🔯7」─1─「神が世界を造った」は本当? 宗教を信じない学生に神父はどう語るか。〜No.23 

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 2022年9月1日 YAHOO!JAPANニュース PHPオンライン衆知「「神が世界を造った」は本当? 宗教を信じない学生に神父はどう語るか
 カトリック司祭である片柳弘史氏が、宗教への疑念に対し答えを投げかける。
 安倍晋三・元首相の死により、メディアでは「旧統一教会」をめぐる報道が過熱化。宗教に「逆風」が吹いている。「キリスト教を信じない学生との対話」をテーマに近著を書いたカトリック司祭(神父)が、宗教への疑念に対して答えを投げかける。
 ※本稿は、片柳弘史著『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
 「事実ではないが、真実だ」
【神父】聖書は、読んだことがありますか。
【学生】いえ、部分的に読みかじった、聞きかじったという程度です。
【神父】聖書は、旧約聖書新約聖書という2つの書物から成り立っているのですが、旧約聖書の最初に、神が世界を造る話があります。
 闇に包まれ混沌とした世界に、神が光を造り、太陽や月、海や陸、生き物たちを造り、最後に人間を造って世界ができあがったという話です。創世記というのですが、聞いたことがありますか。
【学生】ええ、なんとなく聞いたことがあります。その話に基づいて進化論を否定する人たちがいるとか。どうも非科学的な話ですね。本当に、そんなことを信じているのですか。
【神父】いや、文字通りに歴史的な事実として信じているわけではありません。ですが、この物語が伝えているメッセージは確かに真実だとわたしは信じています。
【学生】「事実ではないが、真実だ」というわけですね。この話に、いったいどんな真実が隠されているというのですか。
【神父】世界ができあがったところで、「神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった」(創世記1:31)という記述があります。「それは極めて良かった」という、この一言がとても重要なのです。
 あなたもわたしも神の最高傑作
【神父】つまり、この世界にあるすべてのものは、神の手によって造られた。だから、この世界にあるものはすべてすばらしい。道端に咲く花も、空を飛ぶ鳥も、森の木々やそこに住むすべての生き物も、海も山も川も、そして、あなたもわたしも、神によって造られ、この世界に生まれてきた。
 神によって造られた以上、極めて良いもの、生まれながらに価値のある、すばらしいものに違いない。それが、この物語の中心となるメッセージであり、わたしたちはそのメッセージが真実だと信じているのです。
 かつて「スラム街の聖女」と呼ばれ、貧しい人々への奉仕に生涯を捧げたマザー・テレサは、「わたしたち一人ひとりが、神の最高傑作」だと表現しています。
 神という陶芸家は、一つひとつの作品を丹精込めて造りあげ、「もうこれ以上はできない」というところまで造り込んでこの世界に送り出す。だから、あなたもわたしも、神の最高傑作だということです。
 一見、何の変哲もない茶碗に価値がある
【学生】なるほど。そういわれるとうれしいですが、自分が最高傑作とまではなかなか思えませんね。いったい、このぼくのどこが最高傑作なのか。
【神父】テレビの番組で『開運! なんでも鑑定団』というのがありますが、ご存じですか。
【学生】ええ、見たことはありますが、あれが何か。
【神父】自分が最高傑作だと信じられないという人に、わたしはよくあの番組のことを話すのです。あの番組でよくあるのは、蔵の中からおじいさんが大切にしていた茶碗が出てきた。
 一見、何の変哲もない普通の茶碗、どこにでもありそうなありふれた茶碗だが、おじいさんがあれだけ大切にしていた以上、きっと価値があるに違いない。そう思って鑑定を依頼したというような話です。
【学生】まあ、そんなパターンが多いようですね。
【神父】スタジオで鑑定するうちに、専門家の顔色がだんだん真剣に変わってゆきます。そして最後に値段が発表されると、なんと100万円。「えっ、このありふれた茶碗が100万円だなんて」とみんなが驚いて終わる。
 あのパターンが、わたしたち人間にも当てはまるとわたしは思っています。つまり、わたしたちは、自分で自分の価値に気づいていないのです。
 「このゆがみ方が実にいい」
【神父】神の目から見れば、わたしたち一人ひとりが最高傑作。「いや、この微妙なボケ具合がなかなか出ないんですよ」「このゆがみ方がまた実にいい」などと、神はわたしたち一人ひとりを満足気に見てくださっている。わたしたちが自分でまだ気づいていないよさまで、神は見ていてくださる。わたしは、そんなふうに想像しています。
【学生】まあ、そんなふうに考えたら楽しくなりますね。でも、なかなかそうは信じられないな。
【神父】なぜでしょう。わたしから見て、あなたは若くて力に満ちあふれ、きらきら輝く目をしたすばらしい青年に見えます。
 あなたという人は世界でたった一人、あなたしかいません。世界でたった一つだけの、神の最高傑作だといって間違いないでしょう。「わたしは駄作だ。価値がない」なんていったら、せっかく造ってくださった神さまががっかりしますよ。
【学生】うまく丸め込まれたような感じがしますが、まあいいでしょう。そんなふうにほめてもらって、悪い気はしませんから。今日は、キリスト教の1番基本的な考え方を教えてくださってありがとうございます。うちに帰ってよく考えてみます。
 片柳弘史カトリック司祭)」
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