🎄19」─3─新生ポーランドのウクライナ侵略。東方系ユダヤ人の東方大移動。新たな戦争への始動。1918年11月12日~No.68No.69No.70 @ 

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ポーランドの独立
 ポーランド王国は、約150年前に三大強国に分割されていたが、民族の悲願である独立を回復した。
 新生ポーランドは、ポーランド王国の全盛期の様な国土を獲得する為に、周辺諸国との国境紛争を起こしていた。
 ポーランド軍は、ウクライナ共産主義勢力から解放する事を大義としてウクライナに侵攻して、レンベルクを占領した。
 ポーランド軍兵士は、勝利者の権利としてポグロムを行った。
 3日3晩、ユダヤ人地区で虐殺と略奪が行われた。アメリカのユダヤ人組織は、ポーランドを非難する決議を行い、ポーランドへの領土的野心を持つドイツ共和国に接近しその軍事力強化に協力した。
 アメリカ軍は、赤軍の優勢に恐怖し、西側への浸透を防止する為にポーランドに軍事支援を行っていた。
 ポーランド軍は、共産主義者の疑いのあるユダヤ人を逮捕し、無実であっても疑わし者は銃殺した。
 11月12日 新生ポーランドで、国家首席ピウスツキと正統派ユダヤ教政党のアグダス・イスロエルが会談した。
 世俗的ユダヤ人正統党は国家の発展に協力し、ユダヤ人はポーランド国家に忠誠を誓うかわりに、民族的少数派であるユダヤ人の諸権利を承認する事を求めた。
 21年では、ユダヤ人人口は285万人で全人口の10.5%であった。ポーランド人は、選民的自民族中心主義でポーランド民族主義を軽蔑し、ポーランド国家復興運動に背を向け続けたドイツ語文化志向のユダヤ人を敵視していた。
 17日 一部のポーランド人兵士は、「中立は利敵行為」だと激怒してユダヤ人居住区に流れ込んで略奪、放火を行い、女性を強姦し抵抗すれば殺害した。ユダヤ自警団は正当防衛として発砲したが、ポーランド人部隊はユダヤ人の中立違反、裏切り行為として報復した。
 11月21日 新生ポーランドは、ルヴフに援軍を送り、占領していたウクライナ人部隊を撃退した。
 敗走したウクライナ民族評議会(ラーダ)は、翌年1月初旬に再編したが、ポーランド軍が西ウクライナ全域を占領した為にウィーンに亡命して西ウクライナ人民共和国を維持した。
 だが、キエフウクライナ人民共和国は西ウクライナの領有を断念して、同地のウクライナ人をポーランド国内に置き去りにした。
 11月22日 ポーランド遠征軍は、中立違反を理由にしてユダヤ自警団を武装解除して団員を逮捕した。
 ポーランド兵士やルヴフ住民は、ユダヤ人が無防備になった事を確認するや裏切り行為に対する制裁として48時間の期限付きのポグロムを実行した。
 ユダヤ人代表は、ポーランド軍司令部にポグロムの取り締まりを要請したが、ポーランド軍は24日朝まで戒厳令を公布しなかった。
 この後も、ルヴフやピンスクなど100カ所以上で、ユダヤ人に対するポグロムが多発して、多くのユダヤ人が虐殺され財産が略奪された。
 ユダヤ系新聞は、組織的に計画されたポグロムで1万人以上が犠牲になったと報道してポーランド政府を非難した。
 国際世論も、ポーランド政府を非難した。
 キリスト教会は、伝統的宗教観からポグロムを肯定するグループと否定するグループに分裂した。
 ポーランド政府は、根拠のないユダヤ系新聞の歪曲報道を非難し、捏造報道を即刻中止しなければより大きなポグロムが起きると脅迫した。
 ポーランド人は、国内のユダヤ人とウクライナ人民族独立派が国家転覆の陰謀を巡らしていると邪推して、反ユダヤ主義が蔓延した。
 ポーランドで生活する教養有るユダヤ人の上流階級は、ポーランド国家との関係悪化は得策ではないと判断し、むしろ共生する為に国家に忠誠を誓うべきだと、同化を拒否するユダヤ人を説得した。
 正統派ユダヤ教徒は、数千数万の善良なユダヤ人が虐殺される悲惨なポグロムが発生しようとも、国家の法律よりもユダヤ教の戒律を優先した。国家の中の小国家と揶揄され差別と迫害の原因となろうとも、妥協する世俗派の様に信仰と信念を曲げる事をよしとはしなかった。
 西ヨーロッパ諸国のユダヤ人は、国民の一員として国家に忠誠を誓って民族性を失った。
 東ヨーロッパ諸国のユダヤ人は、戒律に従って国家権力に忠誠を誓う事を拒否し、民族の伝統的生活様式や排他的信仰を守った為に、異民族とけっして交わる事のない「余所者・異邦人・得体の知れない異質な人種」とされた。他者と交わる事のない非妥協性が、ユダヤ人を世界一優秀な民族に成長させたと同時に、ユダヤ民族に悲劇をもたらした。
 12月31日 スパルタクス団は、ドイツ共産党を結党し、ロシアにならってバイエルンソビエト共和国であると宣言した。
 ドイツ共産党は、ドイツをプロレタリア独裁国家にする為に、私設警察を組織して反共産主義者へのテロを開始した。
 暴力事件を始めたのは、ロシア革命の再現を目指すドイツ共産党であった。
 左翼・左派は、「人民革命の成就には、多くの犠牲は避けられない」と巧妙な世論操作を行った。マルクス主義者は、礼儀正しく法律を厳格に守り清潔で犯罪が少なかった貴族風のドイツ社会を、人間不信で殺伐とした犯罪社会へと変貌させた。
 ドイツ共産党員のうちユダヤ共産主義者は約7%にすぎず、党内では少数派であった。
 左翼の私設警察は、保守派の住宅を襲って逮捕し、全財産を没収して、おぞましい拷問に懸け、罪を捏造して処刑した。
 彼等は、国際条約で保護された各国の大使館や領事館に乱入して略奪し、国際法を踏みにじって外交官や一般館員に暴力を振るって逮捕し投獄した。
 ドイツは戦火による惨劇は免れたが、人民政権内部の過激派と穏健派による主導権争いで流血事件が絶えなかった。
 ドイツ系ユダヤ人の多くは、キリスト教に改宗し、光り輝いていたドイツ文化を身に付け、ドイツに同化してゲルマン人の騎士道的気風を自分のものとして誇りとしていた。
 彼等は、ドイツ人以上に国家と政府に忠誠を誓い、模範的なドイツ国民になる事に心掛け、ドイツ民族主義を否定する国際主義共産主義運動と対峙していた。
 臨時政府は、議会主義による安定を図る為に、暴力革命を目差すドイツ共産党の弾圧を始めた。右翼や右派は、一斉に左翼や左派を攻撃し、人種差別からユダヤ人をマルクス主義者と決めつけた。
 ドイツ国防軍は、共産主義革命を封じ込める為に穏健派と妥協して、軍隊内の思想弾圧を行って共産主義分子を処刑した。
 19年から22年までの4年間で376件の政治的暗殺事件が起き、内22件が左翼による赤色テロで、残りが右翼の犯罪であった。
☆左翼・左派が目差す共産主義の狂気
 トマス・ホッブズ「窮状にある者や現状に満足しない向こう見ずの連中は……戦争の原因を継続させ、紛争や騒動を掻き立てる」
 ヨーロッパ世界は、1500年頃は6,000万人の人口であったのが宗教倫理で中絶や乳幼児殺しが禁止された為に人口爆発が起き、1900年に入る頃には4億8,000万人に膨れ上がっていた。
 古く伝統ある専制国家とは、国外からの侵略者が上流階級を形成し、敗者を下層階級として支配する社会である。
 そして、世襲制が幅をきかせた閉塞社会である為に、有力な血縁に縁の無い庶民に与えられる社会的ポストは限られていた。
 故郷には、次男以下の子供に分けられるだけに遺産が無く、食って暮らせるだけの仕事もなかった。野心に燃えた戦闘能力のある多くの若者は、新に侵略した土地で上流階級になる為に、冒険者として新天地を求めて未知なる世界へと旅立った。
 政府は、人口増加で過剰となった上昇志向の旺盛な若者を野放しにしておいては、体制不満から革命を起こし内乱の基になるとして軍隊に収容し、若者の野心を満たす為に名誉と地位を与えるべく植民地戦争を行った。
 帝国主義を正義とする欧州諸国は、キリスト教の神の名によって地球上の90%以上を征服し植民地化した。
 18〜19世紀のイギリスの経済・人口学者マルサスは、『人口論』を発表した。
 一部のマルサス主義者は、土地の狭いヨーロッパ世界では人口爆発を吸収できない為に、少ない資源・食糧をめぐって破滅的殺し合いが続くという現実主義的終末論を唱え、その破滅を避ける為には才能と意欲に溢れた多くの若者を国外に送り出すしかないと結論付けた。
 だが、外国に出る事を嫌がる若者は、国民として受けて当然の名誉と地位を得る為に、右翼・右派として宗教的原理主義もしくはファシズム運動に、左翼・左派としては共産主義の暴力的革命運動もしくは無政府主義の反社会的暴動などに、積極的に参加した。社会に対する不満を抱いた若者にとって、閉塞した社会の老人の分別を粉砕し、硬直した社会を変革する為の流血を伴う過激的行動を正当化してくれれば、如何なる宗教であれどんな主義主張であっても良かったのである。
 欧州諸国が日露戦争で世界の植民地化が出来なくなるや、若者の尽きる事のない熱気は、キリスト教による古き良き伝統への回帰或いは共産主義による新しい変革への動乱の火種として燻り始めた。
 マルクス主義社会を理想とする血気盛んな多くの若者は、各地で共産主義革命の為にクーデターや内戦を起こしていた。
 だが、彼等が求めたのは、自由と平等の世の中ではなく、エリートとしての自分の能力にあった名誉と地位を与えてくれるプロレタリア独裁体制であった。
 ゆえに新たな若きエリートは、上級のポストを獲得するべく古いエリートを失脚させ抹殺する為の陰謀を絶えず巡らしていた。
 共産主義は、赤のテロとして、果てることのない粛清を続ける。

























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