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2019年7月18日号 週刊文春「文春図書館 名著のツボ 石井千湖
マキアヴェッリ 『君主論』
第六章が最重要。世襲君主と市民の連合のために〈政教分離〉を唱えた
マキアヴェッリの『君主論』は近代政治学の古典として名高い。〈愛されるよりも恐れられよ〉といった警句の詰まった政治術、経営術を学ぶ書として現代でも読み継がれている。しかし、イタリア文学者の原基晶さんは『警句は枝葉末節で、それを味わっていても「君主論」の本質は理解できません』と語る。『16世紀初頭に書かれた「君主論」は、14世紀初頭にダンテが「神曲」で取り組んだ問題を受け継いでいます。どうすれば戦争を終わらせて、平和を実現できるか』
マキアヴェッリはフィレンツェ共和国の外交官だったが、1512年、フランスとスペインがイタリア諸国間の紛争に介入して勃発したイタリア戦争のさなかに失脚し、翌年『君主論』を書き始める。その核心は、第6章から第11章にある、と原さんは指摘する。
『ダンテが唱えた〈皇帝〉は非現実的だと考えたマキアヴェッリが平和実現のために提案したのは、ある領域を支配する世襲君主による政治権力が市民の支持を受けて、軍事力を独占し、内乱のない安定した国家を樹立することでした。このような政体は今なら〈主権国家〉と呼ばれるでしょう。現代だと当たり前に思われるかもしれませんが、マキアヴェッリの時代には、そうではありませんでした。当時は教皇と大銀行と傭兵を擁する政治権力が結託して、経済力を蓄える一方、政治権力や宗教的権威、軍事力の所在がバラバラで統一されていなかったため、西欧の政治情勢は極めて不安定で、戦争が絶えませんでした。その元凶は教皇です。教皇は絶大な宗教的権威と大銀行と手を組んで築いた経済力を持っていましたが、極めて脆弱な軍事力しか持っていなかった。教皇は西洋の諸国家に支配のお墨付きを与える代わりに軍事力(傭兵)を提供してもらっていました。この歪(いびつ)な権力がイタリアに混乱をもたらしていたのです。そのことを見抜いたマキアヴェッリは、教皇・大銀行・傭兵勢力に対抗できる世襲君主と市民の連合による〈主権国家〉を実現するために何よりもまず教皇勢力を世俗から排除することを唱えました。これが〈政教分離〉です。そのために書かれたのが第6章なんです。第7章から第11章は、〈政教分離〉後の世界で望ましい政体を論じています』
第6章は、新しい君主国を建てた偉大な先人としてモーゼ、キュロス、ロムルス、テーセウスの名前を挙げられている。
『この章が「君主論」で最も重要です。当時の歴史認識では、ユダヤ民族を率いてエジプトから脱出させたモーゼの行いは、すべて神の意思によるものだとされ、それゆえにモーゼは正しく、成功したとされていました。この論法で自らの行動を正当化していたのが教皇です。教皇は神の意志を体現しているがゆえに常に正義であり勝利する。ところがマキアヴェッリはkの歴史認識に抗して、モーゼはユダヤ民族の軍事司令官であり〈自己の軍備と力量〉によって新しい国と政治体制を勝ちとった書きました。これは〈革命的〉でした。なぜなら、モーゼの成功と勝利の理由を単に彼が優れた指導者であり、運に恵まれていたからだとしたからです。マキアヴェッリはこうして地上を自由意志を持つ個人が衝突する場所にしたのです』」
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大陸の王侯は、軍隊と奴隷を持ち、高い城壁と深く広い濠に守られた宮殿で生活していた。っていた。
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中華皇帝は、軍隊と家庭奴隷を持ち、高い城壁と深く広い濠に守られた王宮で生活していた。っていた。
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日本天皇は、軍隊も奴隷も持っていなかったし、住まいの御所には濠はなく飛び越え可能な低い塀しかなかった。
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大陸の王侯や中華皇帝に求められたは、カリスマとリーダーシップであった。
日本の天皇に求められたのは、カリスマだけでリーダーシップは必要なかった。
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日本の天皇・皇族・皇室を守った尊王派・勤皇派は、下級武士、貧しい庶民(百姓や町人)、卑しい芸能の民(歌舞伎役者・曲芸師・軽業師ら)、差別された賤民(非人・穢多・河乞食ら)、軽蔑された部落民(山の民・川の民・海の民ら)ら、下層民達であった。
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大陸では、他国の人間でも即位できた為に、王朝は変わっても王家は途絶える事なく続いた。イギリス国王はイギリス人ではない。
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中華では、200年~300年周期で易姓革命が起き、戦乱で王朝は打倒され、王家と忠臣は虐殺された。
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日本天皇が持っていた権威とは「菊の御威光」であって、軍事力を持った政治権力や経済力の宗教権威は持っていなかった。
天皇の「菊の御威光」は、空気のように掴み所のない虚像であって、破壊できる実像ではなかった。
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日本では、日本民族の中で特殊な血筋・血統を正統継承とする特別な一家系による世襲で万世一系の男系天皇・皇室が、途絶える事なく2000年近く守られてきた。
日本天皇制度は、血筋・血統を正統とする世襲の万世一系の男系天皇を守る為に女性天皇を即位させても女系を臣下に落として皇室から排除した。
日本天皇制度における正統性は、特殊な血筋・血統であって、人である事の皇統ではない。
人としての皇統を正当とするならば、開かれた王家である西洋と同じように、天皇に即位するのは日本民族日本人に限る必要なない。
つまり、皇統が憲法・法律を正当性とするなら、天皇はローマ皇帝のように、中国人でも、韓国人でも、アメリカ人でも、ユダヤ人でも、それこそアフリカ人でも人であれば即位する資格がある。
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中華皇帝の忠実な臣下であり下僕であった、朝鮮の歴代国王を世界史レベルで論ずる意味はない。
何故なら、世界史・大陸史はおろか東アジア史・極東アジア史に主体的に関与した事がないから、存在感さえない。
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