾側に伝えた。中国側に「妨害しておきました」とメールで報告していたことも分かっている。
 晩餐会の2日前には、知事日程の管理者に出席の予定がないことを確認し、妨害工作が破綻していないかを確認する念の入れようだった。晩餐会当日は会場周辺で蔡氏の訪米に反対するデモに加わり、中国と米国の旗を掲げたという。
 サン被告は、中国に生まれ、米国に帰化した中国系米国人。幼少期に中国・南京から両親に連れられて米国に渡り、ニューヨーク市クイーンズ区フラッシングの中国系移民が多い地域で育った。
 中国語と英語のバイリンガルで、名門コロンビア大と同大学院で学んだ。18歳で出場した美人コンテストで、将来の目標は「国連大使」と語り、政治への関心をみせていた。
 州政府で「アジア系米国人の最高位」に
 サン被告に中国政府との接点ができたのは、選挙活動を手伝った縁でニューヨーク州下院議員のスタッフを務めた09~12年ごろとされる。サン被告はこの議員の推薦で、12年に州政府に就職。その後、ホークル副知事と中国系の有力者や有権者をつなぐ役割を担った。
 不祥事によってクオモ氏が退任し、ホークル氏が知事に昇任すると、21年9月からは知事の首席補佐官代理を務めた。当時の州政府では「アジア系米国人の最高位」だった。23年に知事の声明を偽造したとして解雇されるまで約10年間、州政府の施策に関与した。
 検察側によると、サン被告は積極的に中国政府に協力した。中国側は見返りとして、サン被告の夫で米国産ロブスターの対中輸出を手がけるフー被告(40)に数百万ドルの取引を手当てした。
 夫妻はニューヨーク州ロングアイランドの豪華な自宅やハワイの海が見えるマンション、フェラーリなどの高級車を購入した。
■豪奢な生活、親族にまで見返り供与
 サン被告は18年に北京に滞在した際には、オバマ米大統領ミシェル夫人が泊まったこともある最高級ホテルに宿泊。19年には中国建国70周年を記念する人民大会堂での中国共産党主宰の晩餐会に出席した。ニューヨークでクラシックやバレエの高額チケットも手配してもらった。費用は全て中国持ちだったという。
 中国側は親族らにも細やかに便宜を図った。サン被告の両親が住むニューヨークの自宅に駐ニューヨーク中国総領事の公邸料理人を派遣したり、中国で暮らすサン被告の親族に政府機関への就職を斡旋(あっせん)したりした。
 高級ブランドの指輪やバッグで身を飾り、部下への厳しい叱責で悪評が立ったサン被告は、22年秋に労働局への異動を命じられた。
 スパイ行為が露見したのは23年初頭だった。
 検察側によれば、サン被告は職務権限がないにも関わらず、知事部局の担当者に対し、中国の春節旧正月)を祝うホークル知事の声明を作成させた。サン被告はその「でっちあげの祝辞」を持って式典に駆けつけ、駐ニューヨーク中国総領事に手渡したとされる。
 このことが州監察総監の知るところとなったため、サン被告は23年3月2日までに解雇され、州政府が司法当局に通報した。
リクルートされやすい中国系米国人
 米中央情報局(CIA)に勤務経験があるジョージタウン大のデニス・ワイルダー准教授によれば、中国に親族がいるサン被告のような中国系米国人は「中国の対米工作員としてリクルートされやすい」。親族に不利益が生じると脅したり、親族にビジネスの機会を与えると誘惑したりして、スパイ活動に協力させることができるからだ。
 ニューヨーク州では先月、中国系米国人の歴史家、シュジュン・ワン被告(75)が、中国を逃れて米国で活動する民主派の情報を中国側に渡したとして有罪評決を受けた。民主派が情報交換に使うグループ・チャットに中国の当局者が入り込むのを手引きしたとして、米国に亡命して帰化したユアンジュン・タン被告(67)が逮捕される事案もあった。
 米国家情報長官室(ONDI)傘下の米国家防諜安全保障センター(NCSC)は22年の報告書でこう警告していた。
 「中国は、米国の州や地方の幹部職員が連邦政府からある程度の独立性を享受していることを理解している。…北京が望む米国の国内政策を主張する代理人として、州や地方の幹部職員を利用しようとするかもしれない」
 報告書は中国の狙いについて、米国による対中経済協力や、台湾やウイグルといった問題での対中批判の軽減を挙げた。
 サン被告の事件が明るみに出たことで、米地方レベルの政治家や公務員は、中国絡みの施策や行事についてより慎重になるとみられる。(ニューヨーク 平田雄介)
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