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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
2016年12月15日 産経ニュース「スリランカのハンバントタ港、中国企業が株の80%取得へ
【ニューデリー=岩田智雄】スリランカ政府は14日、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港について、スリランカ国営企業の株式の80%を中国国営企業に長期貸与する方針を明らかにした。来年1月初めの合意を目指す。中国は、インド洋周辺で港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」を進めており、地域への影響力を強めそうだ。
スリランカのラナトゥンガ港湾・海運相は、中国国営港湾会社への99年間の株式貸与することで、11億2千万ドル(約1300億円)を得ると明らかにした。
ハンバントタ港はラジャパクサ前大統領が2010年、自身の地元に建設した。今も残る債務13億5千万ドルの大半は、中国輸出入銀行からの年率6・3%の借り入れだ。中国企業に開発を委ねたが、新港は、完成後に沖合に見つかった巨大な岩の破壊が必要になったほか、需要が少なく、現シリセナ政権は運営に苦心してきた。
中国の新シルクロード(一帯一路)構想に賛同したラジャパクサ前政権が、インフラ整備などで負った中国からの債務は80億ドルに上るとされる。シリセナ政権は前政権を批判し、過度の対中依存を見直してきたものの、財政が逼迫(ひっぱく)する中、港の株式を中国へ引き渡すしかなかったようだ。
ハンバントタ港では中国に港の運営権を握られ、失業することを懸念した約480人の港湾労働者が政府への抗議運動を続けており、最近では川崎汽船が運航する自動車専用船が4日間、出港できなくなり、海軍がデモ隊を排除する事態も起きた。
ラジャパクサ前政権下の約2年前、安倍晋三首相のスリランカ訪問時には、中国の潜水艦がコロンボ港に寄港した。インドは、周辺地域での中国軍の活動を警戒している。」
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2017年6月2日 日経ビジネス「「一帯一路」に対抗する日・インドの戦略構想
インドを陸海空物流のハブに
中国が5月中旬、「一帯一路」サミットを北京で開催した。「シルクロード」を再構築する大規模な試みだ。ロシアやインドネシアなどの大統領も集まり、大きなイベントとなった。
このサミットに、明確に反旗を翻した国がある。インドだ。インドは招待されたにもかかわらず代表を送らなかったばかりか、「一帯一路」構想の問題点を指摘する公式声明を出した。
そのインドのナレンドラ・モディ首相は5月24日、「アジア・アフリカ成長回廊」という構想を明らかにした。これは日本とインドが協力する構想である。
インドは中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や、BRICS首脳会議などの主要メンバー。経済面では、日本や米国だけでなく、中国やロシアとも付き合ってきた国だ。そのインドが、今、中国と対決する姿勢を明確に見せている。
どうして明確な立場を示したのか。インドが「一帯一路」構想に反対した背景、インドが日本と進めているインド洋周辺の対抗策、日本としてどうするべきなのか。本稿はこの課題を分析する。
借金漬けにして中国の影響下に
インド外務省のホームページに、「一帯一路」構想を取り上げたページがある。ここには、本来あるべき経済協力の姿と、「一帯一路」構想がその理想からかけ離れていることが書かれている。どうやら、インドは2つのことを気にしているようだ。
1つ目は、返済できないような多額のローンを中国が高い金利で貸している点だ。諸国を借金漬けにして中国の影響下に置こうとする、悪意に満ちた計画ととらえているのである。
例えば、中国がスリランカに建設したハンバントタ港の建設がその例として挙げている。スリランカ政府は、ハンバントタという場所に、中国の協力を得て港と空港を建設した。その際、中国から借り入れを受けた。金利は6.3%。
ローンは返さなければならない。だがスリランカは80億ドルに及ぶローンを返却するめどが立っておらず、中国に今後99年にわたって運営権を渡す契約に合意することになりそうだ。さらには、同港の敷地内において治安や警備の権限まで中国に認めることになりかねない。
もし治安や警備の権限を認めた場合、スリランカ政府は、ハンバントタ港の中で何が行われているか把握できない状態に陥る。同港は中国の、中国による、中国のための港になってしまう。
世界銀行や、日本が主導するアジア開発銀行から国が借り入れをする場合、利率は0.25〜3%である。中国の6.3%というのは非常に高い。インドはこれを見て、帝国主義時代に欧米列強が植民地を作ったやり方と同様だと考え始めている。インドの歴史を振り返ると、英国は、税金を払えない農民の土地を差し押さえることで、インド人を、英国人の支配下においていった。
インドの領土”で中国軍が道路建設
インドが反対したもう1つの理由は、インドの領土問題にかかわるからだ。「一帯一路」構想には、「中国・パキスタン経済回廊」が含まれる。中東産の石油をパキスタンで陸揚げし、パキスタン国内を北上して中国へ運ぶルートを指す。
このルートは、パキスタンが管理するカシミール地域を通過する。この部分の道路を、中国軍が駐留して建設している。インドが自国の領土と主張しているところに中国軍が駐留して道路を建設して使用するというのは、インドにとって譲れない一線だ。
こうした理由から、インドは「一帯一路」構想との対決を決めたのである。
しかし、なぜ今、対決を決めたのであろうか。何か代替案をみつけたのであろうか。実は、注目すべき経済構想が実際に動いている。中国ではなく、日本と連携する構想だ。どんなものがあるのか。
インドと東南アジアを陸路でつなぐ
まず注目されるのは、インド北東部の道路建設プロジェクトだ。このプロジェクトの趣旨は、インドと東南アジアを陸路でつないで物流を活発化させ、経済を活性化させることにある。ただし、経済的な目的の裏に、安全保障を含めたより戦略的な思惑もある。
中国が南シナ海で強引な行動を取っている原因の一つとして、東南アジア諸国の態度がはっきりしないことがある。安全保障に不安を覚えつつも、経済面で中国に強く依存していることが一因だ。この中国依存を緩和するのに、インドとの貿易拡大が貢献する。
さらに、インド北東部には、インドと中国の双方が領有権を主張しているアルナチャル・プラデシュ州(中国名:南チベット)がある。インドは防衛力の増強を進めているが、インフラがないために軍を素早く移動させることができない。もし道路が整備されれば、それがたとえ民生用の道路だったとしても、インド軍の展開を助ける結果になるだろう(関連記事「インドが日本に示した奥の手」)。
中国に対抗し、スリランカに新港を建設
次に注目されるのはスリランカのトリンコマリー港の開発だ。日本とインドが協力して同港を建設する計画である。その戦略的背景は何か。
前述のように、スリランカでは中国がハンバントタ港を建設している。日印は、中国がスリランカで影響力を強め、最終的に中国海軍の拠点を構築することを懸念している。
そこで日印は、スリランカに中国製よりも優れた港を作り、中国の港の存在意義を低下させて、日印の影響力を維持しようとしているのである。優れた港とは、実際にスリランカの経済に資する拠点となるものだ。そこでトリンコマリー港が候補になった。
同港は、スリランカ北東部に位置する。天然の良港で、地形上、台風や津波などから守られている。深さは25mもあり、商船も軍艦(例えば空母や大型の原子力潜水艦まで)も利用できる。だから大英帝国時代にはここが海軍の拠点であった。第二次世界大戦のときに、日本の空母機動部隊が爆撃したのもこの港である。しかし、英国が去って以降、スリランカ政府はあまり利用してこなかった。
そこで日印の計画が浮上した。今年4月、スリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相が来日したとき、日本とスリランカの両国は共同声明を発表し、トリンコマリー港の設備整備のために日本が10億円を無償提供することに言及した。
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7月26日 産経ニュース「中国と新たな合意 スリランカ「軍事利用させない」 港権益貸与
【ニューデリー=岩田智雄】スリランカが南部ハンバントタ港の権益を中国企業へ長期貸与する計画が、地元の反対運動などにより宙に浮いていた問題で、スリランカ政府は25日、新たな中国側との合意内容を決定した。
ロイター通信によれば、合意の詳しい内容は発表されていないものの、2つの会社が設立される。一方は港の運用を行い、中国企業が85%の株式を取得し、10年後には65%に減らす。もう一方の会社は治安面での運用を行い、スリランカ側が株式の50・7%、中国側が49・3%を所有する。
サマラシンハ港湾相は「中国側には、港を軍事目的では使わせないと伝えており、治安面の責任は、100%スリランカ政府にある」と述べた。合意内容は今週中に議会の採決に付される。AP通信によれば、週末にも中国企業と合意文書に署名する。株式の貸与期間は99年。
中国は、インド洋周辺で港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」により、ハンバントタ港の建設費をスリランカ政府に貸し付けた。
しかし、最高6・3%にも上る高金利により、スリランカ政府が債務の返済に窮し、港を所管するスリランカ国営企業の株式の80%を中国国有企業に99年間貸与することで昨年12月、中国側と基本合意した。スリランカは、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の主要参加国にも位置づけられている。
これに対し、地元では失業を懸念する港湾労働者や、経済特区建設による土地買収に反発する市民が政府への抗議デモを展開。インドや日本は、中国の軍事利用につながる恐れがあるとして警戒していた。
今年4月に訪日したスリランカのウィクラマシンハ首相は安倍晋三首相との会談で、スリランカがハンバントタ港を含む港湾の税関などを完全に管理し、その利用を商業目的とすることの重要性も確認していた。」
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2018年1月5日 産経ニュース「【国際情勢分析】まるで高利貸し “借金のカタ”でスリランカの港を奪った中国のやり口とは
2017年11月9日、スリランカ議会で18年予算について説明するサマラウィーラ財務相(ロイター)
スリランカ政府は2017年12月、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡した。高金利債務の返済に窮していたスリランカは、“借金の形”に海のインフラを奪われた形で、中国のスリランカへの影響力いっそう強まりそうだ。
(外信部編集委員、前ニューデリー支局長 岩田智雄)
地元紙デーリー・ミラー(電子版)などによれば、スリランカ国営企業は12月9日、港を引き渡す代わりに、まず2億9200万ドル(約330億円)を受け取った。スリランカのサマラウィーラ財務相は議会で、「(開港から)7年がたち、これは港の商業的価値を実現する第一段階にすぎない」と述べた。
両国国営企業は17年7月29日、スリランカ側が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡する11億2千万ドルの取引の合意文書に調印していた。
そもそも、ハンバントタ港の建設支援は、中国がインド洋周辺で港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」の一環だった。
しかし、最高6・3%にも上る高金利により、スリランカ政府が債務の返済に窮し、港を所管するスリランカ国営企業の株式の80%を中国国有企業に99年間貸与することで16年12月、いったん中国側と基本合意した。これに対し、地元では失業を懸念する港湾労働者や、経済特区建設による土地買収に反発する市民が政府への抗議デモを展開。インドや日本は、中国の軍事利用につながる恐れがあるとして警戒し、契約内容が見直されていた。
スリランカ政府は見直し後、「中国側には、港を軍事目的では使わせない」ことを確約している。
スリランカは、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の主要参加国にも位置づけられているが、米紙ニューヨーク・タイムズによれば、スリランカの中国国有企業への債務は、合計で80億ドルにも上る。
インドのシンクタンク、オブザーバー研究財団のサティヤ・ムールシー上級研究員は同紙に「中国への債務を縮小させるための対価は、スリランカが少なくしようとした債務負担よりも高くつくだろう」と述べた。
スリランカと関係の深い地域大国インドの警戒心は強く、印シンクタンク、カーネギー・インドのコンスタンティーノ・ザビエル研究員は「インドは自国の戦略的裏庭で、中国の攻勢に圧倒されている」と指摘している。
インドは一帯一路構想への根強い不信感を抱えており、17年5月に北京で開かれた一帯一路に関する国際協力サミットフォーラムを主要国で唯一、ボイコットした。
当時、外務省報道官は「支えきれない債務負担を地域に作り出す事業は行わないようにするという財務上の責任の原則に従うべきだ」と述べ、中国がスリランカに高金利で港湾整備資金を貸し付け、債務返済で困窮させていることなどを暗に批判している。」
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1月6日 産経ニュース「中国、インドでチベット難民をスパイ勧誘 アプリ通じ報酬も提示
【ニューデリー=森浩】チベット亡命政府があるインドで、中国側がチベット難民に対してスパイ勧誘活動を行っていたことが5日、分かった。産経新聞の取材にインド政府高官が証言した。実際にスパイ活動が行われていたかは不明。世界各国で諜報活動を展開している中国が、自らの支配下から逃れたチベット難民をスパイ要員として籠絡している実態は波紋を広げそうだ。
関係者によると、インド当局が情報を得たのは約3カ月前で、複数のチベット難民が勧誘を受けていたことを証言した。中国側は直接の接触を避けており、通信アプリ「ワッツアップ」などを通じて、交渉を持ちかけていたという。その際、報酬も提示していたが具体的な金額は明らかになっていない。
勧誘を受けた難民はインドが実効支配し中国も領有権を主張している北東部アルナチャルプラデシュ州や、亡命政府が拠点を置く北部ヒマチャルプラデシュ州にも居住しているという。
勧誘活動が始まった時期は不明だが、中印は昨年6月から約2カ月半にわたり、ブータンとの3カ国の国境付近で軍隊がにらみ合った経緯があり、政府高官は「対峙(たいじ)を契機に諜報活動が活発化した可能性もある」と分析する。インド当局は警戒を強化する方針で、高官は「現在、関係部局が調査中で、しばらくたてば報告がまとまるだろう」と話している。
インドには、中国から継続的にチベット系の難民が流入しており、現在十数万人が在住しているとされる。2013年には、中国が派遣したスパイとみられる男が難民に紛れ込んでインド国内に侵入していたことが発覚。偽造身分証所持の疑いでインド当局が身柄を拘束したこともある。」
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1月15日 産経ニュース「スリランカの港に中国旗 99年間譲渡「一帯一路」債務重く“借金のカタ”に奪われる
【ニューデリー=森浩】スリランカ政府は、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡し、現地紙によると今月1日、港湾当局の建物に中国国旗が掲げられているのが確認された。債務の返済に窮したスリランカが“借金のカタ”に海のインフラを奪われた形だ。南アジアで中国と主導権を争うインドは、対抗するように近隣の空港の権益を買い入れる計画を進める。かつての小さな漁村は国同士の思惑がぶつかり合う舞台となっている。
スリランカ国営企業と中国国有企業は昨年7月、スリランカ側が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡することで合意した。11億2千万ドル(約1240億円)の取引の合意文書に調印し港は先月、中国側に渡っていた。
そもそも、港は親中派のラジャパクサ前政権時代に着工されたが、約13億ドルとされる建設費の大半は中国からの融資だ。しかし、最高6・3%にも上る高金利は財政が苦しいスリランカにとって「悪夢」とされ、リースの形で中国に引き渡されることとなった。
現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国に乗った結果、港を明け渡した格好で、国内でも批判が噴出。昨年末からは職を奪われることに危機感を募らせた港湾労働者がストライキを断続的に起こしており、政府は経済効果を繰り返し強調して批判の沈静化に躍起だ。
こうした動きに対してインドは、ハンバントタ港から約20キロの距離にあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港の権益の購入に関心を示している。空港はラジャパクサ前大統領の肝いりで建設されたが、利用客は1日10人ほどに低迷し、一時はコメの貯蔵庫として利用されるありさまだった。インドにとって空港入手による経済的利益があるとは考えにくく、中国のハンバントタ支配に対する牽制(けんせい)の意味合いが強い。
インド洋では中国の潜水艦航行が常態化するなど、インドにとって座視できない状況が続く。「このままでは、南アジアで中国の好きなようにされてしまう」(インド紙記者)という危機感があるようだ。
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1月18日 産経ニュース「中国に運営権「植民地同然」スリランカのハンバントタ港 融資→多額の債務→99年間貸与
スリランカ・ハンバントタ港(森浩撮影)
中国の援助で建設されたスリランカ南部ハンバントタ港。中国からの多額の債務に追い詰められたスリランカが運営権を中国に差し出したいわく付きの港だ。一帯では解雇を懸念する労働者によるストライキが断続的に起きており、異様なまでの警戒態勢が敷かれている。港は地域に何をもたらしたのか。中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が生み出す摩擦の現場を歩いた。(ハンバントタ 森浩)
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■商業港が一変、厳戒
「そこで何をしていた。お前は誰だ」
高台から港の全景をカメラに収めて離れようとした際、警備員が近づいてきた。「ここは敏感なエリアだ。写真を撮ることは受け入れられない」と、強い口調で迫られ写真を削除せざるを得なかった。中国とスリランカが主張する「商業的な港」とはかけ離れた実態がうかがい知れた。
5カ所ほどの出入り口があるが、どこにも警備員が立ち、目を光らせている。「かつて港は誰でも自由に入れたんだ。小さい頃はよく魚釣りをした。中国が来てから窮屈になった」と話すのはタクシー運転手のハトタさん(50)だ。海岸沿いに立ち並ぶ住居は空き家が目立ち、すべて港の拡大計画に伴って立ち退きを要求されたという。
コロンボの南東250キロに位置するハンバントタはかつては漁村で、今でも野生の象やイグアナが生息する自然豊かな場所だ。港が建設されたのは2010年、親中派ラジャパクサ前政権下でのことだった。費用約13億ドル(約1440億円)の多くは中国からの融資。「当時は地元を潤してくれると思った」とハトタさんは振り返る。
だが、スリランカ側に重くのしかかったのは中国側が設定した最高6・3%の金利だ。最終的には株式の70%を中国国有企業に99年間貸与せざるを得なくなった。リース料として11億2千万ドル(約1240億円)が支払われるが、事実上の“売却”といえる。
「債務によるわなだ。植民地になったと同然だ」。野党系国会議員は憤りを隠さないが後の祭りだ。
■「99」に隠された意味
憤りを抱えているのは政治家だけではない。
港の正門から200メートルほど手前の地点では、ストライキを起こしている港湾労働者が集会を開いていた。僧侶も参加し、シンハラ語で「職か?死か?」と書かれた横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げた。
労働者側によると、中国側に運営権が移り、地元労働者が大量解雇される危険性が生じているという。スト参加者の一人は「解雇の計画があると聞いているが、政府や中国側からは満足のいく説明がない」と不安と憤りを口にした。
一方、港湾開発を主導したラジャパクサ前大統領の支持者からは中国側への株式貸与などで「国の財産が外国に移った」として、現シリセナ政権に抗議する活動も起きている。「確かに港が完成して、ある程度雇用は生まれた。それ以上に地域に混乱も生み出された」とは地元記者の言葉だ。
正門前での騒動とは裏腹に、港の中は行き交う車両も見えず、静まりかえっていた。寄港する船は数日に1隻程度とされ、とても商業的に機能しているとは思えない状況だ。
ようやく接触できた中国人技師の男性は、港の貸与年数「99」という数字の発音が、中国語の「久久」(長い期間)と同じだと話し、「将来にわたってハンバントタを管理するという中国政府の意思の表れだ」と解説した。地元の反発については「100年後にここが香港のような大都市になっているかもしれない。それなら地元も幸せなんじゃないか」と話した。」
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1月26日 産経ニュース「「国家の主権が中国に買われている」モルディブ元大統領が現政権非難
【ニューデリー=森浩】インド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブのモハメド・ナシード元大統領は26日までに、少なくとも16の島で中国による開発やインフラ整備が進行中だとし、「国家の主権が買われている」と非難した。自身は野党党首でもあり、今年中に予定される大統領選を前にした政府批判の一環でもあるが、中国傾斜を強める現状に危機感をあらわにした格好だ。
ナシード氏は「モルディブだけでなく、地域全体の平和と安定を脅かす土地奪取が行われている」と指摘。ヤミーン大統領が正式な手続きを経ずに「中国に対し投資を無制限に開放している」と糾弾した。」
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2月22日22:17 産経ニュース「中国、航空戦力を増強 インド国境近くの西部地区に重点配備
【北京=西見由章】中国人民解放軍がインドと国境を接する西部戦区の航空戦力を増強している。ドクラム(中国名・洞朗)地区の国境問題をめぐり対(たい)峙(じ)を続けた中印両部隊が昨年8月に撤退で合意した後も、中国側は紛争地に近い空港に戦闘機を重点配備し、新たな滑走路まで建設するなど軍事拠点化を進めており、両国間の緊張が再び高まる可能性がある。
チベット自治区などを拠点とする西部戦区の空軍部隊は春節(旧正月)直前の今月13日に空中戦訓練を実施し、参加した殲(J)10、J11戦闘機の写真を軍公式サイトが公開した。これを受けて中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は20日、「中国はインドの脅威に対応するため西部戦区の体制を増強している」とする軍事専門家のコメントを伝えた。
この専門家は「インドと国境を接する山岳地帯での制空権強化は中国にとって重要だ」と強調し、さらに最新鋭戦闘機の配備も必要だとの見方を示した。
衛星写真も中国軍の航空戦力増強を裏付けている。米情報企業ストラトフォーは、中印双方がドクラム地区周辺の飛行場に戦力を集中させ、特に中国側の動きが目立つと分析している。
同社によると、中国チベット自治区のラサゴンカル空港では昨年10月時点でJ10、J11戦闘機計25機や最新鋭の早期警戒管制機KJ500が2機、Mi171ヘリ8機が確認された。同自治区のシガツェ空港でも昨年9月に大型無人偵察機「翔竜」3機の配備が確認されたほか、今年1月までに新たな滑走路1本やヘリパッド8カ所が建設されたことも判明した。
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2月22日23:10 産経ニュース「「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」
記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ(AP)
【ニューデリー=森浩】政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。
野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。
ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。
野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。
最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。」
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7月7日 産経ニュース「【国際情勢分析】中国がスリランカに“掟破り”の選挙資金供与疑惑 要衝港の利権獲得で見返り?
スリランカ・ハンバントタ港。門は厳重に警備されており、中に入るには特別な許可が必要だ=2018年1月、森浩撮影
中国の融資で建設されたスリランカ南部ハンバントタ港をめぐり、騒動が勃発している。港湾建設計画を推進したラジャパクサ前大統領陣営に中国側が選挙資金を提供した疑惑が浮上したのだ。ラジャパクサ氏は即座に否定したが、警察は捜査に着手する見通しだ。軍事利用される可能性もぬぐえない同港。「騒動」と「疑念」がつねに渦巻いている状況だ。
(ニューデリー 森浩)
故郷で港、空港、クリケット場を整備
ハンバントタ港の歴史を振り返ってみると、同地出身でもある親中派ラジャパクサ氏の存在を抜きには語れないことがよく分かる。
26年間にわたった内戦終結の立役者でもあるラジャパクサ氏は2005年に大統領に就任。ハンバントタ周辺で大規模事業を次々と着工した。港の他にも国際空港やクリケット場などが次々と整備されている。
港湾建設は08年から始まり、10年11月に第1期工事が終了した。建設資金の多くは中国の融資で、計約13億ドル(約1400億円)が注ぎ込まれたとされる。
しかし、多額の債務と最高6・3%にも上る高金利はスリランカ財政をいきなり圧迫。処理は15年に誕生した現シリセナ政権に引き継がれた。
最終的にスリランカ政府は昨年12月、中国側と賃借契約を結び、ハンバントタ港の運営権とその周辺の土地6千万平方メートルを引き渡すことに合意した。契約期間は99年で、事実上土地を売却した格好だ。
返済不能な債務を追わせた上で、整備されたインフラを奪う「債務のわな」を中国側が仕掛けたと批判されている。
選挙資金の提供報道…警察が捜査へ
そんな中、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は6月25日、「いかに中国はスリランカの港を手に入れたか」との記事を掲載した。同紙は「(中国が展開する)世界的な投資と融資のプログラムは、経済的に脆弱な国にとって『債務のわな』になっている」と改めて強調した。
関係者への取材や政府関係文書を精査したという記事で、特に注目されたのがラジャパクサ氏が落選した15年の大統領選で、同氏陣営に中国側から少なくとも760万ドル(約8億4千万円)が渡ったと報じた部分だ。事実ならハンバントタ港建設への見返りとも受け取られかねない。
連立与党の一員である統一国民党(UNP)はNYTの記事を受けて、内容を調査する大統領委員会の設置を求めた。同党党首でもあるウィクラマシンハ首相は「詳細が明らかにされなければならない」と表明。7月5日には警察による捜査が始まることを明らかにした。
記事には「政治的偏見がある」…関係者反論
この報道に“当事者”たちは敏感に反応した。
中国側は在スリランカ中国大使館が声明を出し、記事は「政治的偏見があり、事実と一致していない」と疑惑を否定した。
当のラジャパクサ氏も1日、「大統領選に中国は関与していない」との声明を発表。記事では「誰が資金を贈り、誰がそれを受け取ったのか漠然としか書いていない」と反論した。現政権はラジャパクサ氏と反目していることから、NYTの記事を「政治利用」しているとも批判している。
ラジャパクサ氏は15年の大統領選では敗北を喫したが、自ら結成した「スリランカ人民党」が今年2月の地方選挙で圧勝を収めた。内戦終結の英雄ラジャパクサ氏の根強い人気を裏付けた。20年に予定されている大統領選での返り咲きに向けて、現政権をさらに追い詰めたい局面だ。
現地ジャーナリストは「ラジャパクサ氏にとってみれば、現政権が自分の足をひっぱるためにNYTを利用しているとしかみえないだろう」と分析する。
ラジャパクサ氏に近い国会議員も記者会見を開いてNYTの報道姿勢を糾弾。NYT側は「圧力に屈することはない」と反論しており、問題は収集の気配を見せない状況だ。
「商業的」「物流の中心を目指す」
一方、ハンバントタ港をめぐっては、中国とスリランカ両政府ともに「商業的な港で軍事利用はない」と繰り返し強調するが、隣国インドを中心に中国による軍事利用への警戒感は消えない。
中国外務省の陸慷報道官は7月3日の会見で、ハンバントタ港について「建設はスリランカ政府と人々の希望によるものだ。中国は融資面でサポートした。これはいずれにとっても利益があるものだ」と主張。あくまで「物流の中心を目指すもの」であり、「軍事利用はない」と強調した。
ただ、ラジャパクサ政権時代の14年9月には、首都コロンボに中国軍の潜水艦が寄港している。現シリセナ政権は中国から一定の距離を置くバランス外交を展開するが、ラジャパクサ氏が復権すれば中国への再接近も考えられる。軍事利用には時の政権の中国との距離感も影響しそうだ。
印政治評論家ラメシュ・チョプラ氏は「シーレーン(海上交通路)の要衝にあるハンバントタは軍事的にも重要地点だ。中国が軍事利用する可能性はつねにぬぐえない」と警戒している。」
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10月9日 産経ニュース「【国際情勢分析】脱「一帯一路」は波高し 中国資本が浸透したモルディブの未来は
今年に入ってアジア各地で、中国の影響力見直しを掲げる指導者が選出された。(左から)マレーシアのマハティール首相、モルディブのソリ次期大統領、パキスタンのカーン首相=AP
南海の楽園が選択した「脱中国」の行方は−。9月のモルディブ大統領選で親中派の現職が敗北し、親インドの野党候補が勝利した。新政権は中国マネーによるインフラ整備を見直す予定で、巨大経済圏構想「一帯一路」の退潮と捉えることもできる。ただ、中国の影響と資金は既にモルディブに深く染みこむ。公約通り中国の“赤色”をぬぐえるかは未知数だ。
(ニューデリー 森浩)
「強権と腐敗」の大統領
「困難な旅路だった」
野党統一候補だったモルディブ民主党(MDP)のソリ氏は、投票翌日の9月24日の勝利宣言で、こう吐露した。選挙戦で争ったヤミーン大統領に対しては「人々の意思を尊重し、平和でスムーズな権力移転を実現するよう求める」と呼びかけた。
「困難な旅路」という言葉には、モルディブがここ数年置かれていた政治状況が凝縮されている。
2013年に就任したヤミーン氏は、非常事態宣言を2度発動して、ガユーム元大統領ら政敵を次々と拘束。国内の反対者は「すべて投獄されるか亡命した」とも揶揄(やゆ)された。批判するメディアには、施設への放火や記者の尾行などの嫌がらせが続いた。
大統領選でも、ヤミーン政権は、与党の追い落としを図るため、「黒魔術を行った」として野党支持者を逮捕。投票前日の22日には「違法行為があった」との理由で、裁判所の令状なしで野党の選挙事務所を捜索した。
「ヤミーン氏が敬遠された理由は複数あるが、1つめが行き過ぎた独裁。2つめが腐敗だ」と話すのは地元ジャーナリストだ。
親族企業への利益誘導の噂は絶えず、選挙直前にはリゾート開発をめぐってヤミーン氏や側近が関与する汚職疑惑が浮上していた。
2 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)は、選挙戦前にヤミーン氏が150万ドル(約1億7千万円)の資金を何者かから極秘裏に受け取ったとも指摘。カネにまつわるスキャンダルは絶えなかった。
海上橋に「いわくつき」中国企業参加
そして、ジャーナリストが指摘するヤミーン氏敗北の第3の要素が、中国傾斜に伴う財政悪化だ。
ヤミーン氏の在任中、中国の融資に支えられた大型インフラ工事が次々と着工された。代表例が空港拡張工事(事業費8億3千万ドル)と、空港島と首都を結ぶ海上橋(同2億ドル)だ。
海上橋工事を請け負った中国企業には、フィリピンの道路改良工事で不正があったとして、世界銀行のブラックリストに掲載された事業者も含まれている。
昨年12月にはインドを差し置いて中国と自由貿易協定(FTA)も締結しており、モルディブに中国大使館が開設されたのが11年であることを考慮すれば、その中国傾斜は急速だ。
一方で、融資に伴う対外債務は右肩上がりで増え、国内総生産(GDP)の約3分の1にあたる14億ドル(約1700億円)にまで膨張した。野党陣営は「75%が対中債務だ」(ナシード元大統領)とし、批判を展開した。
積み上がる債務、多難な脱中国
ヤミーン氏の施策を全否定して選出されたソリ氏は11月の就任後、脱中国路線を進める見通しだ。MDP党首でもあるナシード氏は「すべての中国との契約について見直しを加える」と明言した。
ただ、公約の前途は険しい。積み上がった債務の返済や金利の支払いについて、「応じられる財政的体力はモルディブにはない」(印シンクタンク関係者)というのは一致した見解だ。スリランカ・ハンバントタ港と同様、インフラ設備を中国に明け渡す展開は十分にありえる。
首都マレでの病院建設工事などすでに進行中のプロジェクトも多く、政権交代でも一帯一路関連の事業は止まりそうにない。
ソリ氏らは、歴史的に関わりが深いインドからの援助に期待を寄せる。インドのモディ首相はすでにソリ氏と電話で会談し、連携強化で一致。インドが具体的な支援をどの程度実現できるかが焦点となりそうだ。
習氏、新政権に要請「有益な協力を進めたい」
中国の資金支援を受け、インフラ整備を進めた現職が選挙で敗れるという展開は、モルディブのほか、スリランカやマレーシアなどでも相次ぐ。パキスタンでも一帯一路関連事業の見直しが始まった。「アジアが中国に不信感を抱いている」(印民放ウィオンニュース)との報道もなされている。
ただ、それでも多くの国は、中国に匹敵する資金を供給できる融資元を持たない。パキスタン政府関係者は取材に、「債務負担の大きさは分かっているが、われわれには舗装された道路も、大規模な発電所も必要だ」と打ち明けた。毒が含まれている可能性があっても、そのうまみを考えれば「食べざるを得ない」という主張だ。
中国の習近平国家主席は9月30日、大統領選の結果確定を受けてソリ氏に「相互に有益な協力を進めたい」とのメッセージを送った。これまでと同じくモルディブへの融資を継続する意向を示唆した格好だ。
はたしてソリ氏は公約通り、中国の影響から抜け出すことができるのか。脱中国路線の行方が注目される。」
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