物語 カタルーニャの歴史―知られざる地中海帝国の興亡 (中公新書)
- 作者:田沢 耕
- 発売日: 2000/12/01
- メディア: 新書
関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
EU諸国内の分離独立運動。スコットランド。カタルーニャ。フランダース。ベネト。グリーンランド。バスク。ウェールズ。バイエルン。南チロル。
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長い人類の歴史において、国家は絶えず膨張して繁栄し分裂して消滅する。
国境は目まぐるしく前進と後退を繰り返し、国土は拡大と収縮している。
永遠に、同じ姿を留めている国はない。
今。地球上にある国の形は、数百年前にはなかった。
後。数百年後に、同じ国の形を維持できている国はない。
其れが、世界史である。
日本もまた同じ定めであり、2000年近く同じ国の姿を維持できたのは単に偶然がそうさせたに過ぎない。
日本人が努力して守ったわけではない。
そこに、必然など存在しない。
叡智もなければ、努力もない、ただ惰性に過ぎない。
全てが、偶然の産物に過ぎない。
現代は人の往来が激化して、他国の人間の入国を制限する国境の存在意味がなくなりつつある。
他国の人間の移住者が増えれば、他者と区別しようとする民族主義は消滅する。
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2013年4月 ロジャー・グリフィン(オックスフォード・ブルックス大学教授)「急進主義者となる者は、まず救い難いおいう感覚を持つ。そして、この感覚に対する防壁として、世界を善と悪の厳格な区分で『分裂』させる。不幸な事に、こうした分裂を助長しうる出来合いのイデオロギーが幾つもあるのだ。/次に、急進主義者は二重生活を構築する。表面的には『死んだような穏やかな状態』を保ちながら、犯行の立案、計画、及び実行をひたむきな決意で行うのだ」
平和で豊かで満ち足りた国でも、貧困で混乱し内戦続きの国同様にテロなどの過激な無差別犯罪に走る者がいる。
人は、物事が上手くいかないのは自分ではなく他人や社会が悪いからだと決め付け、自分が正義の味方になったつもりで社会への復讐心を燃やし、正義の為に死ねるという陶酔感で不特定多数の他人を殺傷するテロを行う。
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2014年9月30日号 Newsweek「英国の誤算
スコットランド騒動で損なわれたイギリスの国力と勢いづく他国の独立運動
……
コリン・ジョイス「スコットランド騒動と英国の誤算
独立問題
イギリスからの独立は住民投票で否決されたもののもう本のさやには戻れない
相手には頭を下げさせた。取れるものは取った。ここらで手打ちとするか。300年にわたる『結婚』の解消を思いとどまらせたのは、人々のそんな思いかもしれない。
18日に行われたスコットランド独立の是非を問う住民投票は、劇場型の希有な政治イベントとしてすべてのイギリス国民の記憶に残るだろう。86%という史上最高の投票率も、ひとまず民主主義の勝利と言えそうだ。投票直前まで大接戦が伝えられ、結果が読めなかったせいで、一般の人たちが自分の頭で考え、地元のパブや家庭で熱い議論を戦わす習慣を取り戻した。
今回の投票で、取りあえずイングランド(を中心とするグレート・ブリテン)とスコットランドの『離婚』は回避できた。しかし明日からのイギリスは、もう昨日までと同じではない。イギリスという国家の本質は根底から覆されることになるだろう。配偶者の一方が公然と離婚を口にした以上、『元のさやに収まる』ことは有り得ない。
……
脅しで譲歩を引き出す?
そう、スコットランド住民投票はパンドラの箱だった。地方の自治拡大の要求という頭の痛い問題を引き出ししまったのだ。投票1週間前、筆者はある議員からこんな言葉を聞いた。『住民投票なんかさせるべきではなかった。ドイツ人がバイエルン地方に独立を問う投票を許すと思うか?』
スコットランドと、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国の主勢力であるイングランドの関係は複雑だ。表だっての敵対関係はほとんどないが、例えば外国で『イングリッシュ(イングランド人)』と呼ばれると、たいていのスコットランド人は侮辱されたと感じる。ブリティッシュ(イギリス人)ならいいが、イングリッシュではない。それがスコットランド人の自負だ。
一方でイングランド人には、スコットランド人が連合離脱をちらつかせて政府から不当に大幅な譲歩を引き出したという思いがくすぶっている。筆者の友人にも、『僕たち』もスコットランド追放の住民投票をやればよかったと冗談半分に言った男がいる。このままだとイギリスは連邦国家のようになるかもしれない。
今回の住民投票は、1票差で独立派が勝利してもイギリスが分裂するリスクを秘めていた。
……」
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ポール・エイムス「それでも止まらない欧州分裂の波
スコットランドの試みに触発されてヨーロッパ各地で分離独立運動が盛り上がっている。
否定されたとはいえ、スコットランドの住民投票はヨーロッパ各地にくすぶる分離独立運動を勢いづけた。今後注目を集めそうな8つの地域を紹介しよう。
┃カタルーニャ(スペイン)
スペイン北東部に位置するカタルーニャ自治州は、昔から独立運動が活発だった。人口750万人の大半は言語も文化もスペインとは違うという意識が強く、マドリードの中央政府から高度な自治権を認められてきた。
だが自治州のアルトゥール・マス首相は、スペインからの完全な独立を求めて11月9日に住民投票を行うと発表。9月11日の『カタルーニャの日』には、住民が州都バルセロナでV字形に交わる通りを埋め尽くし、投票(vote)と勝利(victory)を訴えた。
スペイン議会は、カタルーニャの住民投票実施を認めていない。これに対して独立強硬派は、政府があくまで住民投票を邪魔するなら、デモや不買運動など市民的不服従運動を展開すると主張している。
スペイン政府としては、むしろ住民投票の実施を認めたほうが得策かもしれない。9月初旬に日刊紙エル・パイスが行った世論調査では、実際に独立を支持するカタルーニャ人は27%しかおらず、42%は自治権を拡大してスペインに残留するほうがいいと答えた。
┃フランダース(ベルギー)
ベルギー北部のオランダ語圏(フランダース地方)と南部のフランス語圏(ワロン地方)の不仲には長い歴史がある。経済的に立ち遅れたフランス語圏(人口400万人)に多額の補助金が交付されていることも、オランダ語圏(同600万人)の住民にとっては不満の種だ。
今年5月に行われたベルギー下院選挙では、ベルギーを解体して『フランダース共和国』を樹立することを究極の目標とする政党『新フランドル同盟』が勝利。おかげでフランス語圏を基盤とする政党との連立交渉はいまだにまとまっていない。
といえば、ベルギーがすぐに分裂することはなさそうだ。首都ブリュッセルは経済の要で、オランダ語圏の住民にとって歴史的な故郷でもある。だが住民はワロン人が圧倒的に多く、ベルギー解体を強行すれば、オランダ語圏はブリュッセルを失う可能性が高い。
新フランドル同盟は当面、現在の連邦という枠組みを受け入れていく意向だ。だが、スコットランドの住民投票に触発されたのは間違いない。同党のピエ・デブルイン議員は投票前、『スコットランドは重要な前例になる』と語っている。
┃ベネト(イタリア)
運河の街をゴンドラで巡り、サンマルコ広場のカフェでカプチーノを1杯──ベネチアには外国人の思い描くイタリアのイメージが詰まっている。
だが、住民の考えは違うらしい。ベネチアのあるイタリア北東部ベネト州で今年3月に行われた世論調査によると、89%がイタリアから独立を支持。その後、の世論調査でも、州民500万人の過半数が、チャンスがあるなら独立するべきだと答えた。
ベネト州のある地域にはかつて、海洋国家として栄えたベネチア共和国があった。18世紀末にナポレオンに征服され、フランスとオーストリアお支配を経てイタリアに編入されたのは、わずか150年前だ。
┃グリーンランド(デンマーク)
世界最大の島グリーンランドが経済的に沈まずに済んでいるのはデンマーク政府の補助金のおかげだ。その額は年間6億5,000万ドル、グリーンランドの予算のおよそ半分に当たる。
だが変化の兆しが見えてきた。地球温暖化で北極圏の氷が解け始め、鉱物資源の開発が有望になってきたのだ。昨年選出されたアレカ・ハモンド首相は外国企業を受け入れて資源開発を進め、経済的自立を果たす考えだ。
人口5万7,000人と、独立すれば世界最小クラスの国だ。
┃バスク(スペイン)
バスク地方の過激な民族主義組織『バスク祖国と自由(ETA)』は11年に、スペイン政府との停戦を宣言した。だが、それまでの武装闘争による死者は1,000人を超える。
スペイン北部とフランスの国境にまたがる風光明媚なこの地方は、今も流血の歴史のトラウマに苦しむ。カタルーニャと違って、早期の独立に慎重なのもそのあたりに理由がありそうだ。
それでも、オイアルツンなどバスク自治州の町では独立支持のポスターをよく見掛ける。州の人口は200万人余り。自治州の与党バスク国民党は自治拡大を求めているが、同党の支持者には長期的な目標として独立を望む人も多い。
自治州のイニゴ・ウルクル首相はカタルーニャの住民投票を支持し、スコットランドの住民投票にもエールを送った。
┃ウェールズ(イギリス)
ウエールズの独立派はスコットランドの住民投票に羨望を隠さなかった。スコットランド民族党とは違って、ウェールズの独立派政党ウェールズ党は自治議会の少数派にとどまっている。
それでもリアン・ウッド党首はスコットランドの住民投票が追い風になれば、16年の選挙で大躍進できると期待する。『スコットランドは住民投票で一躍注目を集めた』と、ウッドは言う。『ウェールズも予想外の住民投票を実現すれば、ロンドンに一目置かれるはずだ』
イングランドの西にある緑豊かな丘陵地帯ウェールズ。人口300万人の約20%がこの地方独特のウェールズ語を話す。
┃バイエルン(ドイツ)
昨年のバイエルン州議会選挙では、分離独立派のバイエルン民族党の得票率は2.1%。まだ少数派だが、同党の過去50年余りの歴史で最高の得票率だ。湖と古城とチロル風民族衣装で知られるこの地方でも、独立意識が徐々に高まり始めている。『独立派の勝利を心から祈る』と、バイエルン民族党のフローリアン・ウェーバー党首はスコットランドの住民投票の前に語った。『(彼等が勝利すれば)バイエルンの独立運動も盛り上がり、メディアはもはやこの問題を軽視できなくなる』
バイエルン州の住民1,200万人の多くはカトリック教徒。自分たちはプロテスタントの『冷酷な北部人』とは違うという意識がある。1866年の戦争でバイエルンはプロイセン主導のドイツ帝国の一部となったが、多くの住民がドイツ統一以前の伝統文化を誇りにしている。
┃南チロル(イタリア)
この地方は第一次世界大戦後にイタリアに割譲されたが、今もオーストリア帝国時代の面影を色濃く残す。住民50万人の約60%は、イタリア語と並んでこの地方の公用語になっているドイツ語を母国語とする。
昨年の世論調査では分離独立を支持する人が46%に上った。経済的豊かさを謳歌する南チロル地方にとって、出口の見えないイタリアの経済危機は足かせにほかならない。
『スコットランドと南チロルの独立は実現可能なだけではない』と、南チロル自由党の地方議員ベルンハルト・ジンマーホッファーは言う。『避けて通れない歴史の必然だ』」
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日本には、多民族国家のような分立独立運動は存在しないが、100年後もないとは言えない。
国民の内で、民族系日本人が激減し、非民族系日本人が急増したら、多数派を占める異民族系日本人が分離独立を主張するかも知れない。
だが、現代日本人はきにはしない。
何故なら、自分は死んでいるし、自分の子供も死んでいるからである。
自分に直接関係しない、孫の代や曾孫の代など関心がない。
重要なのは、自分だけが金を稼ぎ裕福となり幸せに死ねれば後の事はどうでも良いと考えているからである。
彼等の最大の関心は、今手許にある貯金通帳に1年か数年後に大金が転がり込んでくる事だけである。
その先がどうなろうとも、興味もなければ、関心もない。
死に行く者にとっては、残る者の事などはどうなっても構わないのである。
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少数民族の分離独立選挙に最も脅威を感じたのは、中国共産党政府であった。
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2014年9月22日 国家からの独立を求めている地域。
従来の国民国家という枠組みからさらに細分化へと、土地の文化や共通認識を基にした地域国家の独立を求める動きが盛んになり始めている。
国家の統治能力が低下すれば、内に秘めた市民運動は国家を分裂させ解体して新たな独立国家を樹立させる。
国家とは、国際法上、「国民」「領土」「主権」の内なる三要素と「他国が承認する」の外の第四要素を満たしている事でなりかっている。
国家を承認する国際機関が、今は国連であり、安保常任理事国である。
フランス オクシタニア州。
スペイン カタルーニャ州、バスク州、ガリシア州、アンダルシア州。
イタリア 裕福な北部 ロンバルディア州、ピエモンテ州、エミリア=ロマーニャ州。
デンマーク フェロー諸島、グリーンランド島。
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- 作者:渡部 哲郎
- 発売日: 2004/04/16
- メディア: 新書
イングランド王国と闘った男―ジェラルド・オブ・ウェールズの時代 (歴史文化ライブラリー)
- 作者:桜井 俊彰
- 発売日: 2012/07/01
- メディア: 単行本
- 作者:谷口 健治
- 発売日: 2003/03/01
- メディア: 単行本