💥25」26」─1─勝者の裁きと敗者への報復。ユーゴ戦犯法廷。~No.95No.96No.97No.98No.99No.100 ⑮

「勝者の裁き」に向き合って (ちくま新書)

「勝者の裁き」に向き合って (ちくま新書)

  • 作者:牛村 圭
  • 発売日: 2004/03/10
  • メディア: 新書
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 2017年12月20日 産経ニュース「「勝者の裁き」に限界も ユーゴ戦犯法廷が四半世紀の裁判に幕「国家元首の犯罪野放しにせず」の原則は確立
 1990年代のユーゴスラビア内戦の民族虐殺、迫害の責任者を裁く旧ユーゴ国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)の閉廷式典が21日に行われる。設立以来、24年間で「国家元首の犯罪を野放しにしない」という国際原則を確立する一方、大国の思惑に左右される戦犯法廷の限界も示した。(ハーグ 三井美奈)
「目の前にいた男がのどを切って殺された」
 「私は当時25歳。12歳の少女と一緒にアパートに監禁され、15人のセルビア人兵士に毎日レイプされた。部屋には『白鳥の湖』の曲がかかっていた」
 「深夜、一緒に寝ていたみんなの前で犯された。隣に10歳の息子がいた」
 「町中が銃撃され、住民は集合を命じられた。行った途端、目の前にいた男がのどを切って殺された」
 判決の証言から陰惨な民族紛争の実態が浮かびあがる。法廷が召喚した証人は約4650人。起訴状や判決文は250万ページに上る。
 法廷は93年、国連安全保障理事会決議で設立された。第二次大戦後の東京、ニュルンベルク裁判以来、初めての戦犯法廷だ。91年に始まったユーゴ内戦中の集団レイプ、虐殺の責任者を処罰し、紛争を阻止する狙いがあった。
ジェノサイド罪の確立に成果
 最大の成果はジェノサイド(集団殺害)罪の確立。95年、イスラム系住民が8割を占めるスレブレニツァでセルビア人勢力が約8千人を殺害した事件に適用した。
 ジェノサイドは民族や宗教集団を意図的に破壊する行為で「人類最悪の罪」とされる。ナチスユダヤ人虐殺を踏まえ、第二次大戦後に条約で定められた概念を判例で具体化した。120人以上の証言から虐殺が組織的に行われたことを証明した。
 2001年に始まったユーゴのミロシェビッチ元大統領の裁判は元国家元首を裁く初ケースになった。元大統領は公判中に死亡したが、セルビア人元指導者のカラジッチ被告、元軍司令官のムラジッチ被告はジェノサイドでそれぞれ禁錮40年、終身刑の判決が下った。
 法廷はまた、紛争中の集団レイプを「人道に対する罪」と初認定。その指揮官だったセルビア人被告は禁錮28年の判決を受けた。
 セルジュ・ブラメルツ首席検察官(ベルギー出身)は今月6日に国連安保理で演説し、「国際社会が結束すれば、最悪の人道犯罪の責任者を訴追できると示した」と成果を強調した。法廷が訴追したのは161人。このうち90人以上がセルビア人だ。受刑者は、法廷と協定を結ぶ欧州14カ国で収監された。
法廷で「戦犯ではない」と叫び服毒も
 四半世紀にわたり、裁かれ続けたセルビア人には「われわれだけが戦犯扱い」という不満が残る。セルビア世論調査で「法廷は公平でない」と考える人は65%を占めた。
 その根底には1999年、米国主導の北大西洋条約機構NATO)が行ったミロシェビッチ政権への空爆がある。空爆の巻き添えになり、国際人権団体の調べで民間人約500人が死亡し、劣化ウラン弾クラスター爆弾も使われた。NATOは民間人保護を定めたジュネーブ条約に違反したとの訴状が出されたが、同法廷は「十分な証拠がない」と不起訴にした。
 セルビア人被告弁護団の一人、トミスラフ・ビスニッチ氏は「検察はたった1カ月で結論を出し、ろくに捜査しなかった。大国の意向が影響した」と指摘する。
 同氏は、「検察は米軍の動向を見て法廷戦略を変えた」とも述べた。2003年のイラク戦争中、民間人が巻き添えになった米軍の空爆が報じられると、法廷の検察官は被告の武器使用法が同条約違反だという追及を止めたと訴える。
 法廷には公平な裁判で民族融和を促す狙いもあったが、実現とはほど遠い。昨年のカラジッチ被告の判決時、ベオグラードで数千人が「セルビア人だから処罰された」と訴えて抗議デモを行った。今年11月に有罪が確定したクロアチア人被告は「私は戦犯ではない」と叫んで法廷で服毒。抗議の自殺とみられている。
人道犯罪は国際社会が裁く原則広がる
 法廷は11月末、最後の公判を終えた。カラジッチ被告ら2人の控訴審は、国連の後継組織「国際刑事裁判メカニズム」が引き継ぐ。
 防弾ガラスや金属探知機で囲まれたハーグの法廷はそのままだが、千人以上いた職員は半分以下になり、残務処理を行う。
 旧ユーゴ法廷を契機に戦犯法廷は各地で発足した。ハーグには常設の国際刑事裁判所が設立され、カンボジアやアフリカ・シエラレオネに特別法廷ができた。重大な人道犯罪は国際社会が裁く原則が広がった。
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「公平性、東京裁判より前進」
《識者談話》米ワシントン・アンド・リー大学のマーク・ドランブル教授
 旧ユーゴ法廷はセルビア人、クロアチア人ら各勢力を訴追した。NATOは訴追されなかったが、敗戦国だけを訴追した東京、ニュルンベルク裁判とは異なり、国際社会が納得できる程度の公平性を保った。
 法廷がジェノサイド罪を明確化した意義は大きい。犠牲者の数ではなく、集団抹殺の意図が問題だと明示した。紛争時の性犯罪を訴追したのも初めてだ。
 裁判は本来、国際法廷より、事件当事者に近い場所で行うのが望ましい。このため、カンボジア特別法廷は、国連任命の外国人とカンボジア人が共に判事団を組み、国内に設けられた。ただ、旧ユーゴ法廷のように効率的に裁判が進んでいないようだ。
 常設の国際刑事裁判所も設立されたが、世界中の事件を訴追するのは責任が大きすぎ、知識も捜査力もついていかない。私は旧ユーゴ法廷のように対象を限定した方がよいと思う。
 国際刑事裁はアフリカ諸国の人道犯罪を訴追する一方、アフガニスタン戦争での米軍の罪は訴追できずにいる。勝者が歴史を作る現実は変わらない。(談)」


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秘録 東京裁判 (中公文庫BIBLIO20世紀)

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